彼らは高い税率と「高めの成長率が伴う」傾向にあるという。その証拠として、彼らは最高税率が相対的に低かった1980から2010の一人あたりGDP成長率が1.68%で、最高税率が70%以上であった1950から1980の一人あたりGDP成長率が2.23%であったと述べる。加えて、彼らは「1970年代以降のOECD加盟国の経済成長率と最高税率の間にはっきりとした相関を見つけることが出来なかった」と述べる。
彼らの分析には深刻な欠点が幾つもある。
NBERはその状況を以下のように記述している。「第二次世界大戦の終了時点で、アメリカはほぼ唯一の工業生産国だった。1950の工業品の産出量の約60%を占め、そのGNPは現在のOECD加盟国の合計の61%を占めていた。これは一時的な現象だった。ヨーロッパは回復し、工業品の競争相手となった」。
2.実効税率は法定税率よりもはるかに低かった。
よって、Scott Sumnerが指摘しているように、規制緩和、民営化、最高税率の引き下げなどの改革の効果を見るためには相対的な経済のパフォーマンスを見る必要がある。サムナーは市場よりの政策をとった国の方が成長率の低下がより小さく、市場よりの政策をとらなかった国を上回っていることを指摘している。彼がインタビューで述べているように、「イタリアやギリシャなどの改革をあまり行わなかった国は、その成長率が7%から2%以下に低下している。アメリカとイギリスはそれらの国よりも低下幅がはるかに小さかった。アメリカで成長率はほんの少し下がった、でも劇的にではない」。
イギリスの独立機関であるFiscal Oversight Commissionは最高税率を50%から45%に引き下げても税収に中立だと議論している。税収を最大化させる税率はその範囲内であることを示唆している。イギリスには州の所得税がないので、税収を最大化させる税率はアメリカでそれよりも低いことが予想させる。
5.クリントン時代の増税を思い出せ。
クリントン時代の増税で、最高税率は39.6%になった。オバマ大統領もこの水準に引き上げることを望んでいる。だが1995に、クリントン大統領は税率を上げすぎたことを認めている。実際、それらの増税により集められた税収は財務省の予想した額の3分の1以下だった。
Diamond and Saezは「租税回避の機会をなくす」ために、譲渡所得に掛かる税率と配当に掛かる税率を労働所得に掛かる税率と同じ水準まで引き上げることを議論している。これは、公平性の名の元に成長を阻害する方向へと税制を変えてしまうだろう。
現実には、資本に対して課税するべきではない。AEIの消費税に関する研究は、「所得税は貯蓄に対してべナルティを与える。所得税はアメリカの資本の蓄積に対して有害な影響を及ぼしている。資本の蓄積の低下は労働生産性と実質賃金を低下させ、将来の世代の生活水準に悪影響を与える。ある研究は、消費税への以降によりアメリカの経済規模は長期的に9%拡大すると示唆している。他の研究はそれよりも小さな値を推計しているが」と議論している。
そして、Colgate大学の研究は、「金融所得への税率が低下すると、長期においてイノベーションが促進され労働生産性が上昇する」ことを発見した。ケネディ大統領が指摘していたように「キャピタル・ゲインへの課税は投資に直接的に影響を与える。(税率の低下は)リスク資本を静的なものから動的なものへと変え、ベンチャー企業の資金集めを容易にし、それ故経済を強化し潜在成長率を高める」。
7.Diamond and Saezは学問的誠実さを欠いている。
まとめ
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