2016年1月18日月曜日

世界中に大不況と貧困をもたらした金融危機の真の原因はスティグリッツが絶対安全だと太鼓判を押して強力にプッシュした政府系住宅金融機関だった?Part1

Why the Left Is Losing the Argument over the Financial Crisis

Peter J. Wallison, Edward J. Pinto

クリスマスの前日だというのにJoe Noceraが我々を攻撃するという失態をまた晒した。

左翼の置かれている現在の状況を知るという目的のためには読む価値がある。彼によると、我々は「ほとんど単独で」、「ファニー・メイとフレディ・マックが金融危機を引き起こしたという神話」を作り上げたのだという。彼によると、この神話を信じている者には議会共和党やウォールストリート・ジャーナルなどが含まれるという。

金融危機が政府の住宅政策によって引き起こされたと主張するワシントンのシンクタンクに所属する2人が、金融危機が強欲と規制の欠如によって引き起こされたとするリベラル派の主張を打ち砕くものとして広く受け入れられた代替的な見方を作り上げたというのは些か説得力に欠けると思われる。結局、通俗的な説明は政府によって作られたもので、ニューヨーク・タイムズによって伝播され、外国、国内問わずその他すべての主要な新聞や電子メディアに疑われることなく受け入れられていった。だがノシエラの世界では通俗的な説明に対する脅威は徹底的に鎮圧されないと気がすまないようだ。

我々は彼が恐れるほど成功したかは疑わしいと思っている。だが彼とその仲間たちが金融危機の原因に関する議論に敗北していっているということには自信を持っている。我々の考えがニューヨーク・タイムズの脅威となっているかどうかは彼の攻撃的な記事を読めば分かるだろう。記事は左翼のやり方の完全な代表例となっている。事実を無視、自分達の意見に反対する者は嘘つきさらには(人種差別主義者)と呼ぶ、数え上げればきりがないのでこのぐらいにしておく。この誹謗中傷は左翼の反響室を通して律儀に繰り返されていく。

金融危機の原因に関する通俗的な説明を我々が打ち崩したとすれば、それは憎悪のこもった醜い誹謗中傷ではなく事実によって説得される公正な心を持った人々のお陰だろう。金融危機はファニー、フレディ、HUDによって実行された政府の住宅政策がなければ起こらなかったと我々は議論してきた。そのような政策には幾つかの種類があるが最も重要なのは1992にファニーとフレディに初めて課せられ2007までHUDによって拡大された、安価な住宅を低所得層に提供するよう義務付けがされたことだ。

以下にまとめてあるものは我々が頼りとしていた過去のオリジナルの数字(ファニーとフレディが当局に提出していたデータ、そして当時の銀行規制当局が信じていたデータ)を、ファニーとフレディの複数の役員に対するSECの最近の告発によって明らかにされた新たなデータによって補完したものだ。特に注目に値するのがファニーとフレディがSECと交わした訴追免除合意だ(映画でよく見るあれ)。真実を話す代わりに訴追が免除される。その真実はサブプライムとAlt-AへのGSEの関与に関する我々のオリジナルの研究を確認…どころか多くのケースでそれを遥かに上回るものだった。これらは事実だ。そうではないと妄想しているノシエラやその仲間たちはこれらの事実を受け入れなければならない。

例えば訴追免除合意に同意した上で、2008の6月30日にフレディはサブプライム・ローンの残高が以前に開示していた(1ドル=100円として)6000億円ではなく24兆4000億円で信用保証ポートフォリオの14%を占めることを明らかにした。フレディはさらにreduced documentation loans(ローンを申請する際の情報の開示が免除されるローンのこと。例えば住宅ローンを申請する際に普通は所得の開示が求められるがそれでは低所得者が住宅ローンを得ることが出来ないということで情報の開示を求めないようにリベラル派の政治家が圧力を掛けた)だけでも54兆1000億円であることを明らかにした。フレディがreduced documentationのローンを含むとかつて言っていた以前に開示していた19兆円のAlt-Aローンを遥かに上回る(ブッシュ大統領は嘘をついた!という嘘には激怒するのにこれらの金融機関の嘘は一切報道せず嘘をついていない他の金融機関への憎悪だけは煽るのがネオマルキストたち)。

SECの文書により以前に公開されていなかったサブプライム・ローンとAlt-Aが103兆円であることが明らかにされた。81兆2000億円または80%は最近の我々の調べの中に既に含まれている。

SECの調べにより21兆9000億円と143万の住宅ローン数が我々のデータに加えられることになった。それによりサブプライム・ローンとAlt-Aの合計は204兆円と1337万の住宅ローン数になった。

SECの新しいデータを我々の元の推計に加えると金融危機前の2008の6月30日時点ではサブプライム・ローンとAlt-Aは2800万存在していたことになる。その金額は480兆円だ。これはアメリカのすべての住宅ローンの半分に相当する。これらのローンの中で74%以上が連邦政府機関と政府の住宅政策の制約下にある企業のものであった。これはこれらの低品質の住宅ローンの需要がどこから発生したものであるかを示している。ファニーとフレディ自体が1300万以上のサブプライムやAlt-Aに関わっていた。割合で言うと政府全体の65%に相当する。

