2017年7月17日月曜日

地球一の馬鹿と云われるマイケル・ムーア(とその信者)はどうして過去の人扱いされるようになったのか?

マイケル・ムーアについて書かれた記事を幾つか集めて翻訳してみた。
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400パウンドの人間が過剰消費の悪について我々に説教するべきだろうか?100万ドルのアパートメントに暮らす住人が自分は労働者の申し子だと主張するべきだろうか?エンロンは素晴らしい投資だと思っていた、ラルフ・ネーダー、ウェスリー・クラーク、ジョン・ケリーが勝つと思っていた、北朝鮮のキム・ジョンウンは国を良い方向に動かしていると考えていた人間が私たちに何か1つでもアドバイスできることはあるのだろうか?

マイケル・ムーアはパラドックスだ。自身の価値の証だとして富を誇示する億万長者だ。「私はミリオネアだ、マルチ・ミリオネアだ。まばゆいばかりの大金持ちだ。私がどうして億万長者なのかを知っているか?多くの人が私の映画を見たからだ。良いことじゃないか?そうだろう?」。

彼は超高級アパートメントに住んでいる。そしてそれを誇らしげにしている。「私はあの建物に住んでいる。私はアメリカのエリートが暮らすマンハッタン島に住んでいる。君たち庶民の生活を動かしている人々が私の隣人だ。私は毎日のように彼らと通りに出掛けている」。バケーションのためと称して彼はミシガンにもビーチに隣接する高級住宅を所有している。

彼は自分の子供を私立の学校に送っている(彼が擁護していると主張する労働者の子どもたちとは一切関わらせない)。そして問題を抱えている。ニューヨーク・ポストは彼がロンドンで起こした癇癪騒ぎについてレポートした。「彼の公演最後の2日間に、マイケル・ムーアはラウンドハウスの関係者全員を怒鳴りつけ自分は一晩の公演にたったの7万5000円しか受け取っていないと不満をぶちまけた。「彼は完全に正気を失っていた」とステージの関係者がロンドン・イブニング・スタンダードに語っている。「彼は一日中不機嫌そうで全員に怒鳴っていた。時給が5ポンドのバーのスタッフにさえも、彼らに対してお前たちは全員馬鹿で役立たずの無能だと叫び声を上げていた。それから彼はステージに上ってそのことを客の前でも語っていた」と暴露した。彼の公演最終日にはスタッフたちは仕事をすることもそれどころかシアターのドアを空けることさえも拒んだ」とニューヨーク・ポストは締めくくっている。

彼は自分の所得を公演ツアーで補っている。7万5000円という安い金額ではない。2004年の選挙前のツアーでは、彼はユタ・バレー州立大学に400万円を要求した。ザビアー大学には250万円をニュー・メキシコ大学には350万円を要求した。時給としては悪くないだろう。

彼をよく知る人間は彼のことをこのように形容している。「多くの人は彼のことをどこにでもいる普通の人のようだと思っているだろう。実際は金の亡者だ」。

彼の最大の主張は、自分が労働者の代弁者であるということ、資本主義の悪、(自分以外の)アメリカ人の身勝手さだ。

彼を偽善者と非難することは簡単すぎる。保守派の多くは彼を左翼だとして非難している。実際には、ごく一部に存在するまともな左翼や思考能力を失っていない左翼は彼のことを醜悪だと見做している。彼は現代版のリムジン左翼という形容がぴったりだろう。19世紀の悪徳資本家と価値観を共有している一方で、丁度上辺だけの髪型やガウンを選ぶのと同じようにベニアのように薄っぺらい上辺だけの左翼主義をその身に纏っている(左寄りのムーアの批判者はその様子をこのようにまとめている:ムーアが受けたのは富裕層の白人に労働者を蔑む機会を提供したからだと)。

ムーアの醜悪な人格に関してはこれぐらいで十分だろう。彼の主張の内容を調べてみよう。

彼の作品には一貫したテーマを見ることができる。そしてそれに必ずと言っていい程付随するのが騙しの手口だ。彼は結論を予め決めておりデータが存在しない場合は、単純にそれを捏造する。

Bowling for Columbine

この映画で、彼は話を捻じ曲げ視聴者を欺き意味が逆になるまでに台詞と音声を編集している。ある事例を見てみよう。彼は自分が狙いを定めた人間のスピーチを取り上げている。ところがそのスピーチは彼が期待していたような内容ではなく融和的で穏やかな内容だった。そこで彼は他のスピーチから台詞を抜き出し段落を切り取り文章を他の文章の前に挿入したりしている。他の場面で、彼は政治広告を批判しようとしていたがその内容が彼の望んでいたようなものではなかった。そこで他の異なる2つの広告を挿入しどこにも書かれていない題名をつけた。

Stupid White Men

彼の自己紹介と取れるこの映画ではショッキングな話を聞かされる。例えば20万人ものアメリカ人が誰にも知られることなく狂牛病で亡くなっているとか、ブッシュ大統領が選挙を盗んだとか、ネーダーが出馬していれば2000年の選挙で民主党に勝利をもたらしていただろうとか、エンロンは素晴らしい投資だったとかいうショッキングな話だ。12歳以上のアメリカ人が聞けば吹き出してしまうこと間違いなしだろう。

Dude, Where's My Country?

この本の中では、「テロ攻撃はなかった」とかニクソンは最後の民主党の大統領だったとか衝撃的な内容が記されている(さらに面白いことに、彼は8章では2004年の選挙は民主党が勝利する可能性が極めて高いと言っておきながら、11章では「民主党の指導者が、2004年の選挙を基本的に見限っている、ブッシュ大統領に勝てる可能性は極めて低い、オプラ・ウィンフリーでも出馬させることを考えていると彼に明かしたことから民主党は「プロの敗北者だ」と読者に対して語っているところだろう。
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ムーアの支持者の多くが私に対して、彼らの教祖に反対する人間は誰であれ若い無知な共和党員に違いないと主張するメールを送っている。

私は53歳だ。法学の博士号を取得している。4冊の本を出版し法学の査読誌に12本の論文が掲載されている(そのうちの1つは判決の根拠として最高裁に引用され11が13の控訴裁判所に引用されている)。最高裁とアリゾナ最高裁にまで持ち込まれた裁判に勝訴した(どちらの事例も困難な裁判だった--初めのは憲法第10条を巡っての訴訟で次のは死刑判決の取り消しを巡っての裁判だ)。1日だけ工場の組立ラインに並んですぐに辞めたムーアとは違って、本当に労働者階級だった。タイル張り職人の子供で工事現場で育ち夏にはPima Minesで働き父の店で働きながらロースクールに通っていた。その時のスキルは今でも役に立っている。今でもバスルームのタイルを張り直し家の改修などを自分で行っている。

私は共和党員ではない。機会があれば共和党員として登録しようかと考えてはいるが。

私はNRAとACLUの会員だ。Tucson Rod and Gun Clubの会長を努めている。

ところで、ムーアに賛成できるところが一つだけある(彼がその立場を表明しているということは助けにはならずむしろ同じ立場の人間を辱めているのではあるが)。それはテロとの戦いは政府の権限の拡大のために利用されているということだ。だがそれは特に新しい現象というわけではない。彼はブッシュ大統領を非難しているようだが、実際にはクリントン大統領の下で始まっている。
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車輪を再発見することに意味はない。David KopelはFahrenheit 9/11に強烈な打撃を与えている。それはFahrenheit 9/11の56の嘘として記されている。彼は新たに3つをそれに加えた。Moorewatchも映画で使用された嘘を見事に暴いている。ここではあの映画の主な2つの側面、すなわち捏造とそのスタイルに関して簡潔に触れたいと思う。

1.映画は「Dude, Where's My County」という彼の本の内容をなぞっている。それに対する反論として彼が情報を得たというソース、フロリダの選挙の話、アフガニスタンの架空のパイプラインの話、カーライル・グループの話などなどを指摘している。

2.彼が見出しでさえも誠実に見せるなどと期待してはならない。2000年の選挙に関して、彼はこのような新聞の見出しを視聴者に見せた(省略)。

そのような見出しは存在しなかった。彼は、再集計が行われてもブッシュ大統領が勝っていただろうという内容の記事に文句をつけていた編集欄の見出しの文字を勝手に書き換えていた(そのことについて彼はその新聞社から訴訟を起こされている)。

3.映画に対する関心を高めようと、彼はイラクの抑留者が虐待されている映像を所有していてその映像をもっと早くに公開しなかったことで良心の呵責に苦しんでいたと語っている。ニューヨーク・タイムズがこのように記事にしている。

「カンヌでの公開が終わった現在、彼は少なくともその映像の一部をメディアに渡すことを検討していると語っている。アメリカ軍の兵士が抑留者を笑いながら写真を取り、兵士の1人が布の上から囚人の性器に触れているという映像だ」

この「抑留者」のことをイギリスの新聞社に問い詰められると、その人間は抑留者でも何でもないということを彼は認めてしまった。「兵士たちは酔いつぶれたお年寄りをかつぎ、その際に布に覆われていた男性の性器に手が触れてしまった」というのが真相だった(自粛)。このことはアメリカのメディアでは当然一切報じられることはなかった。思わせぶりな記事を書いていたニューヨーク・タイムズも読者を欺いたことに関して何の訂正もしなかった。アメリカのメディアでは、ムーアが言うことは常に正しいということにされる。

4.ブッシュ一家とビン・ラディン一族とのつながりとされたものに関して:彼にとって大打撃だ。ビン・ラディン一族は大きな家族で構成されている。1988年に家父長が亡くなった時、彼は54人もの子供を残したと云われている(他の説では53人とも云われている。自分でさえも把握できていなかったのだろう)。それに孫や婚姻者、いとこなどが加わるとなると巨大な一族であるということが誰にでも分かる。一族の開祖は20世紀初頭にサウジアラビアへと移住し建設会社を立ち上げメッカの再建を任され、非常に宗教色の強いサウジアラビアという土地柄で宗教建築関連の仕事を一手に請け負った。一族のほとんどは西側寄りで子どもたちを教育のためにアメリカへ送っている。ようするに彼らがここにいるのはそういう理由だ。オサマは過激主義に走り家族から追放されサウジアラビアが彼を逮捕するように命じてからは1992年に国を飛び出している[Source: Frontline - About the Bin Laden Family]。

5.ビン・ラディンとブッシュ家をつなぐ鍵だと彼が言っているカーライル・グループについて:カーライル・グループは中東全土で3000億円にも渡る巨大なビジネスを展開している。ブッシュ親子はカーライルとよく結び付けられることがあり引退したブッシュ父はアドバイザーを務めていたりもする。ビン・ラディン一家は1兆3000億円の同社の資本のうち200億円を投資している[Source: Guardian Unlimited - The ex-president's Club]。だがそれがビン・ラディンとのつながりだというのであれば、彼は大問題に直面するだろう。カーライルを投資家の間で有名にしているのは、そして実際に100億円を投資しているのは他でもないジョージ・ソロスだ。そうだ、ブッシュ大統領を落選させるために30億円を投じたと云われるジョージ・ソロスだ。ソロスはビン・ラディンとつながっているのか?ムーアの定義によればそうなる。

6.ビン・ラディンが逃亡したという彼の主張について:彼はこの陰謀論を大きく扱っている。ビン・ラディンとサウジアラビア人がブッシュ大統領からの協力によって9.11直後は飛行が禁じられていたにも関わらず国外に脱出したという話だ。

9.11調査委員会がわざわざ彼の主張に付き合ってくれている(pp. 329-330)。

「第一に、飛行が再開される前にサウジアラビア人が飛行機に搭乗したという記録は存在しなかった。その逆に、搭乗が確認されるのは飛行が再開されてからだった」

「第二に、政治的介入が行われたという証拠は存在しなかった」(Discussion of how decision was made by Richard Clarke in coordination with the FBI)

「第三に、我々はFBIが国外に出国したサウジアラビア人を適切にスクリーニングしていたと考えている。FBIは容疑が掛けられている全員を出国前に尋問している。FBIは搭乗者の誰もテロ攻撃とは関わっておらずその結論を変更する証拠も見つかっていないと結論している」

クラーク(ムーアによって英雄であると描かれている)もこのことを確認している。彼(実際には捕まっていないのが不思議なほどの大罪人)はThe Hillにこのように語っている。「それは私の責任です。あれが間違いだったとは思っていません。もし同じような状況に置かれたとしても、その時と同じ決定をするでしょう」「私の権限だけではそのような決定はできません」「9月11日にせよ9月12日にせよ9月1日にせよ、私の権限でできたことは多くありません。その決定はFBIと協力して行いました」。

捏造のスタイルに関して:彼はこれまでで最高のプロパガンディストだ。これはこの領域で競争がほとんど行われていないことが原因かもしれない(陰謀論は政府型のものが多くを占めている。それらには巧妙さもテクニックもほとんど必要とされていない)。だが他にも彼の陰謀論にはこれまでの陰謀論とは興味深い違いがある。

ここでは「プロパガンダ」という言葉に特に軽蔑の意味を込めていない。彼のテクニックを理解するまでは、彼の陰謀論が他とどう異なるのか分からないだろうからだ。彼のプロパガンダの技法の幾つかの基本原則を見ていこう。

1.語り手にははっきりと語らせてはならない。視聴者に事実とは異なる印象を間接的に生み出させるのでなくてはならない

この手の手口をよく用いる詐欺師のうちで彼のようにプロパガンダの芸術にまで高めた語り手をあまり知らない。彼は自分がXについて語ることなく視聴者にXは真実だという印象を与える映像や台詞の使い方をよく心得ているようだ。誰かがXは嘘だと証明したとしても、自分はそのようなことは言ってないから「無関係だ」と主張するだろう。

