2012年8月5日日曜日

ヨーロッパのPISAスコアはアメリカより悪かった?

(筆者はスウェーデン人の経済学者)

1. Correcting for the demography:

欧州のほとんどの国で、第3世界からの移民の子の得点はネイティブの子よりも低い。理由は正確にはわからない。だが、学校の質自体が悪いということはない。移民は生徒一人あたりでみて、ネイティブと同水準かそれ以上の予算を受け取っている。

だから、移民とネイティブの混ざった学校の成績が、二、三十年前にはネイティブだけだった学校に成績で劣るということだけをもってスウェーデンの学校が悪くなったとはいえない。

メディアが伝えるPISAにまつわる最大の神話は、アメリカの学校教育が悪いというものだ。

リベラル派はこの神話を好む。なぜなら、教育予算を増やすよい口実になるからだ。
同時に、ヨーロッパ人はアメリカ人よりなんて賢いんだろうと悦に入れるからだ。

保守派もこの神話を好む。政府の教育方針を非難できるからだ。
さらに、中国の競争力について民衆を怖がらせることができる。

アジアの生徒がアメリカの生徒より成績がよかったことをもって、彼等の教育システムが優れているにちがいないと考える人が多い。これは一般大衆の常識に訴えかける力を持っている。アジア系アメリカ人のほうが、アジアの子供より成績が上回っているというのに!

だから、おそらくアジアの学校について特に特別なことはないのだと思う。
それより、彼等の文化や自己規律の精神等に焦点を充てたほうがいい。

PISAには、読解、数学、科学の三つのパートがある。単純化のために、ここでは三つのテストの平均値を使う。厳密には正しい方法とはいえないが、結果にそう大きな影響を与えない(理由は一つのパートでよい成績だった場合、その他のパートでもよい成績である傾向があるから)。

りんごとりんごの比較(慣用語)をするためには少なくとも人口構成や文化的背景を考慮にいれなくてはいけない。実際、フィンランドのスコアは全ヨーロッパで一番いいが、第一世代、第二世代の移民の生徒はネイティブのスウェーデン人を上回ることはないし、ネイティブのフィンランド人より50ポイント得点が低い。

PISAにおいて、50ポイントは大きい。比較のために、50ポイントはスウェーデンとトルコの差よりも大きい。

問題は、それぞれの国の移民のシェアが異なることだ。PISAのデータ内ではスウェーデンの移民は17%を占めるが、フィンランドは4%だ。

だからヨーロッパ各国を比較する時は、サンプルから移民の背景を持つ生徒を取り除くことから始める。ヨーロッパの場合にはこれは簡単だ。

アメリカの場合は、99%の人口が他国から来ている。だからアメリカの学校システムの効果だけを取り出したいなら、彼等の母国とその国から来た移民の集団を比べなければならない。祖先がヨーロッパから来た大半のアメリカ人にとっては、彼等をヨーロッパと比べることが出来る。インド等に関しては、彼等はインドの最も優れた子供らが移住してきているのでこの方法は適当ではない。

以前述べたように、集団レベルで、ヨーロッパからの移民にセレクション・バイアスがあてはまらないと考える強い理由がある。ヨーロッパを去った移民は残った集団に比べて教育水準が高かったとはいえない。移民は平均より貧しかっただろう。

結果は私にとっては驚くべきものだった。アメリカの生徒は28カ国中、7番目でヨーロッパの平均よりもはるかによかった。アメリカの平均スコアは524で、ヨーロッパは506だった。



(グラフに注意 ドイツ、ベルギー、アメリカは同点。この辺りの順位の得点差は非常に小さくほとんど誤差でしかない。従って順位を見ることにほとんど意味が無い。重要なのは得点の方だ)

2. Policy-Implications

3. Immigrant PISA scores compared to natives

(注 移民の生徒とネイティブの生徒のPISAスコアの差の平均値)





オーストラリアは差が負の唯一の国だ。これはオーストラリアの移民の方がネイティブより得点がいいことを意味する。カナダも同様だ。オーストラリア-カナダの移民政策(高い技能を持った移民に限定する)はこの点では効果を発揮している。

残りのヨーロッパ諸国にとっては、パターンは大体一緒だ。メディアが、移民の子供の教育水準が悪いのは他の欧州諸国に比べてスウェーデンの政策だけが悪いのだという主張を取り上げる時には、このことは心に留めておく必要がある

参考
・The amazing truth about PISA scores: USA beats Western Europe,ties with Asia
http://super-economy.blogspot.jp/2010/12/amazing-truth-about-pisa-scores-usa.html

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