2016年7月10日日曜日

Book Review: 'The Myth of America's Decline,' by Josef Joffe

BRET STEPHENS

中国の経済がアメリカを上回るのはいつか?National Intelligence Councilの最近のレポートはその年を2030年としている。Standard Chartered Bankのチーフ・エコノミストはその年を2020年だとしている。Organization for Economic Cooperation and Developmentはその年が早ければ2016年かもしれないと言っている。

ドイツの新聞紙Die Zeitの編集者でHoover InstitutionのフェローでもあるJosef Joffeは異なる見方をしている。「The Myth of America's Decline」の中で彼が説得的に論じているように、中国はアメリカに永遠に追いつかないだろう。それは部分的には中国固有の弱さのせいでもあるが、だが本質的にはアメリカの(簡単に見落とされることではあるが)圧倒的な優位性のためでもある。

彼の主張は誤りだった過去の警鐘の長い歴史によって補強される。スプートニクが打ち上げられた1957年以降、アメリカ人はソビエトによって支配されてしまうのではないかと大パニックに陥った。アメリカは「ミサイル格差」だけでなくソビエトに「教育で敗れる」と云われていた。Paul Samuelsonはソビエトが1984年頃にアメリカを上回ると予想した。Henry Kissingerは1961年の本の中で「現実逃避だけが我々が衰退していることを認めることから遠ざけるだろう」と記していた。

同じような衰退の警告と予告が10年毎に繰り返されてきた。大抵はアメリカに新たな競争相手が現れたという馬鹿騒ぎを伴って。1979年に、Ezra Vogelは「Japan as Number One.」という本を出版した。その本は日本が21世紀を支配するというヒステリーを助長する手助けをした(コントかよ)。

1950年代のロシア人や中国人のように、日本人は勤勉だと云われていた。官僚が強固で、コンセンサスを重視する政治だと云われていた。経済は製造業に頼っておりサービスや消費よりも貯蓄を重視すると云われていた。個人的な充足よりも社会に重きを置くとも云われていた。

日本経済は停止することがないように思われた。二桁の経済成長が何年も続いた。衰退論者にとってはと、Mr. Joffeは指摘する。「パーセンテージは運命だった」、そしてそのパーセンテージは日本の方を向いているように思われた。それが運命ではなかったと発覚するまでは。1989年の12月29日に日経平均は3万9000円の最高値をつけた後、崩壊した。現在では、日経平均は1万4000円台をうろうろしている。日本経済が3回めの失われた10年に突入しているのを反映して。

Mr. Joffeの本で興味深いのは知識人と云われていた人たちの愚かしいコメントの数々だ。他に興味深かったのは衰退論がどうしてアメリカ人に受けるのかに関するMr. Joffeの説明の部分だ。『「空が降ってくる」というような言説は儲けが出るようなメッセージであってはいけません」と彼は記している。「ですがそのメッセージは太古の昔から人々の心に届きます。聖書にもあるように、破滅は輝きの裏側から訪れるのですから」。

だがこの本の核心部分は彼が中国の神話を見事に解体しているところにある。北京の経済モデルの応援団たちは中国の成長見通しに対して線形のアプローチを取る。アメリカが追いつかれるまで中国が現在のペースで成長し続けるとか呈している。だが現実には韓国や台湾、タイのように所得が低い所からスタートした国は初めは速く成長するが人件費が増加し、汚職とレント・シーキングが蔓延し、人口が高齢化し、政治的期待が高まり、輸出主導型の経済が原動力を失い始めると必然的にその成長率を低下させる。

では現在の中国を見てみよう。北京は経済の統制をやめると宣言したにも関わらずすでにそれにも失敗している。「2009年の中国の上位500の企業の利益の合計は中国共産党が支配する2つの国有企業、China MobileとSinopecを下回っている」と彼は記している。

一方で、そして数えきれないほど多くのレポートがその逆だとアピールしてくるにも関わらず、アメリカは国力を示すすべての指標で中国を上回っている。研究と開発はどうか?「アメリカは科学とエンジニアリングの論文でアジアの上位10カ国を合わせたものを上回っている。そして中国を3倍以上上回っている」と彼は記している。人口の見通しはどうか?2035年までには、人口に占める65歳以上の割合が中国はアメリカを上回る。教育ではどうか?世界の上位20の大学のうち、17がアメリカの大学だ。中国の大学は一つもない。軍事力はどうか?アメリカの海軍が縮小されたとしても中国が1隻も保有していないのに比較してアメリカは11隻の超大型空母を保有している。

そして経済の規模は、2つの国の差は拡大していくだろう。オバマが就任して以来、アメリカ経済は3%の成長率を下回ったことが幾度もあった。だがMr. Joffeが記しているように、アメリカは「数えきれないほどの活性化の源を」保有している。その一方で、中国は主に縮小していく賃金の安い労働力に依存している。

これらすべてのことが説得力のある議論を形成している。だが我々をヨーロッパ型の社会民主主義(そこでは衰退という概念が少しもファンタジーではない)へと向かわせようとする債務や給付の増加に対する議論なくしては、それも損なわれてしまうだろう。我々は、衰退がありえないから過去の困難から立ち上がったのではなくそのトレンドを反転させるようなより良い政策を選んだから衰退を回避することが出来たのだ。運が良ければ我々は再びそれを行えるだろう。だがその保証はない。アメリカの衰退が神話で在り続けるかどうかは我々に掛かっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