我々の元の推計をSECのデータによって補完したものを以下の表にまとめた(以下省略)。

(金融)規制は大きく緩和されたと故意に偽り続けていた馬鹿な経済学者に大量の人が騙された?Part3

Correcting a Leverage Myth about ‘Capitalist Fools’

Peter J. Wallison

ニューヨーク・タイムズの2008の10月3日の記事でSteve Labaton記者はSECが5つの大手投資銀行(Bear Stearns, Lehman Brothers, Morgan Stanley, Merrill Lynch, and Goldman Sachs)がレバレッジを33倍に引き上げることを可能にする規制を採用したと主張した。その記事では2004の4月に採用されたSECの「新資本」規制の改訂をSECが自由化の方向に向かっていたことの証拠と主張されていた。「その規制が緩和されて以降」、「各銀行は緩和された規制から利益を得ることが出来るようになった」と彼は主張した。その記事(専門的な知識がまったくなくニューヨーク・タイムズの記事の正確性に頼るほかない多くの人に影響を与えた)は極めてミスリーディングなものとなっている。その犠牲者の一人がスティグリッツで2009の1月のVanity Fairに書いた記事でLabaton記者の誤りをそっくりそのまま繰り返している。これは事実を確認することが出来ない人々の間で繰り返し伝えられるうちに間違った話がどのようにして真実とされていくかの格好の例だろう。

SECの市場取引部門の責任者であるErik Sirriによる最近の演説を聞けばLabatonがSECによる2つの異なる改訂を乱雑に一括りにしていることがはっきりと分かる。2004の4月の規制の変更は5つの大手投資銀行の証券子会社にのみ影響するものでそしてそれら証券子会社に求められる「純資本」の最低基準額の計算方法に関係するものだ(この資本基準は証券会社に適用されるものでその親会社にではない)。Sirriが明確にしているように最低必要資本額も証券会社の純資本それ自体も規制の変更後も実質的な変化はなかった。

それらの親会社のレバレッジはそれとは完全に異なる話だ。2004にEUからの要請に従うために5つの大手投資銀行は自主的にSECの監督を受け入れた。5社のEUでの活動には母国の規制当局による統一された監督の下であることが求められたためだ。

その監督の一環としてSECは5社にバーゼル規制に適合しているか各社の自己資本比率を報告することを求めた。5社にレバレッジ比率を引き上げることを許可した等という改訂など存在しない。それ以前に、レバレッジ比率に関する懸念はもっと広い視点から見るべきだ。レバレッジ比率は債務と資本の比率それ以上でも以下でもない。レバレッジ比率33倍は、資産価値が大幅に低下する懸念がある場合にはリスキーで資産価値が低下する恐れがない場合にはリスキーではない。資産がアメリカ国債であればレバレッジ比率が35倍だとしても特にリスクがあるという訳ではない。アメリカ国債の価値が大きく低下する可能性は小さいだろうし資本の「クッション」がわずか3%だったとしてもリスクを大きく取っているという訳ではない。従って投資銀行のレバレッジが(Labatonによると)33倍だったとしても各社の資産が何であったかを知るまでは何も分からない。

だが投資銀行がリスクを取っていたと仮定してもSECがその役割を完全に放棄していたというLabatonの主張はデータから否定される。Federal Reserve Bank of BostonのEric Rosengrenは5つの大手投資銀行のレバレッジ比率が2003の22倍(SECが監督する前)から2007の31倍へと平均で見て上昇していると報告した。だが資産の質に関する知識なしには特に際立ったリスクテイキングの増加とは言えない。投資銀行は商業銀行ではないということを認識することも重要だ。彼らは政府によって保護されているわけではないばかりか(保護された)預金を受け付けているわけでもない。(親会社の)顧客の口座を保護するためその証券子会社には自己資本比率の規制が求められているが親会社自体にはリスクテイカーであることが期待されている。その理由により、SECはレバレッジ比率よりも流動性の方(契約が満了した時に債務を支払うことが出来る能力)により関心を持っていた。

(金融)規制は大きく緩和されたと故意に偽り続けていた馬鹿な経済学者に大量の人が騙された?Part2

規制政策の多くは金融危機の直接的な原因となった。過去の政策(特に住宅規制と資本規制)を調べることなしには歴史から学ぶことは出来ないだろう。

金融危機に対して規制政策が果たした役割は歪められた形で伝えられている。このエッセイでは以下の神話と誤解を正そうと思う。

神話1: 規制当局は新しい金融商品に関して何も知らなかった

神話2: 規制緩和によって市場は危険な取引を行うことが可能になった

神話3: 政策当局は金融市場を規制するのに市場の規律に頼りすぎていた

神話4: 金融危機は主に短期の現象だ

神話5: 金融危機を防ぐ唯一の方法はより規制を強化することだ

Myth 1: Banking regulators were in the dark as new financial instruments reshaped the financial industry.

