2016年12月25日日曜日

アメリカの福祉の規模はヨーロッパの2倍以上だった?

US Spends Far More on Social Welfare Than Most European Nations

Robert Rector

アメリカの国勢局は今年度の貧困調査を公表した。通説的な見方ではヨーロッパと比較してアメリカは福祉の規模が小さく貧困がはびこっているというものだった。だがリベラル派の経済学者Irwin Garfinkel, Lee Rainwater, and Timothy Smeedingが「Wealth and Welfare States: Is America a Laggard or Leader?」という本でそのような単純な考えを破壊した。

Garfinkelたちは各国の社会福祉支出と貧困を調べた。彼らは社会的福祉を5つの項目で分類した。医療支出、教育支出、退職者への現金給付、(失業保険、EITCなどのような)その他の現金給付、(フードスタンプや住宅補助などの)非現金給付だ。

アメリカの社会福祉支出は政府だけではなく民間からも多く拠出されているのでヨーロッパの国々とは異なっていると彼らは結論した。対象的に、ヨーロッパでは社会福祉支出のほとんどを政府が支配している。例えばアメリカでは、政府の医療支出は高齢者と低所得者全体をターゲットとしている。中間層や労働者は民間の保険を利用している。それ故、アメリカの医療システムは他の国々よりも遥かに再分配的だ。

中間層の高齢のアメリカ人は同じく中間層の高齢のヨーロッパ人よりも民間の年金に多く加入している。アメリカでは中間層は親が子供の教育費を払う。ヨーロッパでは中間層でも政府が払う。全体的に、ヨーロッパでは中間層より所得が上であっても政府の給付に大きく依存している。アメリカでは、中間層や中間層より所得が上であれば自分たちで払う。

だが民間部門を考慮から除外したとしても、アメリカの福祉の規模は非常に大きい。実際、アメリカの一人あたり政府社会福祉支出の規模は先進国で3番目に大きい。これは、アメリカの政府支出が低所得者と高齢者をより積極的にターゲットにしていることを考えるとさらに衝撃的だ。

民間部門まで考慮すると、アメリカの社会福祉支出は他の国を圧倒する。事実、アメリカの一人あたり社会福祉支出はヨーロッパの平均の2倍近くにも相当する。彼らが結論しているように、

「アメリカの福祉の規模が小さいと思っている人間にはこのデータは衝撃的だろう。そしてウェイクアップコールとなるだろう。医療福祉と教育福祉が考慮に加えられると、アメリカの一人あたり社会福祉支出は他のほぼすべての国よりも大きい!」

ただ1つの国(ノルウェー)だけが一人あたりで見てアメリカよりも多く支出している。

この支出のどれぐらいが低所得者に届けられているのか?左翼はアメリカの貧困率が他のヨーロッパの国々よりも高いと頻繁に主張している。それらの主張は「相対的貧困率」という指標によるものだ。そこでは「貧困」とは所得の中央値の50%を下回ることによって定義されている。アメリカの所得の中央値がヨーロッパの国々よりも遥かに高いので、その指標は他の国々に比べてアメリカで「貧困」から抜け出すハードルを高く設定している。

この「不平等な」指標に基づいてアメリカとヨーロッパの貧困削減度を測ろうとすることは、ヨーロッパが100メートル走をしている時にアメリカの走者は200メートルを走っているようなものだ。ヨーロッパ人はゴールに先に辿り着き自分たちのほうが速かったと宣言する。そのような指標を用いて比較することは明らかにミスリーディングだ。

(以下、省略)

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