2012年7月20日金曜日

麻生政権の経済対策に効果あったか?


財政政策をやらなかったら恐慌になっていたという主張をよく目にするので財政政策の実施時期と鉱工業生産指数とを比較した図を拝借して掲載する。まず気になるのは2008年度の第2次補正予算の成立時期と生産指数が底を打った時期との関連だ。この時点では成立だけで実施はまだなので補正前に生産は底打ちしたとみて問題ないと思う。問題は次だ。2009年の補正成立後も特に回復が早まることもなく、それどころか回復のペースがむしろ遅くなっている。14兆円はGDP3%に匹敵する規模だ。財政政策に効果があると主張している人たちはこの規模で政策を打っておきながら回復のペースが鈍化するというのはどういうことなのか説明する必要があるのではないだろうか?

参考
・マクロモデルからみた財政政策の効果
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h22pdf/20107903.pdf

2012年7月10日火曜日

財政政策の最終的な乗数効果は-5.8?

財政政策の長期的な効果が負であることは昔から言及されてきた。この論文はそれが具体的にどのぐらいなのかを定量化したものだ。筆者は短期の乗数のみを見ることはミスリーディングだと指摘する。いずれは債務を返済しなければならずその際に経済を低迷させるからだ。


40年かけて債務を返済すると仮定。



その結果。

試算に用いられたパラメーターは経済の長期的な動きとよく一致するものだと筆者たちは指摘している。短期でも1に届くかどうかだが、40年に渡って負の効果が続き最終的には例えば1ドルの支出に対して(累積で)5.8ドルの損失になるという。

参考
Some fiscal calculus
http://economics.uchicago.edu/money_banking_papers/Uhlig_SomeFiscalCalculus_AEA_v03.pdf

2012年7月1日日曜日

デフレだと不況というのは本当なのか?


デフレが不況の原因だというのがリフレ派の主張だが本当なのだろうか?実はずいぶん昔からデフレでも不況にならなかった事例は知られていた。この図はそれを簡単に示したもの。戦間期を含めると1%インフレ率が下落すると0.04%成長率が下落する傾向があり、戦間期を除くと1%インフレ率が下落すると0.10%成長率が下落する傾向にある。(例 成長率が3.04%だったとすると3.00%)。ようするにほとんど関係がない。

5年平均-10%の下落にも関わらず5%近く成長した事例がいくつかある。解釈が間違いでなければ累積だと50%近くになるはずなのに壊滅的な結果になっていない。非線形にしたほうがあてはまりがよくなるという研究もあるが結果はあまり変わらない。


こっちは日本の成長率を5年平均でグラフ化したもの。バブル期を除いて一直線に下落している。
日本の成長率(1.41%)はアメリカ(3.20%)を除いてイタリア(1.61%)、フランス(1.84%)と対して変わらない。通常の成長理論で十分説明可能とのこと。


日本のインフレ率の5年平均。90年代のインフレ率はバブル期と対して変わらない。

参考
Deflation and Depression:Is There an Empirical Link?