The Uncounted Trillions in the Inequality Debate
Martin Feldstein
連邦準備はアメリカの家計資産が9600兆円に達したと推計した。そして連邦準備が調べているSurvey of Consumer Financesからのデータによると、上位1%の家計がその33%を保有しているという(ドイツなどと同じ割合。馬鹿正直にデータを集めていたのはアメリカだけだったというオチ)。それ故、残りの99%の家計は6400兆円を保有していることになる。
これらのデータは資産の分布が大きく偏っていることを示しているように思われる。だが資産分布の真の姿は格差の批判者が主張しているような大きなものとは程遠い。これらのデータからは社会保障やメディケアなどの退職給付のほとんどが除外されているためだ。
資産はその人が持つ現在の所得よりも多くの消費を可能にするものだ。退職後や失業時など、金融資産を持つ家計はその生活水準を維持することが出来る。また資産を持つことにより遺産を残したり子どもや孫の生活を支援することが可能になる。
多くのアメリカ人は退職後の消費をファイナンスするのに年金に頼っている。Social Security trusteesは、年金「資産」(現在の労働者が受け取ることになっている将来的な給付額の現在価値)が7080兆円であると試算している。上位10%の家計を除外しても6000兆円が残る。
だが受給資格を得るためには、労働者は3000兆円の給与税を支払わなければならない。それ故、給付から税を差し引いた3000兆円が残り90%の家計の資産に加わることになる。これを6400兆円に加えると、これらの家計の資産は9400兆円となる(逆に、未積立の債務は無視できる程度とすると7000兆円から3000兆円を差し引いた4000兆円が上位10%の負担で彼らの年金の受け取りは1000兆円だから上位10%の資産から3000兆円が消滅する。これはアメリカの社会保障制度が他の国とは異なり累進性が高いため)。
だがこの数字からは退職者がメディケアやメディケイドから受け取る非常に巨額の移転が無視されている。政府の会計士はこれら2つのプログラムによる「資産」の額を試算していない。だがそれが幾らぐらいになるのかの示唆を得ることは出来る。
CBOは(10年間に)年金の受給者は1200兆円を受け取り、メディケアの給付は1080兆円でメディケイドの給付は552兆円(この給付額の半分ぐらいは養護施設の退職者が受け取る)だろうと試算している。要するに、これら2つのプログラムの給付は年金が退職者に支払う額を上回っている。
だが年金とは異なり、政府からの医療給付の受給は労働者からの支払いに大きく依存してはいない(月額保険料は1万5000円程度)。これは現在の法律から示唆される「メディケアとメディケイドの純資産」は恐らく負担分を差し引く前のグロスで見た6000兆円の「年金資産」に匹敵する額であろうことを示している。
では全体で見ればどうなるのか?この6000兆円を年金の3000兆円と家計資産6400兆円に加えると、上位1%以外の家計は1京5400兆円の資産を保有していることになる。さらに、この1京5400兆円には失業保険給付、退職軍人給付、金融資産の代替の役割を果たすその他の政府プログラムが含まれていない。
格差を批判している人間はこれらの資産が存在していることすらも理解していない。そのせいで重要な問題が見逃されている。国民は現在のシステムをファイナンスするために高い給与税(直接的な形であれ、賃金の減少という形であれ)を支払っている(言うまでもなく企業に課せられた負担は従業員が支払う)。私の計算では、こうして支払われた税に対するインプリシットな実質収益率は3%を下回っている。これはIRAや401kプランが普通に稼いでいる5.5%という実質収益率を大幅に下回っている(この年度で具体的な金額に換算すると735兆円からかなり大幅に見積もった401兆円を引くとしても334兆円の無駄)。
良い方法は現在の給付システムを縮小させて投資ベースの個人口座に置き換えることだろう。これにより労働者の税負担は削減され貯蓄率は上昇し、従って経済成長率と実質賃金が上昇するだろう。これらの個人口座は将来世代のための遺産としての資金にもなるし教育などの目的のためにも転用できる。
アメリカの見掛けの資産格差は、実際には政府の時代遅れな給付のファイナンスの仕方の反映にすぎない。格差が心配だと主張するのであれば、政治家は自分たちが直接的にコントロールしている非効率なプログラムの方を修復することから始めるべきだ。
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