筆者はカナダのシンクタンク所属、カナダ在住。
The Medical Bankruptcy Myth
The Medical Bankruptcy Myth
by Brett J. Skinner
医療に関する議論は個人破産の2/3が医療費支払いか病気による所得の喪失が原因となっているという論争となった研究に影響を受けている。2005版のこの研究?によると個人破産の半分以上が医療費が原因になったという。これらの研究の筆者たち、David Himmelstein, Deborah Thorne, Elizabeth Warren, and Steffie Woolhandlerは医療破産の問題はカナダのような公的保険によって解決できるという。
この研究は政治家からの人気を集めたようだ。オバマ大統領は医療費支払いと個人破産との疑わしいつながりを例に挙げて自らの政策を正当化した。「医療費が30秒につき1件の割合で破産を引き起こしている」と彼は3月に宣言した。「今年の年末までに150万人が家を失うだろう」と彼は述べた。
7月28日の「医療費が個人破産を引き起こしているのか?」と題打たれた司法委員会の聴聞会で医療破産の研究が取り沙汰された。より最近ではUSA Today誌のコラムでNancy PelosiとSteny Hoyerが医療破産を例に挙げて政策を正当化した。
だが医療破産の研究は幾人かの研究者によって否定されている。これにはDavid Dranove and Michael MillensonとAparna Mathurらを含む。医療費の支払いにより多くのアメリカ人が破産に追い込まれているというのは作り話だ。
Dranove and Millensonは2005年版の医療破産の研究を批判的に分析した。彼等はHimmelsteinらの主張に仮に大幅に譲歩したとしても医療費支払いは17%に影響しているに過ぎないと結論した。彼等は司法省のものも含めた他の研究も調べ、破産申請者のうち医療費が破産の一因となったと答えた人でも医療費に関連する債務は全体の債務残高の12-13%を占めるに過ぎないことも発見した。
公的保険が破産を減少させるという考えに対してはアメリカとカナダの破産率を比較することが役に立つ。カナダは公的保険を持つ。Himmelsteinとその共著者のロジックに従えばカナダの破産率はアメリカよりも低いことが予想される。
比較可能な年度に限られるが個人破産率は実際はカナダの方が高い。国民全体に破産申請者が占める割合はアメリカで2006に0.20%、2007に0.27%だった。カナダでは2006、2007ともに0.30%だった。データは政府の公式統計からのもので両国共に同様の定義を用いており時期は2005のアメリカの破産法改正後、2008のリセッション前のものだ。
2005の改正はアメリカの破産法をカナダのものに非常に似通ったものにしたという点で注目に値する。2005の前まではアメリカで破産申請が極めて容易で国際間の比較はほとんど無意味となっていた。さらに2008には住宅ローンのデフォルトが起こった。住宅ローンのデフォルトは個人破産率と相関していると思われる。よってアメリカとカナダの2008の比較は医療に関連しない要因によって影響されているのであまり意味のないものとなる。
公的保険以外で破産率に影響する医療的、社会的、法的な違いを考慮する必要がある。両国共に失業保険がある。失業は両国ともほぼ同程度の頻度で起こっている。2007の失業率はカナダで5.3%、アメリカで4.6%だった。
カナダの人口の1/3しか処方箋薬に対しては公的保険に加入していない。従業員は薬の保険を給付として受け取るが残りの国民(低所得層、高齢者を除く)は現金で支払う。
長期の失業、障害、低所得層への医療のアクセスも両国で同一だ。非営利団体や、地域の医療センター、メディケイド等が提供している。
破産申請者の債務の大部分は医療支出と関連のない部分で成り立っているので医療保険とはほとんど関係がない。
医療費支払いが個人破産に直結する稀な出来事として、どちらにしても公的保険の支払い対象とならないような治療への患者からの要望(高額であったり、最新鋭であったり、または終末期医療)がある。カナダではこれらの治療に対して公的保険が適用されない割合が時と共に高まっている。
実際(彼らと同様の定義を用いた)カナダ政府により実施された調査によると公的保険にも関わらず、医療関連の支払いがカナダの高齢者の破産の主要な要因として挙げられていた。
公的保険がアメリカで個人破産を減少させる根拠はない。アメリカとカナダの比較は破産統計が政治的目的のために利用されたことを強く示唆している。
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