2013年3月31日日曜日

アメリカの貧困率はスウェーデンよりも低い?

America Has Less Poverty Than Sweden

by Tim Worstall

こう聞くと意外に思われるかもしれない。だが実際にアメリカの方がスウェーデンよりも貧困率が低いということはできるのだ。普段聞かされている話とは違うだろうと思うがでも聞いて欲しい。

選挙が近づいているこの時期がEconomic Policy InstituteにとってState of Working America reportを提出するよい機会だったに違いない。選挙の直前はもちろん関心を集める絶好の機会だ。このことが彼等のチャートを興味深いものにしている。


これはよく目にするアメリカの貧困率を示したものではない。これは国際的に比較可能でその国の中央所得の50%以下の所得で暮らす人口の割合を示した相対的貧困率だ。このチャートは市場所得と税引き後移転後の所得の両方の貧困率を示している。

注意深く見れば市場所得でのアメリカの貧困率は26.3%であることが見て取れるだろう。スウェーデンは26.7%だからアメリカの方がスウェーデンよりも貧困率が低いと実際言うことができる。だが人々が知りたいのは貧困を削減するものをすべて加えた後の貧困率がどうなるのかであるかもしれない(注 このグラフと非常によく似た再分配前後のジニ係数の推移を示したグラフを持ち出してもっと再分配をしさえすればアメリカのジニ係数はヨーロッパよりも低くなるんだ、違いは再分配だけなんだと(この記事の数年後に騒ぎ出した)ニューヨーク・タイムズなどの左翼は誰も理解していないが、他の国と比べて巨額の報酬を受け取っているアメリカの所得上位1%というのが虚像に過ぎないということをそれらは暗に示唆している。市場所得とはまさに生の所得のデータで再分配前ではジニ係数がほとんどの国はアメリカと大して変わらないかもしくは高いということは10億円、20億円と受け取っている人たちの割合がそれほど変わらないということを示唆している。驚くことに?経済学者までもがこの相矛盾する主張を平然と行ってその矛盾に気が付かないでいる)

上記の数字からはアメリカの貧困率はスウェーデンの貧困率よりも高い。スウェーデンは貧困率を大きく低下させている。

だが私はこれが本当だとは納得していない。このチャートを作成するのにOECDからどの数字を用いたのかEPIは説明していないので少しやっかいなことになっている。そこで1つの仮定をしてみる。

EPIのものと同じ数字を用いて同種のチャートを作成した。彼等がどの数字を用いたのか説明していないのは残念だ。だが図Cを作成するのに用いられた方法と図Dを作成するのに用いられた方法は同様のものであると仮定することができる。その方法とは以下だ。次のように説明されている。

注意:貧困率は可処分所得の中央値の50%に貧困線を設定して計算している。各国は貧困率の低下割合の降順に並べてある。「税と移転」は家計に課税されたすべての所得税額を考慮し給付はすべて直接家計の所得に影響するものを考慮してある(現物給付や現金性の給付を除く)。

この方法は相対的貧困率の実際の計算方法と同じであると仮定できる。税引き後移転後に中央所得の50%以下の所得の人がどのぐらいいるのかを示しているのだ。だがそれらは現物での移転を含めていない。そしてこれはアメリカにとっては大きな問題になる。ほとんどすべての国は貧困を緩和するのに低所得層に現金を渡している。アメリカはそうではない。低所得層に現物で渡している。

この計算にアメリカの2番目に大きい給付プログラムであるEITCを含むのかに関してはっきりとしない。所得税として支払われたものならば含まれるだろうしそうでないならば含まれないだろう。EITCは所得税の一環として機能するが実際に所得税として支払われたものではない。この取り扱いが結果をどのように歪めるか例を挙げたい。私の母国のイギリスは勤労控除と呼ばれる非常によく似た制度を持っている。この効果はイギリスの貧困率の計算に含まれている。アメリカの貧困率には含まれているかもしれないしそうでないかもしれない。

アメリカの貧困率の計算に確実に含まれていないのは最大の給付プログラムであるメディケイドだ。3番目に大きいSNAPも含まれていない。もう一度イギリスとの比較に戻るとイギリスでは食糧を買うのにお金を必要とする人々には現金が送られる。これは確実に上記の計算に含まれる。アメリカではSNAPは計算に含まれない。住宅バウチャーも計算に含まれていない。対応するイギリスの住宅給付は確実にイギリスの計算に含まれている。

EPIの数字の問題点はアメリカの税引き後移転後での貧困率はある意味市場所得での貧困率を見ているのとさして変わらないというところにある。他の国はすべて税引き後移転後での所得で貧困率を計算している。よってアメリカの数字が他の国より高かったとしてもまったく驚くべきことではない。

ところで私はアメリカが他の国より相対的貧困率が高くないと主張しているのではない。その計算がおかしいと述べている。

次に彼等が数年前に作成した興味深いチャートを紹介する。現在ではウェブで見ることができないようなので参照だけ掲載する。


このチャートはとても興味深いと思う。

彼等は直接の比較が可能となるように数字に一連の調整を加えている。まず下位10%と上位10%が得る中央所得に対する比率を示している。さらにPPPで調整しているので人々の実際の購買力を示している。最後に税引き後移転後の調整がしてあるのでアメリカと他の国とで貧困を緩和するものを加えた後での比較が可能となっている。それはEITCと住宅バウチャーも含んでいる。

このチャートで私が非常に興味深いと思うのはこの部分だ。レポートが提出された時に以前私が述べたことを再度掲載する。

「このチャートをどのように解釈するか?下位10%は中央所得の39%しか得ておらず上位10%は中央所得の210%を得ているのだと。フィンランドと比較してみよう。上位10%は111%を得て下位10%は38%を得ている。我々は嘆き悲しみ全員に課税しなければならないのだろうか?」

「だがちょっと待って欲しい。このチャートから示されたのはそういうことではまったくない。アメリカの下位10%は中央所得の39%を得ていてフィンランド(とスウェーデン)の下位10%は38%を得ている。細かい数字の違いについてとやかく言うのはやめてこれをアメリカの低所得層はフィンランド(とスウェーデン)の低所得層と同じ生活水準をしているのだと解釈しよう。意味深い数字だとは思わないか?懲罰的な税率や再分配や平等主義?や平坦な所得分布などが低所得層の生活水準に簡潔に言って何の変化も与えていないのだ」

もう少し細かく見ることもできる。スウェーデンの医療は低所得層に対して寛大かもしれない。下位10%が確実にメディケイドを受給しているのかも定かではない。だがこれらの数字を引き出す際に引用されたTim Smeedingはある研究でこれらの差は微々たるものだと述べている。医療はアメリカでより高価かもしれないということは可能だ。だが食糧はアメリカでずっと安い。だから彼の言うようにこれらの差は微々たるものだと言うことができるのだ。

重要な疑問へと答えることができるようになった。貧困に関してまったく異なる4つの言明をすることができる。:アメリカは(他の国よりも貧困率が)低い、高い、同じ、またはわからないだ。我々が適用する基準に単に依存している。

市場所得での貧困率はアメリカがスウェーデンよりも低い。消費格差ではアメリカの貧困率がより高いということができるだろう。貧困を緩和するものを加えていないからだ。最後にアメリカとスウェーデンの低所得層は同じ生活水準だということがはっきりということができる。だから貧困が多いか少ないかは定義次第だ。あなたならどの定義を選ぶか?

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