William McBride
Executive Summary
「Capital in the 21st Century」の中で、Thomas Pikettyは富裕層を遺産の相続者として描いている。彼の言う所では、「相続される資産が日々の労働から得られる資産を支配するのはほとんど不可避だ」と語っている。その証拠として彼はフォーブス誌の資産ランキングを挙げる。
実際は、フォーブス400は彼が示唆するよりも遥かに流動的で遺産の相続者ではなく起業家によって構成されている。
Key Findings
1987からのフォーブス400の中で、327人はリストから消えている。残った73人のうちで、収益率が最も高いのは起業家と投資家で遺産の相続者ではない。彼らの過去26年間の収益率は5.6%だ。
フォーブス400全体の収益率は2.4%で、Pikettyが推計した国民全体の収益率とほぼ等しい。
今日の資産は起業家によって生み出されている。フォーブス400の起業家の割合は1982の40%から2011には69%に上昇している。
遺産の影響は消滅していっている。フォーブス400の遺産の相続者の割合は1982の60%から現在では32%に低下している。
個人と同様に、企業の資産も極めて流動的だった。ダウ工業平均の入れ替わる率は近年になって上昇している。100年以上中に入っているのは1社(General Electric)だけでしかない。
Introduction
今年の最も有名になった経済の本はThomas PikettyのCapital in the Twenty-first Centuryだろう。彼の本は一般大衆に向けて書かれている。彼の本は一般大衆が資本主義に対して最も恐れていると思われることを描写した。資本主義は経済的な格差を生み出し少数のエリートがすべての富と権力を支配するというものだ(こう聞くと単なる中二病にしか聞こえないのは果たして自分だけだろうか…)。そうだとすれば悪いニュースだ。だがそれが本当だという証拠は一つでもあるのだろうか?資本主義は200年か300年で恒久的な金権主義に陥ってしまうのか?
これまでに、彼の本は経済学者からあまりにも批判を受けているので非経済学の本と呼んだほうが正しいだろう。彼の本は経済学者が正しいと考えていることの多くを拒絶している。例えば、Lawrence Summersは以下のように述べている(省略)。
Pikettyは根本的な問題は資本の成長率(または、資産)が経済の成長率を上回っていることにあると言う。その状況を彼はr > gと描く。これが彼が本の導入部分で語っていることだ。
さらに、フォーブスの資産家ランキングを指して富裕層はその他の社会全体よりも高い収益率を享受していると彼は主張している。実際は、富裕層の収益率はそれほど高くない2.4%以下であること恐らくは0.2%以下であることをフォーブスのリストは示している。このことは何故フォーブス400のリストがこれほどまでに頻繁に入れ替わっているのかを説明している。今日のフォーブス400の人々のほとんどは1世代前にはリストに存在しておらず彼らの先祖も存在していない。
さらにアメリカの企業の間で資本の集中が起こっているという証拠も存在しない。結局は企業が究極的な資本の蓄積機械だ。実際に、彼が最も懸念した時期に1社を除くすべての企業はダウ工業平均から除外された。彼が最も理想とする20世紀の中頃(所得税の最高税率が90%以上だった時代)は、実際は大企業の入れ替わり率が最も低い時期で競争が少なかったこと流動性が乏しかったことを示唆している。
Piketty’s Analysis of Wealth Inequality in America
彼はフォーブス400のリストを用いて1987から2013の富裕層の(年間の)収益率を計算している。彼は資産上位0.000001%(2013で45人)と資産上位0.00001%(2013で225人)の収益率が6.8%と6.4%だとしている。対照的に、一人あたり資産の収益率は2.1%だと彼は推計している。これらの計算は彼の本の表12.1に示されている。
What the Forbes Rankings Actually Show about Wealth Inequality in America
フォーブスのランキングの全体的な分析は彼の資産の集中に関する主張と矛盾する。彼は世界の資産家のフォーブスのランキングを参照しているが最も関連するのはアメリカの資産家のランキングの方だ。
1987から2013の入れ替わりの率も同様に高い。1987のフォーブス400のうちで、2013に残っているのはわずか73人だ。毎年多くの人がリストから消えている。去年では、6人が死亡し28人が収益率が低かったのでリストから消えた。その中にはT. Boone Pickens、Manoj Bhargava、Dan Snyder、Charlotte Colket Weber、Steve Caseらが含まれている。
第二に、何故フォーブス400のリストはそれほどまでに入れ替わっているのかというその理由を収益率が高くないからだということに求めている点に関してはSummersは正しい。事実として、ほとんどの資産家の収益率は4%を大きく下回っている。26年間リストに残っている人だけを見れば収益率は5.6%だ。だがこれはリストから消えた327人を無視している。仮にリストから消えた資産家の資産が2013のリストの境界である(1ドル=100円として)1300億円をわずかに下回っただけと極めて楽観的に?仮定すれば、1987のフォーブス400の収益率は2.4%だったことになる。
