Crime in Europe and the US
Paolo Buonanno, Francesco Drago, Roberto Galbiati, and
Giulio Zanella
1. Introduction
米国外では犯罪に関する研究が少ない。欧州では特にそうだ。。我々の知っていることは米国のデータに基づいていて、Levitt (2004) and Levitt and Miles (2007)にまとめられている。ここでの目標はこのギャップを埋めることにある。欧州のデータを用いて国際比較を行う。ここでは欧州とは、オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、イギリスを指す。
1990年代に入って米国の犯罪率が低下したのはよく知られている。対照的に欧州では1970年代以降犯罪率が上昇し続けている。通説とは逆に今日では欧州の方が米国より犯罪が多い。図1に総犯罪率の変化を示す(以下aは米国と欧州全体をbは米国と欧州個別の国を示す)。
1970では欧州の総犯罪率は同年の米国の63%だった。2007になると欧州の犯罪率が85%高くなった。この逆転は40年間の欧州の犯罪率の上昇と米国の90年代からの下落の両方の要因が寄与している。財産犯罪と暴力犯罪でも同様の傾向を示す。図2は財産犯罪のトレンドを示す(*省略)。図3に暴力犯罪のトレンドを示す。
犯罪学では若い男性がより犯罪を起こすことはよく知られている。18歳の男性は35歳の男性に比べて5倍財産犯罪を起こしやすい。暴力犯罪の比率は2:1だ。これらを元にするとベビーブーマーの高齢化がもたらす人口構成の変動は犯罪率の低下に影響を与えると思われる。Levitt (2004)によると65歳以上の個人の逮捕率は15-19歳の2%だ。だがこの要因で説明できる犯罪率の減少はわずかだ。図4aと4bに15-34歳の男性がサンプルに占めるシェアを示す。
2.3.2 Immigration
移民とネイティブの犯罪性向が違うのはいくつかの理由がある。途上国から先進国にやってくる移民は若く、教育水準が低く、そして男性だ。
移民と犯罪の関係を調査したものはそれほど多くない。個人データを用いたものでは米国の現在の移民はネイティブよりも収監率が低いことをButcher and Piehl (1998b, 2005)が示した。都市中心部の全体データを用いた調査では移民の流入が犯罪率に有意な影響を与えていないことをButcher and Piehl (1998a)が示した。Borjas, Grogger and Hanson (2010)は近年の移民はネイティブ黒人を労働市場から押しのけることにより犯罪活動を活発化させていると論じた。欧州のものとなるとわずかだ。Buonanno and Pinotti (2011)はイタリアのプロビンスについて調べた。その結果、移民がイタリアの犯罪率に影響を与えている推計は見つからなかった。
図5は米国と欧州の移民率の推移を示してある。
2.3.3 Abortion
中絶仮説に関する議論はここでの範囲を超えている。だが欧州のデータに分析を拡張することは有用と思われる。
欧州では中絶の合法化は時期的にまちまちだった。ある国は米国同様70年代に合法化したが他の国はもっと後だった。
図6と図7に米国と欧州の中絶率を示す。図7は生まれていたならば成人していたであろう子供の数が米国と欧州で90年代から上昇し始めている様子を示している。Donohue and Levitt (2001)と同様の手法を用いて中絶された成人の割合を推計した。彼らのものとここでの違いが一つあるとすればデータの制約によりコーホート内の逮捕率で中絶率を重み付けできなかったことだ。
5. Concluding remarks
残念なことに移民と失業率に関して信頼できる推計は行えなかった。OLSによる推計によれば移民と失業率は犯罪率を増加させている。しかしOLS内のバイアスを評価することは難しい。人口の構成と収監率が無視できない影響を犯罪率に与えていることがわかった。簡単な試算によると欧州と米国の収監率の差は総犯罪の逆転の17%、財産犯罪の33%、暴力犯罪の11%を説明する。中絶率が犯罪率を低下させるという関係を欧州で見出すことは困難だった。
我々の分析のインプリケーションは何か?第一の点は、犯罪率の逆転が存在することだ。欧州の当局者は犯罪(特に暴力犯罪)が非常に重大な問題になっていることを認識する必要がある。我々は米国との比較という考えに慣らされてきたために変化を捉えられないでいる。殺人率が米国の方が高いという事例があるため欧州が安全な場所だという間違った認識を生み出してしまっているように思われる。だが殺人は暴力犯罪のごくわずかな部分を占めるにすぎない。第二の点は、厳罰化は効果があるかもしれないということだ。ここには二つの問題がある。厳罰化がなぜ効くのかが分からないのでどのように厳罰化すればよいのかの基準がないことだ。収容期間が効果があるのであればこの点で厳罰化すればいい。抑止を通して効果があるのであれば罰を課して執行猶予を与えるのがより良い政策になるだろう。さらに厳罰化は費用対効果のある政策であるか不明であることだ。
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