何十年も前から金融業界では多くの金融商品が開発されてきた。それらにはCDO(債務担保証券)、クレジット・デフォルト・スワップ、SPV(特別目的事業体)、プライベートラベルの住宅ローン証券が含まれる。これらの新商品の特徴について説明されることはないままにこれらはまとめて現在では「シャドウバンキングシステム」と呼ばれるものを作り上げたとされる。これにより銀行は住宅ローン証券を短期債でファイナンスすることが可能になった。これはそれらの資産のリスクに対する市場の認識が変化した時に金融機関に流動的な準備が不足することを意味する。さらに損失をカバーするための十分な資本が欠けることも意味する。

金融業界に起こった劇的な構造変化は一般大衆にはほとんど気が付かれなかっただろう。メディアもほとんど無知だった。だが規制当局がこれらの発展に気が付いていなかったというのは神話だ。

現実はというと規制当局がこれらの新商品を監督し承認してきた。例えば、2006のスピーチでFRBのBen Bernankeは、

「リスクの売買を可能にした新商品の発展により多くの銀行は伝統的な貸出慣行から(現在の信用状況、市場の状態、収益機会の下で)最適な資産の組み合わせを模索することが可能になった。現在の銀行は債務者、ポートフォリオ濃度、満期、ローンの大きさなどを管理、制御することが可能となり問題資産が損失を生み出す前に対処する、または問題資産を処分することさえ可能になった。多くの銀行はリスクマネジメントの一環として自身のポートフォリオにストレステストも行っている」。

「銀行はローンシンジケーション、ローンの売買取引、クレジット・デリバティブ、証券化などにより信用リスクやその他のポートフォリオリスクを積極的に管理できるようになった。例えばクレジット・デリバティブの取引残高は過去10年で拡大し2005には(1ドル=100円として名目値で)1800兆円に達した。よく名前の知られた企業のクレジット・デフォルト・スワップの取引残高は各企業が発行した債務の取引残高を現在では上回っている」。

バーナンキはこれらの新商品を銀行監督当局と規制される側の金融機関との協調の賜物だと説明している。同様にまた同じ時期にIMFもこれらの新商品は「銀行業界と金融システム全体をより頑健なものにした」と報告している。

新しい金融商品がもたらすであろうシステム全体への影響に規制当局が気が付かなかったというのはまったくの神話だ。現実はというと規制当局はシステミックリスクの監視に非常に熱心だった。だが金融業界と同様に規制当局も新商品がシステミックリスクを低下させると考えていた。規制当局にシステミックリスクを監視させることを義務化させなかったのが問題ではない。規制当局に欠けていたのは判断と考察力だ。

Myth 2: Deregulation allowed the market to adopt risky practices, such as using agency ratings of mortgage securities.

ある論文が指摘しているように、「市場の規律は投資家が格付け機関に過度に依存したために崩壊した」というのは神話だ。市場ではなく、格付け機関の使用を強制したのは規制当局だというのが事実だ。銀行規制当局、特に2002の1月1日に施行されたルール以降はダブルA、トリプルAに格付けされた資産を保有する銀行の自己資本比率規制に猶予を与えた。

市場は規制当局ほど格付けに取り憑かれていたのでも何でもない。格付けされた証券の多くは市場で取引されてさえいない。銀行は市場で取引するためではなく単に自己資本比率規制を満たすただそれだけの目的の為に高格付けの資産を購入している。それらの資産は危険資産と見做されないためだ。

このような格付け機関の使用のされ方は当時から批判されていた。ファニー・メイとフレディ・マックはこのことに関して警鐘を鳴らしていた。Shadow Financial Regulatory Committeeを召集した経済学者の集団は市場で取引されていない証券の格付けがインフレされていると警告した。これらの警告にも関わらず政策当局は格付けに依存した資本規制を金融機関に強要した。

規制による自己資本裁定が金融危機時に危機の原因となったとされる多くの金融新商品の主な開発または購入動機だった。例えば銀行はSPVやSIVを用いて住宅ローン証券をファイナンスすることにより自己資本比率規制を完全に逃れることが出来た。クレジット・デフォルト・スワップも規制を逃れるためのリスクの移し替えの手段として用いられた。

Myth 3: Policy makers relied too much on market discipline to regulate financial risk taking.

専門家?(Alan Greenspanを含む)はリスクの管理に関して予想よりも市場が非合理的だったと不満を表明した。彼らの主張によると市場は不安定で規制の強化が答えだとされた。

幾人かの経営者が深刻な計算違いをしたというのは確かだろう。彼らは住宅価格の低下のリスクを過小評価していたしリスクの隔離を過大評価していただろう。

だが大きな欠陥は規制の構造、特に商業銀行、投資銀行、フレディ・マック、ファニー・メイなどに対する資本規制にある。これらの会社に市場の規律が欠けていたのは彼らが取ったリスクの大部分を負担するのが株主や経営陣ではなく納税者だったからだ。

Shadow Financial Regulatory Committeeは1988にバーゼル合意がまだ協議中だった最初期から資本の「リスク・バスケット」アプローチを批判していた。その代替案として経済学者は銀行に自身が保有する資産のリスクと預金の間のレイヤーとして機能する無担保債務の発行を求めることを提案していた。最近になって他の経済学者の集団がそのようなアプローチへの支持を繰り返している。

Myth 4: The financial crisis was primarily a short-term panic.

