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Are US CEOs Paid More?New International Evidence
by Nuno Fernandes Miguel A. Ferreira Pedro Matos Kevin J. Murphy
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役員報酬の研究で定型化された事実として最も広範に受け入れられているものの一つにアメリカのCEOは他国のCEOより多く報酬を受け取っているというものがある。Towers Perrin (2006)によるとアメリカのCEOは他国のCEOの2倍を報酬として受け取っている。このことはアメリカのCEOの給与が超過していることの根拠として解釈される。
我々の研究は最近拡大された情報開示のルールによるデータを用いて14ヶ国のCEOの給与の国際的比較を行なっている。サンプルは1648のアメリカの企業と1615の他国の企業でそれぞれの国の株式市場の時価総額の90%を占めている。
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通説は間違っている。我々はアメリカの報酬プレミアムは経済的に穏当であることを発見した。2006のアメリカのCEOの給与は外国のCEOより平均で26%多いが学会の研究で主張されていた100%や200%よりもはるかに小さい。この結論を得るに至って我々は通常の企業特有の属性(産業分類、企業の規模、株価のボラティリティとパフォーマンス、成長機会など)だけでなくさらに2つの要素(株式の所有形態、企業役員構成)を制御している。他国の企業と比較してアメリカの企業は機関投資家が株式を保有する比率が高く多くの独立した取締役会を設置している。これらの要素は高い給与と株式付与型報酬の増加と関連している。加えてアメリカ企業の株式保有はインサイダー(同族株主による株式の大量保有のような)によって所有されている傾向が小さい。この要素は給与の低さと株式付与型報酬の比率の低さと関連している。機関投資家は給与と株式パフォーマンスを結びつける監視メカニズムを必要とするが株式の大量保有者を抱える企業はインセンティブ型給与に頼る必要が小さい。さらに内部者の株式保有比率に応じてその執行役は主に給与からではなく自身の持分から報酬を受け取り経営の動機とすることが出来る。CEOの属性(年齢、任期、学歴、経験など)も考慮してみたがこれらは国際的な給与の差をほとんど説明できなかった。
さらにアメリカのCEOはストックとオプションの形で報酬を得る割合が高いことも発見した。リスク回避的なCEOはリスクの見返りにプレミアムを要求する。アメリカの26%のプレミアムはリスク回避的かつ非リスク分散型のポートフォリオを持つCEOとして適切な推定ではない。給与体系のリスクをヘッジ出来ずそして直接的、間接的にリスク分散型でないポートフォリオを保有することを強制させられるからだ。そこでリスク調整後のCEOの給与を2通りの方法で推定した。リスク調整によりプレミアムは減少したがすべて消滅したわけではない。さらにこれに先ほどの所有形態と企業役員構成を制御するとプレミアムは消滅した。
最後に機関投資家と企業役員構成が何らかの除外変数の代理である可能性を考慮した。結果は固定効果を加えても頑健だった。企業の属性の時間変化がCEOの給与と企業のガバナンスの関係を変化させている場合には固定効果モデルではこの問題を完全には修正できないという問題が残った。
全体としてここでの結果はアメリカのCEOの給与が他国を超過しているという研究とは整合的でない。第一にアメリカの給与プレミアムは産業、所有形態、企業役員構成、CEOの属性を制御した後では穏当であることを示した。第二に給与の構成の違いを考慮しないことは誤った結論を導くことを示した。実際に、先程述べた給与水準と関連がある属性は株式付与型報酬とも関連する属性でもある。第三にCEOの給与水準と株式付与型報酬は優れた監視と企業統治の代理指標として頻繁に用いられる機関投資家による株式保有と独立取締役会と正の相関を示す。仮にアメリカの企業統治が悪ければアメリカのCEOの給与は安全な基本給の割合が高く業績連動型の割合が低いと予想できるだろう。第四にCEOの給与プレミアムは国際的に多様化した取締役会や機関投資家によって要請された報酬体系の違いを反映していることを示唆している。外国とアメリカの機関投資家による株式の保有は彼らが投資するアメリカ国外の企業の株式付与型報酬の使用やCEOの給与水準と結びついていることを発見した。最後にCEOの給与水準の国際間の収束は企業の所有形態の収束と資本市場の国際化によって説明できるように思われる。
1.1 The US pay premium: What we thought we knew
1930年代からアメリカが詳細な情報公開をしていたのに対してその他の国の大部分はよくて経営陣の現金報酬の総額を報告していたに過ぎない。個別のデータもなければ株式やオプションに関する情報も僅かしかなかった。
