2013年3月31日日曜日

北欧信者終了のお知らせ?

人口が3億のA国と人口が3000人のB国があったする。全人口のうち1割が研究開発、技術開発などに携わるとしてAとBの間に一切の情報その他のやり取りがなかったとする。AとBは人口の規模以外はまったく同一の条件で同じ所得水準からスタートしたとする。100年後豊かになっているのはどちらの国か?新古典派成長理論はこの場合圧倒的にAだと答えるが現実のデータを見るとどうもそうはなっていない。それは何故なのか?について書かれた論文。

Scale Effects and Productivity Across Countries:Does Country Size Matter?

by Natalia Ramondo Andr´es Rodr´ıguez-Clare Milagro Sabor´ıo-Rodr´ıguez

1 Introduction

成長がイノベーションによりもたらされるモデルには自然に規模の経済が伴う。Jones (2005)によると「規模の経済は知識をもとにした成長モデルと密接に結びついていて一方を否定することはもう一方を否定することにつながる」。Romer (1990)、Kortum (1997)、Jones (2005)で説明されているように規模の経済は知識は非競合性を持つという仮定に従っていて標準的な成長モデルでは所得水準は国の規模と共に上昇すると暗示されている。だがデータを手早く見た限りだと小国は大国に比べて貧しいように見えない。ベルギーとフランス、香港と中国を見よ。

この研究の目的はこの一見したところの非整合性の原因を調べることにある。我々は条件を一にするならば小国は大国よりもずっと貧しいだろうということを暗示したKortum (1997)の研究から出発する。例えば我々のカリブレーションによるとデンマークの所得水準はアメリカの所得水準の34%になるだろうことを示す。これは観測される91%に比べてはるかに低い水準だ。このギャップを「デンマークパズル」と呼ぶことにする。だがこれはOECD加盟国の小国すべてに共通するパズルだ。

このパズルを解消する候補はすぐに2つは浮かび上がる。第一に国は互いに対して完全には隔離されていない。第二に国は完全には国内で統合されていない。国は隔離された存在ではないという考えを取り入れるためにKortum (1997)のモデルに貿易と多国籍生産を組み込む。よって我々のモデルでは国は貿易と多国籍生産(以下 MP)を通して統合される。国は統合された存在ではないという考えを取り入れるために各国をいくつかの地域の集合体とし地域間の貿易と多国籍生産に摩擦が掛かるようにモデル化する。国内摩擦は国レベルでの規模の経済の効果を弱め大国に不利に働く。極限では国内摩擦が国際間摩擦と同じぐらい強ければ規模の経済は消滅するだろう。

2章では性質は同一の複数の地域から構成された閉鎖経済からモデル化する。閉鎖経済モデルを貿易とMPをどのように導入しその摩擦が規模の経済を弱めるかを最もシンプルな方法で説明するために用いる。次にこのモデルを国際間の貿易と国際間のMP(ある国の任意の地域を起源に持つ生産のための知識を他の国の任意の地域で用いる)へと拡張し実質賃金が国内摩擦と貿易に対する開放から得られる利得(これ自体も貿易とMPの関数となる)の関数であることを示す。

3章ではモデルをカリブレートしそして開放度と国内摩擦がデンマークパズルを解消するのに果たす役割を調べる。デンマークの場合ではモデルはデンマークの実質賃金がアメリカの実質賃金の76%(データでの91%に対して)であることを示唆している。従って2つの経路を合わせるとパズルの70%以上を説明できる。国内摩擦が開放度よりもはるかに重要でデンマークパズルの3分の2以上を説明し貿易とMPは5%を説明することが分かった。残りの4分の1が残されているが貿易やMPと関連しない他の形態の開放度(企業の外で行われる知識の国際間の拡散など)の存在が考えられる。4章と5章でこの点に関して触れる。

注5 適切な用語がなかったのでMPという用語を同国内の他の地域からもたらされた知識を用いて(同国内の)ある地域で行われる生産に対しても用いる。例えばウォルマートのアーカンサス州以外での活動もそれがアメリカ内の活動であったとしてもMPと呼ぶ。

注6 その他の極限として国内摩擦が存在せず国際間の摩擦が無限大である場合が標準的な成長モデルだ。

この研究は国の規模、開放度、所得との関係を調べた一連の研究と関連している。Ades and Glaeser (1999)、 Alesina, Spolaore, andWacziarg (2000)は国の規模と貿易が所得に対して正の効果を与えていると報告した。そして規模の経済は貿易に対する開放度によって弱められることも報告した。Frankel and Romer (1999)、Alcala and Ciccone (2004)はは国の規模と開放度は所得の高さと関連すると報告した。Alcala and Ciccone (2004)は貿易、制度の質、地形を制御して規模に対する所得の弾力性が0.30であると報告した。我々のモデルの結果に極めて近い。この分野では小国は貿易からより利益を得ていると報告される傾向がある。だが我々のモデルではその効果は小さい。開放度はデンマークパズルをほとんど説明できない。

国内の地域はすべて同質であるという仮定は強すぎるかもしれない。国の内部構造は国内貿易の費用とMPの費用、さらに地域の数で完全に特徴付けられる。Redding (2012)は貿易からの利益を国が複数の非対称な地域から構成されるという設定の下での計算の仕方を示した。原則的にはこれにMPを組み込んで各国が複数の非対称な地域から構成されるという設定の下で貿易とMPからの利益を計算するように拡張できる。だがこの拡張には全世界の地域のすべての組の間の貿易とMPのデータ(アメリカのすべての州とカナダのすべての州の間の貿易とMPのデータのようなもの)を必要とする。そしてそのようなデータは単純に存在しない。

国内の地域はすべて同質であるという仮定は強すぎるかもしれない。国の内部構造は国内貿易の費用とMPの費用、さらに地域の数で完全に特徴付けられる。Redding (2012)は貿易からの利益を国が複数の非対称な地域から構成されるという設定の下での計算の仕方を示した。原則的にはこれにMPを組み込んで各国が複数の非対称な地域から構成されるという設定の下で貿易とMPからの利益を計算するように拡張できる。だがこの拡張には全世界の地域のすべての組の間の貿易とMPのデータ(アメリカのすべての州とカナダのすべての州の間の貿易とMPのデータのようなもの)を必要とする。そしてそのようなデータは単純に存在しない。

2 The Model

3 Quantitative Analysis

19のOECD加盟国を対象とする。オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、日本、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガル、スウェーデン、アメリカだ。これらはEaton and Kortum (2002)、Ramondo and Rodr´ıguez-Clare (2010)と同じだ。

3.1 Calibration of Key Parameters

最後に3番目の方法はAlcala and Ciccone (2004)の結果を用いるものだ。この弾力性は式(17)の文脈内で解釈できる。HnとDnは地形を、Tnは制度を、式(17)の最後の3項が貿易とMPの開放度に対する制御変数になっているとすればMn=Ln/Lと(1+η)/θの係数は0.3と等しくなりうる。η=0.5ではθは5に等しい。

θ=6をベースとなる値として選び θ=4、θ=8を頑健性の確認として調べた。実質賃金の弾力性ln'(wn/Pfn)/ln'Lnは(1+η)/θ=1/4でJones  (2002)の1/5とAlcala and Ciccone (2004)の1/3に近い。この値は都市経済学の文脈での弾力性に比べて高いように思われるかもしれない。例えばCombes et al. (2012)は密度に対する生産性の弾力性は都市レベルでは0.04から0.1の間だと報告している。だがこれは誘導型の弾力性であって我々のものは構造型の弾力性であることに注意する必要がある。よって小国が強い規模の経済で示唆されるよりも豊かなのと同じ理由(国内摩擦と開放度)で観測される都市の規模の経済の効果は低められることになる。

