2016年5月23日月曜日

Minnesota Mythbusting

Matt Palumbo

反米団体US Uncutの設立者Carl Gibsonは経済に関する誤情報を発信することで知られている。

このリベラル派の団体のフェイスブックのページ上で、スイスの最低賃金は年に500万円でCEOの給与に制限を加えているのでとても平等な国だと嘘をついた(実際のところはスイスには最低賃金も給与に対する制限も存在しないというのに)。さらに経済危機後のアイスランドの回復は政府が銀行の救済を拒絶したおかげだとも主張した(IMFから受け取った4600億円の救済金をカウントしないのであれば)。アメリカの政府債務を減少させるにはノルウェーの例に従うこと(石油からの利益に78%も課税しており政府債務を負ったことがない)だとも主張した(彼は一度も「ノルウェーの政府債務」とグーグルで検索したことがないのではないかと疑っている)。

彼のドンキホーテ的な事実との戦いは同類のHuffington Postでも続けられた。今回は彼は「トリクルダウン経済学」という現実には存在しない経済学を反証したと高らかに宣言した。彼の言葉によると、「トリクルダウン経済学が公式に反証された。ミネソタ州がそれを決定的に証明した」。

ミネソタ州が行ったこととはどういうことだろうか?最高所得税率を90%にまで引き上げたのだろうか?法人税を増税したのだろうか?最低賃金を時給1800円までに引き上げたのだろうか?違う。だが2011年に就任したMark Daytonの指揮の下で、ミネソタは所得1500万円以上の個人に対して州の所得税の税率を途方もなく大きい2%ポイントも引き上げた。

Gibsonの語るところでは、以前の保守派の州知事の下ではすべてが間違った方向に進んでいたのだそうだ。「Tim Pawlentyが知事だった2003年から2010年の間には、雇用は僅か6200人しか増えなかった。2011年から2015年の間には17万2000人の雇用が新たに生まれた。Pawlentyの2期分よりもDaytonの1期分の方が多い」。

世界的な不況がPawlentyの任期の最後を襲ったということに言及していないことには目を瞑るとしても、雇用の増加が彼の後継者の下での方が大きいというのは事実だ。Pawlentyの任期の最初の4年間でミネソタの雇用は9万9100人増加した。18万2000人よりは少ないだろう。だがこれは本当に進歩主義的な政策のおかげなのか?それとも単に経済の自然回復の結果なのか?

Gibsonはこれを現州知事の3つの政策のおかげだとしている。すなわち最低賃金の引き上げ、富裕層への増税、女性に対する(男性と比較しての)対等な賃金の保障だ。だがこれらの変更はいずれも極めて小さなものでどれ一つとってもミネソタの雇用の増加し始めた時期とは対応していない。これらが原因ではなかったことを示唆している。

現州知事の2018年までに最低賃金を950円までに引き上げるという計画を見てみよう。彼のプランの下では最低賃金は徐々に引き上げられる。

2014年の8月以前にはミネソタは利益が6250万円までの企業には525円にそれ以上の企業には615円に最低賃金を設定していた。新しい法律の下ではこの基準は5000万円に変更される。この基準を上回った企業に対しては最低賃金は615円から800円にまで引き上げられる予定になっている。これを下回る企業は525円から650円に引き上げられる予定だ。

連邦政府の最低賃金(ほぼすべての時間給労働者に適用される)がすでに時給725円なので、利益が5000万円を超えている企業で時給が800円を下回っている労働者(いるのかは知らないが)に対してのみミネソタの75円の最低賃金の引き上げは適用される予定だ。ラディカルな変更ではないしその影響も生の雇用データを見ていたのでは気が付きにくいだろう。さらに最低賃金の引き上げは2014年の夏に初めて実施されたもので、ミネソタの雇用の回復はそのほぼ4年前からすでに始まっていた。

同様に、州と契約を交わしている事業を行う企業の女性従業員に対してすでに存在している反差別法に従っていることを認証することによって対等な給与を保証する法律(すべての企業ではない)は2014年の5月までは実効力を持っていない。

最高税率を2%引き上げた増税の方はどうだっただろうか?これも2013年までは実行に移されておらず、州の税収を1100億円増加させたに過ぎない(もしくはミネソタ州のGDPの0.35%)。

ようするにGibsonが称賛した政策はすべてミネソタが印象的な雇用の回復を見せた遥か後に実行に移されている。そしてそもそもが少しも大規模なものではなかった。

増税の恩恵として、「ミネソタの最高所得税率は4番目の高さであるにも関わらず、その失業率は3.6%と5番目に低いものとなっている」と彼は語った。だがこれは典型的な統計による嘘だ。本当にこの変数の間に相関があると主張したいのであれば、もっと多くのデータを必要とするし第三の変数の存在も考慮しなければならない(統計による嘘と言えば、とはいってもこれは嘘ではないが、中西部の州を2013年から2014年までの雇用の増加率で並べてみるとミネソタは圧倒的最下位だ)。

それに加えて、国際的な研究は、(工業国では)最高税率の高さと失業率の高さとが関連していることを発見している(リンクは省略)。これはこの税率の高さが雇用の増加を減少させていることを示唆している。

最低賃金の引き上げと増税が良い経済的結果を生み出すという考えは実証的証拠によっては支持されていない。州の最高税率の引き下げがすべての所得階層の所得の増加率の上昇と関連していた(さらに、その逆に最高税率の引き上げはすべての所得階層の所得の増加率の低下と関連していた)ことを発見した研究のことを考えてみよう(リンクは省略)。この結果はGibsonの現実の描き方に対してほとんど正反対を突き付けている。

最低賃金に関しては、実証結果は分かれている。だがカリフォルニア大学のJeffrey Clemensによる最近の研究は深刻な悪影響を示している。彼は全米で何千人の実際の人間を追跡した。そして最低賃金を引き上げた州の低技能労働者の経過と引き上げなかった州の低技能労働者の経過とを比較した。Clemensは彼らの発見が見せ掛けの相関ではなく因果関係であることを立証するために幾つかの変数で調整を行った。結果はどうだったか?最低賃金の引き上げは「低技能労働者の雇用と所得の増加に対して有意に負の影響を与えていた」だった。

同様に、経済的自由と所得格差との関係を調べた研究は「州の最低賃金の引き下げと税負担の引き下げが所得が最も低い人々の所得の水準、増加率、所得シェアを上昇させるのに最も効果的だった」ことを発見している(リンクは省略)。

このようによく制御された研究の方が彼が挙げたような狭い範囲の彼自身の見解の反映よりも有益なのは自明だ。この期間にDaytonがマイナーな進歩主義的政策を通過させたのは事実だが、それは因果関係を立証したことをまったく意味しない。

Gibsonとその同類たちは政府による介入が経済成長には不可欠だと人々に信じさせたがっているが、セントルイス連銀の論文は(経済成長と相関していることが知られている他の変数を調整した後では)あまり介入しない州の方がそうでない州よりも雇用の増加率が高かったことを発見している(リンクは省略)。他の論文もあまり介入をしない州の方が失業率が低く労働参加率も高いことを示している(リンクは省略)。

Gibsonとは異なり、我々はこの証拠が進歩主義者のイデオロギーをすべて決定的に反証したなどと大胆に主張するつもりはない。だが自由市場が機能するという説得力のある証拠があり、それは一つの州から都合よく抜き取った少しばかりのデータによって反証することは出来ないと主張するだろう。

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