2015年8月12日水曜日

CEOの給与は数十億円ではなく1700万円だった?

The average US CEO last year made only $178,400 (about the same as a dentist), and got a raise of less than 1%

Mark J. Perry

S&P500のCEOの給与が公開される時にはいつも馬鹿騒ぎが始まる。そのパターンも大体決まっていて「CEOの過大な報酬」への批判から始まり、上昇している(と仮定されている)CEOの給与と低迷している(と仮定されている)平均的な労働者の給料との比較、そして最後にそれが如何に所得格差の拡大に貢献しているかなどなどと続く。例えば、ここに「Millions by millions, CEO pay goes up」と題したUSATodayの記事がある。

「その一方で、CEOの給与となると2013は記録的な年だった。2008の金融危機以来最大だろう」。

「USA TODAYが過去2年間にCEOが交代しなかったS&P500の会社を調べた所、2013の給与の中央値(給料、ボーナス、インセンティブ報酬、臨時収入、ストック・オプションなどからのキャピタル・ゲインを含む)は(1ドル=100円として計算)10億5000万円と13%増加した。これは株式市場の上昇によって支えられている」。

「企業収益の増加は(根拠が示されたことはないが)大部分が正常な成長ではなく雇用の削減と合理化によってもたらされていてそして平均的な労働者の賃金は何十年も増加していないので、CEOの給与の増加は経営部と一般労働者との亀裂をもたらすだろう。1億480万人の労働者の賃金の中央値は去年が408万7200円で2012に掛けて1.4%増加した」。

「「CEOの給与はさらに増加し所得格差の議論の材料となるだろう」、とベテランコンサルタントのAlan Johnsonは語った」。

USATodayの分析はS&P500の中で最も大きい多国籍企業200を含んだものにすぎないということを記しておく必要がある。統計局によると、アメリカには2700万以上の民間企業が存在する。だからUSATodayがいう200の企業というのはアメリカの民間企業の各13万5000社毎のわずか1社、または0.00074%(1%の1000分の1以下)に過ぎない。さらにUSATodayは2700万以上の会社のすべてのフルタイム労働者の賃金とわずか200の会社のCEOの給与と比べている。

労働局によって先程公開されたばかりの賃金データを見ることによってCEOの報酬のより正確で完全な姿を把握することが出来る。BLSは「22の主要なカテゴリーの賃金と給与所得者のための地域と産業毎の雇用と賃金の推計」というものを提供していてその中には「最高経営責任者」というカテゴリーが含まれている。2013ではBLSはアメリカの24万8760人の最高経営責任者の平均給与はわずか1784万円であったと報告している。USATodayのいう200の企業というのはCEOが最高経営責任者である各1243社毎のわずか1社、そして200社というのはアメリカのCEO全体のわずか0.08%、またはCEO全体の1%の10分の1以下を占めるに過ぎない。「CEOの報酬の実態」というのはBLSによって公開されているデータを見ることによって初めて把握することが出来る。

BLSによるとCEOの平均給与は2012の1768万4000円から2013にわずか0.88%増加した。対照的にすべての労働者の平均給与は2012の457万9000円から2013の464万4000円へと1.42%増加した。そうだ、去年の平均的な労働者の給与はCEOの給与よりも60%以上増加したのだ。

先週WSJが記事にしているようにアメリカの平均的な矯正歯科医師の給与は1962万7000円だった。CEOの平均の10%以上だ。だが「貰いすぎなCEO」とか「過大なCEOの報酬」とかいうメディアの誇張をあなたは疑ったことがないだろう。我々が「貰いすぎな矯正歯科医師」とか「過大な矯正歯科医師の報酬」などということをメディアから聞かされることはない。または矯正歯科医師の給与は2013に5.34%増加していてCEOの給与の増加0.88%の6倍だということもだ。平均的な歯科医師の給与が1688万7000円でCEOの平均とほぼ同じだということも聞いたことがないだろう。「過大な歯科医師の報酬」だというべきだろうか?

麻酔科医(2350万円)、外科医(2330万円)、産婦人科医(2120万円)、内科医(1880万円)、家庭医(1840万円)、精神科医(1830万円)も平均的なCEOよりも稼いだ。麻酔専門看護婦(1580万円)、石油エンジニア(1490万円)も平均的なCEOの給与を大幅に下回るわけではない金額を稼いだ。

「過大なCEOの報酬」というのは24万8760人のうちの200人だけを見ることによって歪められている。もちろん多くの若くてリスク選好型のCEOはスタートアップや技術企業の初期の段階にいる。そして恐らく平均的なCEOの給与よりも少ないだろう。この点はEメールでScott Drumが指摘してくれた。さらに彼らは給料の形で貰うのではなくてうまくいった時の成功報酬の形で貰うとも彼はコメントしている。仮に報酬の規模を削減してしまったとしたらそこに行こうとする人の数に影響を与えてしまうのではないか?約25万人の野心的なCEOが2000万円以下の給与で働いていていつの日にか上位200のCEOにリストされようとしているのは、ダイナミックで富の創造的な経済の証だ。上位200のCEOを非難するのではなく褒め称えるべきではないのか?。そして彼らは外れ値でアメリカの平均的なCEOの代表ではないことを理解する必要がある。

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