2012年4月29日日曜日

構造改革でデフレになる??

SHORT-TERM GAIN OR PAIN? A DSGE MODEL-BASED ANALYSIS OF THE SHORT-TERM EFFECTS OF STRUCTURAL REFORMS IN LABOUR AND PRODUCT MARKETS

Matteo Cacciatore, Romain Duval and Giuseppe Fiori

アブストラクト:労働市場、生産市場の改革の短期的な効果を内生的な参入、失業、職の創出と喪失の特徴をもつモデルを用いて調べてみた。既存の研究と異なり労働市場と生産市場の間のつながりと政策要因について外生的に分析することにより個々の要因を分離することに成功した。結果は3点にまとめることができる。第1に改革の効果は利益を生むのに数年の時間を要する。これは主に利益が企業の参入と採用の増加から来るからで、漸近的な過程であるからだ。第2にすべての改革は短期においてすでに経済を刺激する。が、いくつかの改革は(雇用保護など)失業を一時的に増やす。広範な改革の組み合わせはそのような移行費用を最小にするか軽減することが出来る。第3に、改革がデフレ効果を持つという根拠は見つからなかった。これは非負制約に陥っている国や通貨統合を果たした国など金融緩和の出来ない国にとって改革への大きな障害とならないかもしれないことを意味する。金融政策の違いは改革から来る移行費用にわずかな違いしかもたらさなかったことが明らかとなった。

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改革の長期の効果については多くの文献がある一方、短期の効果についてはこれまであまり調べられる事がなかった。それゆえ短期の効果について調べることは政治的実行可能性について多くの示唆を与えると思われる。

またその望ましさにおいても重要である。短期において余剰(スラック)を生み出すかもしれないからだ。これは多くのOECD加盟国が置かれているような遊休資源があったり、金融、財政緩和の余地がない現在の状況に関わってくる。非負制約がサプライサイド政策の短期の効果を弱めるのか逆に強めるのかについて論争がある。さらに、非負制約の状況において現在の供給に影響を与える改革の効果が価格を引き下げ実質金利を上昇させ経済を冷え込ませる可能性も指摘されている。その一方将来の所得水準を上昇させることにより供給政策が正の資産効果を生み出し、現在の需要と産出を刺激する可能性も指摘されている。この資産効果は非負制約に掛かるときに特に大きい(平時であれば起こるであろう金利の上昇が起こらないから)。

最近の一連の文献は大規模DSGEモデルを用いて短期と長期の効果を評価している。モデルによると改革の効果はゆっくりと表れる―半分の効果が出るまででも数年掛かる―さらに、短期の経済損失まで組み込めるようになった。しかしモデルの結果は労働市場、財市場どちらがより短期の損失に結びつくかで変わり得る。労働市場改革は労働者の交渉力を弱め、そして初期の実質賃金を低下させる。その結果労働需要が刺激されるが同時に消費者の需要も弱める可能性もある。生産財市場改革は価格マークアップを引き下げることにより実質賃金を引き上げる。そして瞬時に産出と雇用を刺激する。しかし通貨が統合された国で行えば、または改革を断片的に行えば、家計に来期の価格が下がるという予想を持たせるかもしれない。そして国内の実質金利を上昇させ、短期の消費と産出を低下させることもありうる。

この論文では過去30年間に行われたさまざまな改革の動学的効果を調べる。上で述べた近年の文献には2つの欠点があった。1.労働、財市場改革がおざなりな方法でモデル化されていたこと、2.以前のモデルは企業と労働市場の動学的特性が考慮されていなかったので短期の効果を捉えるには理想的ではなかったことだ。これらをこの論文では修正した。

主な発見は、

・長期では、財市場と(少し劣るが)労働市場改革はGDPと消費にプラスで、失業を減少させる。

・その効果が表れるまでには時間が掛かる。これは以前の文献と整合的だ。これは部分的には企業の参入または採用の増加は時間が掛かる一方、解雇をもたらす政策の効果の影響はすぐに表れるからだ。財市場から得る利益は労働市場より実現が遅いが、それでもその利益は長期的に見て大きい。

・過去に行われた改革は短期においてもGDPを刺激していたことがわかった。しかしそれらのいくらかは一時的に失業の増加につながった。特に雇用保護改革は雇用を創出するよりも初期には解雇を増大させる効果が強かった。財市場の改革もまた一時的に純雇用の減少につながった。これは労働の再配分に時間が掛かるためである。対照的に失業給付手当ての削減、または積極的労働政策のいくつかは解雇に影響を与えなかったので失業を直ちに減少させた。

・移行費用を最小化する方法は広範な改革の組み合わせである。特に、労働市場改革と並行的に行う財市場の参入障壁の削減は、労働市場単独で行う場合に発生する賃金の減少を逆転させる。これは財市場の規制緩和を初めに行うことが短期の負の効果を緩和し、労働市場改革の実行を促すという見解と整合的である。

・ある分野での改革の短期の効果は既存の政策や他の分野での制度設計に部分的に依存している。特に財市場改革後の短期の動学的効果に関して、労働市場がより流動的であればより円滑にその効果が発揮されることがわかった。しかしその代わりに財市場改革から得られる利益もその場合には小さくなる。財市場と労働市場の改革の効果に関して長期の代替性がある。

・改革がデフレ効果をもたらすという証拠は見つからなかった。これは非負制約や通貨統合で金融緩和が行えない国にとっても改革の実行にさしたる障害とならないことを示唆する。代替的な金融政策(非負制約がない等)と比較して移行費用の緩和に関してわずかな違いしかなかった。これは調整が主に企業と消費者の改革の効果に関する長期の期待によってもたらされるからだ。この期待は金融政策の運営に依存していない。それでもインフレ反応的な中央銀行のほうがわずかに移行費用を引き下げる。厚生損失もまた変動相場制の国のほうが通貨統合に参加している国よりも小さい。

これらの発見が他のパラメーターに関して定量的にロバストだとしても、いくつかの欠点には注意が必要だ。ここでのモデルはフォワードルッキングなエージェントと合理的期待を仮定して、所得の不確実性と予備的貯蓄を排除しているので短期の利益を過大視する可能性がある。その他の欠点として、財市場改革が企業の参入費用の下落としてきちんとモデル化されたとしても、価格マークアップは長期において影響を受けず、改革から得られる利益は財の種類が増加したことから発生するかもしれない。実世界では、財市場の自由化は早期の参入と同質な財の価格の下落を引き起こすかもしれない。

2012年4月19日木曜日

アメリカの1979年からの税率

アメリカでは高所得層の税率が緩和される一方、低所得層の税率は引き上げられてきたと言われてきた。そのような話はデータからは裏付けられていない。

このグラフはアメリカの所得階層ごとの平均実効税率を表している。高額所得者の税率はここ30年変化していない。逆に所得の低い層の税率はマイナスになっている。多くの人の主張とは反対に累進度が上昇している。低所得層に至っては一貫して減税が行われたため税を払っていない人が少なすぎることが逆に問題だといわれるまでに至っている。

2012年4月17日火曜日

編集方針

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