注19 この結果はRose (2006)の小国は貧しくないという結果と対立するものではない。彼は何も制御していないのに対してAlcala and Ciccone (2004)は制度、地形、貿易を制御しているからだ。

3.2 Preliminary Results: the Danish Puzzle

国内摩擦のない閉鎖経済モデルから始める。そのケースではH=D=1だ。さらにMnTn=Ln~Tnとなる。よって実質賃金は以下で与えられる。

wn/Pfn=~γ(Ln~Tn)^(1+η)/θ  (20)

~TnがR&Dに従事する人数の割合と直接的に変動すると仮定してカリブレートする。R&Dに従事する人数の割合はWorld Development Indicatorsの90年代のデータの平均値を取って用いた。Lnは実効労働量を示す変数でKlenow and Rodr´ıguez-Clare (2005)のものを用いた。

図1にR&D集約度とLn~Tn=MnTnで調整した規模と実質賃金との関係を図式化した。緑の点は閉鎖経済下のモデルの実質賃金を描写していて黒の点は実際のデータのものだ。閉鎖経済モデルは小国の所得水準を過小予測していることが簡単に見て取れる。


(アメリカの賃金水準を1とした場合の各国の相対的な賃金を表したグラフ。黒が実際のデータで緑がスピルオーバーがないと仮定した場合に予想される実際のデータ)。

3.3 The Gains from Openness

始めに閉鎖の下での実質賃金と観測されるデータとの間のギャップが国内摩擦のないモデルの貿易とMPからどのぐらい説明できるかを調べる。この文脈では開放経済の下での実質賃金は閉鎖経済のものを開放度で強化したものと同じだ。式(17)と式(18)から実質賃金は以下で与えられる。

wn/Pfn=~γ(Ln~Tn)^(1+η)/θ×GOn  (21)

GO(*Gains from Opennessの略)は次に説明するデータから直接計算される。

3.3.2 Does Openness Resolve the Danish Puzzle?

図2にn国の貿易からの利益(GOn)とR&D調整した規模Ln~Tnとの関係を示す。小国は大国よりも多くの利益を得ている。開放度はデンマークパズルをどのぐらい説明するのか?


国内摩擦のないケースで開放経済の下でのn国の相対的な実質賃金は以下になる。

wn/Pfn/wus/Pfus=(Ln~Tn/LusTus)^(1+η)/θ×GTn/GTus/GMPn/GMPus  (22)

GT(*Gains from Tradeの略)は貿易からの利益を示す。GMP(*Gains from MPの略)はMPからの利益を示す。

表1の列1は国内摩擦がない場合での閉鎖経済下の実質賃金を示す。以前述べたようにモデルは小国は実際のデータよりもずっと貧しいことを示している(列1と列6)。列2に貿易からの利益を、列3に貿易だけを組み込んだモデルから示唆される実質賃金を示す。列4に開放度からの利益を示す。列5に式(22)から示唆される実質賃金を示す。サンプルの中で最も小さい7つの国に焦点を絞る。表10にすべての国の結果を示す。


実質賃金はアメリカに対する相対値であることに注意が必要だ。デンマークが開放度から大きな利益を得ていたとしても(1.35)、アメリカもまた利益を得ている(1.23)。よってデンマークパズルを解消する純効果としては開放度は大きくない。実質賃金のギャップは大きいままだ。モデルはデンマークがアメリカの37%の実質賃金であることを示唆している。デンマークに対しては開放度はギャップの5%を説明するに過ぎない。この様子が図1から簡単に見て取れる。

中間段階として表1に貿易からの利益の貢献度を示す。開放度は既存の研究でのデンマークパズルの解消の自然な候補だった。だがベルギーを除いては貿易はパズルの解消に大して貢献していない。小国は貿易からの利益を加えたモデルでよりも実際のデータの方がずっと豊かだ。

注22 この直感に反する示唆はEaton and Kortum (2002)、Alvarez and Lucas (2007)、Waugh (2010)の貿易だけを組み込んだモデルでも共有されている。より正確に言うとこれらはすべてパラメータTが実質賃金のデータに丁度適合するようにカリブレートされている。だが直感に反するのは小国でT/Lがはるかに高いことだ。これはデンマークパズルを別の視点から見たものだ。

3.4 Domestic Frictions

開放度と国内摩擦を組み込んだ場合では実質賃金は式(17)で与えられる。n国のアメリカに対する相対的な実質賃金は以下のようになる。

wn/Pfn/wus/Pfus=(Ln~Tn/LusTus)^(1+η)/θ×GOn/GOus(Hn/Hus)^-1/θ(Dn/Dus)^-η/θ  (23)

国内摩擦の果たす役割はこの表現の右側の第3項で捉えられる。これら摩擦の役割を評価するためにはすべての国のdnn、hfnn、Mnをカリブレートする必要がある。

貿易とMPに対する国内摩擦は分析の上で重要な変数だ。第一にdnnはアメリカのものとその他の国で同じと仮定している。基本となる推計ではdnn=1.7で2002のデータでθ=6に対応する。第二に最終財のMPへの摩擦は貿易への摩擦と同じぐらい大きいと仮定している(hfnn=dnn)。以下で頑健性を確認する。

3.4.2 Do Domestic Frictions Resolve the Danish Puzzle?

結果を見る前にhfnnとdnnが結果に対してどれぐらい重要なのかを示す。図3にこれら2つの国内摩擦の間の関係とモデルによって示唆されるデンマークの相対的実質賃金を示す。図3の左側でhfnn=1.7に固定したままでのdnnの変化を考慮する。データではデンマークの相対的実質賃金は0.91だった。モデルではデンマークの相対的実質賃金はdnnとともに上昇する。dnnの1から4への上昇はデンマークの相対的実質賃金を0.6以下から0.85へと上昇させる。最終財のMPへの国内摩擦だけでデンマークパズルの45%(0.6から0.85)が解消されるだろうことを記す。


同様に図3の右側はdnn=1.7に固定したままでデンマークとアメリカのhfnnの変化を考慮する。特にhfnnが4の場合にモデルはデータで観測される相対的実質賃金とほぼ完全に適合する。最終財に対する高い摩擦により規模の経済は非常に弱くなり開放度から得られるデンマークのアメリカに対する相対的に高い利益(1.36と1.23)が規模の小ささとR&Dに従事する人数の割合の低さを埋め合わせる。最終財の国内MPが摩擦なしで行われるならば(hfnn=1)デンマークの実質賃金は0.45となりデンマークパズルの20%を解消するだろう(0.34から0.45)。

驚くべきことではないが貿易とMPのどちらかへの高い国内摩擦は小国よりも大国に影響を与え小国がキャッチアップするのを可能にする。だがMPへの国内摩擦が上昇した場合にデンマークはアメリカに対してより速くキャッチアップする。そうなる理由は最終財への国内摩擦が中間財への国内摩擦よりも実質賃金に対して強い影響を与えるからだ(式(17)のHn^-1/θとDn^-η/θの指数の中に1/θ>η/θとして反映されている)。

表3に国内摩擦がdnn=hfnn=1.7とカリブレートされた場合での実質賃金を示す。今度もサンプルの中で最も小さい7つの国に焦点を絞る。Appendixにすべての国の結果を示す。


列1に閉鎖経済下での実質賃金を示す。列2に開放度からの利益を示す。列3に国内摩擦を示す。列4に国内摩擦と開放度を組み込んだモデルから示唆される実質賃金を示す。列5に実際のデータでの実質賃金を示す。

