2016年12月25日日曜日

50万人以上が殺害されたシリアと大きな混乱も生まれなかったリビアの違いを生み出したのはアメリカ軍の介入だった?

Why NATO Was Right To Intervene In Libya

Kyle Orton

リビアの独裁者カダフィ大佐が失脚してから、もしNATOが静観してカダフィが反乱の舞台となった都市ベンジャジを奪還するのに成功していたらリビアは安定化して難民はなだれ込んでこなかったと主張する記事が定期的に書かれている。

今年始めにヨーロッパで難民危機が続発していてリビアがヨーロッパへの主要な中継地点となっていることからこのような記事は再び書かれるだろう。だがそれは間違いだ。リビアの不安定化は西側の行動とは無関係で、介入の最大の問題はもっと早くに、大規模に、継続的に行わなかったことにある。

Barbara Taschは今週Business Insiderというウェブサイトで、カダフィは「難民の流入を抑えるのに協力してくれただろう」という記事を書いた。Peter Hitchensは他のウェブサイトでNATOのリビアでの介入は「難民問題を生み出す手助けとなった」と書いている。

国民からの反乱に直面して、カダフィは戦闘機を2週間で送り込みベンジャジの「家という家」を破壊することを約束した。これにより人道的介入の必要性が生まれた。カダフィは、自分が失脚すればリビアに混乱が発生しジハード主義が蔓延し難民がヨーロッパになだれ込むだろうと脅しをかけた。

「ビン・ラディンの仲間たちがリビアに流入するだろう(もし私が失脚すれば)」とカダフィはレポーターたちに語った。

おめでとう、大佐。あなたのレトリックは功を奏したみたいだ。

だが検閲を行い、野党を禁止し、支配の道具として(男の)大臣たちをレイプし、反対者を暗殺したのと同じぐらいたちが悪いこのレトリックは、証拠からは否定されている。

テロの支援者としてのカダフィに並ぶものは少ない。Sabri al-Bannaを通して、カダフィは数多くの西側のターゲットを攻撃しイスラエルと和解しようという素振を見せたパレスチナの指導者を誰であろうと暗殺した。フランスの旅客機はチャドでカダフィのエージェントによって爆破された。スコットランド上空を飛行中だったアメリカの旅客機もカダフィの仕業だったと公表されている。

さらに、リビアでの反乱が起こった時にカダフィの子供 Saif al-Islamは政府はジハーディストたちの側につくと公言している。「リビアはサウジアラビアやイランのような(テロ支援国家)になるだろう。それがどうした?」と彼は語っている。

素晴らしいカウンターテロリズムがあったものだ。

もしカダフィがベンジャジを攻撃していれば、その結果はリビアの安定化とはほとんど真逆のような状況になっていただろう。ベンジャジの人口は60万人だ。いくら皆殺しにすると宣言しているカダフィでも全員は殺害できないだろう。カダフィは大砲と爆撃によって彼らを脅迫し難民にさせるだろう。丁度アサドがシリアで行ったように。でも彼らは一体どこに逃げるというのだろうか?(ヒントが必要だろうか?)

反乱が起こったのであれば、暴力と不安定化は避けられない状況だった。この時点では少なくとも正しいことをすることが求められた。それをしなかった末路がまさにシリアで現在展開されている。

リビアでのNATOの介入(8ヶ月に及んだ)は誤って72人の市民を殺害した。アサドは意図的に100人以上の市民を毎日殺害している。リビアの戦争では5000人が殺害された。2014年から2015年の最悪の時点でもリビアでの死亡者は4000人だった。

国連はシリアでの死亡者を10万人以上数えるのを止めてしまった。少なく見ても23万人から30万人が現在では殺害されている(さらに時間が経過した現在では50万人が殺害されたと云われている)。40万人以上がリビアからは逃げ出した(人口の7%ぐらい)。シリアからは120万人以上が逃げ出している(人口の半分以上)。

中途半端で遅すぎた西側のリビアでの介入(リビアを軍国主義へと走らせカタールとトルコ対エジプトとアラブ連合との代理戦争という状況においた、さらにイスラム国が侵入するのを許すことになった)でさえも、介入しなかった場合に比べてリビアでの状況は遥かにマシになった。死傷者や不安定化の度合いは、もし介入にカダフィが失脚した後の安定化の任務も含まれていればさらに減らすことが出来ただろう。

国際社会はリビアでは越えてはならない線を引いた。これはある一定の基準を超えれば国際社会が介入することを意味する。シリアでは西側は集団レイプ、民族浄化、体制による虐殺を許した。

イスラム過激派の脅威であれ、カダフィ失脚後の混乱であれ、それらはすべてがカダフィの独裁が生み出したものだ。

イスラム過激派を(これは最大限に優遇する)除いて反対勢力はすべて根絶すること、国家を自分たち一族の私有物とすること、民族間の対立を扇動して支配すること、これがアラブの独裁のアルゴリズムだ。あとに残されるものは混乱でしかない。現在のリビアの混乱はカダフィを取り除いた結果ではない。彼をあまりにも長い間放置してきた結果だ。

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