2015年8月12日水曜日

政府を大きくしたいのであれば政府を小さくするしかない?

U.S and European tax policy, and misunderstanding the Laffer curve

Tino Sanandaji

Ezra KleinのウェブサイトでDylan Matthewsが税収を最大化する税率とは幾らかを経済学者に尋ねた興味深い記事を書いている。

厚生経済学で通説とされていたのは60%から70%だった。これはミクロの短期の課税所得の弾力性の推計に基づいているものだ。私が教わったことでもある。だがRaj Chettyの研究が示したように(税率の変化に対応する費用が原因で)過去の研究は税に対する反応を過小評価していた。Dylan Matthewsが同じ質問を10年後に尋ねたならば回答は変わっているだろう。

だが私を最も驚かせたのはBruce Bartlettの回答だった。過去には彼は保守派だった。だが人は時にイデオロギーを変更する。現在の彼はヨーロッパ型の社会民主主義者と形容するのが最も妥当だろう。彼が現在書いているもののほとんどはアメリカの保守派への攻撃で、増税を要請し、オバマ大統領を擁護する一方で、メディアの注目を集めるために今でも保守派であるかのように振舞っている(社会民主主義者が自由市場政策を攻撃するのはニュースにはならないが「保守派」を装っている誰かがやればニュースになる)。

Dylan Matthewsはこのことをよく理解している。だから彼がBartlettを「保守派」と分類しているのは完全に不誠実だ。

Bruce Bartlettは税収を最大化する税率は83%だと考えているようだ。Kleinがインタビューしたどの左翼の経済学者よりも高い。

Bartlessが引用したUhligの重要な研究は高い税率ではなく低い税率を強力に支持したものとしてほとんどの経済学者からは解釈されている。Harald Uhligはシカゴ大学の素晴らしいマクロ経済学者だ。マクロ経済学者はミクロ経済学者とは違って課税の弾力性が高いと考える傾向がある。それ故ミクロ経済学者が考えているよりも課税が歪曲的だと考えている。

彼は全体としてヨーロッパはラッファーカーブの頂点に極めて近いと考えているようだ。資本課税に関しては特にそうだ。

彼はアメリカの税収も33%以下しか集められないとも考えているようだ。左翼が建設しようと目論んでいる巨大な福祉国家の資金源としてはまったく不十分だ。

そして最適な税率の基準は税収を最大化することではないということをいつでも覚えておく必要がある。税収最大化税率に達するはるか前から政府は例えば1ドルを徴収するためだけに2ドル以上を破壊している。

新規の政府支出がその支出の2倍または数倍もの社会的利益を生み出すとは非常に考え難い。

それ故彼は、「EU-14ヶ国では、労働税の減税の54%と資本税の減税の79%が自己回収される」と結論している。

減税の54%が自己回収されるとは例えば政府が納税者の財布に2ドル以上を返したとすれば削減しなければならない政府支出の額は1ドル以下で済むことを意味する。私には極めて素晴らしい取引に思える。

減税の79%が自己回収されるとは例えば政府が納税者に5ドルを返したとしても公的部門が失うのは1ドルでしかないことを意味する。本物の馬鹿か狂信的な社会主義者だけがこの税率を支持するだろう。

これは(Bartlettの主張とは異なり)アメリカが真似すべきではない深刻な機能不全の証拠だ。

我々は政府が支出する物の社会的価値を必要度に応じて並べることが出来る。その中には(例えば警察やがん治療の研究のように)費用の5倍の価値がある物も中にはあるかもしれない。だが国民所得の40%から50%が公的支出である国では(アメリカもこれに近い)ほとんど価値の無い公的支出が膨大にある。

これらの活動の社会的便益が費用の2倍から5倍というのは非常に考え難い。

ほとんどの人はラッファーカーブを少しも理解していない。彼らは税収最大化税率を下回っている限り何の問題もないと考えている。左翼は税率をラッファーカーブの頂点にすべきだと考えているようだ。

だがラッファーカーブの頂点に近づくことは政府活動の限界費用が指数関数的に無限に近づいていることを意味する。ラッファーカーブの頂点では、それが政府活動の費用だ。ラッファーカーブの頂点を過ぎれば負の領域に突入する。すべての集められた税が民間部門の活動を破壊し公的部門の活動も同様に低下する。

アメリカと西ヨーロッパの税率と税収がどのような関係になっているのかをシンプルなグラフで示そう(ここでいうヨーロッパとはルクセンブルグを除いたEU-15ヶ国のことでTrabandt and Uhligがデータを提供しているものだ)。

ヨーロッパの税率がアメリカよりも高いということは我々は知っている。だがアメリカがヨーロッパよりもはるかに豊かだということも我々は知っているまたは知っておかなければならない。税収は税率と一人あたり所得の関数だ。

OECDはGDPに占める税収の割合と一人あたりGDPのデータを提供している。これによって公的支出を決定するのに関連する変数が明らかとなる。一人あたり税収だ。

最も最近でデータが利用可能な年度である2007の西ヨーロッパの一人あたり税収は(1ドル=100円として)134万4000円だ。

アメリカの一人あたり税収は131万4000円で2%少ないに過ぎない。このことは以下の図に見られる。

だがUhligによると2番目の図に見られるようにヨーロッパの労働税と消費税の平均は51%でアメリカは31%だ。

従ってアメリカの一人あたり税収は例えばフランスより9%少ないに過ぎない。平均的なフランスの労働者は所得の50%を所得税と消費税で支払っていて平均的なアメリカの労働者は所得の31%を支払っているにも関わらずだ。

どちらの社会がもう片方を真似したいと思うべきか?または税収を減少させるとしても高い税率には本源的な価値があると仮定するのか?

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