2016年9月6日火曜日

アメリカがオサマ・ビン・ラディンを支援したというのは嘘だった?

Dispelling the CIA-Bin Laden Myth

9月11日のテロ攻撃以来、ニュース番組や大学には「そもそも」どうしてCIAはオサマ・ビン・ラディンを過去に支援したのかと非難する人間で溢れかえっていた。

ワシントン・ポストのレポーターからマイケル・ムーアにいたるまでこの手の話を信じているように思われる。

私たちの政府にビン・ラディンを育てた責任があるという、多くのアメリカ人に信じられている妄想を終わらせる必要がある。CIAがビン・ラディンを支援していたというのは事実ではない。そのような妄想は私たち自身の手で9月11日のテロを招いたという誤った印象を刷り込んでしまう。完全に証明することは難しいにしても、すべての証拠はCIAはビン・ラディンに一度も資金を提供していないし、訓練もしていないし、武装させてもいないことを示している。

「ビン・ラディン自身が」アメリカからの支援を受け取ったということを繰り返し否定している。「私も私の兄弟たちもアメリカからの支援を受け取ったところを一度も見たことがない」と彼はイギリスのジャーナリストRobert Fiskに1993年に語っている(陰謀論のそもそもの最大の根拠が大崩壊…)。1996年にFiskは再び彼にインタビューを行っている。今回もこのテロリストははっきりと応えた。「私たちは過去一度たりともアメリカから支援されたことはない」。

ビル・クリントンとビン・ラディンのことをテーマにした本を執筆している際に、私は1984年から1986年にイスラマバードのCIA支部の責任者だったBill Peikneyと1986年から1989年の責任者だったMilt Beardenにインタビューした。彼らはアメリカから反ソビエトのレジスタンスへと送られた資金のすべてを管理していた。どちらもCIAからビン・ラディンに資金が渡されたということを完全に否定していた。彼らはこの話に大変怒りを感じていたので記録を送ることに同意してくれた。沈黙を貫かなくてはならない諜報機関の職員としては極めて異例のことだ。Peikneyは私に宛てたeメールの中で、「私がアフガニスタンに駐在していた頃、ビン・ラディンのことがスクリーンに入っていたかどうかさえも思い出せない」と語っていた。

彼らの話の信憑性が高いと考えられる理由は幾つもある。そもそも彼らが資金を管理していた(資金の流れを知っていた)。彼らはCIAを引退している。そしてCIAがビン・ラディンに一度でも資金を提供したということを示した説得力のある証拠は少しも存在しない。小切手も、インボイスも、政府のレポートも一つもだ。

ビン・ラディンがアメリカからの資金を受け取ったと主張している愚か者たちは、その結論を以下のような単純な論理から導いていると思われる。ソビエトがアフガニスタンに侵攻した時、アメリカはアフガニスタンのレジスタンスに資金提供を行った。ビン・ラディンはレジスタンスの中にいた。それ故、(その経路はまったく不明だというのに)アメリカはビン・ラディンに資金を提供したに違いない。

この愚かな論理は重大な事実を無視している。ソビエトに対するレジスタンスには2つの完全に異なる集団が存在した。一つはサウジや湾岸諸国によって支援されたグループでアラブ世界から集まってきたイスラム過激派で構成されていた。彼らは自分たちのことを「アラブ・アフガン」と呼んでいた(リンク)。ビン・ラディンはこの集団の一員だった。サウジがアメリカからの貢献分と同額を拠出すると族長たちに約束した時、族長たちはそれらの資金は「アラブ・アフガン」だけに渡すようにと強く主張した。一方でアメリカからの資金は他のレジスタンス、ネイティブのアフガン人で構成される、だけに提供された。先程のBeardenは、「ビン・ラディンに限らず私たちがアラブ・アフガンに1ドルたりとも資金を提供したと主張している人がいれば、その人の道化の皮を剥がしてあげるだろう」と私に語っている。

仮にCIAが「アラブ・アフガン」に資金を提供したいと思ったとしても(もちろん、CIAはこれを否定している)ビン・ラディンは適任からは程遠かった。ビン・ラディン自身がパキスタン北方の安全地帯をほとんど離れなかったし、彼が指揮していた部隊も僅かだった。ビン・ラディンは当時アラブ・アフガンの補給係で、食料や他の備品を供給していた。

CIAの職員が彼に資金を提供しようとしても、よほどの経験を積んでいないかぎり恐らく生きては帰ってこれなかっただろう。このテロリストは暴力的な反米主義で知られていた。現在はカリフォルニア州の共和党議員であるDana Rohrabacherは、1987年の旅行の時の出来事を語ってくれた。その旅の途中で、突然彼のガイドが英語をしゃべるなと告げる出来事があった。理由を尋ねると、現在ビン・ラディンのキャンプを通過中だからだとの回答が返ってきた。「もし英語を聞きつければ、彼はあなたを殺しに来るだろう」とガイドは語った。