第三に、Pikettyの主張とは異なり、相続がフォーブス400で「支配的」になっているという兆候はない。事実、遺産の影響は小さく消滅していっている。リストを一目見ただけでも起業家で占められていることが分かる。Bill Gates (#1), Larry Ellison (#3), Charles and David Koch (tied at #4), Michael Bloomberg (#10), Jeff Bezos (#12), Larry Page (#13), Sergey Brin (#14), and Mark Zuckerberg (#20)らだ。その他の集団は投資家だ。そこにはWarren Buffett (#2), Sheldon Adelson (#11), Carl Icahn (#18), and George Soros (#19)がいる。遺産の相続人は少数派だ。Sam Walton (#6 to #9)の子供とFrank Mars (tied at #15)の孫がいる。
そもそもの初版から起業家はリストの多くを占めていた。だが、これを研究した研究者は起業家の割合が上昇していることまた相続の割合が低下していることを発見している。Steven KaplanとJoshua Rauhは、
「フォーブス400の起業家の割合は1982の40%から2011の69%へと劇的に上昇している」。
「資産家として生まれた割合は60%から32%へと低下している。一方で少しの資産の家庭の下に生まれた割合は同規模上昇している」。
他の経済学者も、例えば相続税の納税申告表など他の手法とデータを用いて同様の結論に達している。
さらに、1987から2013のフォーブス400の収益率を見ると最も収益率が高かったのは起業家だ。例えば、2桁の収益率を示していたうちで6人は起業家で4人は投資家、相続はゼロだ。オラクル社の共同創設者Larry Ellisonはは18%、為替の投機家George Sorosは14%、マイクロソフト社の共同創設者Bill Gatesは14%、同じく共同創設者のPaul Allenは10%、レバレッジド・バイアウトファンドのRonald Perelmanは13%、ナイキ社の共同創設者のPhil Knightは13%、コックインダストリーズのDavid and Charles Kochは12%、投資家のCarl Icahnは12%、最後に伝説的な投資家のWarren Buffettは11%だ。
フォーブス400の中で最大の敗者を見ることも同様に示唆的だ。その中には収益率が低かったもののリストに留まっている者やリストから完全に消えた者が含まれる。
Ross Perotはエレクトリック・データ・システムの創設者で2度の大統領候補だ。フォーブス誌によると彼は1987にはアメリカで3番目の資産家だった。現在では彼は134番目で過去26年間の収益率は-2%となっている。彼の息子Ross Perot, Jr.は現在314番目で父と子の資産を合わせても収益率はマイナスとなっている(-0.4%)。
リストに最後に残っている99歳のDavid Rockefeller, Sr.の収益率は1.2%だった。ロックフェラー家の残りの2人はリストから消えた。
Corporate Capital Accumulation
彼は大学への寄付を見て資産が大きいほど収益率が高いという彼の主張の根拠としている。彼によると、ハーバード、エール、プリンストンの収益率は1980から2010の間に10.2%で100億円以下のファンドの収益率は6.2%となっている。彼はこれを「より洗練された投資戦略」に求めている。その差は謎であるものの、その高い収益率は投資によるものとは限らない。課税が免除されているからだ。
図1はダウ工業平均の歴史を示している。図は20世紀初期に相対的に入れ替わり率が高かったことを示している。例えば、1920年代には35の新しい企業がダウ工業平均に組み込まれた。これは35の企業が除外されたことも意味する。入れ替わり率は戦後に低下した。例えば、1940年代にはダウ工業平均に組み込まれた企業の数は1940年代にゼロで、1950年代に5、1960年代もゼロだった。入れ替わり率は最近になって上昇している。1990年代には11の企業が組み込まれた。2000年代には8の企業が組み込まれた。
どのように見ても、アメリカの企業の歴史は彼の理論をまったく支持していない。資産の集中ではなく、そこには次々と新しい企業と産業が誕生している。Joseph Schumpeterが呼んだように、それは競争と創造的破壊の姿で資産の集中ではない。
Conclusion
所得税と資産課税という彼の政策提言も同じぐらいに経済学と歴史から見て問題外だ。彼は1930年代の大幅な税率の引き上げ(1931の25%から1936の79%)に関して語るがその直後に起こった大恐慌に関しては語らない。彼は税率の引き上げが生産性や経済成長に影響を与えないかのように語っている。すべての証拠がその反対を示しているにも関わらずだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