他の人々が残されているというのにサウジ人たちだけが出国を許されていて、FBIは彼らへの尋問を妨害されたのだという印象をあの映画の視聴者は持つことだろう。だが彼はそのようなことは実際には言っていない。そしてサウジ人は制限期間中に出国を許可されておらずFBIは彼らを尋問する機会を与えられていたと結論した9.11調査委員会の報告書が提出されると、彼は姿をくらませた。『「Fahrenheit 9/11」のアシスタント・プロデューサーJoanne Doroshowは、ムーアは出国禁止期間中にビン・ラディンが逃げ延びたと示唆したことは一度もないと語った』とワシントン・ポストは記している。確かにその通りだ。

2.文脈を無視して新たな文脈をそこに挿入する:プロパガンディストの新しい道具は単に文脈を無視するに留まらない。そこに新しい文脈を散りばめる。コンドリーザ・ライスはフセインと9.11にはもちろん関係があると言った人間として登場する。視聴者には残りの文脈、そのつながりとは計画や援助のことではなくイスラム過激主義的側面を持つということであるということは知らされない。

彼はその発言を利用して、ブッシュ政権が人々を欺いていると示唆させる。ラムズフェルドがレポーターたちに対して「あなたたちは毎日のように事実ではない話を聞かされているだろう?事実であるかどうかに人々は関心を寄せていないようだ」と発言している映像を流している。その文脈では、彼や他の人々は毎日のように嘘を言っていてレポーターはそのことを誰も気に掛けていないようだと彼が発言しているように見える。実際の文脈では、彼は重大な情報を掴んだと主張するレポーターに対してその情報は誤りであり噂にすぐに飛びつくレポーターたちに警告を発し批判している。

3.時間と場所を移す:プロパガンディストはそれが語られた時には意味を持つ台詞を不適切で馬鹿馬鹿しく不誠実であるように見える時間と場所へと移し替える。ムーアは再び彼がこれを得意としていることを証明した。

ムーアはテロとの戦いの目的の1つは人々を混乱させることだと主張している。それから映像はテロは危険だと言いながら皆に旅行を勧めているブッシュ大統領が収められている場面から、テロは差し迫った脅威だと言いながら心配することはないとブッシュ大統領が呼び掛けている場面を幾度も往復する。それだと確かに混乱させているように聞こえる。だがブッシュ大統領が人々に旅行を呼び掛けている映像のすべては2001年にブッシュ大統領が航空会社の従業員に対して行っていたスピーチからのものでテロとの戦いに勝つには日常生活を再開させるにはどうすれば良いかをテーマにしたものだった。他の映像は2003年から2004年に掛けてのものでテロの警戒水準が引き上げられた時に語られた時のものだった。

ムーアは視聴者に対してブッシュ大統領が9.11調査委員会の設置に反対したとの情報を与えた。それから「我々はKean議長やHamilton議員と密接に協力を行っている」とブッシュ大統領が語っている映像を視聴者に見せる。その後には「必要とする資料(情報)を私たちはまだ手にしていない。特に必要な時に渡されていない」と語っているKean議長の姿が映される。

ブッシュ大統領が嘘を言っているかのように演出される。だが本当の話はこうだ。議長が不満を漏らしたのは委員会が仕事を始めた2003年の6月のことだ。そして実際には「ホワイトハウスは協力的だ。だがいくつかの機関、特に国防総省などが協力的ではない」と語っている。ブッシュ大統領が政権は緊密に協力していると言ったのは2004年の2月のことで7ヶ月と少し経過しておりその時には実際にそうなっていた(「最終的には私たちには必要とするすべての情報に対してアクセスが与えられた。要求したすべての書類を私たちは閲覧できるようになった」と議長は語っている)。だが時系列を入れ替えることで、ムーアは誠実な発言を嘘であるかのように演出した。

4.彼は奴らの手先だ:プロパガンディストにとって欠かせない重要なツールは標的を特定のグループと結びつけることだろう。それから彼らは我々とは違うと言い始める。彼らの見掛けは我々とは異なり奇妙な服を着ている。ようするに彼らは彼らだ。ナチスにとってはユダヤ人がそうだった。

ムーアにとってはアラブ人だ。彼はアラブ人を奇妙でいかがわしい人々であるかのように描いた。それから彼らをブッシュ大統領と結びつけた(それほど難しいことではない。石油業界に携わっていればアラブ人と関わらずにいるのは難しい)。

重要なのはムーアが大統領をタリバンやビン・ラディンと結びつけようとしていることだろう。最も極端な形での「彼ら」だ。従って彼らが同じ国内にいたと主張するのではまったくもって十分ではない。ムーアはタリバンの代表がアフガニスタンを通るパイプラインを建設するため当時テキサス州の州知事だったブッシュ大統領の下を訪れたと記している。私がその主張を以前検討した時に記していたように、彼らの訪問とブッシュ大統領は何の関係もなく、そのパイプラインはテキサス州に本拠を置き民主党の大献金先であるユノカルに便宜を図るためにクリントン政権が推進していたものだ。それからムーアはタリバンの代表がワシントンを訪問して(ブッシュ大統領が当選しテロ攻撃が起こる前)ブッシュ政権と会談したと語っている。ブッシュ政権が彼らに対してタリバンを政権とは認めないと言ったこと、ビン・ラディンに対して敵対的な活動を行っているとは信じていないと語ったことには言及しない。

5.目的を達成するためなら手段をまったく気にしない:建設的な批判とプロパガンダとの違いの1つはコアとなる倫理観だ。建設的な批判はそれに満ちている。プロパガンディストは自分の議論の性質を気にも留めない。ただ標的を攻撃することにしか関心がない。その結果としてプロパガンディストは自分で矛盾したことを言っていてもまったく気にしない。標的がどのような行動を取っていたとしても非難することが出来る。例えば、

2001年の9月にムーアが言っていたこと:タリバンを攻撃するべきではない:

「ホワイトハウスを占拠している男が嘆いた。いいぞ。嘆き続けろ、ブッシュ。お前が嘆けば嘆くほど人間性のダークサイドに陥る危険性は少なくなる」

「だが戦争を宣言し無実の人間を虐殺するな。私たちが選挙で選んだ大統領はビン・ラディンのテロ攻撃の後、彼が云うところのアフガニスタンの「ビン・ラディンのキャンプ地」を攻撃しに行った。だがその代わりに民間人だけを攻撃した」

「分かった、ブッシュは空のキャンプにミサイルを打ち込んでなどいなかった。彼はアフガニスタンに入りタリバンを転覆しその過程で最小限の被害しか出さなかった」

映画でのムーア:「ブッシュはより多くの軍隊と軍事力でアフガニスタンを攻撃しなかったことにより、ビン・ラディンの捜索をアメリカ人以外に「アウトソーシング」したこと、その結果としてビン・ラディンを逃したことにより混乱を招いた」

他の例:彼はブッシュ大統領に戦争以外の手段はすべて使用するように要請していたにも関わらず、上でも説明したように映画の中では大統領がタリバンの代表と会ったというだけの理由で彼がタリバンと親しすぎると示唆している。ようするにムーアはブッシュ大統領が外交を行っていても非難している。標的がどのような行動を取ろうともプロパガンディストの標的は攻撃され、その攻撃の矛盾性は気づかれることはない。
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ムーアは「嘘にどう対処するか」と題してこのサイトを攻撃しているがさらに墓穴を掘ってしまったようだ。彼の誠実性(そのようなものが存在すればだが)に対する批判に答えようというこのウェブページは実際には強烈な批判は認め、残りは無視しそして彼の主張にも幾らかの正当性がある部分に対するわずかの批判だけに標的を絞って回答している。面白いので少し見てみることにしよう。

ムーア:「有名になると、興味本位で自分のことについて他人が書いたユーモラスな作り話を所謂「大衆の目」が読んでいるということに慣れなくてはならなくなる。事実、極めて尊敬でき信頼もされているメディアが私は大学を卒業していて(していない)私が工場労働者だ(1日で辞めた)と書いているのを見たことがある」

メディアはどこからそのような情報を得たのか?恐らくは彼へのインタビューだろう:

『彼は自分のルーツが彼の仕事を形成したと語っている。「自分が労働者の出身であることが影響しているのだろう。あまり礼儀というものを教えられることはなかった」と彼は語っている』(彼は実際にはニューヨークに住んでいるのに、住所を「マイケル・ムーア、ミシガン州フリント」と偽っている。例えば、

「ニューズウィークは私がセントラルパーク西のペントハウスに住んでいると書いている(私はギャップの店舗の上に住んでいる。公園になど住んでいない…)」

彼は言葉遊びをしているようだ。まるで彼が商業地区のロフトみたいな場所で暮らしているように聞こえる。

彼は2億円のペントハウスに住んでいる。セントラルパークからわずか1、2ブロックしか離れていない場所だ。そこを探しに行ったことがある。これがその時の写真だ(ペントハウスを写真に収めることはできなかった。だが角のところにギャップ・ストアが映っているのが確かに見える。16階も下にだが…)。

Violence Figures.

ムーア:「私はアメリカの銃による殺人件数を偽ったとさえ糾弾されている。彼が言っている残りすべての事柄と同じように完全な嘘だ。映画の中で使用されたすべての統計は本物だ。すべて政府の統計を使用した。これらは事実だ」

まったくもって有益な回答ではない。具体的なことは何も明かされていないからだ。

「11127人が銃により亡くなっているという数字はCenter for Disease Controlのレポートに掲載されている」

ビンゴ!私のウェブページ上では、彼が数字を拾ってきたのは恐らくそこからだろうと予想していた。ようやく確認が取れた!

彼にとって悪いことに、彼は私の質問に答えていない。この数字はFBIが毎年公開している数字よりも数千人以上多い。

「私の映画の中の事実はすべて正しいとはっきりと保証する」

これを見た時、笑いを堪えなければならなかった。ジョークを言っているつもりなのか疑ってしまったほどだ(誠実性に関して彼が抱えている大きな問題のことを考えれば、彼にはユーモアのセンスがある)。言うまでもなく映画の中の「すべての事実」は「正しい」だろう。そうでなければ事実ではなくなってしまう。ゲッペルスやニクソン、聖ラルフなどの嘘つきも皆同じことを言っただろう。彼らが言ったすべての事実は正しいと。

ムーア:「私に対するNRAからの訴訟の数はゼロだ。そうだ、ゼロだ」

それは彼が名誉毀損罪に抵触するのを非常に気にしているからだろう。そのような状況では「公的な存在」が訴訟に勝つのはほとんど不可能だ。公的な存在に向けられた名誉の毀損は言論の自由によってかなりの程度まで守られている。それをまとめたものがここにある(省略)。

彼はそのことをもっと早く知っているべきだった。彼は「Roger and Me」という映画で公的な存在ではない個人を中傷してしまったため1993年に評決で有罪を宣告されている。この映画がテレビで一度も放映されたことがないのは恐らくはそれが原因だろう。私は彼のスタジオが敗れたこと、彼が控訴しなかったことをその時の弁護士に確認している。興味深い話:裁判所はとある社会活動家を中傷したとして彼を非難している。その社会活動家とはその時までは彼の友人だった、冷酷で彼が忌み嫌っているはずの大富豪だった。

彼は他でも有罪を宣告されている。「The Awful Truth」での意図的な侵害に対して7億円を賠償するように言い渡されている。だが被害者が公的な存在だったために評決は覆された(私が見るところでは、原告側は戦術面で誤りを犯したように思われる。それを当時無名でお金もあまり持っていなかった彼をではなく映画を公開したスタジオの方を訴えるべきだった。そのせいで原告側はムーアではなくスタジオ側が「悪意を持って」誤った言明をしたとの証明をしなくてはならなくなった。スタジオがそのような悪意を持っていたかどうか誰にも証明することはできない。スタジオはムーアが撮影した映画を公開しただけだ)。

さらに彼は他の映画に関しても訴えられている。James Nicholsという人が彼を訴えている。この訴訟の行方がどうなるかは分からないが、ムーアが訴えられているというのは確かだ。

最後に、私たちが彼から云われたことをそっくりそのまま送り返そうと思う。彼は嘘つきだとしてこのサイトを含めて、Moorelies.com、Moorewatch.com、Michael and Me、Fahrenhype 9/11、Michael Moore Hates America、Michael Moore Is A Big Fat Stupid White Manで酷評されている。彼は私たちに対して一度でも訴訟を起こしたことがあるだろうか?
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Fifty-nine Deceits in Fahrenheit 9/11

by David Kopel

メディアから聞かされたことがその人の知っているすべてであれば、その人は幻想の世界に住んでいる。だが1つの幻想の世界を他の幻想の世界に置き換えたのでは真実を知ることはできない。Fahrenheit 9/11は不誠実でパラノイド的で憎悪に満ちた空想の作り話だ。真実を学び、自分の目で判断する必要がある。

ブッシュ大統領に投票するにせよしないにせよ、それらの判断は真実に基いて行われる必要がある。ドキュメンタリーであれば真実と正しい論理によって人々を納得させるのでなければならない。嘘とプロパガンダで人々を操作しようとするのは民主主義に対する攻撃だ。

1.ゴアの「勝利」を祝ってのラリーはフロリダでの勝利を祝ってのことではない。そのラリーは開票が行われる前から行われていた。

2.他のテレビネットワークと同じく、FOXもフロリダでゴアが勝利したと誤って伝えた。誤報を最初に撤回したのはCBSであってFOXではない。

3.主要な新聞社が6ヶ月に渡って共同して調べた調査によると、ゴアが裁判で要求していたどの方法で再集計を行ったとしてもブッシュ大統領がフロリダで勝利していたことを示している。

4.Palm Beach Postやその他の調べによると、選挙管理人がある有権者たちを誤って投票資格なしとしたのは人種が理由ではない。

5.9.11以前にブッシュ大統領をレイム・ダックだと言っていたコメンテーターは誰もいない。議会は彼の減税法案を通過させ教育法案を通過させようしている矢先だった。映画の最後の場面で、ブッシュ大統領が富裕層の聴衆に向かって呼び掛けているシーンが映されているがそれは2000年の選挙資金集めの時の様子だ。ゴアもブッシュ大統領も選挙資金集めの時には富裕層に語りかけている。

