2013年1月31日木曜日

医療保険に加入していない人はカナダのほうが多い?

当初の予定が狂ったため、後で加筆することにします。

Canadian Health Policy Failures

by Brett J. Skinner

Introduction

US-Canada comparisons

医療資源へのアクセスという面に関してアメリカの医療システムはカナダの医療システムを凌駕している。これは特に最先端の医療技術や治療に関して顕著だ。カナダ政府が医療に必要なすべての治療に関して保険を提供しているというのはある意味で事実だ。だがカナダ政府は「医療に必要な」を政府の支払う意思にもとづいて定義している。カナダ政府は医療保険給付の実質的な経済価値を急速に減少させている。実質的な医療へのアクセスという面でカナダはアメリカよりも優れていない。行列へのアクセスは医療へのアクセスと同じではない。

The ‘cost’ of health care in Canada and the US

幾人かの研究者はカナダとアメリカの医療費の伸びを比較してカナダは医療費の伸びを抑制していると主張している。実際、メディケアの導入以前には両国のGDP比はほぼ同一だった。1970にメディケアが導入されてからはアメリカのGDP比がカナダのGDP比よりも速く伸びている。

だが、Ferguson (2002a)は両国の1人あたり医療費の伸び率を両国の1人あたりGDPの伸び率から分離して分析した。彼は両国の総医療費は80年代の後半までほぼ同率で増加したことを示した。だがアメリカのGDPは70年代と80年代前半を通してカナダよりも伸び率が低かった。

彼によるとこれがこの期間にGDP比がアメリカの方がカナダよりも速く増加した理由だ。この要因が考慮されなければカナダが医療費の抑制に成功したとの錯覚を作り出してしまう。さらに彼は仮にカナダのGDPがアメリカのGDPと同率で成長したらカナダのGDP比はアメリカのGDP比よりも高くなっていただろうということも示した。彼によるとカナダの医療費がアメリカの医療費よりも低くなり始めたのはカナダ政府が保険給付の範囲を制限し、価格を制限し、医療の割当を行うようになってからだという。カナダが70年代と80年代に医療費の抑制に成功したという主張は両国のGDP成長率の差が作り出した錯覚だ。80年代後半からの医療費の抑制方針は医療の割当によってもたらされたのであって効率的な医療資源の配分によってもたらされたのではない。

Hidden costs of Canadian health policy

カナダの医療政策は膨大な隠れ費用をもたらしている。その費用とは例えば以下のものだ。

膨大な隠れ債務と政府が直面している財政危機。
医療資源の不足、特に最先端の技術や治療に関して。
実効的な医療へのアクセスを欠く多くの国民。
医療に必要な治療の範囲の縮小とそれへのアクセスの遅延。
医療従事者への政府の所得制限。
技術開発に対するディスインセンティブ。

カナダと比較してアメリカの方がより多く所得を医療に費やしているというのは事実だ。だがアメリカ国民がアクセスの速さとより良い治療を受けているというのもまた事実だ。表1に両国の医療資源の利用率と医療保険加入者の割合を示す。アメリカ国民が医療資源を多く利用できるという傾向がはっきり見て取れる。

Health insurance coverage in Canada and the US

利用資源の利用に関して返ってくる反応はカナダは国民全員が医療資源にアクセス出来るがアメリカではそうではないというものだ。だがその保険の実効加入率に目を向けるとカナダはアメリカとそれほど変わらない。待ち行列へのアクセスは医療へのアクセスと同じではない。例えば第2章ではカナダでの医者の不足に関して論じている。その章ではかかりつけ医へのアクセスがない、または救急救命室を通してしかかかりつけ医へのアクセスがないカナダ国民の人数に関するカナダ統計局の推計を示している。その分析によるとカナダ人の7.4%はこの分類に該当する。これらのカナダ人は実効的な医療へのアクセスという点に関して保険に加入していないとされるアメリカ人とほとんど同一だ。家庭医へのアクセスがなければ診療や専門医への紹介、処方箋を得るのは非常に困難だ。カナダ人が医療へのアクセスを得られないのは医者が見つからなかったり待ち時間が非常に長いのが要因でこの意味で保険に加入していないのとあまり違いがない。

アメリカ政府は国民全員への保険加入を義務付けていないが救急医療へのアクセスは義務とされている。アメリカ政府は医療機関へ救急の治療が必要な患者への治療を行うことを法律として定めている。保険に加入していない人は病院の救急救命室や慈善機関や地域の医療機関へ支払いの前払いなしに緊急でない通常の範囲の治療を頻繫に受けに行くというというのもまた事実だ。

この点を見るために実際の保険に加入していないアメリカ人の人数は統計局の報告している人数の半分以下でさらにその状態は一時的なものだということを示す研究を示す(Herrick, 2008; Graham, 2006)。統計局によると最も最近のCurrent Population Survey (CPS)では4500万人(不法移民等1100万人を含む)が保険に加入していないと報告している。だがその推計値に関してはアメリカ国内で大きな論争になっている。表2はその問題点を簡潔に示す。この表はそれぞれの医療保険に加入しているアメリカ国民の人数を示している。民間医療保険加入者と公的医療保険加入者と医療保険未加入者の合計は統計局のアメリカ国民の全人口の推計値を大幅に上回っている。明らかにありえないことだ。不正確な回答者の人数は少なくとも3200万人に及ぶ。


Herrick (2008)はCPSのデータを分析しメディケイドの受給資格を得るには所得が高すぎるが120万円する高価な家族向け保険を購入する余裕のない国民の人数を推計している。彼によるとアメリカ国民の85%は何らかの形の保険に加入している。保険未加入者に関して、1800万人は所得が500万円を超えていて保険を購入する余裕がある。1400万人は政府プログラムの受給資格があるがまだ加入していない。彼によると3200万人、つまり保険未加入者の70%は保険を購入することが出来るがそれを先延ばししている。95%のアメリカ国民は保険に加入しているか保険へのアクセスがある。

彼によると2007の実際の保険に加入していない人の割合は全人口の5%だ。この数字は概念的に同一なカナダ人の割合(7.4%)よりも低い。実際カナダ統計局が推計しているかかりつけ医へのアクセスがまったくなく、それ故非常に限られた医療へのアクセスしか持たないカナダ人の割合(3.25%)とあまり変わらない。これらの数字にはかかりつけ医へのアクセスはあるものの治療を受けるために待っている人の人数は含まれていない(注 ついでにこちらも参照)。

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