今回の金融危機は4つの側面を持つ。

悪い債務、これはデベロッパーが住宅を多く作りすぎたこと、消費者が住宅を購入しすぎたこと、貸し手が非合理的な貸付を行ったこと、金融機関が住宅の信用リスクを過度に負ったことを意味する。

過度なレバレッジ、これはフレディ・マック、ファニー・メイ、ベアー・スターンズなどの主要な会社の債務資本比率が高すぎて資産価値の低下によってそれらの会社の経営が危機に陥る可能性があったことを意味する。

ドミノ効果、これはある会社での問題が他の会社にも波及する可能性があることを意味する。

21世紀型の銀行破綻、これは住宅ローン証券を他の会社からの短期の借入の担保として用いていた金融機関がカウンターパーティーから融資の延長を受けにくい状態に追い込まれることを意味する。

初めの2つは少なくとも10年ぐらいを掛けて展開してきた根本的な問題だ。後の2つは2008に急浮上してきた金融パニックの反映だ。

あまりにも多くの政策当局者が金融パニックだけに目を奪われている。例えばBernankeが2009の秋のジャクソンホールでの会合で金融危機の回顧録を提示した時に「パニック」という単語は何十回も用いられたが「住宅価格」という単語が用いられたのはわずか2回だけで「住宅ローンのデフォルト」という単語が用いられたのはたったの1回だけだった。

そのような考え方では政策当局者にもっと深い根本的な政策の欠陥を修正させるのではなく規制組織や規制の権限の方に目を向けさせてしまう。我々は政府の証券化に対する支援のコストベネフィット分析、住宅政策の目的、金銭的リスクに対する政府の保護とリスクテイキングの抑制とをどのように和解させるかなどのより根本的な問題を議論する必要がある。

Myth 5: The only way to prevent this crisis would have been to have more vigorous regulation.

金融機関は大人による監視がなければひどい放火を始めてしまう10代の子供のようだという神話がある。実際は、マッチを付けガソリンを撒き新聞に火を点けたのは議会と規制当局だ。

住宅政策は住宅の購入を増加させることに取り憑かれていた。この政策により(頭金が必要とされなくなったことと加えて)恐らく「住宅の自己所有」という単語が無意味なものとなる程の地点にまで押し上げられた。政策の目的は住宅の保有を増やすことだったのだろうが実際の結果は投機と債務だ。

金融危機を防止する最も簡単な方法は住宅購入に掛かる頭金を低下させ続けている政府の介入を止めてむしろ頭金を増加させることだ。妥当な水準の頭金を維持することにより過去に住宅価格を高騰させた投機を防ぐことが出来るだろう。それによりデフォルトを減少させることが出来る。

金融危機を防ぐ他の方法は銀行資本を規制するのにリスクバスケットや格付け機関以外を用いることだ。より良い方法はストレステストを行うことだろう。前にも述べたがその他の方法は金融機関に無担保債務を発行することを要請することだ。無担保債務は資産価格の変動から預金保護基金を隔離するのに役立つだろう。その上、もしそのような債務が市場で取引されればその価格は市場が示したリスクの指標として用いることが可能で規制当局に問題の早期の警報を与えるだろう。

(金融)規制は大きく緩和されたと故意に偽り続けていた馬鹿な経済学者に大量の人が騙された?Part1

金融危機時にグラス・スティーガル法が果たしたとされる役割に関して恐ろしいほどの事実誤認がある。それを修正しなければならないようだ。

シティ・グループの前経営者Sandy Weillがグラス・スティーガル法を廃止したのは間違いだったと思うと発言すると彼の周りは無知なコメントで溢れかえった。以下の5つの神話では彼らの勘違いのすべてを扱っているわけではないが主たるものを扱っている。

Myth 1: Glass-Steagall was repealed in 1999 by the Gramm-Leach-Bliley Act.

間違いだ。グラス・スティーガル法は一度も廃止されていない。現在でも銀行に適用されているし銀行が証券を引受することや取引することを禁止している。1999年に廃止されたのは(商業)銀行が投資銀行と提携することを禁止した部分だ。

Myth 2: The repeal of Glass-Steagall allowed banks to use taxpayer-insured funds for risky trading.