情報公開に関する状況は過去10年で変化した。経営陣の給与の情報公開は2000にアイルランドと南アフリカで導入され2004にオーストラリアで導入された。2003の5月にEU委員会はEU内の企業に詳細な情報を公開するように推奨しEU加盟国はそれを承認した。2006までには6つのEU加盟国(ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン)は情報公開を義務付けた。EU域内ではないもののノルウェーもEU型の情報公開を受け入れスイスも同様の動きを見せた。
1.2 Data sources
完全な報酬のデータがない企業とWorldscopeデータベースと照合することが出来ない企業はサンプルから除いた。アメリカの企業に対してCUSIPコードを非アメリカの企業に対してSEDOLまたはISINコードを用いてサンプルをWorldscopeのデータと照合して最後に企業名を手作業で確認した。最後にイギリスの小企業を過剰にサンプリングすることの影響を低下させるため分2005の売上が100億円を超えた企業に分析を制限した。表1に示すように最終的なサンプルはアメリカのCEOが1648人、アメリカ以外のCEOが1615人となった。サンプルはWorldscopeがカバーするアメリカ企業の時価総額の90%、アメリカ以外の企業の時価総額の83%を占める。
2. The Level and Structure of Pay for US and Non-US CEOs
2.1 The US pay premium
この結果は産業、企業規模を制御していない。この2つに加えて4種の制御変数を加える。企業の所有形態、企業役員構成、CEOの属性、さらに個々の企業の特徴を示す変数(レバレッジ比、Tobin’s Q、株式リターンのボラティリティ)だ。
表3に以下の回帰の結果を示す。
Log (Total Payi) = α + β1 (US dummy) + β2 (Firm characteristicsi)
+ β3 (Industry dummies) + εi (1)
注7 CEOの給与の分布が歪んでいる可能性を考慮している。さらに外れ値の存在に対して頑健な中央値を用いても結果は影響を受けなかった。
表3の行1に産業と前年の売上だけを制御した式(1)の推定結果を示す。CEOの給与と企業規模には理論上では強い関連がある。Rosen (1981)とRosen (1982)は経営能力の限界生産物は企業規模と共に上昇すると議論した。最も優秀な経営者が最も大きい企業に務めるのが最適になるようにだ。均衡賃金は能力に対して凸になる。Gabaix and Landier (2008)はRosenのモデルを拡張してCEOの均衡賃金が企業規模だけでなく関連する市場に存在するすべての企業の規模の分布に影響を受けることを示した。平均的な企業が大きくなると優秀な経営者を獲得する競争が発生し報酬を引き上げるためだ。
CEOの給与はレバレッジ、Tobin’s Q、株式リターンと正の相関を株式リターンのボラティリティと負の相関を示した。US dummyの係数は0.629で給与プレミアムは88%であったことを示す。従って給与プレミアムは資本構成の違い、成長機会、業績、ボラティリティによっては説明できないことを示唆している。
表3の列3に企業の所有形態を制御した結果を示す。既に述べたようにアメリカ以外の企業では企業内部者が株式の相当部分を保有している。同族経営の形態や政府支配の企業の割合が相対的に高いためだ。2つの理由からCEOの給与と内部保有には負の関係があると予想している。第一に内部保有者とCEOが重複する場合では執行役は給与からではなく自身の持分から報酬を受け取り経営の動機とすることが出来る。第二に内部保有者が大口株主である場合では彼らはインセンティブ型の報酬がなくても経営者の活動を監視し指揮することが出来る。
表3の列3に示すようにCEOの給与は内部保有と負の相関を示し機関投資家の保有と正の相関を示す。内部保有、機関投資家による保有が10%上昇するとCEOの給与が8%下落、4%上昇する。列5と列6の結果と合わせて株式付与型報酬の比率は内部保有が増えると減少し機関投資家による保有が増えると増える。この結果は内部保有と株式付与型報酬に代替関係があり機関投資家は業績に対して高い報酬を払うという解釈と整合的だ。所有形態を制御するとUS dummyの係数は0.268にまで減少する。これは給与プレミアムは88%から31%にまで減少することを意味している。
内部保有と機関投資家の保有が給与水準に対して決定要因となっているが列2と列3の給与プレミアムの減少の大部分は機関投資家の保有で説明できることを示唆している。列2に内部保有の変数だけを加えるとUS dummyの係数は0.629から0.495に減少するが(給与プレミアムは88%から64%に減少)機関投資家の保有だけを加えた場合では係数は0.629から0.330に減少する(給与プレミアムは88%から39%に減少)。
表3の列4に企業役員構成の変数を加える。この変数の理論上の効果ははっきりしない。列4に示すようにCEOの給与は独立取締役会の比率と役員人数とに正の相関がある。企業規模と所有形態に加えて企業役員構成を制御するとUS dummyの係数は0.230に減少し給与プレミアムは26%になった。企業役員構成だけを加えた場合には給与プレミアムは88%から66%になった。