6.「9.11以前の8ヶ月間、ワシントンポストによるとブッシュは休暇を取っていた。大統領に就任してから42%もの時間をだ」と彼は語っている。彼が参考にしたというその記事に記されているように、その数字には週末の休暇やブッシュ大統領がトニー・ブレアと話し合うなどして働いていたキャンプ・デービットのような「vacation locations」で過ごしていた時間などが含まれている。

7.ゴルフコースの場面では、ブッシュ大統領が聞いていたのはイスラエルでのテロ攻撃のことだった。彼はイスラエルに対するテロを非難するとの声明をメディアに向かって即座に出した。彼はアメリカでのテロ攻撃のことを喋っていたのではない。

8.ブッシュ大統領がアルカイダに関する2001年の報告書を読んでいなかったという証拠はない。

9.報告書の題名に「vagueness」と書かれていたから読まなかったとブッシュ大統領は一度も主張していない。

10.その報告書には「オサマ・ビン・ラディンが航空機をハイジャックしてテロ攻撃を計画している」とは書かれていなかった。FBIは「もしも、そのような攻撃があったとしたら対処できないだろう」と書かれているだけだった。

11.サウジ人たちは一般人にも航空規制が解除された後に初めて出国した。

12.Richard Clarkeと9.11調査委員会によると、(ムーアが英雄だと主張している)彼がサウジ人たちの出国を許可した。上からの圧力は掛けられていない、と(ムーアによれば真実の人であるはずの)彼自身が証言している。

13.映画ではクラークの考えが聴衆に対して正確に再現されているとムーアはTVレポーターたちに嘘をついた。クラークは映画の中のサウジ人たちの出国の様子をムーアが編集した「捏造だ」と呼んでいる。

14.映画での主張とは真逆に、9.11調査委員会は出国を許可される前にサウジ人たちは「詳細な尋問」を受けていたと報告している。

15.James Bathはブッシュ大統領が顧問を務めていたエネルギー会社Arbustoにビン・ラディン一族のお金を投資などしていない。彼は自分のお金を投資していた。

16.ホワイトハウスが公開したAlabama National Guardの記録から彼が黒塗りされていたのは、健康に関する個人情報の公開が連邦法により禁止されているからだ。

17.映画ではヴァンダル王子がブッシュ政権が率いるアメリカ政府に大きな影響を与えているかのように描かれている。だがアメリカ政府がサウジの王朝に対して媚びへつらうのは両党の長年の伝統でブッシュ大統領が初めたことではない。

18.Harken Energy:ブッシュ大統領は会社の弁護士がOKを出してから初めて株式を売却している。

19.ブッシュ大統領が「ラップを口ずさんだのは」彼がインサイダートレーディングに関わっていないことが証明されたからだ。

20.カーライル・グループはブッシュ大統領との関わりが特に強い会社というわけではない。ジョージ・ソロスを含めて彼の敵の多くが株主だ。

21.ブッシュ政権はクルセイダーの受注をキャンセルしたことによってカーライル・グループに大打撃を与えている。ブッシュ政権で武器の受注がキャンセルされた数少ない事例のうちの1つだ。

22.ビン・ラディン一族は株式を売却する前にカーライル・グループから手を引いている。ブッシュ家と関わりがあるとされる会社に彼らが投資した1400億円のうちほとんど大部分のお金はブッシュ大統領の父がカーライルに加わる前に同社に投資された。

23.Craig Ungerはサウジ人たちがアメリカに86兆円投資していると主張している。その数字は彼が書いた本「House of Bush, House of Saud」に記されているものだが、彼が参考にしたというどのソースもそのような額を支持していない。

24.サウジ人たちが「アメリカの7%」を所有しているとムーアは主張している。だが架空の86兆円という数字を真に受けたとしても、サウジ人たちは外国からのアメリカへの投資総額の7%を占めるに過ぎない。アメリカが100%外国人に所有されていた場合にのみ彼の主張は正しいといえるだろう。

25.サウジ大使は特別な待遇など受けていない。シークレットサービスによって警護されている唯一の大使でも何でもない。アメリカが批准した国際条約によって保護を求めた大使には警備を与えることが定められている。

26.ブッシュ大統領はサウジの命令によって動いているという彼の主張はアフガン攻撃(サウジが強力に支援していたタリバン政権を転覆させた)やイラク攻撃(イラクの石油が競合するようになるためサウジは反対した)と矛盾している。

27.テキサス州の州知事だった時代に、ブッシュ大統領はタリバンの代表と一度も会っていない。

28.ユノカルによるパイプライン建設はクリントン政権によって後押しされた。だがユノカル自体が1998年にその計画を破棄している。

29.アフガン新政府はパイプラインを建設する契約に署名した。だがそれはユノカルが提案していたものからは数百マイルも離れたまったく異なるものだ。

30.新しいパイプラインの建設は始まっていない。彼は「(クルーグマンがアドバイザーを務めていた)エンロンがそのパイプラインの建設から利益を得ている」と主張しているが、エンロンはどちらのパイプラインにも一度も関わっていない。

31.ブッシュ大統領はタリバンの外交団が2001年の月に訪問してきた時に「歓迎」などしていない。オサマ・ビン・ラディンを匿っているとしてむしろ非難している。

32.映画ではアフガンへの攻撃を支持しているフリをしているが、彼はアフガン攻撃に反対していた。そして2002年の12月にはオサマ・ビン・ラディンは無罪だろうと主張していた。

33.アフガン攻撃はサウジ家の利益を守るための戦いだとムーアは主張しているが、彼はアフガンがタリバンから開放されたという結果からは目を逸し続ける。アルカイダのトレーニングキャンプが破壊されたこと、自由選挙が開催されるようになったこと、女性の解放、150万人のタリバン難民たちの帰還などなど。

34.ブッシュ政権が9.11調査委員会に協力していないという誤った印象を捏造するために発言のあちこちが並べ替えられている。2003年の7月に議長は協力が不足していると不満を漏らした。2004年の2月には、ホワイトハウスは完全に協力していると発言した。議長はそれに同意し、「前例がないほどの」情報へのアクセスを提供してくれたとしてホワイトハウスを称賛した。

35.アシュクロフトは「死亡した男」にシアトルの選挙で敗れたのではない。Mel Carnahanは選挙の数週間前に飛行機事故で死亡した。ミズーリ州の州知事はもし有権者が許すのであれば未亡人となったJean Carnahanを指名することを約束していた。

36.FBIは航空機の訓練学校に通っていたアルカイダの容疑者を「知らなかった」。その情報はFBIの一地方支部にとどまり続け上層部にまで届けられることはなかった。

37.アシュクロフトがテロ対策予算を削減したことなどない。彼はすでに2年間に渡って使われていなかったあるプログラムに対する1年間の予算の削減を提案しただけだった。

38.Porter Goss議員は自分は「800番代の電話番号を取得している」と語った。映画の字幕では「彼は嘘をついている」と書かれている。Gossは実際にフリーダイヤルを取得している。市外局番は877ではあるが…

39.ムーアはサダム・フセインのイラクは「アメリカ人を1人も殺害していない」と言っていた。実際にはサダムはイスラエルでアメリカ人(以外も殺害されているが)を殺害した爆弾犯に資金を提供している。他にもサダムはアメリカ人を殺害したテロリストAbu Nidalと1993年の世界貿易センタービル爆破事件で爆弾を製造したテロリストを匿っている。

40.それに加えてサダムはブッシュ前大統領の暗殺とフィリピンのアメリカ大使殺害を命じている。

41.ムーアは「サダムはアメリカを一度も攻撃しようと企てたことがない」と主張している。実際には、1997年に「アラブ地域のアメリカとイギリスの同盟相手、大使館、軍艦などをアラブの政治勢力による攻撃の対象とせよ」と命じている。9.11の1年後に、サダムはアメリカに対する自爆攻撃を呼び掛けた。

42.ムーアはイラクとアルカイダの間には何の関係もなかったと主張している。実際には強力な結びつきがあったことが膨大な資料によって確認されている。ただ9.11調査委員会が言っているように、サダムが9.11のテロ攻撃に事前に参加していたかどうかは定かではないが。

43.ムーアの映画ではコンドリーザ・ライスが「イラクと9月11日に起こったことには何らかの関係性がある」と語っている場面が映されている。(イラクと9.11の間に関係があったとする証拠は見つかっていないとする9.11調査委員会の報告を事前に見せられていた)聴衆は彼女(アフリカ系アメリカ人)を笑い者にした。実際にライスが語ったことはこのような内容だった。

「イラクと9月11日に起こったことには何らかの関係性がある。それはサダム自身が関わったとか彼の政権が9.11に関与していたとかそういう意味ではなく、9.11を引き起こしたものが何であったかを考えると、人々をニューヨークのビルディングに突撃させたものは憎悪のイデオロギーの勃興であったように思われる。これは人々から自由を奪うことをその使命と定めている巨大なテロ組織、国際的なネットワークを持つテロ組織によって引き起こされた事件だ。憎悪のイデオロギーは暴力を駆り立てることによってイスラムを平和な宗教から遠ざけることになった。それらはすべてつながっている。そしてイラクがそのすべての中心地だ。イラクが平和的で民主的、繁栄した中東の中心に生まれ変わることができれば、中東が変わり始める兆しを目にすることができるだろう」

44.ムーアは開放される前のイラクは幸福に満ち溢れた素晴らしい国だったと主張した。実際には、人口の6分の1がサダムの圧政に耐えかねて国外に逃亡している。国連とアムネスティは「イラク政府は基本的人権と国際的に定められた人道に関する法を完全に踏みにじっており、その結果として(国中に行き渡っている差別と恐怖によって)ありとあらゆるところにまで精神的、肉体的抑圧が広がっている」と非難している。

45.ムーアが唯一見せたがるのは民間人の負傷者だけだ。軍人の負傷者の方が割合としては圧倒的なのだが。

46.破壊されたビルの映像を視聴者に見せる時、それらは軍事施設で民間人はその近くに立ち入ることが許されていないということは決して伝えない。

47.イラク解放軍に参戦したのは小国ばかりだと言ってムーアは観客の笑いを誘おうとしている。解放軍にはイギリス、オーストラリア、イタリアなども参戦していたことは決して伝えない。

ムーアの醜悪さをよく表すエピソードがある:戦死した空軍の少将だったGregory Stoneの葬式がArlington National Cemeteryで行われた葬儀の映像は親族の許可もなく家族が猛反対していたというのに撮られた。ストーン少将は強い信念を持ってイラクでの任務にあたっていたし彼の家族もそれを支えていた。Massachusetts National GuardsmanのPeter Damonの映像も彼の許可なく使用された。

48.ムーアの主張とは異なりアメリカのメディアはイラク攻撃に賛成などしていなかった。例えばPeter Jenningsは強く批判的だった。彼が攻撃の支持者だとしてムーアが出している証拠とやらは2003年の4月にサダム軍が敗北した時の様子を彼が伝えている時の一コマで、それ自体は嘘でも何でもない単なる事実だった。

49.アメリカ軍の兵士がシートにくるまっている男性をからかっているように見える映像は捕虜に対する虐待ではない。彼らはお酒を飲みすぎて通りで倒れていた男性を運ぼうとする際にちょっかいを出してしまっただけだ。

50.ムーアはブッシュ大統領が退役軍人の病院を幾つか閉鎖しようと提案していると主張した。だがブッシュ大統領は代わりに他の退役者の病院を解説することを提案している。

51.ブッシュ大統領は「危険地域」で任務にあたっている兵士たちに支給される特別手当の更新に一度だけ反対したことがある。ムーアはブッシュ大統領が兵士たちの給料を3分の1カットしようとしていると捻じ曲げて伝えた。

52.ブッシュ大統領が給料の削減を提案したと誤った主張を広める一方で、ブッシュ大統領が2003年に兵士たちの3.7%の昇給を議会に認めさせたことはムーアは一切伝えようとはしない。

53.ムーアはイラクに自分の息子を送り込んだのはたった1人の議員だけだと主張している。実際は2人だった(Democratic Senator Tim Johnson of S.D., and Republican Rep. Duncan Hunter of California)。ジョン・アシュクロフト議員の子供もペルシア湾で勤務している。

54.映画ではマーク・ケネディ議員の映像が意図的に編集されている。彼が議員の息子のリストの作成を拒んだかのように編集されている。実際にはケネディ議員はそれは良い考えだと語っており協力を申し出ている。

55.映画ではMichael Castle議員がムーアを無視して通り過ぎていく様子が映されている。だが彼にはそもそも子供がいない。

56.国勢局のデータによると、他の世帯と比べて議員の息子はイラクで従軍している割合が高い。

57.ムーアはミシガン州フリントを「自分の故郷」と呼んでいる。実際には彼はDavisonで育った。フリントよりも遥かに豊かで白人の割合も高い地域だ。

58.映画の中ではムーアはアメリカ軍を支持しているかのようなフリをしている。実際には彼は敵を支持している。サダムの親衛隊とアルカイダとの連合、イラク人を殺害しイラクの民主主義の可能性をわずかでも破壊したいと欲して力を合わせているイランやシリアが操っているテロリストたちを。ここにイラクに全体主義をもたらそうと活動している勢力に対して2004年の4月14日にムーアが語っている内容がある。「占領に対して立ち上がったイラク人はテロリストではない。彼らは革命者だ。彼らは勢力を増し勝利するだろう」。車爆弾で意図的に市民を殺害しているイスラム原理主義者もしくは圧政を敷いてきたバース党にイラクを支配させたいと欲している人間が、アメリカ軍を支持していると本気で思うだろうか?

