by Tim Worstall
統計局は所得格差に関するデータを丁度発表したところだ。。データ好きな私のようなタイプにとってはすごくおもしろい読み方も出来る。これらの数字に関してわずかしか理解されていない興味深いことがある。これらの数字を用いて多くの人がアメリカはなんて格差が大きいんだろうと叫ぶ。数字が示しているのは実際にはアメリカは他の先進工業国と変わらないということなのにだ。
問題はアメリカの数字をそのまま他の国と比べる場合に起こる。様々な目的のために集められた数字をそのまま比較してはいけない。以下はNYTの例だ。
「アメリカの2011のジニ係数は0.475で2010の0.469より上昇した。ジニ係数は昨年20の州で上昇した。他の州では変化が無かった」
「ニューヨーク州のジニ係数は0.503でこれは同州の所得分布がコスタリカと同じであることを意味する」
彼等が用いた数字はここにある。この数字を見てあなたは次のように思うかもしれない。アメリカの数字が0.475でスウェーデンの数字が0.23だとして低い数字が所得格差が小さいことを意味するならばスウェーデンがアメリカよりも所得格差が小さいことを示しているのだと。その前提によればそうなる。ただしそれは数字からそうなるのではない。
アメリカの数字は税引き前移転前のものだ。スウェーデンの数字は税引き後移転後のものだ。アメリカの数字は所謂市場所得と呼ばれるものでスウェーデンの数字はそうではない。
さらに2つの強調したいポイントがある。再度NYTからだ。
「統計局の新しいレポートによるとすべてのアメリカの州でニューヨーク州が最も所得格差が大きかった。ワイオミング州が最も所得格差が小さかった」
その結果は極めて予想どうりのものだ。データが大きくなるほどそのばらつきが大きくなることが予想される。2000万人のニューヨーク州が50万人のワイオミング州よりも所得格差が大きいと自然に予想できるだろう。
例題を変えて気温の話にしよう。気温が一年を通しても年度毎にも変動することを我々は知っている。より多くの年度で気温を測定した場合により極端な値を観測する確率が上昇するだろう。同様のことが降水量やハリケーンの発生頻度などにも当てはまる。この効果は多くの分野で懸案事項となっている。つまりこの外れ値はトレンドに何か変化が起こったのか、それともデータがより拡大したからなのかと。気候変動の研究で例えるとある年に極端に暑い夏を経験したとしてそれは我々が気温を何百年に渡って観測してきたからかもしれない。そのような外れ値は時々やってくるかもしれない。最近の夏が平均的に以前の夏よりも暑いと思うようになった場合にばらつきではなくトレンドについて考えるようになるかもしれない。
同様のことが人口が増加した場合の所得のばらつきに関しても当てはまるだろう。ニューヨーク州がワイオミング州よりも所得のばらつきが大きいことは自然だ。さらにニューヨーク州にはバッファローとウォールストリートがあるので人口が多いこと以外にもニューヨーク州の所得格差が大きいと予想する理由がある。
アメリカは所得格差が非常に大きいのか?それは政治的、価値観的質問なので答えることが出来ない。しかし統計局が発表している数字は市場所得に関してだ。その基準ではアメリカはドイツやフランスよりも所得格差が小さい。この基準では特に所得格差が大きい国ではない。税引き後移転後の所得で見た場合にはアメリカは他の国より所得格差が大きくなる。だが個々の国でなくヨーロッパ全体と比べた場合にはその差は0.30と0.38とはるかに小さくなる。
(付け加えると私はヨーロッパ全体のジニ係数を信じていない。ものすごく低すぎるように見える。このことについてはもう少し考えてみたいと思う。これはヨーロッパ全国民のジニ係数というよりは個々の国のジニ係数の算術平均ではないかと思う)
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