Family Structure and Child Outcomes in the United States and Sweden
by Anders Björklund Donna K. Ginther Marianne Sundström
1. Introduction
両親の揃っていない家庭の子供は両親の揃っている家庭に比べて平均して成績がよくないことが知られている。例えばアメリカで片親の家庭で育った子供の高校卒業率と大学進学率は低い。スウェーデンでも子供の成績がよくないことが報告されている。だが家族構成が子供の成績に与える影響の研究は入り組んでいる。観測された相関は家族構成と子供の成績両方に相関する非観測の変数の効果を反映している可能性があるからだ。この効果は家族構成が子供の成績に与える影響の推定にバイアスをもたらす。この研究ではスウェーデンとアメリカのデータを用いて家族構成が子供の成績に与える影響を分析する。
2. Previous studies
2.1 Family Structure and Child Outcomes in the United States
McLanahan and Sandefur (1994)は4つのデータセットを用いて分析している。彼等は高校卒業率、大学進学率、大学卒業率が低いことを報告している。さらに十代での妊娠率が高く経済活動も低調であると報告している。Biblarz and Raftery (1999)は家族構成が子供の成績に与える影響の研究は家族構成をまとめる際の定義や調査期間に依存していることを強調している。母親の雇用状態や職業を制御した後では母子家庭の子供は父子家庭の子供や継親に育てられた子供よりもよい職業に就き教育達成度も高いと報告している。
再婚家族についての研究(継子とその異母兄弟)では継親と一緒に住む子供の成績との相関を調べている。Wojtkiewicz (1993)はNational Longitudinal Survey of Youthを用いて調査した。彼は継親と一緒に生活する期間の長さと子供の高校卒業率との間に負の相関があると報告している。より最近ではWojtkiewicz (1998)は大学進学と家族構成との関係、または家族構成の変化との関係を調べている。National Educational Longitudinal Surveyを用いて彼は安定した家族構成を1988から1992に掛けて変化しなかった家族として定義している。安定した片親家族の子供(この期間中に変化が無かったのでこの場合も安定に入る)は不安定な片親家族の子供や継子よりも大学に進学する傾向が高いと報告している。PSIDを用いてBoggess (1998)は継父-継子関係にある家族の子供は高校卒業率が低いと報告している。Ginther and Pollak (2003)は継母-継子関係と継父-継子関係の両方とも子供の成績は似通っていて伝統的な核家族の子供に比べて低いと報告している。
この分野の研究の多くは両親の揃っていない家族の子供の学習到達度は総じて低いと報告している。だがこれらの研究には因果関係の解釈に関して問題がある。家族構成に関して選択バイアスがないと仮定しているからだ。Manski, Sandefur, McLanahan, and Powers (1992)はこの問題を考慮して家族構成が高校卒業率に与える影響を調査している。彼等は家族構成の影響は課せられた仮定に依存していると報告している。「効果をよりはっきりと推定したいならば家族構成と子供の成績を生むことになった過程についての事前の情報が必要だ。この過程に関して研究者の信念がお互いにおいて異なる限りその推定結果もまた同様に変化するだろう」と述べている。その後の研究はこの結論を念頭においている。
研究者は固有効果の推定を用いて選択バイアスを制御している。妥当な仮定のもとではこれにより選択バイアスを制御できる。Gennetian (2001)はNLSY-Childデータを用いて調査している。家族間と個人間の非観察の異質性を制御することにより彼女は母子家庭の子供に長期にわたる負の影響を与えるが継親や異母兄弟のいる家庭の子供では影響は有意でなくなったと報告している。Sandefur and Wells (1999)はNLSYの兄弟のサンプルを用いて教育達成度の関数を推定している。非観察の異質性を制御した後では両親の揃った家族以外の構成は小さな負の影響を与えていると報告した。Case, Lin and McLanahan (2001)はPSIDを用いて生物学的母親、そうでない母親と暮らす子供の学習到達度を調べた。彼等は生物学的母親から離れて暮らす子供の学習到達度は低いと報告した。最後にEvenhouse and Reilly (2001)はNational Longitudinal Study of Adolescent Healthのデータを用いて再婚家族の子供の幸福度を調査した。再婚家族の兄弟と比較して継子の成績は異母兄弟と比較してよくなかった。すべてではないもののこの研究のいくつかの結果は片親家庭で育つ子供や継子として育つ子供は負の影響を与えていることを示した。
他の研究者は親の死を準自然実験として家族構成が子供の成績に与える影響を調べた。そして親の死による家族構成の変化は子供の成績に対してわずかな影響しか与えていないと報告した。Lang and Zagorsky (2001)はNational Longitudinal Survey of Youth(NLSY)を家族の多様な背景構造を制御するために用いた。死による不在を制御した後では家族構成は子供の成績に対してわずかな影響しか持たなかった。Biblarz and Gottainer (2000)は父の死により母子家庭となった子供と離婚により母子家庭となった子供とを比較した。離婚のケースが死別のケースよりも教育達成度が低かった。