国内摩擦は規模の経済の効果を減少させ小国の手助けをする。デンマークの実質賃金は国内摩擦を考慮した場合には2倍以上になる。国内摩擦は開放度よりもデンマークパズルの解消に大きく貢献している。国内摩擦により実質賃金は閉鎖経済下での0.34から0.69へと上昇する。一方で開放度はわずか0.37へと上昇させるに過ぎない。国内摩擦だけでギャップの3分の2以上を解消することが出来る。

注25 データの制約により各国間のdnn(とhfnn)の違いを考慮することが出来ない。だが各国間のHnとDnの違いを利用することは出来る。これがモデル上で小国の所得水準を押し上げる結果へとつながっている。

図4に実際の実質賃金(黒点)、閉鎖経済下での実質賃金(緑点)、摩擦のある開放経済下での実質賃金(紫点)を示す。各国はR&Dで調整した規模Ln~Tn=TnMnの順に並べてある。すべての変数はアメリカに対する相対値で示してある。この図はギャップを解消するのに最も貢献しているのは開放度ではなく国内摩擦の存在であることをはっきりと示している(図1の赤に対する緑、図4の紫に対する緑)。


4 Discussion

デンマークパズルの残りの部分を説明できる鍵となる要素は何か?

1つの可能性として小国はよい制度から利益を得ていることが考えられる。これはR&D部門に投入される労働者の割合から示唆されるよりも高い技術水準Tnとして反映される。よい制度はそもそもとしてこれらの国が小国として独立していられることを可能にしてきたかもしれない。この可能性を調査するためにR&D集約度ではなく実効労働一単位あたりの特許数を技術水準Tnに対する代理変数として用いる。

基本となる結果は変わらない。さらに小国は就学年数、政府の汚職、官僚制度の質、法の支配などの点で有利かどうかを調べてみた。これらの変数とR&Dで調整した規模(~TiLi)との相関は0.30、-0.17、0.12、0.22だった。小国がよい制度を通して生産性を向上させているという考えはデータから支持されなかった。

他の可能性として貿易とMP以外から開放度による利益を得ているということが考えられる。明確な例として地方の企業が外国の技術を用いることを可能にする国際的な技術の拡散がある。残念なことにライセンスを通して発生するわずかな部分でしか直接的に技術の拡散を追跡した資料は存在しない。

間接的ではあるがいくつかの資料は国際的な技術の拡散の重要性を指摘している。Eaton and Kortum (1996, 1999)は国際的な特許のデータを用いて間接的に技術の拡散の流れを推測するモデルを開発している。彼等はアメリカを除いたほとんどのOECD加盟国の生産性成長は外国の研究からもたらされていることを示した。そのようなモデルと我々のモデルを統合することは将来の研究課題だ。ここでは技術の拡散がデンマークパズルをどのように解消するかを簡単に確認する。

l国の技術を用いて行われるi国での生産量の何割かがMPとして記録されないと仮定する。中国でフォックスコンにより生産されるアイフォンの例を考える。これはアメリカの技術を用いて中国で生産が行われているがその生産が中国の企業により行われているのでMPとして記録されない。φ>0と設定することによりこの現象を捉えその重要性を調べることが出来る。φの値は開放度からの利益の計算に影響を与える。ΣYfni=wnLnである最終財の場合を考える。すでに述べたようにYfniをn≠iに対してMPデータから計測する。そしてwnLnをn国のGDPとする。次にYfnnをYfnn=wnLn-ΣYfnnの残差として得る。φ>0の場合に外国の技術を用いたn国の実際の生産量は1/1-φΣYfniで故にYfnn=wnLn-1/1-φΣ Yfniとなる。高いφの値は低いYfnnを示唆し故に最終財のMPから高い利益を得る。ある程度同様のことが中間財でも起こる。

注32 小国は大国に比べて高い特許の生産性を示さない。実効労働1単位あたりの特許とR&Dで調整した国の規模との相関はアメリカと日本が含まれる場合には正で0.7ぐらいだがこの2国が除かれた場合には0.35へと減少する。

注34 例えばベルギーのような国の特許は97%が外国によって登録されている。

φは各国間で同じで高いφの値は技術の拡散の大きさを示唆していると仮定した。図5にφがデンマークの相対的な実質賃金に影響を与えるかを示す。φ=0に対してデンマークの実質賃金は0.75になる。φ が上昇した場合にデンマークの実質賃金は上昇し が0.30に近づいた場合に実際のデータと一致する。φ>0.30の場合にデンマークは急速にキャッチアップしφが十分に高くなった場合にさらに豊かになる。この演算は妥当な水準の技術の拡散で残りのギャップを埋めるのに十分であろうことを示唆している。


5 Conclusion

(省略)

(追記)残りの表をいくつか掲載する。


(日本とスウェーデンの1人あたり実質GDPが際立って低いのが目立つ)


(就学年数にかなりの差があることはあまり知られていないようなので記しておく。他に目を引くのは1人あたり特許件数だ)

アメリカの貧困率は出鱈目だった?

If The US Spends $550 Billion On Poverty How Can There Still Be Poverty In The US?

by Tim Worstall

統計局はちょうど貧困率を発表したところだ。毎年のことながらここで疑問へと直面する。アメリカは膨大な額を貧困の削減に費やしているのにどうして貧困率が高いのか?

これに対してシンプルな回答がある。単に貧困の削減に費やしたお金をカウントしていないというものだ。つまり膨大な額を費やしていながらあたかも何の効果がなかったかのように振る舞っているのだ。

ここに統計局の発表した数字がある。

「2011年の貧困率は15.0%だった。貧困線以下の所得で暮らす人が4620万人いたことになる。3年連続で上昇したが2011年の数字は2010年の数字から変化しなかった」

アメリカのように豊かな国に対する数字としては高すぎるということが出来ると思う。実際多くの人々がそのように議論している。だがこの数字には問題がある。我々は貧困層と定義された人々全員を55兆円で貧困から引き上げることが出来るのだ。*これはGDPの3%から4%に相当する。そのぐらいの費用で貧困の大部分を解決できるのなら良いことのように思われるだろう。

この数字は貧困線を見ることから確認できる。成人につき110万円と少しだ。5000万人を下回る人々が貧困層と定義されている。よって彼等に110万円を配れば貧困はなくなる。問題は解決しその費用は55兆円ぐらいになる。

これは費用としては上限額であることに注意する必要がある。例えば4人家族(2人の大人と2人の子供)の所得が440万円を下回っていたからといって彼等を貧困層とは呼ばない。昔あった話に結婚した2人は生活費を1人分まで削減できるというのがあったがそこまではいかないものの2人家族の生活費は単純に2倍にならないというのは事実だ。(貧困率の計算では)4人家族の所得が230万円を下回った場合に彼等を貧困層と呼ぶことに定義している。だがここではすべての個人を1人の成人として扱って彼等1人1人に110万円を与えればアメリカに貧困はなくなると計算している。その費用が55兆円だ。この数字はさらに彼等の市場所得がゼロだと仮定している。だからこれは上限の数字だ。

そうすべきだろうか?それは政治的質問で私のような外国人が取り扱う範囲を超えている。指摘したいのはこれは許容できる範囲の正確性ですでに成されているということだ。55兆円はすでに費やされていてよって本来なら貧困層はすでに存在しないはずなのだ。未だ貧困層が存在している理由は我々が定義する方法によって、その55兆円を貧困の削減に費やされたとカウントしないことになっているからだ。非常に奇妙な方法に思われるだろう。