2.2 The US equity pay premium
CEOの給与水準の決定要因の一つとしてリスクが有る。以前に述べたようにCEOはリスクのある報酬体系に対してそれに応じたプレミアムを求める。表3の列5と列6には以下の回帰式の2006の結果を示してある。
Equity Payi/Total Payi = α + β1 (US dummy) + β2 (Firm characteristicsi) + β3 (Industry dummies) + εi (2)
“Equity Pay”は株とオプションの付与日での価値を示し企業属性は列4と同じだ。
表3の列5には産業と企業規模だけを制御した結果を示してある。ここでの株式給与プレミアム(*先程までと違うので注意)は22%だ。これは表1の17%より少し大きい。そこでは株式付与型報酬はアメリカ企業とそれ以外で全体の39%と22%を占めていた。だが表3の列6にあるように企業規模、所有形態、企業役員構成を制御した後では株式給与プレミアムは有意でなくなり6%にまで減少する。さらに列6が示すように高い給与と関連する企業属性は株式付与型報酬と関連する属性でもある。CEOの給与水準とインセンティブ型報酬は共に機関投資家の保有さらに独立取締役会と正の相関を示し内部保有と負の相関を示す。
表3の列7と列8には給与を株式の部分とストック・オプションの部分に分解した結果を示している。株式の使用に関しては有意な差がなくストック・オプションに関しては有意な差があった。
2.3 Risk-adjusted CEO pay
企業規模、所有形態、企業役員構成を制御した後では給与プレミアムはかなり縮小するとはいえそれでもまだプレミアムは存在している。リスク回避的なCEOはリスク・プレミアムを要求するので給与プレミアムはこの反映である可能性がある。実際、Conyon, et al. (2011)はアメリカとイギリスの給与プレミアムはリスクを調整すると大部分消滅することを示している。
このことに関しては広範な合意があるもののリスク・プレミアムを計測する方法にはそれがない。Lambert, Larcker and Verrecchia (1991)、Hall and Murphy (2002)は方法の一例を提案した。この方法を我々のデータに適用することによりリスク調整後のCEOの給与を得ることが出来る。
その他の実験的方法としてConyon, et al. (2011)は非分散型ポートフォリオを直接的、間接的に保有することを強制されたCEOが要求するであろうリスク・プレミアムを計測している。リスク・プレミアムはリスクのない現金報酬と制約のないポートフォリオを保有することとの差として定義される。リスク調整済み給与は総報酬から先に求めたリスク・プレミアムを引いて得られる。
これら2つの方法の差は基本給を受け取りその他の形態の報酬を受け取らないCEOに顕著に表れる。Hall and Murphy (2002)の方法ではCEOのリスク調整済み給与は単に(未調整の)基本給だ。Conyon, et al. (2011)の方法ではCEOのリスク調整済み給与は基本給から非分散型ポートフォリオを保有することによるリスク・プレミアムを引いたものだ。
これら2つの方法のどちらが適切なのかはCEOがどのように会社の株式とオプションを取得するかに依存する。雇用の条件としてCEOが会社の株式を購入するのに自己資金を要求される場合を想定する。この場合には会社は競争的給与体系に加えてリスク・プレミアムを払う必要があるだろう。その他の極端な場合としてCEOのオプション残高が他の部分の報酬の削減を伴わない寛大な賞与の結果であると想定する。この場合には非分散型ポートフォリオを保有するからといってCEOがリスク・プレミアムを得られると考える理由はない。
2.3.1 Hall-Murphy risk adjustment
表5のパネルAに結果を示す。企業規模、所有形態、企業役員構成を制御した後で給与プレミアムは27%から有意でない14%(相対的リスク回避度 rra = 2)、10%(相対的リスク回避度 rra = 3)に低下する。表5の列3と列5に示すようにリスク・プレミアムを調整して所有形態、企業役員構成を制御しない場合では55%と46%と給与プレミアムはかなり残る。
図2のパネルAにHall and Murphy (2002)の方法に従った仮想的なCEOの給与の分布を示す。アメリカのCEOの給与は2.1億円でその他の国の平均である1.46億円よりも高い。図2のパネルBに企業規模、所有形態、企業役員構成を制御した後のリスク調整済みの給与水準を示す。アメリカのCEOの給与水準はイギリス、オーストラリアよりも有意に低くカナダ、イタリア、スイスと有意な差がなかった。
2.3.2 Conyon-Core-Guay risk adjustment
給与プレミアムは列2で30%、列4と列6で有意でない18%、0%だった。
