2013年3月31日日曜日

アメリカの貧困率は出鱈目だった?

If The US Spends $550 Billion On Poverty How Can There Still Be Poverty In The US?

by Tim Worstall

統計局はちょうど貧困率を発表したところだ。毎年のことながらここで疑問へと直面する。アメリカは膨大な額を貧困の削減に費やしているのにどうして貧困率が高いのか?

これに対してシンプルな回答がある。単に貧困の削減に費やしたお金をカウントしていないというものだ。つまり膨大な額を費やしていながらあたかも何の効果がなかったかのように振る舞っているのだ。

ここに統計局の発表した数字がある。

「2011年の貧困率は15.0%だった。貧困線以下の所得で暮らす人が4620万人いたことになる。3年連続で上昇したが2011年の数字は2010年の数字から変化しなかった」

アメリカのように豊かな国に対する数字としては高すぎるということが出来ると思う。実際多くの人々がそのように議論している。だがこの数字には問題がある。我々は貧困層と定義された人々全員を55兆円で貧困から引き上げることが出来るのだ。*これはGDPの3%から4%に相当する。そのぐらいの費用で貧困の大部分を解決できるのなら良いことのように思われるだろう。

この数字は貧困線を見ることから確認できる。成人につき110万円と少しだ。5000万人を下回る人々が貧困層と定義されている。よって彼等に110万円を配れば貧困はなくなる。問題は解決しその費用は55兆円ぐらいになる。

これは費用としては上限額であることに注意する必要がある。例えば4人家族(2人の大人と2人の子供)の所得が440万円を下回っていたからといって彼等を貧困層とは呼ばない。昔あった話に結婚した2人は生活費を1人分まで削減できるというのがあったがそこまではいかないものの2人家族の生活費は単純に2倍にならないというのは事実だ。(貧困率の計算では)4人家族の所得が230万円を下回った場合に彼等を貧困層と呼ぶことに定義している。だがここではすべての個人を1人の成人として扱って彼等1人1人に110万円を与えればアメリカに貧困はなくなると計算している。その費用が55兆円だ。この数字はさらに彼等の市場所得がゼロだと仮定している。だからこれは上限の数字だ。

そうすべきだろうか?それは政治的質問で私のような外国人が取り扱う範囲を超えている。指摘したいのはこれは許容できる範囲の正確性ですでに成されているということだ。55兆円はすでに費やされていてよって本来なら貧困層はすでに存在しないはずなのだ。未だ貧困層が存在している理由は我々が定義する方法によって、その55兆円を貧困の削減に費やされたとカウントしないことになっているからだ。非常に奇妙な方法に思われるだろう。

メディケイドは低所得層のための医療給付だ。この費用は2010年で40兆円になる。SNAPは同年に7兆円だった。EITCは5.5兆円だ。これらを足すと52兆5000億円になる。アメリカの貧困を撲滅するのに十分な額だ。仮にこのお金を現金の形で渡したら貧困層はいなくなるだろう。

どうして貧困層がいなくなるのに十分な額を費やした後でも未だに5000万人近い人が貧困層として存在するのか?単純にこのお金をカウントしていないからだ。分かってる、分かってる、とても信じられないと言いたいんだろう?でも統計局もまったく同じことを言っている。

「貧困率は貧困線と課税前の貨幣所得を比較して推計する。非現金給付は含めない」

この「課税前」はEITCも含まれていないことを意味するように思われる。税体系を通して機能するからだ。SNAPは現物給付だ。メディケイドも同様だ。住宅バウチャー(そう、HUDを通して費やされるほとんどすべてのお金は含まれない)のような多くの他のプログラムも同様だ。

貧困を消滅させるのに必要なお金を費やしながら貧困層と定義される人々の人数をまったく減少させない理由になっている。

貧困の削減をしようと考えている人々のうちで幾人かはこのことに気づいているようだ。Dylan Matthewsの主張はここにある。彼等は貧困層に現金を与えれば貧困が削減されると主張している。彼等はそのお金で何人ぐらいが貧困層でなくなるかも計算している。だが我々はその計算に慎重でなくてはならない。

彼等は統計局の定義を使っていない。彼等はNational Academy of Sciencesのものを使っている。統計局は絶対的貧困率を用いている。1960年代に必要な栄養を摂取するのに掛かった食料費の3倍として定義されている。これはインフレ率で更新する以外には他には何の変更も加えられていない。この期間に食糧の相対価格が大幅に下落したのでこれは誤解を生む指標となっている。現在の妥当な推計では食糧は家計の予算の10-15%で30-35%ではない。よってかつてよりも現在ではより多くのお金を食糧以外のものに費やすことが出来る。

NASのものは相対的貧困率だ。中央所得を求めそれに対する割合で定義する。その割合を下回った所得を貧困と定義する。これは貧困の指標というよりも所得格差の指標だ。だがEITC、SNAPなどによって貧困層でなくなる人数の計算はこのNASの定義にもとづいて行われている。統計局のものではない。

上記の数字や議論は必要以上に挑発的であったように見える。詳細に見れば上記の議論の細部に穴があるということは可能だ。だが基本的な主張に変更はない。アメリカは現在貧困を消滅させるのに十分な額を費やしている。統計局が用いている定義によれば貧困層に物やサービスを渡すかわりに現金を与えれば貧困率はゼロになるだろう。そうなっていない理由は単に貧困率の計算にその額を含めていないからだ。

これは本当に奇妙なことだ。アメリカは50兆円以上を費やしている。これは$500,000,000,000以上だ。この数え方によるとこれだけ費やしても貧困は只の1人も削減されないことになるのだ。

ここからメディケイドを取り除くことも出来る。それでも$125,000,000,000を貧困をまったく削減することなしに費やしていることになる。すでに述べたようにこれは非常に奇妙なことだ。

*これは非常にラフな計算であることに注意して欲しい。桁数の計算は合っている。これらの数字に関する不確実性を考慮すれば見掛けの正確性ということはありうるだろう。

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