メディケイドは低所得層のための医療給付だ。この費用は2010年で40兆円になる。SNAPは同年に7兆円だった。EITCは5.5兆円だ。これらを足すと52兆5000億円になる。アメリカの貧困を撲滅するのに十分な額だ。仮にこのお金を現金の形で渡したら貧困層はいなくなるだろう。

どうして貧困層がいなくなるのに十分な額を費やした後でも未だに5000万人近い人が貧困層として存在するのか?単純にこのお金をカウントしていないからだ。分かってる、分かってる、とても信じられないと言いたいんだろう?でも統計局もまったく同じことを言っている。

「貧困率は貧困線と課税前の貨幣所得を比較して推計する。非現金給付は含めない」

この「課税前」はEITCも含まれていないことを意味するように思われる。税体系を通して機能するからだ。SNAPは現物給付だ。メディケイドも同様だ。住宅バウチャー(そう、HUDを通して費やされるほとんどすべてのお金は含まれない)のような多くの他のプログラムも同様だ。

貧困を消滅させるのに必要なお金を費やしながら貧困層と定義される人々の人数をまったく減少させない理由になっている。

貧困の削減をしようと考えている人々のうちで幾人かはこのことに気づいているようだ。Dylan Matthewsの主張はここにある。彼等は貧困層に現金を与えれば貧困が削減されると主張している。彼等はそのお金で何人ぐらいが貧困層でなくなるかも計算している。だが我々はその計算に慎重でなくてはならない。

彼等は統計局の定義を使っていない。彼等はNational Academy of Sciencesのものを使っている。統計局は絶対的貧困率を用いている。1960年代に必要な栄養を摂取するのに掛かった食料費の3倍として定義されている。これはインフレ率で更新する以外には他には何の変更も加えられていない。この期間に食糧の相対価格が大幅に下落したのでこれは誤解を生む指標となっている。現在の妥当な推計では食糧は家計の予算の10-15%で30-35%ではない。よってかつてよりも現在ではより多くのお金を食糧以外のものに費やすことが出来る。

NASのものは相対的貧困率だ。中央所得を求めそれに対する割合で定義する。その割合を下回った所得を貧困と定義する。これは貧困の指標というよりも所得格差の指標だ。だがEITC、SNAPなどによって貧困層でなくなる人数の計算はこのNASの定義にもとづいて行われている。統計局のものではない。

上記の数字や議論は必要以上に挑発的であったように見える。詳細に見れば上記の議論の細部に穴があるということは可能だ。だが基本的な主張に変更はない。アメリカは現在貧困を消滅させるのに十分な額を費やしている。統計局が用いている定義によれば貧困層に物やサービスを渡すかわりに現金を与えれば貧困率はゼロになるだろう。そうなっていない理由は単に貧困率の計算にその額を含めていないからだ。

これは本当に奇妙なことだ。アメリカは50兆円以上を費やしている。これは$500,000,000,000以上だ。この数え方によるとこれだけ費やしても貧困は只の1人も削減されないことになるのだ。

ここからメディケイドを取り除くことも出来る。それでも$125,000,000,000を貧困をまったく削減することなしに費やしていることになる。すでに述べたようにこれは非常に奇妙なことだ。

*これは非常にラフな計算であることに注意して欲しい。桁数の計算は合っている。これらの数字に関する不確実性を考慮すれば見掛けの正確性ということはありうるだろう。

アメリカの貧困率はスウェーデンよりも低い?

America Has Less Poverty Than Sweden

by Tim Worstall

こう聞くと意外に思われるかもしれない。だが実際にアメリカの方がスウェーデンよりも貧困率が低いということはできるのだ。普段聞かされている話とは違うだろうと思うがでも聞いて欲しい。

選挙が近づいているこの時期がEconomic Policy InstituteにとってState of Working America reportを提出するよい機会だったに違いない。選挙の直前はもちろん関心を集める絶好の機会だ。このことが彼等のチャートを興味深いものにしている。


これはよく目にするアメリカの貧困率を示したものではない。これは国際的に比較可能でその国の中央所得の50%以下の所得で暮らす人口の割合を示した相対的貧困率だ。このチャートは市場所得と税引き後移転後の所得の両方の貧困率を示している。

注意深く見れば市場所得でのアメリカの貧困率は26.3%であることが見て取れるだろう。スウェーデンは26.7%だからアメリカの方がスウェーデンよりも貧困率が低いと実際言うことができる。だが人々が知りたいのは貧困を削減するものをすべて加えた後の貧困率がどうなるのかであるかもしれない(注 このグラフと非常によく似た再分配前後のジニ係数の推移を示したグラフを持ち出してもっと再分配をしさえすればアメリカのジニ係数はヨーロッパよりも低くなるんだ、違いは再分配だけなんだと(この記事の数年後に騒ぎ出した)ニューヨーク・タイムズなどの左翼は誰も理解していないが、他の国と比べて巨額の報酬を受け取っているアメリカの所得上位1%というのが虚像に過ぎないということをそれらは暗に示唆している。市場所得とはまさに生の所得のデータで再分配前ではジニ係数がほとんどの国はアメリカと大して変わらないかもしくは高いということは10億円、20億円と受け取っている人たちの割合がそれほど変わらないということを示唆している。驚くことに?経済学者までもがこの相矛盾する主張を平然と行ってその矛盾に気が付かないでいる)

上記の数字からはアメリカの貧困率はスウェーデンの貧困率よりも高い。スウェーデンは貧困率を大きく低下させている。

だが私はこれが本当だとは納得していない。このチャートを作成するのにOECDからどの数字を用いたのかEPIは説明していないので少しやっかいなことになっている。そこで1つの仮定をしてみる。

EPIのものと同じ数字を用いて同種のチャートを作成した。彼等がどの数字を用いたのか説明していないのは残念だ。だが図Cを作成するのに用いられた方法と図Dを作成するのに用いられた方法は同様のものであると仮定することができる。その方法とは以下だ。次のように説明されている。

注意:貧困率は可処分所得の中央値の50%に貧困線を設定して計算している。各国は貧困率の低下割合の降順に並べてある。「税と移転」は家計に課税されたすべての所得税額を考慮し給付はすべて直接家計の所得に影響するものを考慮してある(現物給付や現金性の給付を除く)。

この方法は相対的貧困率の実際の計算方法と同じであると仮定できる。税引き後移転後に中央所得の50%以下の所得の人がどのぐらいいるのかを示しているのだ。だがそれらは現物での移転を含めていない。そしてこれはアメリカにとっては大きな問題になる。ほとんどすべての国は貧困を緩和するのに低所得層に現金を渡している。アメリカはそうではない。低所得層に現物で渡している。

この計算にアメリカの2番目に大きい給付プログラムであるEITCを含むのかに関してはっきりとしない。所得税として支払われたものならば含まれるだろうしそうでないならば含まれないだろう。EITCは所得税の一環として機能するが実際に所得税として支払われたものではない。この取り扱いが結果をどのように歪めるか例を挙げたい。私の母国のイギリスは勤労控除と呼ばれる非常によく似た制度を持っている。この効果はイギリスの貧困率の計算に含まれている。アメリカの貧困率には含まれているかもしれないしそうでないかもしれない。

アメリカの貧困率の計算に確実に含まれていないのは最大の給付プログラムであるメディケイドだ。3番目に大きいSNAPも含まれていない。もう一度イギリスとの比較に戻るとイギリスでは食糧を買うのにお金を必要とする人々には現金が送られる。これは確実に上記の計算に含まれる。アメリカではSNAPは計算に含まれない。住宅バウチャーも計算に含まれていない。対応するイギリスの住宅給付は確実にイギリスの計算に含まれている。

