Alan Reynolds
Thomas Pikettyの「Capital in the Twenty-First Century」ほど世間の注目を集めた経済に関する本は最近ではないだろう。彼は左翼の英雄として讃えられているようだ。だが彼の数字が意味を成さないことを示す証拠が高まっているのでハネムーンは悲惨な結末となるかもしれない。
彼の主な主張は資本主義により「恐ろしい程までに」富が一部の人間に集中する結果になるというものだ。その理由として資本の利潤率が経済成長率を上回っていることを挙げている。この漠然とした主張を支持する実証的な証拠は一つでもあるのか?フランス、イギリス、スウェーデン、特にアメリカの資産格差が拡大しているという彼の主張を示すことを目的とした彼の本のデータには異議が寄せられている。そしてここからが話が面白くなる所だ。
いずれにしてもZucman-Saezのデータはミスリーディング過ぎて無価値だ。彼らはアメリカの資産上位の資産シェアを所得税の納税申告書に記載された資本所得(利子、配当、賃料、キャピタル・ゲイン)の比率に基いて推計しようと試みている。
・税の申告に関して
1981から1997に税法は高額納税者の資本所得をより個人所得税として申告するように要請するようになった。一方で中間所得層と(中間所得層の)家の持ち主の資本所得の大部分は除外されるようになった。これは見掛け上の資産格差の拡大となって表れる。
例えば(課税が免除される)地方債からの利子所得は1987以前には申告されていない。従ってその後に申告されるようになった所得は上位所得と資産の幻の増加を生み出す。対照的に1997以降は持家の売却によるキャピタル・ゲインのほとんどは中間所得層の納税申告書から姿を消している。(1ドル=100円として)5000万円の課税限度額があるためだ。そして1980年代の中頃以降、中間所得層の資本所得とキャピタル・ゲインのほとんどはIRAs、401(k)s、その他の(退職、大学)貯蓄プランに移動したために納税申告書から姿を消した。
まとめると税法の変化は所得上位が申告する資本所得を増加させ事業所得を法人税から個人所得税へとシフトさせその一方で中間所得層と(中間所得層の)家の持ち主の資本所得のほとんどは隔離されるようになった。申告された資本所得を用いて資産シェアの変化を推計しようとすることは絶望的だ。
所得税の最高税率が1980の70%から1988の28%に引き下げられた時にこれにより巨大なシフトが引き起こされた。Cコーポレーションからパートナーシップ、LLC、Sコーポレーションなどへのシフトだ。1980から2007の間に、「パススルー事業体によって生み出された利益の割合は14%から38%へと2倍以上になった」とCBOは報告している。資本所得が一つの形態から他の形態へと移ったことは資産上位1%の資産が増加したことを意味しない。移っただけだ。
・税率とキャピタル・ゲインに関して
1997にキャピタル・ゲイン税率が28%から20%に引き下げられた後にそして2003にさらに15%に引き下げられた時に上位1%の間でキャピタル・ゲインの申告の大幅な増加があった。資産の売却の増加が資本所得の増加となって現れるとしても実現したキャピタル・ゲインは未実現のキャピタル・ゲインよりも価値があるなどということはない。従ってキャピタル・ゲインの実現は資産に関して何も教えてくれない。同様に配当に掛かる税率が15%に引き下げられた2003以降の地方債、コイン、現金などからの配当株へのポートフォリオのシフトは単に非課税の資産から課税資産へと交換されただけなのに資本所得が増加したかのように見えるだろう。
だが彼の好む代替指標、Zucman-Saezのスライドショーにこそ修復不可能な欠陥がある。アメリカの資産上位1%の資産シェアが上昇するという彼の警告は彼の本の中にも他の場所にも支持するものを見つけることは出来ない。
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