59.Screen Dailyですでに記されているように、イランとシリアが援助しているテロリスト集団ヒズボラがムーアの映画のプロモーションを行っていた。この映画の中東での配給会社であるFront Rowはテロリストからの援助を受け取っていた。

「この映画のマーケティングを担当したFront Rowという会社はレバノンを拠点とするヒズボラと関わりのある組織から援助を受け取っていた。この会社のマネージング・ディレクターであるChacraはこの映画が反米ではなく反ブッシュだと感じたと主張しているが、彼らの協力がなければレバノンやシリアでは映画の放映ができないため拒否することはできなかったと語っている(Nancy Tartaglione, "Fahrenheit to be first doc released theatrically in Middle East," Screen Daily.com, June 9, 2004)。この話はSamantha Ellisも記事にしている(Fahrenheit 9/11 gets help offer from Hezbollah," The Guardian (London), June 17, 2004)。

Slate.com (6/24/04)はこの話の更に詳しい内容を記事にしている。「この会社のマネージング・ディレクターGianluca Chacraはヒズボラのメンバーがこの映画を支援するために私たちにできることはないかと持ち掛けられていたことを認めた。彼は(彼らを)恐れるでもなく、彼らの提案にむしろ興奮したと語っている。レバノンを実行的に支配しているそのような組織から援助を受けられることはレバノンの市場を押さえるにあたって非常に大きなことでまったく問題ではないと思う。これは極めて当たり前のことだ」と記している。

数百人のアメリカ人を殺害し、アルカイダや他のテロリストと共同して動き、現在はアメリカ人の兵士とイラクの民間人の殺害を目論んでいるテロリスト組織から援助を受け取ることが愛国的だと本当に思われるだろうか?
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9.11「陰謀論」は、共和党とブッシュ政権が真の敵でありテロによる脅威は存在せずサダム・フセインはイラクの村を毒ガスで滅ぼしてなどいない善人だったと主張する「Fahrenheit 9/11」により始まっている。

2007年にムーアに友好的な映画を撮影していたカナダ人たちは、彼がすべての映画で大嘘を言っていることに気が付いてしまい彼の嘘を暴くドキュメンタリーをその後に制作することになる。それを見た多くの人々はムーアの主張に疑問を抱き始めることになった。そのカナダ人の映画監督たちは極左でムーアのファンであることが知られていたので、彼らの映画の方はというとリベラルなメディアからは大絶賛されている一方で、そのすぐ横に置かれていたドキュメンタリーの方はというと(彼らのものだとも知らずに)右翼によって事実が捻じ曲げられた最低の駄作だとして酷評された。ムーアのような手口で中傷されるのを好み人間は誰もいないだろう。彼らがムーアと政治的には同じ立場にいたとしても。

2008年にNational Geographicsはサダム・フセイン統治下のイラク人の暮らしを彼らが調べたビデオを放映した。そのビデオには人々がビルから投げ落とされ殺害されているシーンやサダムが実行させている他の人道上の犯罪の様子が映されていた。サダムはそれらの映像を撮影させ人々を恐怖の底へと陥れるためにイラクTVで放映させていた。ムーアの主張はまたしても信頼のできるソース(これ以上のものはないだろう)によって完全に否定された!

彼が映画で嘘を言っていることはずっと前から知っていた。例えば「Bowling for Columbine」では、彼は映画の冒頭から嘘を言っている(口座を開いた人に銃を贈った銀行は存在しない)。そのシーンは完全に捏造されたものだ。「Roger and Me」という映画では、彼はミシガン州のフリント出身だと主張しているが実際には映画を撮影する前は彼はそこを訪れたことさえない。

ムーアはそもそも自分はドキュメンタリーを撮影しているとも事実を語っているとも口にしていない。冒頭のカナダ人たちが彼にインタビューを試みた際には「Roger and me」で非難されていたRoger Smithよりも会うのが困難だったという(実際には彼はロジャーから許可を得てインタビューを行っている。だがその時の映像はこの映画の大前提、すなわちGMの責任者には誰も話すことができないを根底から覆してしまうため映画では決して放映されることがなかった)。

彼は単なるピエロでしかない。残念なことは彼を真剣に受け取ってしまうアメリカ人がいるということ、そして彼の映画が政府への信頼を低下させ9.11に陰謀を抱かせその犯人はブッシュ大統領だという印象を特定の人たちに与えてしまったことだ。

アメリカ人は出場者が回答を与えられていたヤラセ番組から何も学んでいないのではないかと懸念している。そして議会の公聴会でCBS TVが「よろしい、視聴者たちは喜んだ。出場者たちはお金を得た。商品は売れた…だから誰も損していない」と言い放ったことも。CBS TVやムーアというクズに利用されたアメリカ人以外は損をしていないだろう。

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2017年7月11日火曜日

アラブの春はオバマによってつぶされた?

Why Is General Mattis Nominating the ‘Muslim Brotherhood’s Stooge’?

RAYMOND IBRAHIM

マティス国防長官は(ヒラリー・クリントンの側近)アンネ・パターソンを大統領の政策防衛担当次官として任命しようとしているがそれには大きな問題がある。

Politicoが少しだけその理由を説明している。

「仮に指名され承認されれば、パターソンはペンタゴンで4番目に強力な地位を握ることになり、(マティスとロバート・ワークスの両者は軍人であるため)彼女が民間人としては国防総省のトップとなる」

「パターソンは2011年から2013年の間、エジプト大使としてモハマド・モルシ元エジプト大統領と彼のイスラム主義政府と緊密な協力を行っていた。彼女は、政権との関係が緊密すぎること、政権に対する抗議行動を阻止するための活動を行っていたことに批判の声が挙げられている。ホワイトハウスの関係者は決定に対する懸念を表明している」

このような内容では読者は実態をまったく把握できないだろう。 2013年6月30日の革命に至る数ヶ月間の間、アナリストからエジプトの通りまですべての人々から「ムスリム同胞団の操り人形(もしくは手先)」と呼ばれた彼女はモルシと同胞団に抗議を行っていた数百万人のエジプト人によって最も憎まれた人間の1人だった。


彼女の顔は定期的にプラカードでオバマの隣に晒されただけではなく、ほとんどの人が知らないであろうはずの彼女が1人で攻撃に晒されていることもあった。それほどまでに彼女がムスリム同胞団と緊密であると見做されていたということを示唆している。この写真は例外的な一枚というわけではなく、これに似たプラカードが幾つも目撃されていることに注意する必要がある。





以下は、2013年6月30日の革命の前後にアラビア語のメディアで語られていた彼女とムスリム同胞団との異常とも言える関係に言及していた部分を少しだけ翻訳したものだ。

「革命に至るまでの間、パターソンはエジプト人に抗議しないように呼び掛け続けていた。彼女はコプト教の教皇と会ってまでエジプトのマイノリティであるクリスチャンに、同胞団に対して抗議を行わさせないようにと要請していた。存在自体が「アラーへの冒涜」とコプト教の信者が呼ばれていることを考えれば、モルシ政権下で最も苦しむのは誰かということは明白であるにも関わらずだ」

革命が勃発すると、彼女はムスリム同胞団が権力を握るようにと幾度も働きかけを行っていた。

50年以上に渡りエジプトの政治に携わり「アラブ世界で最も尊敬される政治評論家」であるムハンマド・ハイカルでさえ、パターソンはモルシ政権下でエジプトの首相であったムスリム同胞団のヒシャム・カンデルを擁護していたとインタビューで語っている。「いろいろな形の圧力があり、アメリカは湾岸の鍵を握っていた」。

その後、パターソンは最近任命されたばかりのエジプト軍の最高指揮官アブドゥル・ファタフ・アルシシ将軍に対して現在容疑を追求されているムスリム同胞団のメンバーすべてを解放するよう要求した。

シシがこの命令を拒否すると、エジプトは新たなシリアへと転落し内戦が勃発することになるだろうとパターソンは彼を脅し始めた。

別の報道によると、パターソンは「シシィ将軍と連絡を取り合いムスリム同胞団の指導者との対話と彼らに対する寛大な措置を要求している」と伝えられているがシシはいずれも拒否している。

Tahrir TVのライブインタビューで、政治家であり元エジプト議員のMustafa Bakariはパターソンとムスリム同胞団の副議長Khairat al-Shaterとの関係を明らかにした。

彼は、ムスリム同胞団の私邸から彼女が出入りしているのが何度も目撃されていると語っている。彼は、アラシャターに「6月30日の抗議では私たちはあなた方の側に立つ」と述べ、同胞団の指導者を「国の真の支配者」として扱ったと述べた。

「彼女は恐らくはエサム・アル・エリアンやムハンマド・アル・バルタギあたりにリクルートされた、同胞団の秘密メンバーであると考えています」と彼は語っている。

このため、6月30日の革命で重要な役割を果たしたタマロッドを含むエジプトのいくつかの革命軍は、カイロの米国大使館の前で「アン・パターソン大使の追放を呼びかける」抗議行動を繰り広げたほどだった。

それに関連してエジプトのジャーナリスト、アブドゥッラー・アル=サナウィはこのように語っている。

「アン・パターソン氏のエジプトでの存在はアメリカにとって大きな負担となっている。パターソン氏は彼女の血迷った行動が流血を引き起こしたことを鑑みて精神病院への入院が妥当であり、彼女のせいでオバマ政権は世界とアメリカ議会、ペンタゴンに対して非常に窮地に追いやられている」

その後に、エジプトの有名な新聞Youm 7(Alexa.comによると、全米で6番目に訪問されたウェブサイト)が読者にこのような質問をしている。

「アン・パターソン大使の追放に賛成ですか?」

87.93%が「はい」と答え「いいえ」は10.54%でしかなかった。1.53%が無関心だったと答えた。 Youm 7のビューワーはほとんどが世俗派もしくはキリスト教徒だ。パターソンを嫌っていたのは彼女から利益を得ていた同胞団ではなくエジプトの非イスラム派だった。

2013年には、常に民主党の側に立つことで評判の悪いForeign Policyでさえ、パターソンは「ムスリム同胞団に暗黙の支援を与えた一連の政策の重要な実施者」と共和党員の間で広く見られていると記している。このような人間がマティス将軍がペンタゴンのトップに立たせようとしている人間だ。

MORSI'S BOASTS OF A PRO-BROTHERHOOD U.S. COME TRUE

RAYMOND IBRAHIM

6月30日の革命のほぼ2ヶ月後に行われたモルシ大統領とアブデル・ファッタ・アルシシィ将軍との最終的な対話が非常に興味深いものになっている。将軍によって大統領が刑務所に入れられる前の対話の様子を(目撃者の証言を下地に書き起こしたものを)エジプトの新聞El Watanが7月5日に掲載している(原文と完全な英語の翻訳はこちら)。

MorsiとSisiの間で交わされた会話(必要に応じて私のコメントを挿入している):

Morsi:現在の状況に対する軍部の見解はどうなっている?静観するつもりか?法や秩序を守るべきではないのか?

シシ:どのような法ですか?軍は国民の意思とともにあり、報告書によると、圧倒的多数の人々があなたを望んでいません。

Morsi:私​​の支持者は多く、彼らは沈黙していないだろう。

モルシの最初の脅しは抽象的で曖昧だ。 まだ危機的状況に追い込まれていないと言っているが、彼は単に自分の支持者は「多く」、そして彼らは「黙っていないだろう」と仄めかしているだけである。

シシ:軍隊は何が起こっても国が破壊されることを許さないでしょう。

モルシ:もし私が退きたくないと言ったら?

シシ:この問題はすでに解決しており、もはやあなたに決定権はありません。尊厳を保ちたいのであれば、あなたが支持者と呼んでいる人々を使って国民を脅迫するのは止めて、流血を防ぐために彼らに家に帰るように伝えてください。

モルシ:しかし、このままでは軍事クーデターに発展するだろう。そうなったらアメリカが黙ってはいない。

確かにテクニカル的には軍事クーデターではあったが、軍は国民から大変に支持されていた。ホスニ・ムバラクに対する2011年の最初の革命よりも遥かに多い数千万人のエジプト人が新しい選挙を要求して数日間通りを埋め尽くしていた(多くのエジプト人はモルシが大統領選挙に勝ったことは一度もないと最初から主張していた)。

シシ:人々は私たちに関心を持っています。あなたは私を脅してばかりいるので率直に話しましょう。私たちには、あなたとエジプトの安全保障を損なった多くの政府当局者を非難する証拠があります。私は法廷でそのように証言し、あなたは全国民の前で裁かれるでしょう。

モルシが自分の支持者が誰であるのかを明らかにし始めると(要するにバラク・オバマとヒラリー・クリントンだったわけだが)、シシもまたモルシと彼の後ろ盾であるムスリム同胞団で構成される内閣を非難する証拠を持っていることを指摘してやり返している。最近数週間と数日の間に、この証拠の話はより広まった。エジプトの多くの政治活動家によると、オバマ政権は同胞団に対して巨額の金銭支援をしており、おそらくはオバマの弟、マリク・オバマの手に巨額の現金が渡されたと見られている。エジプト最高憲法裁判所副裁判長のタハニ・アル・ゲバリ氏は、「オバマの弟はムスリム同胞団の国際的な活動に資金を提供している主犯の1人である」と断罪している。アン・パターソン大使やグレアムとマケイン上院議員らは、モルシやエジプトの民間人に対する脅しやテロの容疑が掛けられているKhairat al-Shatterのような億万長者といった同胞団の主要なメンバーを釈放するようにエジプトに圧力をかけている。

[...]

モルシ:私を追放してムスリム同胞団が大人しくしているとでも?彼らは世界中でテロを実行する。

確かにその通りだ。「アルジャジーラ」と呼ばれているカタールのムスリム同胞団の広告塔はエジプト軍部を悪逆非道に扱い同胞団を善のように訴えるプロパガンダ・キャンペーンを24時間毎日に渡って展開している(とんでもない嘘を堂々と撒き散らすことによって)。それとは別に、同胞団とその支持者たちは特にエジプトで80の教会やキリスト教の施設、それに政府系の建物に文字通り「火を付けてまわっている」。

シシ:あなたの身がどうなってもいいのであればやってみるといい。平和に暮らしたいという人がいれば誰であれ歓迎します。そうでないというのであれば、我々はその人たちを放置しないでしょう。(先程の条件が守られるのであれば)我々は誰一人として追い出したりはしないでしょう。同胞団もエジプト人です。あなたの不快な戦争のために彼らを利用しないでください。あなたが本当に彼らを愛しているのであれば、大統領職を退いて彼らを家に帰らせてください。

モルシ:とにかく私は退くつもりはない。それに世界中の人々が私の味方だ。そして私の支持者も私を見捨てないだろう。

またもモルシは彼の支持者とは具体的に誰か、「エジプトの外の人々」すなわちオバマ政権と「私の支持者」すなわちムスリム同胞団それにエジプト内外のイスラム過激派だということを仄めかしている。

[...]

