John Lott
バラク・オバマは涙を浮かべながら新たな銃規制に対する反対派の意見に一切耳を傾けないという決意を明らかにした。Washington Postの見出しは「President Obama’s amazingly emotional speech on gun control」だった。だが同時に、彼は矢継ぎ早に多くの数字を取り上げ人々の心に訴えようとした。
1.「アメリカはこれほどの頻度で銃乱射が起こっている地球上で唯一の先進国だ。他の国ではこのようなことは起こっていない。比較になる国さえない」
昨年、フランスとアメリカで4件の銃乱射が起こった。2015年のフランスの銃乱射による負傷者(死亡と怪我人)は「オバマ大統領の全任期期間中の合計」よりもはるかに多かった(532人と396人)。そしてこれはアメリカの人口がフランスの人口よりも「5倍以上」多いにも関わらずこのようになっている。
これは昨年のフランスが特に大変な年だったという訳ではない。アメリカの銃乱射の頻度を遥かに下回るという主張からはかけ離れて、他のヨーロッパの国の方が実際は銃乱射が起こっている。2009年から2015年の12月までの期間で、「11の」ヨーロッパの国の方がアメリカよりも銃乱射の頻度が多かった。それらの国々にはスイス、ノルウェー、ベルギー、チェコなどが含まれる。
オバマの主張は明白に誤りだ。
2.「5年前の今週、議会のメンバーがアリゾナ州のTucsonで撃たれた。銃乱射に応対して私が国民の前で話すのは初めてではない。最後でもないかもしれない。常識的な銃規制により、銃乱射の頻度を大きく減らすことができる。何よりも初めに、銃を販売している人には全員にライセンスの所持と身元調査の実施、それに従わなければ刑事訴追の対象としなければならない」
彼は、私的な銃の手渡しにまで身元調査を拡大することによって銃乱射を減らすことができると主張している。だが彼は証拠を一切提示しない。オバマ大統領の任期に起こった銃乱射のどれ一つもこれによって防がれなかっただろう。
よく見逃されている事実は最近起こった3つの事件は、カリフォルニア、コロラド、オレゴン、すでにそのような法律を実施している州で起こっている。
同じことがフランス、ベルギー、ノルウェー、ドイツ、そして他のヨーロッパ諸国で起こった銃乱射に言えるだろう。
2000年から2015年の期間にアメリカで起こった事件を調べると、私的な銃の取引に対する追加の身元調査を法律で定めた州ではそうでない州と比較して銃乱射による殺人(80%)と負傷(101%)が統計的に有意に増加している。
3.「私は憲法修正第2条を支持している」
それを否定する証拠がある。「銃の所有が認められるべきだとは思わない」、これは、彼が1996年にシカゴ大学で私と同僚だった時に私に向かって言ったことだ。彼は他にも似たような発言を公式の場で行っている。2008年の大統領選挙の時でさえも、彼はワシントン州の銃規制を支持している。
4.「銃規制反対派の主張していることとはまったく異なり、これは強制押収への第一歩ではない」
だが多くのアメリカ人はこのシナリオをすでに見ている。そしてこの懸念が完全には的外れではないことを知っている。カリフォルニア、ニューヨーク、シカゴは最早合法の所有者ではなくなった人を探し出すのに登録者リストをすでに用いている。
2004年以降、FBIには24時間以内に受け取られた銃の販売の記録は抹消するように求められてきた。だが連邦政府の認可を受けている販売業者には顧客に対して行われる身元調査の記録を残すことが求められている。現在、議会はこの情報を連邦政府が収集して中央データベース化することを禁じている。だが懸念がある。ヒラリー・クリントンは連邦政府の認可を受けた業者に記録のコピーを渡すように要求し連邦政府に引き渡すかもしれない。これは全米規模の登録者リストへの第一歩となるだろう。
5.「一部の銃の販売業者が別のルールに従って行動していることが問題だ。凶悪犯がインターネット上で身元調査などなしに銃を購入することができる。最近の研究によると、あるウェブサイトで銃を購入しようとしていた30人の1人ぐらいに犯罪歴があったとしている。30人に1人だ。ここでの犯罪歴とは重大犯罪のことを言っている。幾つも再犯歴がある人たちがいとも簡単に銃を手にしてしまうのだ」