どうしてCIAがビン・ラディンを支援したという神話はこれほど長きに渡って信じられているのか?ある人は、アメリカとサウジが完全に異なるグループを支援したということを知らないためにこの作り話に引っ掛けられているようだ。他の、反米の左翼や右翼などは(奇妙なことにヨーロッパだけでなくアメリカにもいる)この神話を信じることで奇妙な安心感を得ているように思われる。悪いのは私たちだと考えたい人たちに慰めを提供しているからだ。CIAがビン・ラディンに資金を提供した神話はよく馴染みのあるいつものパターンに戻れることを彼らに約束する。アメリカを非難せよだ(別に問題のなかった以前の日銀が狂ったように非難されていたことが思い出される)。この神話はアメリカがアルカイダを作ったという謂れのない非難を浴びせる事によりテロとの戦いの意義を貶めようとする意図のもとに発せられている。

サウジの王子がテロ攻撃の原因としてアメリカの政策を非難していたことを知った時、前NY市長のジュリアーニは王子からの10億円の寄付を送り返したことで話題になった。その時の彼の発言は、CIAがビン・ラディンを支援したという神話にもそのまま当てはまるだろう。「この攻撃を正当化できる理由は何一つない」と彼は答え、「それらの声明は間違っているだけではなく、それらは問題の一部だ」と指摘した。

Bin Laden, The Afghan Mujahadeen, And The CIA: The Myth That Needs To Die

(タリバンがアメリカが支援したグループだという勘違いが蔓延していることに関して)

マイケル・ムーアの発言を「軋轢を招き、無神経で、節度がなく乱暴な左翼のレトリック」だとSullivanが評していることにJohn Coleは明らかに同意していないだろう。そして擁護としてウィキペディアのこの記事にリンクを張っている。

「1979年の中頃に、ソビエト連邦がアフガニスタンに軍隊を派遣したのと同じ頃、アメリカはアフガンのムジャヒディンに資金援助を開始した。ネイティブのアフガン人以外で戦っていたのはアフガン・アラブと呼ばれる他の国からやってきたイスラム過激派たちだった。アフガン・アラブとして最も有名なのは裕福なサウジ人として知られていたオサマ・ビン・ラディンだった。よく無視される事実として、戦況が怪しくなりソビエトがそれらのアフガンの戦闘員たちを打ち負かし始めるとアメリカはすべての資金援助を取りやめた。これによりムジャヒディンたちは総崩れした」

「戦争の終わりごろになると、ビン・ラディンは他の場所で、主にアメリカ-ソビエトに対するムジャヒディンに資金援助を行った国-ジハードを行うためにアルカイダを組織した」。

この記事のどこが、私たちがビン・ラディンを武装化させ、資金援助をし、訓練を施したというマイケル・ムーアの主張のサポートになっているのかまったく理解できない。特に、ウィキペディアの同じページに記されている他の情報、例えば1997年にテレビで初めてビン・ラディンにインタビューを行ったCNNのPeter Bergenの発言などと組み合わせて見た時には。

「CIAがビン・ラディンに資金援助を行ったもしくは訓練を施したといったような話は、単なる都市伝説だ。このことを示した証拠は一つもない。ビン・ラディン、ザワヒリとアメリカ政府が同意できることが一つある。全員が、1980年代に自分たちの間に関係はなかったということに同意するだろう。そもそも関係をもつ必要さえなかった。ビン・ラディンは十分な資金を持っていた。彼は反米主義者で、秘密裏に独立に行動していた」

事実、ビン・ラディンのような「アフガン・アラブ」はアメリカとはまったく係わりを持っていなかったことをはっきりと証拠は示している。その逆に、CIAが資金を提供したとの主張は憶測か誇張に基づいているに過ぎない。CIAが1980年代にビン・ラディンを訓練したとの考えはビン・ラディン本人とともに消え去る必要のある神話だ。マイケル・ムーアは間違いで、サリバンが彼を酷評していることは完全に正しいように私には思われる。これは極左も極右も振りまいている神話で、彼らはもう嘘を付くのを止めなければならない。

更新:これまでのところは「嘘」と呼ぶのを控えてきた。彼らは単に自分たちが聞かされてきたことを繰り返しているだけかもしれないからだ。この混乱は、単なる普通名詞である「ムジャヒディン」という単語をある特定のグループを指しているかのように西側が解釈してしまっていることから生じている。アフガニスタンとパキスタンに数多く存在する集団であるタリバンをまとめて一つのタリバンだと思っているように。もしくは現在私たちがタリバンと呼んでいるグループは数多くあるタリバンのうちの一つにすぎないのに。

だが、それは完全に間違いだ。3月11日の記事、「タリバンの歴史からの教訓:80年代から私たちの味方ではない」を見て欲しい。その記事ではPat Langを引用している。

「私たちが支援したグループは、ソビエト撤退後の内戦の間にタリバンによって倒された。タリバンとオサマ・ビン・ラディンはサウジアラビアとパキスタンによって支援されていた「Sayyaf」と呼ばれるまったく別のムジャヒディンによって支援されていた」。

この混乱は、仮にも知識人と呼ばれている人であれば知らないのは恥ずかしいという位までに晴らされてきたはずだ(マイケル・ムーアを知識人だと言っているのでは決してない)。

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