3. The Internationalization (and Americanization) of CEO Pay
4. Time Trends in the US CEO Pay Premium, 2003 –2008
この章ではアメリカとその他の国の2003から2008に掛けての給与の収束に関して調べる。表8のパネルAに産業と企業規模だけを制御した年度毎のプレミアムを示す。2006の給与プレミアムは79%で表3の列1と同じだ。給与プレミアムは2003から2008に掛けて減少していて特に2005以降の減少が顕著だった。
表8のパネルBに企業規模、所有形態、企業役員構成を制御した後での年度毎の結果を示す。2006の給与プレミアムは26%で表3の列4と同一だ。結果はすべての年度でパネルAよりも低いのでこれまでの結果を確認できた。加えて2007、2008では給与プレミアムは有意でなくなる(2%と14%)。これは2006以降に給与水準に有意な差がなかったことを示している。同様に2006と2007では株式付与型報酬の比率に関して有意な差がなくなっていた。これらはCEOの給与水準が収束したことを示す。
CEOの給与の決定要因を分析した結果、機関投資家の保有が収束の要因であるように思われる。他の国の機関投資家の保有比率はこの期間に18%から34%に上昇した。外国人投資家の保有がこの上昇の主な要因で6%から15%以上に上昇した。その他の企業属性や取締役会の属性は目立った変化を見せなかった。給与水準の2003以降の収束は株式の所有形態の収束と資本市場の国際化と関連しているように思われる。
5. Ownership, Governance, and CEO Pay
これまでの結果は所有形態、企業統治変数が何らかの代理変数であったり給与と関連がある除外変数と相関している可能性を排除できない。
5.1 Why Shareholder-Centric Governance Might Lead to Higher CEO Pay
機関投資家と独立した取締役会は株主による強固な監視と良い企業統治の代理変数として用いられてきた。この株主寄りの企業統治が給与の高さと関連するのは直感に反するかもしれないがこれは合理的であり効率的でもある。
さらにAggarwal, et al. (2011)は機関投資家の保有と株主寄りの企業統治の属性の間に正の関連があることを示し機関投資家の保有の変化はその後の企業統治の変化をもたらすと結論した。これらの結果は機関投資家の保有比率が高い企業のCEOは業績を挙げることが求められ“quiet life”を送ることは少なくなることを示す。従って機関投資家の保有はそうでない場合と比べCEOに何らかの行動を取ることを迫る。CEOは自然とこの行動に対する見返りとして報酬を求める。
5.2 Do Omitted Variables Explain Both Pay and Shareholder-Centric Governance?
5.2.1 Shareholder-Centric Governance as a Proxy for US Firms
表1に示すようにアメリカとその他の国で所有形態、企業統治に関して有意な差がある。従ってこれまでの結果はこれらの変数とUS dummy変数との間の高い相関を反映していてこれらの変数とCEOの給与との間の相関を示しているのではない可能性がある。
5.2.2 Panel regressions with firm fixed effects
表3、5、6、7の結果はこれまでの仮説と整合的であるがこの結果は何らかの除外変数の存在とも整合的だ。それらの特徴が企業、産業、国に固有のものであり時間によって変化しない範囲で固定効果を用いてそれを制御することが出来る。
5.2.3 CEO Pay and the Rise of Professional Executives
時間可変の除外変数の候補として“professional executives”のその他の国での重要性の高まりが挙げられる。
1990年代の初期はアメリカで複雑な経営形態が発生し始めてオーナー経営者が経営する同族企業に取って代わることが多々あった時期だった。経営の専門家が企業の資産を管理するために雇われた。企業の所有者と雇われた経営者の間の利害の不一致が“agency problem”だ。Murphy (2012)が調べたようにこの問題を緩和しようと様々な手段が講じられた。高い報酬はアメリカの優秀な学生を引き寄せMBAの魅力を高めることになった。報酬に占める株式の相対的比重の上昇は株主活動の活発化と機関投資家の重要性が増したことによりもたらされた。
その他の国の企業は創業者一族による支配が続いていたもののここにも経営の専門化の波は押し寄せていた。表2のパネルDは2006にその他の国の企業のCEOは外部から雇われる比率がアメリカの比率よりも高かったことを示す。加えて企業の所有形態も機関投資家の占める比率が増していった。機関投資家の保有比率と経営の専門化の時期が重なっているのでこの要因が除外変数の潜在的候補になり得る。
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