モルシ:わかったわかった、もし私が辞任すれば外国を旅行することも私を投獄しないということも約束してくれるのか?

シシ:そんなことは約束できません。あなたに判決を下すのは司法の役割です。

モルシ:わかった。君がそう言うのであれば私としては戦争を起こすしかない。どっちが最後まで生き残るか見届けようじゃないか。

シシ:勝つのは国民です。

この結果はまだ決まっていない。エジプトの運命はまだ不明瞭なままだ。はっきり分かっていることはといえば、腐敗しきったムスリム同胞団によるイスラム支配に対して立ち上がったエジプトの人々が起こした6月30日の革命をオバマ政権とムスリム同胞団、それにアルジャジーラにいたるまでが未だに貶めようとしているということだけだ。

BENGHAZI TERRORISTS: 'DR. MORSI SENT US'

Cynthia Farahat

ベンジャジにおけるテロ攻撃は、これまで考えられていたよりもはるかに深刻であったかもしれない。アメリカのメディアは完全に黙殺するつもりでいるが、このテロにはエジプト政府が関与していた可能性が浮上してきた。Youtubeにアップロードされたテロ攻撃の様子にはアラビア語のスピーカーにしか分からない重大な問題が収められている。テロリストのうちの幾人かはエジプトの方言を話している。

ビデオの1つには4人のアメリカ人が殺害されたのと大体同じ時刻に、携帯電話を携えた攻撃者の1人が映し出されていた。警備によって包囲されているはずの大使館周辺施設に犯罪者が侵入できたことをビデオは示し、テロリストははっきりと北部エジプトの方言で「Mahadesh, mahadesh yermi, Dr. Morsi ba`atna」と叫んでいる。これは「撃たないでくれ。撃たないでくれ。モルシ氏が私たちを送り込んだ」を意味する。

「撃たないでくれ」を「Mahadesh yermi」と言うのはエジプト人のアラビア語に特徴的で、ベンジャジに住むリビア人であれば「撃たないでくれ」は「Matermey」と言うだろう。

「モルシ氏」はもちろんエジプトの大統領モハメド・モルシを指す。モルシというのはエジプト人に特徴的であり他のどのアラブ諸国にも存在しない。

エジプトの政権とベンジャジがつながっていたのであれば、どうしてエジプト政府はエジプト人容疑者アボ・アハメドをアメリカ政府に尋問させなかったのかの説明が容易につく。

フォックス・ニュースによると、アボ・アハメドは2012年末にアルカイダの指導者アイマン・アル=ザワヒリと連絡を取り、「革命後のリビアの混乱に乗じて武器を購入し戦闘員を送り込むための拠点」をリビアに建設することを持ち掛けたという。

エジプトのメディアは政権に対してどうして攻撃の間にモルシの名前が言及されたのかについて説明を要求した。この質問は未だに回答されないままとなっており、アメリカのメディアでは言及されることさえなかった。

この事件をより大きな文脈に沿って解釈すると色々なことが分かる。ベンジャジにあるアメリカの大使館周辺施設が攻撃されていたのと丁度同じ日に、カイロのアメリカ大使館も攻撃を受けアメリカ国旗の代わりに大使館にアルカイダの旗が掲げられるという事件が発生した。アメリカ大使館から2ブロック離れた友人たちの話によると、エジプトの警備隊は攻撃の1ヶ月前に警備から引き上げられていたという。これまでに聞いたこともないような話だ。

著名なエジプト人の反体制派のワエル・アッバス氏を含む多くのエジプトの反体制団体の報道によると、カイロにあるアメリカ大使館周辺を取り囲んでいたのは抗議者でも何でもなく政府に雇われた「犯罪者のゴロツキたち」だという。

エジプトに住んでいる人であれば誰でも、少なくとも2つのチェックポイントを通過することなくアメリカ大使館がある地区に入ることができないことを知っている。そこではIDカードの提示、通行のための理由、その証明が求められる。10年以上もやっているのでそのことを私はよく知っている。

ムスリム同胞団(MB)がテロに関与していたとしても驚きではないだろう。 同胞団はテロを支援することを最大の活動の1つとしている。

同胞団の指導者はアルカイダとオサマ・ビンラディンのアメリカに対する攻撃を公然と支持している。2011年の5月に同胞団のメンバーで自由正義党の副会長であるエッサム・エル・エリアンはこのように語っている。「指導者オサマ・ビンラディンの暗殺は、アッラーの敵との戦争の終結を意味しない。彼が殺された方法は、アメリカの文明の醜い顔を明らかにする(と民間人を爆殺している首謀者が語る)」。

エル・エリアンがビン・ラディンに対する支持を公言しているにも関わらず、国務省の当局者は2012年12月に彼をアメリカで歓迎している。

(省略)

SAVE EGYPT BEFORE IT’S TOO LATE

P. David Hornik

イスラエルのエジプト大使Zvi Mazelは、エジプトはトラブルに陥っていると報告している。

一方、アブデル・ファッタ・エル・シシ大統領は野心的な経済改革を模索している。彼はスエズ運河の規模を倍増させ収入の大幅な増加をもたらそうとしている。彼はカイロの交通渋滞と大気汚染を緩和させるために、そして新たな商業と観光の拠点とするためにカイロの南に新しい首都を建設しようとしている。

彼はまた約2000マイルの高速道路を建設しようとしており、取り扱いの不備が原因で廃棄されていた(主なエジプトの主要作物である)小麦の貯蔵庫を清掃、再利用させようとしている。さらに石油、天然ガスの開発を進めようとしている。

石油と天然ガスの開発は「西側がエジプトを援助する決定を下すのであれば大幅に加速することができます」とMazelは語っている。「だがそのような事態はこれまでに起こったことはありません」とも語っている。

実際、2013年7月に当時国防相だった彼がムハンマド・モルシのムスリム同胞団政権を打倒して以降、オバマ政権と西側諸国がエジプトを冷たくあしらってきたことはよく知られている。

彼らは、その転覆が1400万人という歴史上で最大の平和的で自発的な抗議運動によって支持されていたにも関わらずそのようにあしらっている(URLは省略)。

彼らは、わずか1年の間に(奴隷制の復活を掲げて)エジプトの憲法を廃止しシャリア法を国法とすることによって混乱を招いた、急進的で無能な政権に抗議していた。

それにも関わらず「オバマが率いる西側諸国は」、シシ大統領のことを「民主的に選ばれた大統領」から権力を奪い取った軍事独裁者だと見做しているとMazelは語っている。モルシがイスラム独裁体制を作り上げようとしていた丁度その矢先に、(軍の助けがあったとはいえ)民主的な蜂起によって彼が転覆させられたということを認めたくないのだ、と。

西側に拒絶されたシシは他の国に援助を求めるしかなかった。中国は彼の新しい首都建設計画を引き受けている。さらに問題なことにエジプトはすでにロシアと巨額の武器売買契約を結んでおり、さらにロシアは250億ドルのエジプト北部の原子力発電所の建設を受注している。

エジプトが経済問題に苦しんでいなければ事態は簡単だったかもしれない。

それに加えて、彼は過激派の反西側テロリストによって攻撃を受けている。

「ムスリム同胞団はエジプトの地方のインフラを狙って小規模ではあるものの未だに攻撃を続けている」とMazelは語っている。そしてイスラム国も攻撃を繰り返している。最も壊滅的だったのは1年前のロシアの航空機の撃墜だろう。「そのせいで観光客がほとんど途絶えてしまった」とMazelは語っている。

経済が苦しみ続け、付加価値税(VAT)の増税のように幾つかの不人気な政策が実行されることになると、イスラム過激派によって利用される恐れのある政権交代の可能性が高まることになる。

「今は彼に時間を与えるべきです。今後数ヶ月間が非常に重要です」とMazelは訴えている。

イスラエルは安全保障と経済の両面ですでにエジプトを支援しているが、イスラエルが与えることができる援助はエジプト人のイスラエルとユダヤ人に対する敵意のせいで大きく制限されている。

今後数ヶ月間の展開はイスラエル大使も語っているように穏健派で建設的でもあるシシ政権の行方を左右することになるだろう。

トランプ大統領は9月に国連で会った時、彼のことをすでに称賛している。これは「シシとオバマの間の冷たい関係が終わりを告げてアメリカとエジプトの新しい親密な同盟の始まり」を示唆している。

実際、エジプトのメディアはトランプの勝利を歓迎した。短命ではあるが憎悪されていたモルシ政権を支援していたオバマに対する広範な怒りを反映している。

エジプトが模範的な国に生まれ変わったとか西側の民主主義に目覚めたとかそういうことではもちろんない。前述したようにイスラエルとユダヤ人に対する憎しみは平和条約が締結されて数十年も経っているというのに未だに広範に見られる。キリスト教徒に対する攻撃も続けられている。シシのムスリム同胞団と他の過激派勢力に対する取り締まりは西側が求めている基準をほとんど満たしていない。

だが現実的に考えると、西側との連携を模索していてイスラエルに対しても攻撃的な姿勢を見せておらず少なくともイスラム過激派を抑制することを望んでいるシシ政権は他の選択肢よりも遥かにましな存在だろう。

シシを支援することは、まともな政策への回帰を意味する。

以下、アメリカ人のコメント

El Cid • 7 months ago

トランプ大統領が就任初日で起こした最も重要な外交政策の動きの1つだ。シシはアラブ世界の中で残っている世俗派で最も強力な人間の1人だ。

国内政策で最も重要な動きは何か?アメリカ政府からムスリム同胞団のメンバーを追放したことだ。

aj nitzberg  Guest • 7 months ago

オバマに感謝しよう。彼の非倫理的で破滅的な政策が効果を表し始めたことに。これは、数え切れないほどにあるうちの1つでしかないのだが、ヒラリー・クリントン政権がアメリカの終わりの始まりになっていたであろう理由の1つでもある。

Peter Lounsbury • 7 months ago

オバマの8年間が私たちに与えた損害を把握するにはもうしばらくどころか後数年は掛かるだろう。トランプ大統領がオバマが大統領だった時に秘密裏に行っていたことをすべて明らかにするまでは、(損害の)手掛かりを知ることさえできないだろう。

gstarr10 • 7 months ago

Abdel Fattah el-Sisi大統領はオバマの時代をも生き残った。トランプ時代には何らの障壁も残されてはいないだろう。

aj nitzberg  gstarr10 • 7 months ago

オバマ時代を生き残るとはすごいことだ。

aemoreira1981 • 7 months ago

この記事の筆者はどうして西側がエジプトを冷たくあしらったのかその理由を知りたいようだ。それは、彼が西側を追い出してロシアと手を組んだからではないのか(もし彼がロシアと手を組んでいなければ、スエズ運河を通してカタールが天然ガスを送ることができたためシリアでの戦争は起こらなかっただろう)?トランプはエジプトに対して有利な提案をしたいと欲しているようだ。だがそれはアメリカの半分、つまり我々からの反対を受けるだろう。

Fromafar  aemoreira1981 • 7 months ago

エジプトがアメリカを追い出してロシアと手を組んだ?解釈が逆だ。オバマが彼を冷たくあしらったせいでエジプトはロシアを頼りとせざるを得なくなった。オバマの外交政策の失敗だ。

doucyet  Richard • 7 months ago

このaemoreria1981という人間は多くの保守派のサイトを荒らし回っている愚か者だ。彼は自分が投稿したものを1つも説明することができなかった。それこそが彼がそうしている理由だろう。

nightspore  aemoreira1981 • 7 months ago

このエジプト/シリアのナンセンスは一体何なんだ?エジプトを支援することはイランを抑止する意味があるというのに(君の理解不能な発言をどうして相手しているのか自分でも訳が分からないよ)。

NfldCelt • 7 months ago

ヒラリーが当選しなくて本当に良かった!トランプ政権がエジプトにどのように対処するのかまだ不明だが、ヒラリーがオバマ路線を継承するということだけは非常にはっきりとしていた。トルコがすでにそうなろうとしているようにエジプトがイスラム過激派によって乗っ取られること、それは非常に悪い事態だっただろう。

Obama’s Brother: Muslim Brotherhood Leader?

Raymond Ibrahim

エジプトの最高憲法裁判所のタハニ・アル・ゲバリ副裁判長は先週生放送のテレビ番組に出演し、エジプトに対して展開されたすべての陰謀が露呈される時が近づいていると語った。オバマ政権がどうしてあれほどまでにムスリム同胞団を援助していたのかを説明する陰謀のことだ。

彼女は、エジプトの諜報機関が保有しているという「文書と証拠」に言及し、「それらが公開される時が近づいている」と語った。それらの文書には国際的な団体とムスリム同胞団との巨額の金銭的やり取りが記録されていると説明し、「オバマの弟がムスリム同胞団の国際的な活動の資金を調達していた主犯の1人だ」と発言している。

あまりにも混乱した司会者が彼女を止め、先程言ったばかりのことをもう一度繰り返し言って欲しいと彼女に願い出る程だった。彼女は完全な自信を持って繰り返し、「必要であれば、このことを国民に知らせなければなりません」と付け加えた。オバマのムスリム同胞団に対する援助はすべてが完全に裏目に出て、アメリカと同胞団との関係がエジプトの当局によって暴かれているという有様だ。

彼女はオバマの親類のうちの誰が犯人であったのか具体的な言及を避けていたが、それは同胞団やスーダンでジェノサイドを行っているテロリストOmar al-Bashirと密接につながっているアフリカのNGOを運営しているマリク・オバマであったことが明らかとなった。

2017年6月9日金曜日

リベラルはどうして嫌われているのか?

