The humanitarian legacy of George W. Bush

JEFF WEINTRAUB

大統領を務めていた期間に最も人道的だったアメリカの大統領は誰か？共和党のフーバー大統領は第一次世界大戦後のヨーロッパ(とボルシェビキのロシア)で飢餓削減運動を行ったことで「最大の人道主義者」としてよく知られている。だが彼がそれを行っていたのは実際には大統領に就任する前だった。他の人は、フーバー大統領の後を継いだフランクリン・セオドア・ルーズベルト大統領を挙げるかもしれない。

だが私はその貢献が他を圧倒する一人の大統領を挙げようと思う。フーバーとは異なり、彼はその活動を大統領の任期中に行った。FDRとは異なり、その活動から利益を得たのはアメリカ国民ではなかったため彼は投票において少しも有利となることはなかった。実際、これが彼の貢献だと認識しているアメリカ人は非常に少ない。この最大の人道主義者は誰か？それはジョージ・W・ブッシュ大統領だ。

その前に、私は前大統領の支持者ではなかったということは断っておく必要がある。私は彼の政策の多くに反対していた。同時に、彼の最も素晴らしい遺産が彼の外交政策の陰に隠れてしまうことは悲劇だと考えている。それがあまりにも多くの人の命を救ったということは言うに及ばず、そこから学べることが数多くあるという意味においても。彼の批判者も支持者も、彼が大統領に就任していた時期を「テロとの戦い」のレンズを通して見る傾向が強い。対照的に、2003年にブッシュ大統領が打ち出したEmergency Plan for AIDS Relief(PEPFAR)のことを一度でも聞いたことがあるアメリカ人は数少ない。

例えば、このプログラムが開始された10年目に当たる議会演説の場においてもオバマは「エイズのない世代の実現の約束」というPEPFARの目標にわずかに言及したに過ぎない。その上、オバマの最近の予算案ではこのプログラムへの支出の削減が提案されている。これは悲しいことだ。今は、世界で最も恐ろしく破滅的な病気に対するアメリカの成功の10年を祝う良い機会かもしれない。

2003年の議会での演説で、ブッシュ大統領はアフリカで苦しむエイズ患者に対してエイズの治療薬や他の治療法を提供する野心的なプログラムへの資金提供を要請した。それ以降、アメリカ政府はそのプロジェクトに対して5兆2800億円を提供してきた。ある専門家はこのプロジェクトのことを「世界的な健康と特定の病気の治療に対する、どの国も一度も行ったことがない最大の金銭的コミットメント」だと呼んでいる。

このプログラムによってどれぐらいの命が助かったのかを正確に把握することは難しい。国務長官のジョン・ケリーはこのプログラムによって500万人の命が(直接的に)救われたと発言している。

その規模がどれぐらいであるのかを理解するヒントがある。ここに、Eric Goolsbyが挙げている幾つかの数字がある。

「2012年だけでも、PEPFARは510万人に直接的にエイズ治療を提供している。わずか4年で3倍の増加だ。エイズに感染している75万人の妊婦に対して母子感染を防止する治療薬をこのプログラムは提供している(これにより23万人の乳幼児がHIVに感染することなく生まれている)。そして4650万人にエイズの検査やカウンセリングを受けることを可能にしている」

従って、このプログラムは過去10年間に大成功を収めてきたと判断しても間違いなさそうだ。過去数年に、エイズによる死亡者の数は一貫して大きく減少している。そしてPEPFARは間違いなくそれに大きく貢献してきた。だが、PEPFARのことをアメリカ人、もしくはヨーロッパ人に尋ねてみるといい。間違いなく沈黙が返ってくるはずだ。それはアメリカがPEPFARの成功をほとんど宣伝していないことやブッシュ政権が外交の側面で注目を集めてしまったことが原因だろう。だがブッシュ大統領はアフリカでは大陸の救世主と見做され未だに高い人気を誇っている(一方で、オバマはPEPFARの予算の削減を提案したことによりつながりが深いはずのケニアだけでなくアフリカ全土で抗議運動を巻き起こした)。

「ブッシュ大統領は他のどの大統領よりもエイズの感染を食い止めること、アフリカを支援することに貢献した」とニューヨーク・タイムズのアフリカ特派員Peter Bakerは語っている。「彼は世界の最も困難な問題に大規模で大胆な方法で立ち向かい、アフリカ大陸の運命を変えた」とも語っている。「イラク以外を挙げるとすれば、これはブッシュ大統領について歴史が語る最も大きな出来事の１つとなっただろう。彼の行った政策を振り返るに際して必ず触れられるべき出来事だ」。