EPIの数字の問題点はアメリカの税引き後移転後での貧困率はある意味市場所得での貧困率を見ているのとさして変わらないというところにある。他の国はすべて税引き後移転後での所得で貧困率を計算している。よってアメリカの数字が他の国より高かったとしてもまったく驚くべきことではない。

ところで私はアメリカが他の国より相対的貧困率が高くないと主張しているのではない。その計算がおかしいと述べている。

次に彼等が数年前に作成した興味深いチャートを紹介する。現在ではウェブで見ることができないようなので参照だけ掲載する。


このチャートはとても興味深いと思う。

彼等は直接の比較が可能となるように数字に一連の調整を加えている。まず下位10%と上位10%が得る中央所得に対する比率を示している。さらにPPPで調整しているので人々の実際の購買力を示している。最後に税引き後移転後の調整がしてあるのでアメリカと他の国とで貧困を緩和するものを加えた後での比較が可能となっている。それはEITCと住宅バウチャーも含んでいる。

このチャートで私が非常に興味深いと思うのはこの部分だ。レポートが提出された時に以前私が述べたことを再度掲載する。

「このチャートをどのように解釈するか?下位10%は中央所得の39%しか得ておらず上位10%は中央所得の210%を得ているのだと。フィンランドと比較してみよう。上位10%は111%を得て下位10%は38%を得ている。我々は嘆き悲しみ全員に課税しなければならないのだろうか?」

「だがちょっと待って欲しい。このチャートから示されたのはそういうことではまったくない。アメリカの下位10%は中央所得の39%を得ていてフィンランド(とスウェーデン)の下位10%は38%を得ている。細かい数字の違いについてとやかく言うのはやめてこれをアメリカの低所得層はフィンランド(とスウェーデン)の低所得層と同じ生活水準をしているのだと解釈しよう。意味深い数字だとは思わないか?懲罰的な税率や再分配や平等主義?や平坦な所得分布などが低所得層の生活水準に簡潔に言って何の変化も与えていないのだ」

もう少し細かく見ることもできる。スウェーデンの医療は低所得層に対して寛大かもしれない。下位10%が確実にメディケイドを受給しているのかも定かではない。だがこれらの数字を引き出す際に引用されたTim Smeedingはある研究でこれらの差は微々たるものだと述べている。医療はアメリカでより高価かもしれないということは可能だ。だが食糧はアメリカでずっと安い。だから彼の言うようにこれらの差は微々たるものだと言うことができるのだ。

重要な疑問へと答えることができるようになった。貧困に関してまったく異なる4つの言明をすることができる。:アメリカは(他の国よりも貧困率が)低い、高い、同じ、またはわからないだ。我々が適用する基準に単に依存している。

市場所得での貧困率はアメリカがスウェーデンよりも低い。消費格差ではアメリカの貧困率がより高いということができるだろう。貧困を緩和するものを加えていないからだ。最後にアメリカとスウェーデンの低所得層は同じ生活水準だということがはっきりということができる。だから貧困が多いか少ないかは定義次第だ。あなたならどの定義を選ぶか?

アメリカのジニ係数はドイツやフランスよりも小さい?

The Amazing Thing About American Inequality:How Equal The Country Is

by Tim Worstall

統計局は所得格差に関するデータを丁度発表したところだ。。データ好きな私のようなタイプにとってはすごくおもしろい読み方も出来る。これらの数字に関してわずかしか理解されていない興味深いことがある。これらの数字を用いて多くの人がアメリカはなんて格差が大きいんだろうと叫ぶ。数字が示しているのは実際にはアメリカは他の先進工業国と変わらないということなのにだ。

問題はアメリカの数字をそのまま他の国と比べる場合に起こる。様々な目的のために集められた数字をそのまま比較してはいけない。以下はNYTの例だ。

「アメリカの2011のジニ係数は0.475で2010の0.469より上昇した。ジニ係数は昨年20の州で上昇した。他の州では変化が無かった」

「ニューヨーク州のジニ係数は0.503でこれは同州の所得分布がコスタリカと同じであることを意味する」

彼等が用いた数字はここにある。この数字を見てあなたは次のように思うかもしれない。アメリカの数字が0.475でスウェーデンの数字が0.23だとして低い数字が所得格差が小さいことを意味するならばスウェーデンがアメリカよりも所得格差が小さいことを示しているのだと。その前提によればそうなる。ただしそれは数字からそうなるのではない。

アメリカの数字は税引き前移転前のものだ。スウェーデンの数字は税引き後移転後のものだ。アメリカの数字は所謂市場所得と呼ばれるものでスウェーデンの数字はそうではない。

これをウィキペディアで見ることが出来る。市場所得の所得格差、税引き後移転後の所得格差の両方が掲載されている。市場所得基準でのアメリカの所得格差はイタリア、ドイツ、フランスよりも小さく、フィンランドと同じで、イギリス、スウェーデンよりもわずかに大きい。普段我々が聞かされている話と全然違う。のみならず最新の数字について語られている話とも違う。

人々がアメリカと他の国に関してのまったく異なる数字を如何に当然のように報告しているかという点を強調したいと思う。ここにまた統計局のレポートがある。これは所得格差に関する政府の公式のレポートだ。こちらにはヨーロッパの所得格差に関する情報が掲載されている。これらはまったく異なるものだ。アメリカは市場所得の所得格差を報告していてヨーロッパは税引き後移転後の所得格差を報告している。

さらに2つの強調したいポイントがある。再度NYTからだ。

「統計局の新しいレポートによるとすべてのアメリカの州でニューヨーク州が最も所得格差が大きかった。ワイオミング州が最も所得格差が小さかった」

その結果は極めて予想どうりのものだ。データが大きくなるほどそのばらつきが大きくなることが予想される。2000万人のニューヨーク州が50万人のワイオミング州よりも所得格差が大きいと自然に予想できるだろう。

例題を変えて気温の話にしよう。気温が一年を通しても年度毎にも変動することを我々は知っている。より多くの年度で気温を測定した場合により極端な値を観測する確率が上昇するだろう。同様のことが降水量やハリケーンの発生頻度などにも当てはまる。この効果は多くの分野で懸案事項となっている。つまりこの外れ値はトレンドに何か変化が起こったのか、それともデータがより拡大したからなのかと。気候変動の研究で例えるとある年に極端に暑い夏を経験したとしてそれは我々が気温を何百年に渡って観測してきたからかもしれない。そのような外れ値は時々やってくるかもしれない。最近の夏が平均的に以前の夏よりも暑いと思うようになった場合にばらつきではなくトレンドについて考えるようになるかもしれない。

同様のことが人口が増加した場合の所得のばらつきに関しても当てはまるだろう。ニューヨーク州がワイオミング州よりも所得のばらつきが大きいことは自然だ。さらにニューヨーク州にはバッファローとウォールストリートがあるので人口が多いこと以外にもニューヨーク州の所得格差が大きいと予想する理由がある。

人口が3億を超えているアメリカの場合を考える。3億の人口のアメリカと900万の人口のスウェーデンとを比較することは正しいのか?より興味深いのは3億の人口のアメリカと5億の人口のヨーロッパ連合との比較だろう。または元共産主義国家を除いたEU 15だ。ヨーロッパ連合だろうとEU 15だろうと大して問題にならない。どちらもジニ係数は同じ0.30だからだ。これは税引き後移転後の数字だ。アメリカは0.38だ。そう、アメリカがヨーロッパよりも所得格差が大きいことになる。だがその幅は人々が考えているものよりもはるかに小さくなる。または流布されているものよりもはるかに小さくなる。