だいぶ前に、リベラルはどうして嫌われているのかという主張が話題になっていた。その時に云われていたのは日本のリベラルは弱者の味方だと言っているのに実際には(自覚なしに)強者の味方をしているからだという幼稚な主張が結構見られた。それと比較してアメリカ人がリベラルを嫌いな理由ははっきりしている。リベラルには一切の論理が通用しないからだ。その嫌われ方はテロリストをもしのいでいるように思われる。どうしてリベラルがここまで嫌われるに至ったのかを簡潔にまとめた(と言ってもここで挙げている理由は一部に過ぎないだろうが)。

・格差の是正を訴えているふりをしているが、実際に格差が大きいのは民主党の州




・犯罪率が高い地域はほとんどが民主党の支配的な地域(さすがにこれには幾らか誇張が入っているだろうが)

>興味深い質問だ。犯罪率の高い都市を見てみれば、それらは例外なく民主党が市長でCity CouncilもしくはBoard of Supervisorsのほとんどは民主党だ。共和党員はどこにいるのか?

>さらに興味深いデータがある。銃犯罪でアメリカは多い方から4番目に位置している。ここで最も興味深いのは、ワシントンDC(人口65万人)、シカゴ(271万人)、デトロイト(68万人)、セントルイス(31万人)、ニューオリンズ(37万人)をその統計から除いてしまうだけで(すべて民主党が支配している)、アメリカは世界で銃犯罪が少ない方から3番目に位置することになるということだ。なんという違いだろう。

・インフラの建設を邪魔しているのは(環境原理主義の)自分たちなのに中国やヨーロッパのインフラはすごい、アメリカは衰退しているとはしゃぐ

>バラク・オバマはインフラを整備する必要性を国民に訴えるためのキャンペーンを行った。だが資金集めは大した問題ではない。道路、橋、電力、水道、港湾らの施設が老朽化している最大の要因は果てしなく続く規制当局によるレビューだ。

インフラストラクチャーの建設の認可はRegional Plan Associationという団体が調べたところでは10年以上掛かる。Savannah Riverの川底の泥などをさらい上げる作業の環境評価には完了するまでに14年掛かった。環境に僅かもしくはまったく影響を与えないプロジェクトであっても数年は掛かる。

例えば、ニューアーク湾の入口付近にあるBayonne Bridgeの高さを引き上げる作業は新たな資金を必要としていなければ権利の買い取りも必要なく航行可能な水路の範囲を拡大させる以外はまったく認可を必要としていない。この橋の高さを引き上げることにより効率の良い新型の大型貨物船が港湾内へ入ることが可能になる。だがこのプロジェクトは規制当局によるレビューに入ってからすでに5年が経過しており、環境保護団体による訴訟によって身動きが取れなくなっている。

>これらの費用は足し合わされる。パブリック・プロジェクトの6年の延期は370兆円以上掛かっていることがこのレポートによって明らかにされた。それと比較して橋、水道管などなどを更新/補修する費用は10年間に渡って、その金額の半分170兆円で済むことも明らかにされている。

・経済に凄まじい被害を与えているのに、それを是正しようとする試みには新自由主義などのレッテル貼りに終止して妨害工作をする

>ニューヨークやサンフランシスコなどの生産性の高い都市は新しい住宅の建設を規制によって制限している。それにより生産性の高い地域へとアクセスできる労働者の数を実質的に制限している。一般均衡Rosen-Robackモデルと220のメトロポリタンエリアからのデータを用いてこれらの規制が1964年から2009年のアメリカ経済の成長を50%以上低下させていたことを私たちは発見した。

>50年間もアメリカ経済の成長を半減させていたというのは凄まじい損害だ。1964年のGDPが370兆円で2009年のGDPが1450兆円だとすると3.05%の成長率だ。これが6.1%だったとすると370兆円×(1.061)^(2009-1964)=5360兆円にも相当する!

・医療費が高いのは自分たちの州だけなのにまるで全体の医療費が高いかのように騒ぎ立てる


(保険のカバレッジは同じにして比較している)

・金融危機の自作自演

(マイノリティを差別しているとしてシティバンク相手に1994年に集団訴訟を起こした時の弁護士。この時の裁判がきっかけで銀行は貸出基準の緩和を余儀なくされた。その後、シティグループはサブプライムローンが原因で破綻している)

もう一人のマッチポンパーの談(自分で火をつけて自分が消化してみせたかのように小細工を弄する人たちのこと)

「GSEがデフォルトする確率は極めて小さいとその論文は結論している。従ってGSEが債務不履行に陥ったとしても、予想される金銭的費用は比較的小さい。GSEの債務は極めて巨額で、債務不履行時に政府が債務のすべてを負担すると仮定してさえもだ。例えば、ストレステストで想定されているような事態が起こる確率が50万分の1だとしてGSEがストレステストに耐えうるだけの十分な資本を持っているとすると、100兆円のGSEの債務に対して政府が与えている暗黙の保障の費用はわずか2億円以下と予想することができる。ストレステストで想定されているような、極めて低い確率のイベントを分析することは難しい。だがこの分析が大きく的を外していたとしても予想される政府への費用はそれでも極めて小さい」

Russ Robertとのインタビューで、Charles Calomirisはほとんど過去の記録から抹消され掛かっている興味深い事実を明らかにしている。(金融機関に低所得者への住宅ローン貸付を強制させたクリントン政権時にCEAの議長を務めていた)スティグリッツとジョナサン・オルザグ、ピーター・オルザグらはこれからもGSEが危機に陥る可能性は極めて低いとの主張を擁護させるための論文を書かせるために2002年にファニーメイによって雇われていたということを明らかにしている(ちなみにクルーグマンは破綻したエンロンのアドバイザーだった)。上記は彼らの論文からのアブストラクトだ。ファニーメイはそれをウェブサイトから回収している。スティグリッツのウェブサイトにはその痕跡が見られる。だがウェブ上では全文を探すことはできなかった。誰か全文を知っている人がいたら教えて欲しい。

以下、コメント

Neal W. writes:

自分たちの論文は出鱈目だと彼らは知っていた。お金が欲しかっただけだ。情けない。

Greg ransom writes:

スティグリッツは今ではソロスからのお金を受け取っている。

私たちが目にしているものは大金を受け取った経済学者たちのデータバンクだ。サマーズはウォールストリートから大金を受け取っている。クルーグマンはエンロンとニューヨーク・タイムズからだ。他にどれだけの経済学者が大金を受け取っているんだろうか?

Marc writes:

彼らの分析はファニーとフレディによって少なくとも2度は議会の公聴会に持ち込まれている。

ファニーメイのCEO、Franklin D. Rainesの議会公聴会での証言とそこで用いられた資料の24ページ目「ファニーメイが深刻な経済危機に直面した時のexposureは(ファニーメイが現在採用している)リスク・ベースド・キャピタル・テストによってより十分に把握することができる。このリスク・ベースド・キャピタル・ルールは厳格なもので金融機関が取っているリスクに対して必要とされる資本を正確に割り出すことができる。スティグリッツによって書かれた最近の論文はこのテストの厳格さを改めて確認している。このテストを通過することができた金融機関の金融的頑健性を政策当局者は真剣に受け止めるべきだ。スティグリッツの論文「Implications of the New Fannie Mae and Freddie Mac Risk-Based Capital Standard」はリスク評価された資本が様々な経済的環境の下でどのように変動しそのシナリオが実現する確率を評価している。彼の分析によると、ストレステストシナリオが実現する確率は保守的に見て50万分の1で、300万分の1よりも小さいかもしれないと結論している。十分な資本を保有していれば、ファニーメイがデフォルトする確率は「実質的にゼロだ」と彼は結論している。ストレステストの下でファニーメイがデフォルトする確率が実質的にゼロであるのであれば、ファニーメイが潜在的に納税者に与えていると云われているリスクも実質的にゼロに違いないだろう」

(2003年から2004年に掛けて開かれていたPROPOSALS FOR IMPROVING THE REGULATION OF THE HOUSING GOVERNMENT SPONSORED ENTERPRISESの資料の129ページ目を見ろと書かれているが、関連する内容は見当たらなかったので省略する)

ファニーとフレディが改革の試みをすべて潰してしまうことができたのはこれが理由だと考えている。

(ストレステストの意味がわかってない人)q writes:

ここには矛盾なんてないよ!GSEの2002年のポートフォリオは問題ではなかった。堅牢なポートフォリオだった。住宅ローンが問題になり始めたのは2005年、2006年、2007年からだよ。この間に、市場の変化やGSEのビジネス慣行上に変化があった。

Peter Lentz writes:

どうしてそのように思ってしまったのか?君はスティグリッツが論文を書いた後に大量のサブプライムローンが発生したかのようにミスリーディングしている。ここに(スティグリッツにとって)不都合な事実がある。

「GSEは1990年代の終わり頃にこの市場に興味を示し始め2002年の今ではAマイナスの住宅ローンを通常の業務の一環として購入している。住宅ローンの残高を調査している会社の調査では、2001年の両社を併せた市場シェアは74%増加しサブプライムローン全体の11.5%に達していると推計している。ある市場アナリストはGSEが市場全体の半分をすぐにでも買い占めてしまうだろうと推計している」

セントルイス連銀によるとその当時にはすでにサブプライムローンは小さな市場ではなくなっていた。

「過去10年間のサブプライムローン市場の規模の拡大は極めて急激なものだった。Inside B&C Lendingという雑誌の調べによると、サブプライムローンの残高は1995年の6兆5000億円から2003年の33兆2000億円へと急激に拡大している」

規制の効率性を強く主張しているはずの彼は、自分がまったく予想さえもできなかった危険性を他の人であればうまく察知することができたはずだと言いたいのだろう。

補足

'Reckless Endangerment' by Gretchen Morgenson and Joshua Rosner

by John B. Taylor

その本は連邦政府の2つの機関、ファニーメイと連邦準備に焦点を当てている。住宅ローンを購入しそれを証券化し、債務保証を与えそしてそれを投資家に販売することにより住宅ローン市場を支えていたGSEの役割、特にファニーメイの果たした役割が詳細に語られている。連邦政府はファニーメイともう一つの政府支援機関、フレディマックに暗黙の政府保障と規制上の優遇措置、競争からの保護を与えることによりそれらの機関を支援した。それらの恩恵によりファニーメイは2000億円の超過の利益を上げることができたと1995年のCBOの研究は示している。

彼らは1991年から1998年に掛けてファニーメイのCEOだったジム・ジョンソンのことを深く掘り下げている。彼らは「ファニーメイの絶対的守護者」として知られるバーニー・フランク議員(民主党)などの友人や親族などに職を与えた。そして全米にパートナーシップオフィスを設立した。彼らは、マイノリティに住宅ローンを提供するというファニーの役割は連邦政府によって支援されるべきだと訴えている書き手の出版物に金銭的支援を与えていた。彼らは、「ファニーとフレディは納税者に対して深刻なリスクを与えていると批判していた人々を黙らせる」ためにスティグリッツを雇い入れて、自分たちは納税者にリスクを与えていないとする論文を書くように依頼していた。彼らは民主党に多額の献金を行い、(オバマが所属していた)ACORNという極左の活動団体に活動資金を提供していた。彼らは、GSEにとって打撃となるレポートを書いた財務省の職員たちに対して当時財務省の副長官だったサマーズを通して書き直させるよう圧力を掛けた。その一方で、ファニーメイと深い協力関係にあった住宅ローン関連会社カントリーワイドはコネチカット州のクリス・ドット議員(民主党)に条件の良い特別の融資を行っていた。

ファニーの工作活動は他の政府関係者によっては退けられており、彼らはこの本の中では英雄として扱われている。CBOの責任者ジューン・オニールは、連邦政府の支援のお陰でファニーの利益が2000億円嵩上げされているという報告書を差し止めるのを拒んだことにより称賛されている。彼はファニーの役員「Frank RainesとBob ZoellickがCBOを訪問してきた時のことをよく覚えている。私たちは全員が同じ感想を抱いていた。マフィアに訪問されたようだと」と回顧している(マフィアの手先となって働く自称弱者の味方)。もう一人は他でもないスノー財務長官だ。彼は2003年にファニーとフレディを規制し監督する新たな機関を設立することを強く提案していた。彼はファニーと戦う覚悟を決めていて対立姿勢を強めていたブッシュ政権側の心強い味方となった。その後2004年の大統領選挙が接戦となったせいで、「ブッシュ大統領の支持率の低下がファニーの支持者たちの最大の盾になった」と筆者たちは記している。

連邦準備制度は本の中で一貫して叩かれ続けている。筆者たちはボストン連銀を、特に調査部門の監督責任者だったAlicia Munnellを糾弾している。彼女は、他の職員たちがその欠陥を指摘していたにも関わらず、住宅ローンの貸出に人種差別的な傾向が見られると主張した論文を最終的な結論であるかのように振りかざしてクレジット基準の緩和を正当化し続けた。さらに彼らは(バーナンキが理事だった頃の)グリーンスパン議長の低金利政策を「変動金利型の住宅ローンへの需要を増大させローン残高の急増の大きな原因となった」と非難している。


(経済学者も誰も予想できなかったはずの金融危機を2001年~2004年頃どころか1990年代から容易く予想していたのにメディアや経済学会からは無視され続けている共和党の議員たち)

・不況の押しつけ

>それぞれの政党は経済に影響を与える異なる哲学を保有している。単純に言うと、民主党は目先の利益(雇用の拡大)ばかりを重視し共和党は長期の成長(インフレ)を重視する。それにより何が起こるかというと、民主党政権の下では(インフレを犠牲にした)雇用の拡大が優先的に追求され共和党政権はその後片付け(不況)に苦しめられることになる。