間違いだ。1999年以降もグラス・スティーガル法の残りの条項によって銀行は証券の引受や取引を禁じられている。だが1999年の前でも後でも銀行は自身の勘定で債権やその他の確定利付証券を取引(すなわち、買いと売り)することは認められてきた。これは論理的なことだ。何故ならばそれらは単に証券の形を取ったローンだからだ。当然だがローンは銀行の商売道具だ。エクソン・モービルが原油の取引を許可されているのと同様に銀行にも彼らのビジネスに必要不可欠な資産を取引することを許可しなければならない。これにより必然的に預金保険によって保護された資金が銀行の取引に含まれることになる。これも1999年の前でも後でも許可されている。この取引を「リスキーだ」というのは卑劣な行為だ。だが銀行が昔から取引を許可されてきたという事実を変えることは出来ない。

Myth 3: In the financial crisis, banks got into trouble by trading “risky” mortgage-backed securities (MBS).

間違いだ。銀行が困難に陥ったのはサブプライム・ローンやその他の安全性が低いと言われている住宅ローンを購入してそのまま保持していたからでそれらを売買していたからではない。2007年にこれらの債権の価値が低下すると銀行はかなりの損害を被った。これは銀行が悪い貸出を行って損失を発生させたのと変わりがない。だがグラス・スティーガル法やその架空の廃止とは何の関係もない。加えてそれらのMBSは購入された時には「リスキー」だとは見做されていなかった。銀行が購入して保持したMBSの格付けはトリプルAでMBSの中では最もリスクが低いものだった。そこから得られたリターンも最も低いものだった。本当に銀行が危険な「ギャンブル」をしたいと思っていたのであれば銀行は格付けがトリプルA以下のMBSを購入していただろう。リスクはより大きくそれに対応してリターンも大きいからだ。銀行がトリプルAのMBSを購入して保持していたという事実からは何らかの洞察が得られるかもしれない。だがそのことは銀行の売買行動や銀行のリスクテイキングに関して何も語っていない。

Myth 4: The repeal of Glass-Steagall allowed bank holding companies and bank-affiliated investment banks to use insured funds for risky trading.

ほとんどあり得ない。1999年の法改正により商業銀行は投資銀行と提携することが可能になった。もちろん投資銀行は銀行預金に接触することは出来ない。その上、銀行規制により商業銀行が資金を貸す、保証する、またはその提携先のリスクテイキングを引き受ける、または支援することは極めて困難となっている。Federal Reserve Actの下では提携先への銀行貸出はどの貸出先であっても対等でなくてはならない(非提携先と同じ条件でなくてはならない)。そして政府証券を担保としなければならない。さらに資本の20%までとしなければならない。仮に貸出が行われたとしても(まったくないとはいわないがほとんど行われない)担保が存在するためほとんどリスクがない。銀行の提携先にとっては資本市場から資本を集めるほうが遥かに簡単だろう。事実、それが実際に行われていることだ。

Myth 5: By allowing insured banks to affiliate with risk-taking investment banks, the 1999 change in Glass-Steagall caused losses to the banks that contributed to the financial crisis.

間違いだ。先程も述べたように銀行は悪い貸付を行って損失を被った。投資銀行は商業銀行よりも高いリスクを取りレバレッジも高かったかもしれないが金融危機時に困難に陥った投資銀行は(リーマン・ブラザーズ、ベア・スターンズ、メリルリンチ)大きな損失を被った商業銀行とは提携していない。従ってそれらの損失とは関係がない。加えて、それらの投資銀行が困難に陥ったのは商業銀行よりも大きなリスクを取ったからではなく商業銀行と同じくトリブルAに格付けされたMBSやその他の住宅ローンを購入して保持していたからだ。最後に、商業銀行と提携していた規模の小さな投資銀行が商業銀行の損失と少しでも関わっていたとする証拠は一つもない。言い換えるとグラス・スティーガル法に何らの変更も加えられていなかったとしても2008年の金融危機は(起こるのであれば)まったく同じように起こっただろう。グラス・スティーガル法が廃止されたせいで金融危機が起こったと叫んでいる人は考え直したほうがいい。

トリクルダウンは嘘だったは嘘だった?パート2

Faulty evidence that ‘inequality’ harms growth

Alan Reynolds

OECDとIMFによる最近の2つの報告書は大きな所得格差は経済成長を低下させるということを発見したと主張していてオバマ政権(2013年に所得税の最高税率を引き上げた)とIMFにいる彼らのお仲間(ギリシャ、アイルランド、ポルトガルに所得税の最高税率を引き上げるよう甘い言葉で言い包めた)の主張の正当化に用いられている。

レポーターたちは「所得格差」という用語が所得上位1%の所得と同義であるかのように勘違いしているが、所得上位1%の所得の高さまたはその増加が経済成長に有害であることを少しでも示した経済学者は誰もいない。

不幸なことに、不注意なレポータのせいでOECDとIMFが彼らの考えを公式に支持したとの間違った印象を与えてしまった。

昨年12月のウォールストリート・ジャーナルの「所得格差の拡大は経済成長を阻害する、とOECDが述べた」とのセンセーショナルな見出しの後にはOECDの研究が「高額所得者に対する税率の引き上げ」を正当化するというレポーターのコメントが載せられている。

