Richard Burkhauser
同じデータを見ているはずなのに奇妙な解釈をする人がいるのは珍しくない。従って事実を正しく述べるということは簡単なように見えて意外と難しい。これから1989以降所得格差が拡大したのかどうかに関する私の意見を述べる。3月のCurrent Population Survey (CPS)から分かると思われることともっと深い疑問、所得格差は本当に重要な問題なのか?に関してだ。
厚生の変化に興味がある他の経済学者と同じように私も一般公開向けのCPSを用いてアメリカの平均的な世帯の所得とその分布を普通は調べている。最近(長い交渉の果てに)私は統計局が世帯所得のジニ係数(Gary Burtlessがコメントで参照している)を推計するのに用いている内部CPSデータへのアクセスを許可された。私が見た所では彼がしているような2時点間のジニ係数の単純な比較は1989以降の所得格差のトレンドを過大評価しているし所得格差の拡大が問題だという彼の主張を私に納得させるのに失敗している。
所得分布がどうなったのかを解釈することはより込み入っている。Reynoldsが取り上げていたBurkhauser, Oshio, and Rovba(近日発表予定の)では単に単年度のジニ係数を用いるのではなく1979-1989-2000のアメリカの景気循環の山での所得分布の全体像を示しそれを1990年代のイギリス、ドイツ、日本の景気循環の山での所得分布の全体像と比較している。1989の所得分布を1979の所得分布と比較してみると(図2)所謂中間層と呼ばれる人達が1980年代に大幅に減少していることが分かる。これはReynoldsやBurtlessが議論していたジニ係数の上昇と整合的だ。だがここで見逃してはならないのは「消えた」中間層のほとんど全員が分布の右側(所得の多い側)に移動したということで分布の左側(所得の低い側)に移動した人はほとんどいないという事実だ。ようするにアメリカで1980年代に所得格差が拡大したといってもそれは消えた中間層が尋常でないほどに豊かになったからだ。
1990年代になるとさらに良くなる。2000の所得分布は1989の所得分布をそのまま右に移したような形だ。すなわち2000の所得分布のすべての地点が1989の所得分布よりも改善している。これは我々の社会が達成した素晴らしいことだ。だがこれをドイツや日本と比較してみるとますます素晴らしいものに見えてくる(図3と図4)。イギリスは我々の1990年代と同様の結果を示している(図5)。
我々はジニ係数も同時に推計している。そして1989から2000の期間に課税後の所得格差が縮小、同期間に課税前の所得格差には何の変化もないことを発見した。ではBurtlessが参照している(統計局が内部CPSデータを用いて発表している)ジニ係数の上昇とは一体何なのか?
統計局に頼るのではなく自分達自身でジニ係数を推計している他の多くの研究者と同様に我々も一般公開向けのCPSを用いてジニ係数を推計している。Shuaizhang Feng and Stephen Jenkinsと私の共著の新しい研究に基づく図6に見られるようにトップコーディングを調整していない一般公開向けのデータを用いれば1989から2000の期間に課税前所得に所得格差の大きな拡大が見られた。だがこれはトップコードの大幅な増加と1995以降のセル平均の使用の大幅な増加、そして1993のCPSの調査方法の変更が原因だ。我々はこの問題を1975から2004の期間を選び全期間で一貫したトップコーディングを行うことにより修正した。
Burkhauser, Butler, Feng, and Houtenville (2004)でこの方法は体系的に労働所得格差の水準を過小評価しているものの(1992から1993と1994から1995の一時的なスパイクを調整した)未調整の統計局の内部ジニ係数と外部ジニ係数のトレンドを捉えていることを示した。我々の結果は一般公開向けのデータの所得上位2%と3%を単純に「刈り込んだ」ものと同様だ。従って我々の結果は所得分布全体の97%から98%の世帯所得とその分布がどうなっているかを一貫して示している。私はBurtlessとReynoldsが適切にこれらの問題を修正した一般公開向けのCPSデータはこの集団に対しては正確にトレンドを把握しているということに少なくとも同意すると信じる。
内部CPSデータへのアクセス権を得てから我々が注意深く記してきたことはこれらのデータであっても所得分布の上位で不均一な検閲が行われているという問題があるということだ。Burtlessは内部CPSデータからの一部である統計局のジニ係数は検閲に対して修正されていないと述べている。ReynoldsがそしてBurkhauser, Feng, and Jenkins (2006)で我々が独立して議論しているように1975から2004の期間において一般公開向けのデータと同様に内部CPSデータは所得分布の上位を体系的に把握していない。一般公開向けのCPS同様に、トップコーディングを含む内部検閲は個人の所得総額ではなく個々の所得源に対して行われる。そして我々は1つ以上の所得源がトップコードされている世帯に住んでいる個人の割合は0.1%から0.8%の間で変化していることを発見した。
CPSデータは所得分布の上位1%または2%を調べるのには少し向いていないということにはReynoldsやBurtlessに同意する。悲しいことに他のデータもまたこの集団を調べるのに向いているということはなく所得分布全体の99%に比べると所得上位1%の所得が1989以降どのように変化したのかに関して不確実な所がある。
0 件のコメント:
コメントを投稿