John H. Cochrane
ブラッド・デロングはウォールストリートジャーナルに寄稿した私の記事を批判している。彼は私の書いたグラフを批判し、
自分で代わりにグラフを作成した。
(どうしてブラッド・デロングの解釈は適切ではないのか。第一に、上のグラフとは違ってこのグラフは対数グラフになっていない。第二に、x軸がスケール一定とは限らない。第三に、このグラフには(上のグラフにもだが)時間軸が存在していない。このグラフはこの指数を83から100にまで上昇させると一人あたりGDPが即座に1600万円を超えるということを示しているのではなくて83の時よりも100の時の方が(いずれは)1600万円に速く到達する(はずだ)ということを示している)
彼は私が作成したグラフと彼のものとの違いをいつものように紳士的な抑制のきいた口調でこのように表現した。
などなどだ。
ブラッドの記事を読んだ人は、あのグラフを作成するのに私がどんな不正を用いたのだろうと不思議に思うかもしれない。ここでその秘密を皆さんにお教えしようと思う。それはシカゴ大学流の数学的技法でシカゴ大学ではこのように呼ばれている。
私は所得の対数とビジネスのしやすさ指数とをグラフにプロットしたのだった。
ではこれがどれぐらい悪いことなのかを見ていこう。成長理論は当然経済成長を取り扱っているので対数なしではとても大変になる。成長率を考えるに際して、所得の対数で回帰分析を行うことが作為のある右翼のトリックだというのであれば成長理論と実証経済学の99%を捨て去らなければならないのではないかと憂慮している。
先程のグラフをもう一度見て欲しい。この作為ある技法(対数)が教えられている初年度の計量経済学の授業を受けている学生を連れてきて私のグラフと彼のグラフのどちらが適切か、そして水準でのフィットと対数でのフィットのどちらが適切かを教材にしてみてもいいだろう。
(その記事は見つけるのが難しいというわけではない。私はウォールストリートジャーナルの記事の中にリンクを張っておいた。もし「ジョン・コクランは内生性に関して何か云わなければならないことがあるのではないか」と疑問に思った人がいるのであれば(当然の疑問で、私はすべての授業毎に2回ぐらい尋ねている)、メールをして欲しい)。
その記事では良い制度が経済成長にどれぐらい重要なのかを調べた多くの研究を紹介していた。
だが以下のように考えてみて欲しい。北朝鮮や東ドイツはまず貧しくなってから悪い制度を持つに至ったのか?イギリスやアメリカはまず豊かになってから法の支配や財産権の保障などを構築していったのか?逆因果がすべてという説明は本当に妥当に思えるだろうか?思いつく限りのすべての歴史的事例がその逆を示していることに気が付くだろう。
内生性は経済学ではよく問題になる。だが彼がしているような見当はずれの主張(この相関は明確に逆の方向性がすべて)は(あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて考えたこともなかったのだが)どう見ても成立していないように思われる。
大学が「質の管理」をしなければならないというのは言論の自由が制限されつつある現在では興味深い考えだ。Brad、君が望んでいるものがどんな結果を招くかをよく考えてみた方がいい。君のような人間の倫理を管理することが真っ先に挙げられるかもしれない。
まだ誰か関心がある人がいるのであれば私のウェブサイトにデータとプログラムをいつでもダウンロードできるようにしてある。このようなことが論争になるとは思ってもいなかったのできちんと整理されてはいない。だが少なくとも私がどのような手続きをしたのかは記述されている。
他の多くの記事で記した規制の問題は、この理由だけを取ってみてもこの指数が扱っている範囲を大きく超えている。
更新3:自明なので説明する必要もないと思っていたことに説明がまた必要なようだ(これで3度目だ)。数人のコメンテーターがこの指数をどこまで拡大できるのかに疑問を呈している。あるポイント以上からは制度が完全になるのでその改善からは新たな所得は生まれないだろう。そのポイントとはどれぐらいか?90?100?110?それは分からない。だが局所微分をしてみてもそれでも十分に高い。このラインを100まで延長できないと考えたとしても、82から83への改善はそれでも非常に大きな効果を持つ。