だがそのFederico CinganoによるOECDの研究には「富裕層の所得が経済成長に有害であることを示した証拠は一つもない」とはっきりと書かれている。

彼は限界税率の引き上げが経済成長に有害でないという証拠も一つも示していない。OECDのワーキング・ペーパーにはこれらは「OECDの公式見解とレポートしてはならない」とはっきりと警告されている。だがこの論文はOECDの公式見解として広く報道されてしまった。

2014年の2月のIMFの職員によるものも同様にIMFの公式見解として間違って報道されてしまった。Jonathan D. Ostry, Andrew Berg, and Charalambos G. Tsangaridesによる「Redistribution, Inequality and Growth」のことだ。

その論文ではUniversity of Iowaの政治経済学者Frederick Soltが編集した153の国のジニ係数を用いている。

この論文は壮大なファンファーレとともに公表された。「IMFは所得格差が経済成長を阻害すると警鐘を鳴らした」とウォールストリート・ジャーナルは叫び声を上げた。その記事ではDavid Liptonを「ファンドのNo.2、そしてホワイトハウスの前特別顧問」として紹介し、彼が「再分配は所得格差を低下させるので経済成長を促進させることが出来る」と自身満面に断言しているのを引用している。

2011年の後半にホワイトハウスからIMFに送り込まれた彼はオバマの政治的議題を一緒に持ち込んだ。だが彼の強い宣言はとても弱い根拠に基づいている。IMFの経済学者は「再分配に関するデータはひどく不足していてとても信頼できるものではない。所得格差に関するデータとなるとさらにそうだ」とはっきりと警告している。

そのような信頼出来ないデータによる彼らの「証拠」とはネットのジニ指数をその後の10年間の一人あたり実質成長率と比較して散布図にしてあるものだ。不幸なことに、その結果はまるで的外れなもののように思われる。

それにも関わらずためらいがちにではあるが「大きな所得格差は経済成長を低下させているように見える」そして「再分配はそれがジニ指数の13ポイントを超えた辺りから直接の負の影響を持ち始めるように見える」と結論している。

散布図がわずかにランダムではないように見えたとしてもさらに外れ値による影響が小さそうに見えたとしても所得と実質GDPに関する統計が多くの途上国でとても信頼できるものではない。Diane Coyleの「GDP: A Brief But Affectionate History」には「国際比較をするために経済学者によって頻繁に用いられるデータの中で45の国のうち25の国で物価調査がまったく行われていない」と(恐ろしいことが)記されている。そして他の国は「1968年以降更新されていない」固定ウェイトの価格指数を用いている。

所得格差と実質GDP成長の間の関係を探すとなると(たった45の国でさえこの有様であるのに)153の国からの推計などではとても信頼できるものではないしアメリカに当てはめるのは間違いなく不適切だ。

その一方で分析をG20に限定すると所得格差、再分配、経済成長の間の関係はOstry, Berg, and Tsangaridesが主張したのとは真逆になる。少なくとも1990年以降で最も高い経済成長を示したのは最も所得格差が大きく再分配の最も少ない国々、インド、中国、インドネシア、トルコなどだ。

以下の表にはG20の最新のネットジニと再分配がジニに与えた影響を示してある。ネットジニに再分配の影響を加えれば課税前移転前の市場ジニになる。

表の最後の列には世界銀行からロシアを除いた1990年から2013年までの実質GDPの年間成長のデータを記載している。ロシアのデータはフラット税が開始された2000年からのものを用いた。アルゼンチンの政府発表の成長率(4.1%)からはARKEMSによって報告されているように2008年以降のインフレの過少申告を調整するために20%を差し引いた。

G20の中で最も格差が大きく最も再分配が少ないのはインド、中国、インドネシア、トルコだった。これらはすべて1990年以降4.2%から9.9%の間の高い経済成長を見せている。

再分配を多く行っているにも関わらず格差が大きい国には南アフリカ、ブラジル、メキシコ、ロシアが含まれる。最初の3つの国は1990年以降2.5%から2.9%の成長を示している。2000年以降のロシアはさらに速く成長している。ロシア、ブラジル、アルゼンチンはもちろん最近になって大惨事となっているがそのことは過去の成長率とは関係ない。

Ostry, Berg, and Tsangaridesは再分配によるジニ指数の低下が13ポイントを超えると経済成長が低下しているように見えると報告している。G20のリストの下半分で韓国を除いて再分配は遥かに大きい。そしてフランス、日本、ドイツの成長は最も低い。カナダとイタリアも同様に低い。南アフリカは格差が大きく平均的な成長を示している。一方で韓国は格差が小さく成長も速いがどちらの国も大きな再分配は行っていない。

この表の欠点の一つは所得格差の指標がもっとも最近の単年度のものであることだ。所得格差が大きく変化した稀な事例の場合にはミスリーディングかもしれない。だが所得格差の水準ではなく変化に着目したとしても結果は変化しない。

北欧で所得格差が大きく拡大したという理由だけでOECDのエコノミストFederico Cinganoは「スウェーデン、フィンランド、ノルウェーの成長率はもし所得格差が拡大していなければ5分の1以上高かっただろう」と(誤った)主張をしている。皮肉なことにブラジル、アイルランド、ウクライナの所得格差は低下している。だが経済成長もだ。