次のポイントに移ろう。このアメリカの数字でさえ過大申告されている。税引き後移転後でさえアメリカの数字の取り扱い方は適切ではない。所得格差にしても貧困率にしても低所得層が受け取る現金を加えている。だが低所得層が現物支給の形で受け取る物(Medicaid, SNAP, Section 8など)は加えていない。EITCも含まれていない可能性もある。EITCが貧困率統計に含まれていないのははっきりとしている。だが所得格差統計には含まれているかもしれない。他の国はそのような政策の効果をすべて含んでいる。他の国は現物の形で給付を行わず単に現金を渡して自分達で買いなさいと伝えるだけだ。これは低所得層がいくらお金を持っているかを表す統計にははっきりと示される。

アメリカは所得格差が非常に大きいのか?それは政治的、価値観的質問なので答えることが出来ない。しかし統計局が発表している数字は市場所得に関してだ。その基準ではアメリカはドイツやフランスよりも所得格差が小さい。この基準では特に所得格差が大きい国ではない。税引き後移転後の所得で見た場合にはアメリカは他の国より所得格差が大きくなる。だが個々の国でなくヨーロッパ全体と比べた場合にはその差は0.30と0.38とはるかに小さくなる。

(付け加えると私はヨーロッパ全体のジニ係数を信じていない。ものすごく低すぎるように見える。このことについてはもう少し考えてみたいと思う。これはヨーロッパ全国民のジニ係数というよりは個々の国のジニ係数の算術平均ではないかと思う)

(実際、ヨーロッパの数字ははっきりとおかしいと今では感じている。このジニ係数はヨーロッパ全国民の所得格差を示す数字とは明らかに違う。EU 15とEU 27の数字が同じ0.30だからだ。旧共産圏の国を加えてもヨーロッパ全国民としての所得格差が上昇しないとは単純に信じられない。それは不合理に思える)

母子家庭の家庭環境がアメリカとスウェーデンで変わらない?Part2


Family Structure and Child Outcomes in the United States and Sweden


by Anders Björklund Donna K. Ginther Marianne Sundström

1. Introduction

両親の揃っていない家庭の子供は両親の揃っている家庭に比べて平均して成績がよくないことが知られている。例えばアメリカで片親の家庭で育った子供の高校卒業率と大学進学率は低い。スウェーデンでも子供の成績がよくないことが報告されている。だが家族構成が子供の成績に与える影響の研究は入り組んでいる。観測された相関は家族構成と子供の成績両方に相関する非観測の変数の効果を反映している可能性があるからだ。この効果は家族構成が子供の成績に与える影響の推定にバイアスをもたらす。この研究ではスウェーデンとアメリカのデータを用いて家族構成が子供の成績に与える影響を分析する。

2. Previous studies

2.1 Family Structure and Child Outcomes in the United States

McLanahan and Sandefur (1994)は4つのデータセットを用いて分析している。彼等は高校卒業率、大学進学率、大学卒業率が低いことを報告している。さらに十代での妊娠率が高く経済活動も低調であると報告している。Biblarz and Raftery (1999)は家族構成が子供の成績に与える影響の研究は家族構成をまとめる際の定義や調査期間に依存していることを強調している。母親の雇用状態や職業を制御した後では母子家庭の子供は父子家庭の子供や継親に育てられた子供よりもよい職業に就き教育達成度も高いと報告している。

再婚家族についての研究(継子とその異母兄弟)では継親と一緒に住む子供の成績との相関を調べている。Wojtkiewicz (1993)はNational Longitudinal Survey of Youthを用いて調査した。彼は継親と一緒に生活する期間の長さと子供の高校卒業率との間に負の相関があると報告している。より最近ではWojtkiewicz (1998)は大学進学と家族構成との関係、または家族構成の変化との関係を調べている。National Educational Longitudinal Surveyを用いて彼は安定した家族構成を1988から1992に掛けて変化しなかった家族として定義している。安定した片親家族の子供(この期間中に変化が無かったのでこの場合も安定に入る)は不安定な片親家族の子供や継子よりも大学に進学する傾向が高いと報告している。PSIDを用いてBoggess (1998)は継父-継子関係にある家族の子供は高校卒業率が低いと報告している。Ginther and Pollak (2003)は継母-継子関係と継父-継子関係の両方とも子供の成績は似通っていて伝統的な核家族の子供に比べて低いと報告している。

この分野の研究の多くは両親の揃っていない家族の子供の学習到達度は総じて低いと報告している。だがこれらの研究には因果関係の解釈に関して問題がある。家族構成に関して選択バイアスがないと仮定しているからだ。Manski, Sandefur, McLanahan, and Powers (1992)はこの問題を考慮して家族構成が高校卒業率に与える影響を調査している。彼等は家族構成の影響は課せられた仮定に依存していると報告している。「効果をよりはっきりと推定したいならば家族構成と子供の成績を生むことになった過程についての事前の情報が必要だ。この過程に関して研究者の信念がお互いにおいて異なる限りその推定結果もまた同様に変化するだろう」と述べている。その後の研究はこの結論を念頭においている。

研究者は固有効果の推定を用いて選択バイアスを制御している。妥当な仮定のもとではこれにより選択バイアスを制御できる。Gennetian (2001)はNLSY-Childデータを用いて調査している。家族間と個人間の非観察の異質性を制御することにより彼女は母子家庭の子供に長期にわたる負の影響を与えるが継親や異母兄弟のいる家庭の子供では影響は有意でなくなったと報告している。Sandefur and Wells (1999)はNLSYの兄弟のサンプルを用いて教育達成度の関数を推定している。非観察の異質性を制御した後では両親の揃った家族以外の構成は小さな負の影響を与えていると報告した。Case, Lin and McLanahan (2001)はPSIDを用いて生物学的母親、そうでない母親と暮らす子供の学習到達度を調べた。彼等は生物学的母親から離れて暮らす子供の学習到達度は低いと報告した。最後にEvenhouse and Reilly (2001)はNational Longitudinal Study of Adolescent Healthのデータを用いて再婚家族の子供の幸福度を調査した。再婚家族の兄弟と比較して継子の成績は異母兄弟と比較してよくなかった。すべてではないもののこの研究のいくつかの結果は片親家庭で育つ子供や継子として育つ子供は負の影響を与えていることを示した。

他の研究者は親の死を準自然実験として家族構成が子供の成績に与える影響を調べた。そして親の死による家族構成の変化は子供の成績に対してわずかな影響しか与えていないと報告した。Lang and Zagorsky (2001)はNational Longitudinal Survey of Youth(NLSY)を家族の多様な背景構造を制御するために用いた。死による不在を制御した後では家族構成は子供の成績に対してわずかな影響しか持たなかった。Biblarz and Gottainer (2000)は父の死により母子家庭となった子供と離婚により母子家庭となった子供とを比較した。離婚のケースが死別のケースよりも教育達成度が低かった。

最後に研究者は離婚の前後で子供の成績を比較した。Cherlin et al. (1991)はでその親が最終的には離婚してしまうelementary schoolの子供は家族構成の変化に先立って成績が悪くなっていることを示した。Painter and Levine (1999)は未婚での出生、離婚、再婚が十代に与える影響が子供達や親が元々持っていた属性によるものであって家族構成によるものでないのかを調べた。1988のNational Educational Longitudinal Surveyを用いて元々の属性は成績の違いを説明するには不十分で家族構成が十代の成績に影響を与えていることを示した。

上記から家族構成は子供の成績と相関していることが示された。だが選択バイアスを制御した研究では仮定によって異なる結論を報告していた。

3. Data and empirical approach

3.1 Data

Measuring Family Structure

一見したところ家族構造の測定は簡単に見える。子供は1人か2人の親と暮らしているのではないのか?この簡単なやり方では複数の兄弟がいる世帯や家族構成の時間による変化を考慮することが出来ない。複数の兄弟がいる世帯では兄弟の1人が生物学的両親と暮らし異母兄弟は生物学的親と継親と暮らすという可能性がある。家族構成の測定は親と兄弟間の関係性を考慮しなければならない。