第二次世界大戦後の経済を学習した生徒であれば、このサイクルのことをよく知っているだろう。その最たる例が1960年代のケネディ-ジョンソン政権下での雇用の拡大だ。この時には1969年までに失業率が3.5%まで低下したがインフレ率は6%にまで上昇してしまった。この後には、FRBがインフレ退治に舵を切り替えたためにニクソン-フォードの時代は2度の不況に襲われることになった。カーター政権の下で雇用は拡大した。だがインフレ率は1980年には13%にまで達してしまった。カータ時代に昂進したインフレは、FRBがインフレ退治に舵を切り替えたために、レーガン政権下の1981年~1982年に2008年の金融危機に次ぐ規模の最悪の大不況を生み出した。それにより失業率は10.8%にまで押し上げられたが二桁にまで達していたインフレ率はようやく収束することになった。

ここから得られる教訓ははっきりしている。共和党の大統領が民主党の大統領よりも不況に襲われる傾向が強かったのであれば成長率も雇用の増加率も共和党政権下の方が悪いかのような印象を与えるだろう。そしてそれこそがブラインダーとワトソンの論文が示したことだ。1940年代以降、アメリカ経済は総計すると12年間の不況期に襲われた(その被害はGDPで見て数百兆円に達する)。だがその12年間のうち10年間は共和党の大統領だった時に起こっている(偶然ではありえないとブラインダーらは計算から結論している)。民主党の大統領だった時にはわずか2年間でしかない(2008年の金融危機も原因はほぼすべてが民主党にあるので、実質的にほとんどすべての不況が民主党のせい)。

利子率とクレジット・コンディションに影響を与えるFRBがこのサイクルを生み出している主な原動力だ。FRBは政治から「独立している」と表面上は装っているのかもしれない。だが政治的空気やメディアからの圧力を無視したりなどしていない。FRBの政策は民主党の政権下で緩和的で共和党の政権下で引き締め的だった。

民主党はまさに厄災そのものといった感じだが、どうしてこんな無茶苦茶な政党が未だに存在し続けていられるのか?それはアフリカ系アメリカ人(90%以上)とヒスパニック(80%)から圧倒的に支持されていることに原因がある。これまで見たようにそこには一切の論理的な理由はないのだが、メディアによって保守派はレイシストと毎日のように分断工作が行われていることを思えば不思議ではない。

これ以降は一般的な理由だけを挙げる(大体のことはどこの左翼にも当てはまるかもしれないが)

・犯罪被害者の気持ちを逆なでするな!と普段は言っているが、テロが起きると頼まれもしてないのにイスラムは平和の宗教、それに異議を挟む人間はレイシストとテロ被害者の気持ちを逆なでにする言動ばかり行う

・起きてもいないイスラムに対するヘイトクライムを捏造、しかも決まって犯人は保守派という設定、イスラムを無駄に挑発しテロを間接的に呼び起こしている殺人行為

・他人をレイシスト呼ばわりするその傲慢さ

・幼稚で単純なその世界観、そして何故か不思議な上から目線

2017年6月1日木曜日

経済学者の質が急速に低下している?(もしくは最初から高くなかった?)Part4

Roosevelt Instituteというカルト教団のようなシンクタンクが存在している。そこに在籍しているMarshall Steinbaumという人がどうして経済学者たちはピケティを酷評するのかという擁護論を展開している。ピケティの本に対する批判を幾つか取り上げた後で(と言ってもピケティの格差拡大論自体に対する強烈な批判などはすべて無視しているが)、大衆に人気がある彼を批判するなと主張している。

もう少し分かりやすく説明すると、ピケティが取り上げたr>gの話などを取り扱っているもしくは関心を持っている経済学者を探してみたが誰一人見つからず、最初からピケティの本など存在していなかったようだと嘆いている。そして大衆に人気のあるピケティの主張を無視することは経済学者たちは自分たちとは隔絶された世界に住んでいるとの印象を大衆に与えてしまうとして警鐘を鳴らしている。

前置きはこのぐらいにして、彼は自分の主張に対するサポートとして幾つかの論文を紹介している。そのいずれもピケティを引用していないから彼が無視されていることの証拠だと主張しているがそのうちの幾つかは非負制約とジョブレス・リカバリーとの関係を調べたものであったり金融政策が所得分布に与える影響を調べたものであったりとピケティを引用しないのがむしろごく当たり前といえる内容となっている。

結局、彼が紹介していたものでピケティの主張(r>g)に直接関係があるといえるのは大まかに言って4つの論文だけだった(Orszag&Furmanなどはここでは取り敢えず無視する)。Karabarbounis and Neimanの論文が2つとBarkaiの論文が1つだ(他のは似たような内容だったので特に取り上げる必要はないように思われる)。

初めはKarabarbounis and Neiman(以下ではKNと省略する)を紹介する。資本と労働の分配率は一定だと結論されていたが1980年以降は労働分配率が低下トレンドにあると彼らは主張している。内容を紹介する前に多くの経済学者たちが(つなぎ合わせてみると互いに整合性の取れない)ばらばらのことを主張しているのでそれらの整理も兼ねて事前に知っておいたほうがいいと思われることを説明する。

・サマーズという経済学者が、資本財の価格が低下しているために経済が長期停滞状態にあると言い始めた(きちんと見ているわけではないので正確に何を言っていたのか把握しているわけではない)。これは例えば今までならば工場の建設などに1億円ぐらい掛かっていたのが現在では7000万円ぐらいで済むようになったことを意味する。悪いことがないどころか良いことにしか思われないがケインズ派には変な人が多いのか彼らはこれを需要不足(絶対額で見た投資が減少したため)だと無茶苦茶な解釈をしている。まさかサマーズがそんな基本的な見落としをするはずがないと思われているせいか現在でもその点があまり批判されていない。

・生産には生産要素の投入を必要とする。生産要素には大まかに資本(工場や機械のようなもの)と労働が存在しこれらを用いることによって生産物が生み出される。生産に用いられたそれぞれの割合に応じてその生産物を販売した際に得られる所得が分配される。経済全体で見た場合、資本に対して相対的に労働が余っている場合では労働が生産に用いられるが次第に労働が不足し始めると賃金が上昇を始めるので資本に対する優位性が消滅しいずれかの時点で資本に対する分配率と労働に対する分配率が一定の値に収まると理論では考えられていた。

・実際に労働分配率を調べてみると一つの国の間で一定であるばかりか多くの国の間である程度一定(大きな違いはない)であることが示された。労働組合などはほとんど影響を与えていなかった。このせいでマルクス主義者を含む多くの左翼が主張の根拠を失った。

・資本は資本家(富裕層)の取り分、労働は労働者(低所得者)の取り分だと思われているせいか資本分配率が上昇(労働分配率が低下)すると格差が拡大する、もしくは格差の拡大には資本分配率の上昇が必然的に伴うと勘違いされているが、所得上位1%の所得シェア上昇の要因としてピケティが挙げていたのは労働所得であって資本所得ではない(と言ってもころころと主張を翻すのでまったく信用に値しない)。

・完全競争の下では長期において超過の利潤はゼロになる(どの生産者においても利潤は等しくなる)とされている。これが不完全競争(独占的競争)だと生産者は自分たちが生産している財をある程度独占的に販売できるようになるため、一定の超過利潤が生まれると説明されている(マークアップ)。一定のというところがポイントで生産者は好きなだけいくらでも販売価格を引き上げられるという訳ではない。例えばパソコンを生産している業者であれば外部からの参入からはある程度守られているが、お互いの業者同士では競争しているため自分だけが価格を引き上げれば販売シェアを落とすことになる。

・要するに(マクロ)経済学では費用に上乗せされるマークアップ率は一定のために利潤はある程度無視できると考えられていた(景気循環の問題を考えるのでなければ)。上でも説明しているように生産要素は資本と労働しかないために(税などの細かい例外を除けば)所得はすべて資本と労働に分配されると考えられていた。ところがbarkaiという経済学者が資本にも労働にも属さない利潤に分配されるシェアが無視できないほど大きくなっていると主張し始めた(要するに共産党がいつも騒いでいる企業の内部留保がどうこうとかいう話と似たようなもの)。

・彼の主張で興味深いのは(もし彼が正しいのであれば)労働分配率だけではなく資本分配率も大体同じ大きさで低下しているという点だ(労働分配率が約7%、資本分配率も約7%で利潤分配率はその合計の14%の増加)。要するに裕福な資本家が労働者を搾取しているという話ではなく労働者も資本家もともに取り分を減らして(実体のない)企業だけが(無駄に?)お金を溜め込んでいるという構図だ。その原因は企業が以前より利益を上げるようになったからというよりも企業から投資家に支払われる投資に対する報酬が大きく低下したせいだと彼は主張している。ここからは所得格差が拡大しているのかしていないのか何も言うことは出来ない(barkaiも所得格差の話にはほとんど触れていない)。

・これが何を意味しているのか判断が難しい。それにこの後で紹介するKNのもう一つの論文の内容とも密接に関わっている。barkaiとKNの1番目の論文とは対立する部分が多く見られるがKNの2番目の論文はbarkaiに対する部分的な回答にもなっている。

・本来お金を貯め込むべきではない(というのは単なる誤解だが)企業がお金を貯め込んでいるせいで効率的な資源配分が妨げられ、産出が8%低下しているとbarkaiのモデルでは予想されている。

・barkaiは自分の主張を補強するために簡単な実証分析も行っている。例えば1990年から2015年の労働分配率の変化率を非説明変数としてそれぞれの産業毎の1990年から2015年までの市場占有度(上で説明したマークアップの代理変数)の変化率でもって回帰分析を行っている。そして市場占有度と労働分配率の間には負の相関が見られると主張している。

次にNKの1番目の論文を見ていく。barkaiとNKでは後者の方が説得力が高いと思われる。barkaiはアメリカのデータだけを用いているのに対してKNは60ヶ国に近い国のデータを用いているためだ。それらがほとんど1つの要因で同じ時期に似たような動きを示し始めたというのであれば説得力が高いのは言うまでもない(説得力が相対的に高いと言うだけで両方とも間違っているという可能性は十分に考えられる。そもそも労働分配率は低下していないと主張する論文もある)。

・KNによると1980年頃からアメリカだけではなく世界中の多くの国で労働分配率が低下トレンドにある(Marshallはこのことを都合よく無視している)。その原因は主に資本財価格の(消費財価格に対する相対的な)低下が考えられるという(というよりデータに見られるような労働分配率と資本財価格の正の相関は資本と労働の代替の弾力性が1以上でなければ説明できないというのが彼らの本当の主旨だが)。

・労働分配率の低下が他の要因、マークアップ率の上昇であれば(barkaiの言っているように)労働分配率と資本分配率が同率で低下しているはずだがデータを見れば明白に異なっている。またマークアップ率の上昇であれば利潤シェアの上昇が見られるはずだがrotemberg&woodford(1995)ではシェアがゼロ、その後の調べでも5%を超えるものはないというようにこれまでの結果と食い違う。

・また、資本財価格が大きく低下している国で労働分配率が大きく低下している傾向にあり少ししか低下していない国では労働分配率もあまり低下してない(所得格差が大きく拡大しているはずのイギリスやアメリカではわずかしか低下していない。イギリスに至ってはむしろ労働分配率が上昇している。逆に労働分配率を大きく低下させたのは所得格差があまり拡大していないと云われていたはずの国々)。

・これも重要なことだがこの変化は例えば労働分配率が低い特定の産業(例えば想像しやすいように金融業とすると)がシェアを増加させたから起こったというのではない。この変化は産業間のシェアの増減ではなく広範な産業内で見られる。それも新興国で特に大きく低下しているのでグローバリズムとも関係がない。

・彼らのモデルによるシュミレーションによると資本財価格の低下が労働分配率の低下のほぼ半分を説明する。そしてマークアップ率の上昇が原因である場合は穏やかな産出の減少、資本財価格の低下が原因である場合には(当然のことながら)産出の大幅な増加を伴うと結論している。



(世界同時的な資本財価格の低下がレーガン大統領やネオ・リベラル政策のせいだと主張する愚かな人たちの図)

次はKNの2番目の論文「The Global Rise of Corporate Saving」を見ていく。今回は紹介する内容があまりないので手短に済ませる。

・時価総額世界最大のアップルは付加価値の20%から30%を現在でも安定的に投資に回している。だがアップルのフローの貯蓄は1980年代や1990年代では20%から30%だったのが現在では60%にまで上昇している。

・貯蓄は家計部門から企業部門へとシフトしている。世界の企業の貯蓄は1980年には世界のGDPの10%ぐらいだったのが現在では15%ほどにまで上昇している。この変化は特定の産業で起こっているというものではなく多くの産業で広範に見られる。それにより企業部門は資本の借り手ではなく資本の貸し手に立場を変えた(要するに、愚かな人たちが主張しているのとは異なり企業部門が資本の貸し手になるというのはそれほどありえないということでもなく不況の原因でもない)。

・税や利払い費は一定で配当は利益の増加に併せては増加していないので企業の貯蓄が増加することになった。重要な事に、貯蓄の増加トレンドは企業の規模や企業の年齢とはあまり関係がなかった(要するに、大企業とかのせいではない)。

・さらに彼らは(よく非難の槍玉に挙げられる)多国籍企業(定義の説明はあったがここでは省略する)がこのトレンドの原因を生み出しているのかどうかを調べているが、多国籍企業の利益は各国間で打ち消し合うので見た目ほどは企業の貯蓄に影響を与えていない。さらに、他の企業に比べて多国籍企業の貯蓄が多いように見えるのは利益率が高いためで税や配当とはあまり関係がない。そして総付加価値に占める多国籍企業の割合はずっと前から安定したままなので、最近の企業貯蓄の上昇トレンドには影響を与えていない(要するに、ウォールストリートとかグローバル企業とかのせいではない)。


(企業が貸し手から借り手になったとしても政府が借り手になる必要はない。このように家計の貯蓄率が減少するだけだから。むしろこれ以外の影響、例えば少子高齢化の影響で貯蓄率が減少どころかマイナスに陥っている日本の場合、政府が財政赤字を増やすと資本の取り崩しが起きる)


(労働分配率の時もそうだったが、経済学者が格差は拡大していないと必死に言い続けていた国ほど企業の貯蓄は増加していて格差が拡大していると必死に言い続けていた国ほど企業の貯蓄は増加していないの図)

要するに、Marshall Steinbaumが自説の根拠として挙げていた論文のほとんどが彼の主張をサポートしていない。

IMFのブログで関連する記事が書かれていたのでついでに紹介する。driver of declining labor share of incomeという記事にこのようなグラフが掲載されていた。


各国の労働分配率の平均値からの乖離とジニ係数の平均値からの乖離とを散布図にしているものだが、確かに1%水準で有意となってはいるが決定係数が0.08しかない。要するにグラフを見ても大体の察しはつくように、労働分配率の平均値からの変動はジニ係数で表される所得格差の平均値からの変動の8%しか説明していないことになる。むしろジニ係数の上昇(下落)は労働分配率の下落(上昇)とはあまり関係がないと言う方が適切な気さえする。Blanchard体制になってからのIMFはイデオロギーを優先し狂い始めたと指摘されているが、こんなところにもその影響が現れているのかもしれない。

2017年5月9日火曜日

経済学者の質が急速に低下している?(もしくは最初から高くなかった?)Part3

VOX.EU第三弾、今回紹介(批判)するのもこれまでにまた輪をかけて最悪だ。今回の筆者たちはピケティ、サエズ、ザックマンのいつものフランス人たちだ。格差が拡大した教の最大の教祖の1人、kop-czukに手酷い裏切りを受けて暴走し始めたのではないかと思えるぐらい穴だらけの内容となっている(kop-czukの最新の論文は実はアメリカと同じぐらい所得上位1%の所得シェアが上昇していたノルウェーの格差拡大がやっぱり見掛け上だけだったことをこれでもかというぐらい説得的に示している。kop-czukが再三指摘しているようにそれとまったく同じ議論がアメリカにも当てはまる)。

One major problem is the disconnect between macroeconomics and the study of economic inequality. 