IMFの論文の解釈者たちのほとんどは、それが(1)所得格差の大きな国は経済成長が低かった(2)再分配は無害であることを示したと頑なに信じている。ウォールストリート・ジャーナルのコラムニストWilliam A. Galstonは「IMF(再分配の擁護者として有名ではない)による2014年の研究は所得格差の拡大は経済成長を低下させ再分配は経済成長を促進させることを発見した」と書いている。

だがその研究で用いられているのと同じ指標をG20に当てはめるだけでそのどちらの結論も簡単にひっくり返ってしまう。事実としては、どちらの結論も現実の真逆だ。

リストを拡大しても彼らの理論を救出することは出来ない。例えば、アジアの虎と呼ばれる国々はいずれもジニ指数が高い。シンガポールは42.2、香港は43.9、マレーシアは46.6、タイは51.9だ。

その逆にジニ指数が30以下の国でGDPが継続的に2%以上の成長を示した国はわずか3つしかない。それらはモーリシャス(23.6)、台湾(30.1)、ポーランド(29.3)だ。だがそれらの国の最高税率はモーリシャスが15%、台湾が17%、ポーランドが32%と低い。

稀な例外を除いて、1990年以降高い成長を示した国の所得格差の水準は非常に大きい(アメリカよりも遥かに大きい)。再分配の多い国で高い成長を示したものはない。

(遥かに所得格差が大きい国が他に幾らでも存在するということが明らかになったというのに)明らかにアメリカが再分配イデオロギーのターゲットとされている。そのスローガンはもちろんアメリカの所得格差が拡大し続けているという誰もまともに調べたこともない主張だ。

このグラフはCBOの推計した所得上位1%の所得を含めたアメリカのネットのジニ指数を示している。1986の税制改革以降この指標にははっきりとしたトレンドは見られない(1997年と2003年にキャピタル・ゲイン税率が引き下げられた時にキャピタル・ゲインの実現が急増加したのが原因で急上下しているだけだ。

最新のCBOの推計は2011年で止まっている。だがそれ以降の所得上位1%のデータは入手可能だ。

Piketty and Saezは「所得上位1%の2012年から2013年の実質所得は14.9%低下している。(中略)この低下は2013年の最高税率の引き上げが原因だ」と報告している。高い税率を逃れるための所得のシフトを調整するために2012年と2013年の所得を平均させたとしてもこの期間の所得上位1%の実質平均所得は2007年を20.6%下回り2000年を11.2%下回る。所得上位1%の所得がずっと上昇していると主張している者は明らかにまともにデータを見ていない。

アメリカ経済が所得格差の拡大によって成長を阻害されていて所得の再分配によって成長を高めることが出来るという主張の証拠としてOECDやIMFの論文を引用する者は自らがでっち上げた問題への対処法として致命的な欠陥を抱えた推計を用いている。

トリクルダウンは嘘だったは嘘だった?パート1

Another Defective IMF study on Inequality and Redistribution

Alan Reynolds

「IMFが所得格差の危険に対して警鐘を鳴らした」とウォールストリート・ジャーナルのIan Talleyはセンセーショナルな見出しで世間の注目を集めようとした。(彼が「世界最高の経済学の研究機関」と呼ぶ)IMFが「所得格差の拡大が経済成長の足枷となり政治的不安定性に油を注いでいると警鐘を鳴らした」と言われている。

ホワイトハウスとIMFによるこの馬鹿馬鹿しい合唱はオバマの特別顧問だったDavid LiptonがIMFの事務次長に就任した2011年の後半以来繰り返されているものだ。2012年の12月の「所得格差が経済成長を阻害するかもしれない」というニューヨーク・タイムズの記事や1月14日の「IMFが所得格差の危険性に警鐘を鳴らした」というフィナンシャル・タイムズの記事など同じ内容が何度も繰り返されている。だからこれはニュースでも何でもない。

彼は「IMF(中略)は先進国と発展途上国は税、特に社会保障費、医療費、その他の給付の負担を高額所得者にシフトさせる累進的な税によって税収を引き上げる必要があると述べた」と書いている。これもニュースではない。IMFには各国に増税をアドバイスして悲惨な結果を引き起こしてきた歴史がある。今回の騒ぎもIMFが過去の失敗を繰り返すための口実でしかない。

記事の中で唯一ニュースと呼べる部分があるとすれば「67ページに及ぶペーパーの中には所得格差の拡大を押させるために188のIMF加盟国に対して税制と公共支出をどのように用いればよいかの詳細が書かれてある」という部分だ。そのペーパーは数多くの「staff discussion notes」の一つに過ぎず当然「その意見は筆者達のものであってIMFのものと見做すべきではない」と書かれてある。その論文の筆者たち(Jonathan Ostry, Andrew Berg, and Charalambos Tsangarides)からの主な「警鐘」は「再分配に関するデータはひどく不足しておりとても信頼できるものとは言えない。格差に関するデータになるとさらにそうだ」というものだ。信頼できるデータではないと認めているにも関わらずIMFの経済学者は「所得格差の拡大は経済成長を低下させているように見える。再分配は対照的に僅かな統計学的に有意ではない(僅かに負の)影響しか与えていないように見える」と何故か主張している。