加えて家族構成は時間と共に変化する。例えば継子は3つの家族構成を経験する可能性がある。生物学的両親と暮らす、片親と暮らす、継親と暮らすの3つだ。子供の特定の年齢で測った家族構成(NLSYでは14歳)はこれらの関係性を十分に把握できない可能性がある。多くの研究はある年齢での測定を子供時代を通した家族構成の代理指標として用いる。Wolfe, Haveman, Ginther, and An (1996)はこの代理指標の妥当性を調査して信頼できない推定結果をもたらす可能性があると報告している。

3.2 Samples

両国の家族構成の分布を表1a-cに示す。アメリカの2つのサンプルは互いに少し異なっていることが見て取れる。この違いはPSIDでの低所得世帯のオーバーサンプリングから来ている。両親の揃っていない家族で暮らす傾向が高い。スウェーデンのサンプルは逆にNLSYのものに近い。例えば子供の70%はその子供時代を両親と暮らし父親と継母と暮らすというのは最も少ない。子供時代の大部分を片親と暮らす子供の割合はアメリカの方がスウェーデンよりも高い。

次に両国の教育達成度と所得の分布を見る。そしてその概要を得る。

平均就学年数はアメリカの方が長いがそれの家族構成による違いは非常に似ている。子供時代を両親と暮らした子供は高い水準を示しそうでない子供はその逆だ。両国で両親と暮らした子供はそうでない子供と比べて追加で1年長く学習に費やしている。

3.4 Empirical approach

次に外生的な選択を仮定して横断面の分析を行う。簡単化のために2人の子供がいる家族を考える。1人の子供に対する人的資本への投資は家族の経済資源、観測可能な親の特性(教育)、家族環境、兄弟構成の関数とする。家族jの子供iは以下の投資の意思決定を行っているとする。

HCij =α Sij + β FSij +γWij +δ Xij + uij (1)

HCijは子供の成績または所得だ。Sijは兄弟構成を示す。FSijは両親と暮らした子供時代の期間を示す。Wijは観測可能な親の特性で、Xijは個人の特性で、uijは誤差項を示す。

誤差項を3つの部分に分解できる。μij=φj+ηi+νij、φjは家族固有の部分で、ηiは個人特有の部分で、νijはランダム項だ。φjが家族構成と相関していれば兄弟間で差分を取れば選択バイアスは消滅するだろう。だが家族構成が個人固有の部分と相関していれば選択バイアスは残ったままになる。家族構成は家族固有の効果φjを通してのみ影響を与えると仮定し、さらにすべての家族効果は兄弟間で不変Wij=Wjと仮定し、式(1)を兄弟で差分を取ることにより以下の式を得る。

ΔHC =αΔS + βΔFS +δΔX + Δu (2)

この仮定のもとでこのモデルは家族内で変化しない観察、または非観察の任意の変数を取り除く。ここで取る方法は式(1)の変種を推定するために横断面での回帰を行うというもので異なる制御変数と家族の固定効果を式(2)を用いて制御する。

4. Results

4.1 Cross-section estimations

まず就学年数と異なる形態の家族で過ごした子供時代の期間の割合との関係を年齢と性別を制御して推定する。結果は表4aに示してある。興味深い事に両国での関係は驚くほど似通っていることが判明した。

次に子供時代を両親が同じ兄弟とともに暮らした期間と異母兄弟と暮らした期間とを家族構成に補完してみた。その際に両親が同じ兄弟の人数と異母兄弟の人数とを一緒に暮らしているかいないかに関わらず制御した。この分析にはPSIDのデータしか用いる事が出来ない。NLSYは子供時代全体を通しての兄弟構成に関する完全なデータを有していないからだ。さらに継親や生物学的親の教育水準も制御する。子供時代の兄弟構成と親の教育水準を制御した場合に両親の揃った家族とそうでない家族の教育成績の差は減少することが判明した(表4b)。さらに両親が同じ兄弟と過ごす期間と就学年数には有意ではない正の相関がアメリカであったがスウェーデンでは負だった。しかし異母兄弟と過ごす期間と就学年数には両国で負の相関があった。教育成績と兄弟の人数との関連はともに負だったが両親が同じ兄弟の方でより大きかった。

さらに同様の式を用いて年間所得と異なる家族形態で過ごした期間との関連を両国の年齢構造と性別構造を制御して推定する。結果は表5aに示す。これらの関係も両国でとても似通っていることが判明した。兄弟構成と親の教育水準を制御した場合(表5b)に両親の揃った家族とそうでない家族の教育成績の差はまた減少した。加えて今度は兄弟構成は両方のサンプルで重要だった。PSIDでは所得と両親が同じ兄弟の人数とに負の相関があった。さらに異母兄弟と過ごす期間とも負の相関があった。スウェーデンでは所得は両親が同じ兄弟の人数と異母兄弟の人数の両方に負の相関があった。これらの結果は大家族は子供の人的資本の蓄積にわずかな資源しか投資していないことを示唆している。さらに兄弟構成は子供の成績の変動に対して家族構成よりも相対的により重要であることを示している。

4.2 Family fixed-effect models

表6aに家族構成と教育達成度との関連を推定した結果を示す。スウェーデンに関しては異父兄弟と教育達成度との関連を調べるのに十分なサンプルサイズがある。表4aでは家族構成と就学年数と負で有意の相関があった非観測の異質性を制御した場合には両国でもはや有意ではなくなった。これは両親が同じ兄弟、異母兄弟ともに同じだ。表6bに家族構成と所得の関連を固定効果モデルで推定した結果を示す。非観測の異質性を制御した場合に家族構成変数の係数は低下しさらに有意ではなくなった。例外はNLSYデータでの継母と生物学的父親という家族構成と所得との関連だ。非観測の異質性を制御した後でも子供時代を継母と暮らした場合には所得に対して負で有意の相関があった。

5. Conclusions

(省略)

母子家庭の家庭環境がアメリカとスウェーデンで変わらない?Part1

ちなみに筆者はスウェーデン出身。

Krugman fundamentally misunderstands Sweden

by Tino Sanandaji

Paul Krugmanはスウェーデンに感銘を受けたようだ。彼の夢見た理想の社会は1980頃のスウェーデンだという。彼はアメリカを空想の社会へと変貌させようと努力しているみたいなので彼の理想郷を理解する手助けをしたいと思う。不幸にも彼の望んだ結果にはならないだろうが。

Ross Douthatsのコラムに対する応答として彼は「スウェーデンでは半数以上の子供は未婚の両親から生まれてくる。だが彼等はその境遇を苦にしていないように見える。それは福祉が充実しているからだ。我々も同じことが出来るはずだ。だろう?」と述べている。

これはとてもミスリーディングだ。スウェーデンでは家族の伝統がアメリカとは大きく異なる。同棲は社会的に認知され法により婚姻とほぼ同等として扱われている。標準的なスウェーデンのカップル同士は同棲をして子供を作りその後になって初めて結婚する。スウェーデン統計局は以下のように説明している。

「結婚をせずに共に生活することは一般的だった。そしてスウェーデンの子供の大多数は同棲している未婚の両親から生まれてきた。同棲はほとんど結婚と変わらず未婚のまま子供を持つことが受け入れられていた。このような状況にも関わらず多くのカップルは最終的には結婚を選んだ。このレポートで調査した2010の終りまでに共に生活しているカップルのうち73%が結婚を選択し残りの27%が同棲を選択していた。カップルの10%は子供が誕生した時に一緒に生活していなかった。だが大多数のカップルは子供が生まれる前と後でも一緒に生活していた。カップルのうち3%が一度も一緒に生活をすることなく子供を設けた。