オバマ大統領の30人に1人の発言は事実を取り違えている。Michael BloombergのEverytownという団体は銃を販売するふりをしたサイトを立ち上げたが、実際には銃は販売されなかった。犯罪歴の調査とはそのサイトを訪問した人の名前が犯罪歴のある人の名前と一致するかどうか調べただけの粗末なものだ。あまりにも偽陽性の可能性が大きすぎる。私には犯罪歴がないかもしれない。だが犯罪歴を持った似た名前の他人がほぼ確実にいるだろう。
この主張もMichael Bloombergが出資した他の研究から生じている。1996年に、議会はCDCに銃規制のロビー活動に連邦政府の資金を用いることをやめさせる法案を可決した。Bloombergはメディカル・ジャーナルでの銃犯罪の研究は1996年から2010年の間に60%減少したと主張した。だが彼が見ているものはその他すべての研究に対する相対的な銃犯罪の研究だ。実際、銃犯罪の研究の絶対数はその期間に増加している。銃犯罪の研究は1996年の69から2013年には121に増加した。単に他の研究がより速く増加しただけに過ぎない。
7.「コネチカット州がこれらの法案を通過させて以降、銃による死亡は40%減少した。40%もだ」
私的な銃の受け渡しに身辺調査を義務付けた州は18ある。Bloombergが出資した研究は自分たちの都合に最も適した州を単に選んだに過ぎない。だが行われた操作はそれで終わりではない。40%という数字を得るために、1995年から2005年という期間が最も都合がよいので選ばれた。その期間にたった1年追加するだけでオバマの主張は完全に崩れてしまう。コネチカット州の銃による死亡率は1995年から2006年だと16%にまで低下してしまう。1995年から2010年だと12.5%だ。一方で、アメリカと他の北東部の州では銃による死亡率が遥かに速く減少した。1995年から2006年の期間のアメリカと他の北東部の州の銃による死亡率は27%と22%減少した。1995年から2010年だと39%と31%減少している。コネチカット州の銃による死亡率は相対的にはむしろ増加しているとさえ言えるだろう。
8.「ミズーリ州が包括的な身辺調査や購入許可を求める法律を廃止して以降、銃による死亡率は全米平均よりも50%以上高くなった」
これも、またBloombergが出資した研究だ。ここでも、多くの州の中から都合のいい州が選ばれている。法律が変更されて以降、ミズーリ州の殺人率は確かに全米平均に比べて17%増加した。だが、殺人率はその前から急な上昇トレンドを見せていた。その変更の前の5年間で32%増加していた。だから私的な取引に対する身辺調査が終了してからは、殺人率の上昇は実際はスローダウンしている。
9.「銃犯罪を減らすための活動を行う権限が私の手の中にある」
彼の主張にも関わらず、法律はライセンスを取得しなければならないのは誰かをはっきりと明記している。それは「銃火器の取り扱いを生活の手段や利益を第一の目的として日常的な業務で取り扱えるだけの時間、注意、労力を保持する者。だがこの条項の中にはたまにしか販売しない者、交換の目的、個人的な収集の目的や趣味、個人的に収集した銃火器をすべてまたは一部販売する者は含まれてはならない」とされている。だが彼の掲げたルールは銃を1つしか販売しない者にも適用されるだろう。どうやってそれを条文の内容と和解させるのかはミステリーだ。多くの人は、またある程度の数の銃を販売する者であってさえも、専業の職業とは見做されないだろう。
10.「すべての犯罪を阻止できないこと、世界中の悪を阻止できないことは分かっている。だが一つの悪、一つの犯罪は阻止することはできる。Sandy Hookでの事件が起こった頃、中国でナイフによる大量刺殺事件が起こったことを覚えている人もいるかもしれない。ナイフで、中国のたくさんの子供たちが。だが彼らの多くは生き残った。何故ならば、彼は銃にアクセスすることができなかったからだ」
「被害者の多くは生き残った」と言ったようにその時は幸運なことだった。だが、中国ではナイフによる大量殺人事件がそれこそ大量に起こっている。
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