このIMFのディスカッションドラフトは「(グロスの)市場所得とネットの所得の所得格差を区別し移転の影響を計算することを可能にした最近になって編集されたデータセット(Solt 2009)」に依存している。Southern Illinois UniversityのFrederick Soltは課税前移転前のジニ係数を再構築して「ネットの」ジニ係数を推計している(直接税と現金による移転は調整してあるが売上税や現物による移転は調整していない)。

ソルトのジニ指数はゼロから100までで表される。例えばアメリカの2011年の課税前移転前のジニ指数は46.5だが現金移転を加えて税を引いた後では遥かに低い37.2となる。アメリカが他の国とはまったく異なり払い戻し可能な税額控除と現物移転に大きく依存している(これにより現金による移転を行っている他の国と比べてアメリカの所得格差を見掛け上大きく見せている)ということをデータが反映していればネットのジニ指数は遥かに低くなるだろう。

彼の記事によると「アメリカを含む幾つかの先進国の所得格差は大恐慌以前の水準に達している、とIMFは述べた」とある。まったくのナンセンスだ。IMFの研究に用いられたデータは1960年までのものしかない。この記事の記者は自分のブログ上で現代と1928年との無意味な所得格差の比較を行っていたがそれはThomas Piketty and Emmanuel Saezが批判を省みることなく繰り返し行っている完全な誤謬だ。彼らは戦前の所得のデータを比較可能ではない遥かに狭く定義された戦後の所得のデータと誤って比較している。

ソルトの153の国のリストに戻るが彼のリストではネットのジニ指数が30以下が最も低い集団で45以上が最も高い集団ということになっている。だが彼の記事では所得格差に苦しんでいるとされている国々のジニ指数はリストでは低い。

「IMFにとっては」と彼は述べて「アテナ、リスボン、カラカストリポリなどでの抗議は(中略)所得格差の現実の現れだ」と締めている。そのようなお伽話はレバノンには当てはまるかもしれない。だが他の場所ではそうではない。最新のネットのジニ指数はギリシャが33.1、ポルトガルが33.2、ベネズエラが35.6だ。彼の記事では所得格差がエジプトとウクライナで「政治的不安定が拡大するのを助長した」とも主張されている。だが最新のジニ指数はエジプトで30.9、ウクライナにいたっては25.6だ(ソビエト連邦の1992年の数字よりも遥かに低い)。彼はこれらの平等国家が再分配をやり過ぎたせいで破滅に陥ったと暗に言いたいのかもしれないがだがそれはIMFのもう一つの主張、再分配は有害でないという主張と矛盾する。

ギリシャやウクライナなどの数字とBRICsと呼ばれる国々の数字は対照的だ。最新のネットのジニ指数はブラジルが46.4、ロシアが49.9、インドが49.7、中国が47.4となっている。これらの成長率が高い(高かった)国々のジニ指数は税と移転の前後でほとんど変化していない。これは再分配がほとんど行われていないことを示唆する。再分配によって中国のジニ指数は47.9から47.4、インドのジニ指数は50.6から49.7へとわずかに低下しているに過ぎない。

不幸なことにIMFへローンを要請した国は最高税率をさらに引き上げそこから得られた税収を政治的利益団体へと再分配せよというIMFのアドバイスを飲まなくてはならない。そのようなローンは役に立たない政府を存続させる手助けにはなるかもしれないが民間経済を確実に疲弊させるだろう。

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IMF Paper:Government Jobs Crowd Out Private Sector Employment

Peter Suderman

政府部門の雇用が増えた時に民間部門の雇用に何が起こるのか?IMFの最新のワーキング・ペーパーは政府部門の雇用が増えると民間部門の雇用が減ることを示している。この論文の執筆者は1988から2011の期間の194の国のデータを調べ、「政府部門の雇用が民間部門の雇用をクラウドアウトしている頑健な証拠」を発見した。

この論文は統計学的にほぼ完全な1対1の関係があることを発見している。「政府部門の雇用は民間部門の雇用を犠牲にしていてそれ故経済全体の失業を減少させていない」。この論文の執筆者達はOECD加盟国だけを対象に調べ同様の「完全クラウドアウト」を発見している過去の研究に関しても言及している。

このことは景気刺激策と呼ばれるものに関して重大な意義を持つ。景気刺激策と呼ばれるものは民間部門を刺激することを目的としているといわれるがアメリカの過去の事例を調べた研究は失業者数の減少ほぼすべてが民間部門の雇用の増加ではなく政府雇用の増加によるものであったことを発見している。今回の論文の結論は2009の景気刺激プログラムは何十万もの政府部門の雇用をそれ以上の数の民間部門の雇用を犠牲に生み出したまたは節約したことを発見した研究とも整合的だ。