だからわずか10%の子供が誕生時に結婚していないまたは同棲していないカップルから生まれたことになる。これでもまだ誇張がある。なぜなら子供が誕生してから同棲を始めるカップルも多いからだ。関心があるのは明らかに2人の親から生まれた子供で伝統的(キリスト教的)な結婚をしているまたは同棲をしているカップルの子供ではない。スウェーデンの子供のわずか3%!しか片親から生まれていない。スウェーデン人は普段の行動が恐ろしく社会保守的なために政治的にリベラルなイデオロギーを保持し続けているのだ。

公平を期すとヒスパニックの子供の半数以上が未婚の両親から生まれてくるといったときそこにも同棲が含まれている。離別や離婚を考慮するとスウェーデンで片親しか子供のいない世帯が全体に占める割合は18.7%だ。アメリカのヒスパニックでは対照的に37%だ。

New York Times自体がこのことを記事にしている。「片親しかいない家族のもとで暮らしているラテン系の子供の割合は2000から6%上昇し38%になった。黒人や白人よりも増加率が高い」と。Krugmanはスウェーデンの片親世帯で育つ子供(私のような)は「その境遇を苦にしていないように見える。福祉が充実しているからだろう」と考えているようだ。これもまた正しくない。アメリカと同様にスウェーデンの片親家族の子供も両親のいる家族の子供と比べて社会的問題を抱える確率がはるかに高い。

「貧困に陥るリスクは片親しかいない子供の方が両親のいる子供よりも3倍以上高い。2009で28.2%、9.1%だ」

中道左派の経済学者Anders Björklundとその共著者はアメリカとスウェーデンの子供を直接比較している。

「我々は家族構成と子供の教育達成度、所得との関係をスウェーデンとアメリカのデータを用いて調査した。アメリカとスウェーデンの比較は両国の家族構成や政策の違いが大きいので興味深いものになる。両国の福祉の違いを要因としてスウェーデンにおいて家族構成は子供に負の影響を少ししか与えない可能性が考えられる。。だが我々は両国の政策や社会的環境の違いにも関わらず家族構成と子供との関連は驚くほど似通っていることを発見した。つまり家族構成は子供に対して負の影響を与えていた」

スウェーデンでもアメリカでも母子家庭の子供の所得は低く大学への進学率も低かった。この結果がどの程度家庭環境自体からよるのか交絡要因によるのかはわからない。両国で片親環境は低い社会資本へとつながり他の社会問題とも関連していた。結局片親しかいない子供の家庭環境は悪かった。

Krugmanは福祉国家では家族が崩壊していても大した問題ではないと考えていたようだ。上で示したようにこれは正しくない。Krugmanは実際の分析ではなく自身の頭の中にある空想のお花畑に依拠しているようだ。

真の問題はKrugmanのようなリベラル派がスウェーデンについての子供じみたファンタジーを信じていることではない。問題なのは彼等がスウェーデンについての表面的な理解にもとづいて急進的な提言をしていることだ。KrugmanのRoss Douthatsに対する返答は従って「多分、我々も同じことが出来るはずだ。だろう?」という(要領を得ない)ものになる。

私にRoss Douthatが何を伝えようとしていたのか言わせて欲しい。彼は何十年に渡る戦いの末、リベラル派は保守派との戦いに勝利したかのように見える(注 大統領選挙が終わった直後のこと)、だがリベラル派はその勝利を一般のアメリカ人に福祉国家を受け入れるように説得する形で手に入れたのではない、仮に選挙民の人種構成が十数年前のままだったとしたらRomneyは地滑り的な勝利を収めていただろう、リベラル派は人口構造と社会的分断という2つの力学により勝利を得たに過ぎないのだと(注 おそらく何のことかわかりにくいと思われるので補足する。ヒスパニック層は民主党に投票する傾向があるといわれている。そのヒスパニック層の総人口に占める割合が上昇したので選挙に対して一定の影響を与えるようになったといわれている。日本の例に例えるなら日本に住む韓国人の人数が増える→(仮に本当に日本の民主党が韓国びいきだとすれば)日本の民主党の支持率が高まる→支持基盤に有利な政策を行う→さらに支持を確保するというまさに普段ネトウヨが妄想している自体が現実にアメリカで起こっていることになる。ネトウヨの妄想が実現した非常に珍しい例といえる。ただしこの結果は非常に流動的なものなので本当に民主党に有利に働くかは定かではない)。

1980のスウェーデンを特徴付けるものは高い最高税率ではなく両親の揃った家族構成をもとにした極めて同質的な社会の方だ。リベラル派の勝利したというやり方では妄想の中のスウェーデンを再現するよりむしろ事態を悪化させるだけに終わるだろう。

UPDATE

Reihan Salamはこの記事に対してコメントしている。

「(*前後の文脈がはっきりしないので意味が取れないが)スウェーデンの社会政策が家族の分離の悪影響を緩和している可能性がある。そして外部の観察者はスウェーデンの福祉国家それ自体が家族を一つにしていると結論を下すだろう」

この点に関してスウェーデン人を祖先に持つアメリカ人を対照群として何らかの結論を出したいと思う。2006-2010の American Community Surveyを用いてこの群の子供を持つ未婚世帯の割合を計算してみた。

スウェーデン人を祖先に持つアメリカ人でこの割合は18.1%だった。これはスウェーデンでの数字と大体同じでアメリカの平均値より下だった。彼等はアメリカで生まれたスウェーデン人を祖先に持つアメリカ人だということを強調したい。よってスウェーデンの福祉国家に影響を受けていない。スウェーデン系アメリカ人がスウェーデンの家族と似たような結果だったことは文化や社会資本が経済政策よりもより重要な要因であることを示唆している。

アメリカ政府の保有資産は1京2800兆円?

Selling Federal Assets

by Alex Tabarrok

Institute for Energy Researchによると連邦政府が保有する石油とガスは1京2800兆円以上に相当するという。私はその数字は楽観的であるのではないかと思っているがそれでも資産の売却を検討してもいいのではないかと思う。

連邦政府の資産は主に石油、天然ガス、石炭などの鉱物、エネルギー資源だ。例えばアメリカは何百万エーカーの土地、何百億バレルの石油を保有している。現在、連邦政府は石油と天然ガスの開発に対して沖合海域のわずか2%、陸上の6%以下を貸し出しているに過ぎない。連邦政府が石油とガスの開発のために開放できる地域は以下になる。

・Arctic National Wildlife Refugeに1兆400億バレルの石油と8兆6000億立方フィートの天然ガス

・外洋大陸棚に8兆6000億バレルの石油と420兆立方フィートの天然ガス

・Naval Petroleum Reserve-Alaskaに896億バレルの石油と53兆立方フィートの天然ガス

・アラスカの外洋大陸棚に2兆5000億バレルの石油

・北極圏の北側の地質区に9兆バレルの石油と1京669兆立方フィートの天然ガス

・コロラド、ユタ、ワイオミング州を流れるGreen Riverに98兆2000億バレルのシェールオイル

これら119兆4000億バレルの石油と2京1500億立方フィートの天然ガスは納税者の所有物だ。石油を1バレルあたり100ドル、天然ガスを千立方フィートあたり4ドルで計算すると石油資源は1京1940兆円、天然ガス資源は860兆円となり合計は1京2800兆円になる。またはアメリカの債務の8倍に相当する。