David Henderson
ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、クルーグマンは「Debt, Diversion, Distraction」という記事を書いている。その記事の題からも予想が付くと思うが、将来の財政赤字の拡大や債務の増加を恐れてより重要な問題から目を逸らされるべきではないと彼は主張している。その論理は誤りだ。
でもどうして議会予算局(CBO)のデータを使用しない?将来の予測には不確実性が伴うだろう。だがCBOの方がCBPPよりも恐らくは財政赤字に対してより厳しいスタンスを保っていると思われる。CBPPは2046年のアメリカの債務対GDP比は113%だと主張しているが、CBOの見通しでは141%に達すると予想されている。これは無視できないほどの大きな違いだ(でも、ほんの数年前にCBOが400%だの500%だの予想していた時にはそれには医療費の増加率の低下が反映されていないからでは?とコメントしていた人もいたのに無視していましたよね?)。
今度は、誤っている部分に移ろう。彼はこのように記している。
「従って、架空の債務問題に「対処する」ための対策としては長期での給付のカットと(嫌々ながらも)増税が必ずと言っていいほど提案される。ようするに、それには現在での政策の変更、それどころか5年先10年先での政策の変更も伴われないかもしれない。ではどうしてその問題を現在取り上げる必要があるというのか?」
だが例えば今から10年間給付を削減するのと、恐らくは彼が好んでいると思われる10年間待ってそれから即座に削減するのには本当に違いはないのか?将来のことを考えている人に聞けば大きな違いがあると答えるだろう。もし私の年金が例えば20%ほど削減されると前もって知っていれば、私は今から貯蓄を始めるだろう。だがもし私が政府は今から10年後に給付を削減するだろうと考えていて、でもそれが本当かどうかわからない場合にはさらには誰がどれぐらい削減されるかはっきりとわからない場合には貯蓄の計画をたてるのは困難になるだろう。
「もしそれでも真剣に意義を唱えようとするのであれば、将来の調整を予め定めておけば移行がスムーズに行えると主張するだろう。だがそれは些細な問題だ。多くの時間を割くにはまったく値しない。債務の問題を話し合わなかったとしても、それによって将来が少しでも悪くなることはありえない」
BC writes:
クルーグマンのロジックによると、私たちは年金を完全に廃止するべきだとなってしまう。人々が必要としているかも完全には分かってさえいないのにどうして今将来の給付を約束しているのか?もしかしたら株式市場に非常に大きな好況が生まれるかもしれないし、人々は私たちが予想するよりも多く貯蓄するかもしれない。どちらにしても、もし高齢者が政府が提供する退職給付を幾らかでも必要としていることが判明するのであればその時になって初めて議会はその不足分だけを準備すればいい。どちらにしてもアメリカの年金はすでにpay-as-you-goの原則を採用しているのだから、どうして今将来の給付を約束してしまうのではなくその時その時になって課税しどれぐらい給付を行うかを決めてしまわないのか?
彼はこのように議論を続けるだろう。「この方法を試してみようじゃないか。そうだ、将来においても年金に依存している高齢者がまだ残っているかもしれない。だが年金の擁護者たちはまるで自分たちがこの問題を解決する手段を提供しているかのように語る。将来の給付への依存に対する彼らの解決策とは…将来の給付を約束することだと言うのに!」
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補足:2010年頃にCBOが出していたアメリカ政府のすべての債務の見通し
反米陰謀信者が最大の心の拠り所としていたアメリカ政府の隠れ債務の根拠がその数字を出していたCBO(もしくはまったく類似の機関であるOMB)によってすでに否定されていたという話。現在ではGDP比で見て141%程度に留まるだろうと見通しが変更されている。どうしてこれほどまでに見通しが変更されたのかというと理由は単純で、医療費の増加率がアメリカでは激減したから。
こんな簡単なことも馬鹿には理解できないらしい…
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