所得格差の研究に(税の研究と同じように)マクロ経済学とミクロ経済学とで方法論と結果に対立があるような書き方をしているがそのようなものは存在しない。

Macroeconomics relies on national accounts data to study the growth of national income, while the study of inequality relies on individual or household income, survey, and tax data.

存在しないものとどうして対立を煽ろうとしているのか意味が分からない。

Ideally all three sets of data should be consistent, but they are not. The total flow of income reported by households in survey or tax data adds up to barely 60% of the national income recorded in the national accounts, with this gap increasing over the past several decades.

それを指摘された時に無視して逃げ出したのは自分たちではないのか?

Yet we do not have a clear measure of how the distribution of pre-tax income differs from the distribution of income after taxes are levied and after government spending is taken into account. This makes it hard to assess the extent to which governments make income growth more equal.

議会予算局(CBO)を含めて多くの人々がとっくの昔にそれを行っている。

First, our data show that the bottom half of the income distribution in the US has been completely shut off from economic growth since the 1970s. From 1980 to 2014, average national income per adult grew by 61% in the US, yet the average pre-tax income of the bottom 50% of individual income earners stagnated at about $16,000 per adult after adjusting for inflation.


恒例の、中間層の所得はまったく増加していない的なグラフだが今回はその馬鹿さ度合いがいつもの数十倍はすごい。驚くことに「アメリカ人の半数の所得が1962年からまったく増加していない」と真顔で主張している。

1962年頃の写真


1962年頃の写真

現在のアメリカ





(最初の一枚はともかくとしても)上からフロリダ州、ミシシッピ州、アラバマ州だからむしろアメリカで最も貧しい州といってもいいはずだ。1962年から所得が増加していないということはアメリカ人の半数以上が未だに白黒の写真や1960年代の車を使っていて、エアコン無し、カラーテレビ無し、パソコン無し、インターネット無しの生活を送っているということ(若干異なるがそれとほぼ同義)になる。自分たちがどれだけ馬鹿げたことを言っているのか経済学を少しでも理解していれば分かりそうなものだが、いくら説明されても分からないようだ。

経済学者の質が急速に低下している?(もしくは最初から高くなかった?)Part2

前回VOX.EUで読まれていた論文を紹介(批判)したが、今回紹介するのは前回紹介したものよりもはるかにひどい。緊縮が経済にダメージを与えたと主張する内容だが、あまりにもひどすぎるので緊縮反対派への自爆テロなのではないかと疑ってしまうほどだ。今度の論文は3万人近い人に読まれているらしい。それだけ影響力が大きいのに出鱈目ということだ。では見ていこう。

The financial press and many economists have pointed to austerity policies that cut government expenditures and increased tax rates as an explanation for the slow recovery in several European countries (e.g. Blanchard and Leigh 2013, Krugman 2015). Our analysis finds that variation in austerity policies can in fact account for the differences in economic performance, and that these policies are sufficiently contractionary to contribute to increases in debt-to-GDP ratios in high-debt economies (House et al. 2017).

クルーグマンの嘘に騙された被害者たちであることが冒頭から判明する。

緊縮の影響を調べる際には、そもそも緊縮をどのように定義するのかという問題が発生する。筆者たちは政府購入の予測値と実際の値との差を緊縮として定義すると宣言している。これは例えば政府購入が100兆円だとして大不況前にそれが2%のトレンドで増加していたとすると、大不況後もその2%のトレンドが続くと仮定してそれを政府購入の予測値とし実際の値と比較する…というのではなく過去不況が起こった時に財政政策がどのように反応したかをベンチマークとしそれと実際の値との差を緊縮と定義するとしている。政府支出が通常は不況の時に増加しているのに、2008年の大不況の後では増加していないのであれば緊縮と定義するとしている。

そして緊縮とGDPとの関係をこのようなグラフにしている。


このグラフは先程定義された緊縮が行われなかったとした場合のGDPの予測値と実際の値との差の関係を示している(面倒なので過去のベンチマークとの比較であるということはこれからは省略する)。ようするに右端のギリシャは2010年から2014年の間に累積でGDP比9%ほどの緊縮を行いGDPが累積で20%近く減少しているということを示している。赤い丸はユーロを使用しているか為替レートをユーロにペッグしている国で黒い丸はそうではない国だ。

詳細を見てみよう(個別に見ていくやり方は好きではないけど)。(ベンチマークと比較して)ブルガリアはたった4%の緊縮で(馬鹿馬鹿しいことに)GDPが14%も減少している(恐らくは大恐慌並みでは?)。イタリアはたった3%の緊縮でGDPが8%も、スロベニアはたった2%の緊縮でGDPが12%も縮小している(乗数に換算すると6)。ポーランドはたった1%の緊縮でGDPが6%も減少しているし(同じく乗数6)、ベルギーも1%以下の緊縮(ベンチマークと比較するという手続き上の不透明さから考えると誤差の範囲内なのでは?)なのにGDPは4%も減少している。筆者たちは本気でこの結果を信じているんだろうか?逆にアメリカは2%近い緊縮でGDPの縮小は皆無(乗数ゼロ)、ルクセンブルグに至っては1%近い緊縮でむしろGDPが増加している(乗数はむしろマイナス)。他の要因(増税されたかどうか、生産性へのショック、各国の債務比率の増加幅の違い、リスクプレミアムの違い)はすべて調整したので、この結果は緊縮だけによってもたらされたものだと筆者たちは主張している(ちなみに全体で見ると乗数は2だと彼らは言っている)。過去にこれ以上の規模の緊縮は幾度も行われているというのにこれほどの規模で不況になった国が(自分の知る限り)1つもないことを考えると筆者たちの主張は極めて疑わしいと言える。

グラフから分かるようにこの相関関係はユーロを使用しているか自国の通貨を使用しているかどうかにあまり影響を受けていない(これが本当だったら変動相場制の国は為替レートを減価させることによって速やかに不況から脱出することが出来る、自国の通貨を使用していればギリシャみたいにはならない、などと大騒ぎしていた人たちは何だったのか?)。

次に先程までの統計的手法とは異なりどの経路によって経済が影響を受けたのかを具体的に調べるために、筆者たちは国の規模、各国間の貿易のつながり、為替レートレジームなどを組み入れたニューケインジアンDSGEモデルに緊縮ショック、cost of firm creditショック、金融政策ショックを与えてみると現実のデータを非常によく再現できたと主張している。

Overall, the model generates predictions that are very close to those found in the data.

その関係というのが以下のグラフに示されている。


驚くことに見ての通り、データをまったく再現できていない。上段の左端を見ると、点線はベンチマーク(現実の緊縮、借入金利の上昇、各国間の金融政策の違いなどが組み込まれたもの)+ZLB(非負制約、筆者たちは結果にほとんど影響を与えていないと言っているのでおまけのようなもの)だがデータを再現するどころか2008年の金融危機ではむしろ大好況だったと言っている。現実のデータは当然大不況だったことを示している。ベンチマークが現実のデータを再現できていないというのでは話になるはずもなく以降の分析(緊縮さえしていなければ債務GDP比率が上昇することもなかった)もすべて間違いだと言っていいと思われる。実際、下段左端のGIIPS(ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインを表す造語、PIIGSと呼ばれることに抗議が入ったため姑息に並び方を変えたと思われる)では2008年の金融危機には奇妙な動き方をしているが、それ以降はモデルがデータをある程度再現している。このケースでは緊縮がなかったら(現実のデータとは異なり)GDPがほとんど減少しなかっただろうということが示されているが、この結果もはっきり言って疑わしい。筆者たちは企業の借入金利を調整したと言っているが、GIIPSがドイツやECB、IMFなどに救済されたことは多くの人が知っておりそれがなければ借入金利は遥かに高騰したことが容易に予想できる。ようするに救済後もしくは救済が予想される状況でのデータでは正しい結果が得られることはない。ケインズ派の主張がまともな経済学者からは相手にされることはなくなった現在、「ケインズ派の主張が実際のデータから確認されたことは一度もない」と自らもケインズ派であるにも関わらずそのことを誠実?にも唯一人認めているロジャー・ファーマーの発言の正しさが改めて確認されたようだ。

経済学者の質が急速に低下している?(もしくは最初から高くなかった?)Part1

VOX.EUでおかしな論文を幾つも見掛けたのでそれらをこれから記事の題材にしてみようと思う。VOX.EUとは経済学に関心がある人の間では結構知られているサイトみたいで、経済学者たちが自分たちが書いた論文の内容をお互いに対して簡潔に紹介する活動を行っている。ヨーロッパの経済学者の割合が高く、話題もヨーロッパのことである場合が多いような気がする。今回はたまたま見掛けたtax reform and top incomeという題の論文を紹介(批判)したいと思う。ちなみにこれ以降も原論文はまったく読んでいないので(ないとは思うが)的はずれな批判をしている部分があるかもしれない。だがそれでも主旨が間違っているということに変わりはないように思われる。

Understanding the relationship between tax progressivity changes and pre-tax income inequality has become important following the recent reductions in income tax progressivity carried out in most developed countries.

一行目から、税の累進性と(課税前の)所得格差との関係を調べると宣言している。筆者たちは税率の引き下げ(特に高額所得者に対する)が所得格差を拡大させたと主張しているが、税率が影響するのは(高額所得者の労働時間を急激に増加させるというのでなければ)課税後の所得なのは言うまでもない。

Because of the complex interdependence between income taxation and income inequality, however, the relationship is still not clear.

未だに関係性は分からないと言っているがとっくに分かっている。


(最高税率の引き下げは見掛けの所得格差を拡大させただけというレイノルズの主張をそれと気が付かずにIMFが自らの手で証明してしまうの図)

Analysing the effect of single events puts specific requirements on the statistical methods used. We tackle this challenge by estimating synthetic control groups (Abadie et al. 2010) and complemented it with standard difference-in-difference estimation.

Synthetic control groupsとは経済学の実証で比較的最近用いられるようになった手法で、(誤解を恐れずに言うと)調べたいと思っている対象とよく似た特徴を示すサンプルを幾つか集めてそれをグループにし、例えば今回の場合であれば減税が行われる前と後とで対象とそれらのグループの間に変化が現れるかどうかを調べる。その結果がグラフに示されている。


オーストラリアとニュージーランド、ノルウェーと3ヶ国しか調べられていないのに、(自分が知っている限りでは)オーストラリアと似た特徴を示す国といえば(カナダを除けば)まさにそのニュージーランドぐらいでニュージーランドと似た特徴を示す国といえば今度は逆にオーストラリアぐらいだから本当にまともなsynthetic control groupsを構築できているのか疑問が残る。それ以前に、国レベルでこの手法を適用するのはかなり限られた条件でしか成立しないと思う。実際、筆者たちの紹介している(Abadie et al. 2010)は、カリフォルニア州が実施したタバコ規制に効果があったのかどうかを他の州をsynthetic control groupsとして調べたものだったと思う。

それよりも問題なのはこのグラフの結果自体で、オーストラリアはともかくとしてもニュージーランドのcontrol群もノルウェーのcontrol群もそれぞれの国が税率を引き下げたのとほとんど同時期に所得上位1%のシェアが上昇し始めている。最終的にノルウェーはcontrol群とほとんどシェアが同じニュージーランドに至ってはcontrol群の方がシェアが高くなっている。それ自体はそこまでは問題ないのかもしれないが(コントのようにしか思われないが)、IMFのグラフ(ちなみにIMFでは労組の組織率が所得上位1%の所得シェアと強く相関しているということを示しているワーキング・ペーパーも存在していたと思うが、単なる偽相関だと思われる)と合わせると筆者たちが他の国でも減税が行われたことを見落としたのではないかという考えにくい疑惑が浮上する(もしくはやはりcontrol群の選択に失敗しているのか)。

そして税率の引き下げと成長率には関連があるようには思われないといういつものお決まりのパターンで締めくくっている。


所得上位1%のシェアが拡大した国の方が成長率が高くなっていることを示した論文(実際、オーストラリアはともかくニュージーランドやノルウェーはそうなっている)や最高税率と起業率との間に関係があることを示した論文などは一切無視するのだった。

徹頭徹尾結論ありきのこのような論文を1万2000人もの人が読んでいるというのに未だに無批判に放置されている。