上記から家族構成は子供の成績と相関していることが示された。だが選択バイアスを制御した研究では仮定によって異なる結論を報告していた。
3.1 Data
Measuring Family Structure
一見したところ家族構造の測定は簡単に見える。子供は1人か2人の親と暮らしているのではないのか?この簡単なやり方では複数の兄弟がいる世帯や家族構成の時間による変化を考慮することが出来ない。複数の兄弟がいる世帯では兄弟の1人が生物学的両親と暮らし異母兄弟は生物学的親と継親と暮らすという可能性がある。家族構成の測定は親と兄弟間の関係性を考慮しなければならない。
加えて家族構成は時間と共に変化する。例えば継子は3つの家族構成を経験する可能性がある。生物学的両親と暮らす、片親と暮らす、継親と暮らすの3つだ。子供の特定の年齢で測った家族構成(NLSYでは14歳)はこれらの関係性を十分に把握できない可能性がある。多くの研究はある年齢での測定を子供時代を通した家族構成の代理指標として用いる。Wolfe, Haveman, Ginther, and An (1996)はこの代理指標の妥当性を調査して信頼できない推定結果をもたらす可能性があると報告している。
3.2 Samples
両国の家族構成の分布を表1a-cに示す。アメリカの2つのサンプルは互いに少し異なっていることが見て取れる。この違いはPSIDでの低所得世帯のオーバーサンプリングから来ている。両親の揃っていない家族で暮らす傾向が高い。スウェーデンのサンプルは逆にNLSYのものに近い。例えば子供の70%はその子供時代を両親と暮らし父親と継母と暮らすというのは最も少ない。子供時代の大部分を片親と暮らす子供の割合はアメリカの方がスウェーデンよりも高い。
平均就学年数はアメリカの方が長いがそれの家族構成による違いは非常に似ている。子供時代を両親と暮らした子供は高い水準を示しそうでない子供はその逆だ。両国で両親と暮らした子供はそうでない子供と比べて追加で1年長く学習に費やしている。
次に外生的な選択を仮定して横断面の分析を行う。簡単化のために2人の子供がいる家族を考える。1人の子供に対する人的資本への投資は家族の経済資源、観測可能な親の特性(教育)、家族環境、兄弟構成の関数とする。家族jの子供iは以下の投資の意思決定を行っているとする。
HCij =α Sij + β FSij +γWij +δ Xij + uij (1)
HCijは子供の成績または所得だ。Sijは兄弟構成を示す。FSijは両親と暮らした子供時代の期間を示す。Wijは観測可能な親の特性で、Xijは個人の特性で、uijは誤差項を示す。
誤差項を3つの部分に分解できる。μij=φj+ηi+νij、φjは家族固有の部分で、ηiは個人特有の部分で、νijはランダム項だ。φjが家族構成と相関していれば兄弟間で差分を取れば選択バイアスは消滅するだろう。だが家族構成が個人固有の部分と相関していれば選択バイアスは残ったままになる。家族構成は家族固有の効果φjを通してのみ影響を与えると仮定し、さらにすべての家族効果は兄弟間で不変Wij=Wjと仮定し、式(1)を兄弟で差分を取ることにより以下の式を得る。
ΔHC =αΔS + βΔFS +δΔX + Δu (2)
この仮定のもとでこのモデルは家族内で変化しない観察、または非観察の任意の変数を取り除く。ここで取る方法は式(1)の変種を推定するために横断面での回帰を行うというもので異なる制御変数と家族の固定効果を式(2)を用いて制御する。
4.1 Cross-section estimations
まず就学年数と異なる形態の家族で過ごした子供時代の期間の割合との関係を年齢と性別を制御して推定する。結果は表4aに示してある。興味深い事に両国での関係は驚くほど似通っていることが判明した。
さらに同様の式を用いて年間所得と異なる家族形態で過ごした期間との関連を両国の年齢構造と性別構造を制御して推定する。結果は表5aに示す。これらの関係も両国でとても似通っていることが判明した。兄弟構成と親の教育水準を制御した場合(表5b)に両親の揃った家族とそうでない家族の教育成績の差はまた減少した。加えて今度は兄弟構成は両方のサンプルで重要だった。PSIDでは所得と両親が同じ兄弟の人数とに負の相関があった。さらに異母兄弟と過ごす期間とも負の相関があった。スウェーデンでは所得は両親が同じ兄弟の人数と異母兄弟の人数の両方に負の相関があった。これらの結果は大家族は子供の人的資本の蓄積にわずかな資源しか投資していないことを示唆している。さらに兄弟構成は子供の成績の変動に対して家族構成よりも相対的により重要であることを示している。
表6aに家族構成と教育達成度との関連を推定した結果を示す。スウェーデンに関しては異父兄弟と教育達成度との関連を調べるのに十分なサンプルサイズがある。表4aでは家族構成と就学年数と負で有意の相関があった非観測の異質性を制御した場合には両国でもはや有意ではなくなった。これは両親が同じ兄弟、異母兄弟ともに同じだ。表6bに家族構成と所得の関連を固定効果モデルで推定した結果を示す。非観測の異質性を制御した場合に家族構成変数の係数は低下しさらに有意ではなくなった。例外はNLSYデータでの継母と生物学的父親という家族構成と所得との関連だ。非観測の異質性を制御した後でも子供時代を継母と暮らした場合には所得に対して負で有意の相関があった。
5. Conclusions
(省略)
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