2016年5月23日月曜日

What about Asia?

Scott Sumner

Thomas Pikettyの本は資産格差を主題としているが彼は他の色々な話題に関しても自身の持論を展開している。その持論のほとんどは左翼的なもので、私の見たところではほとんどが間違っている。ここにその一例がある。

「現代の再分配政策は、20世紀の豊かな国々が確立した社会的地位によって例証されるように、幾つかの基本的な社会的権利に基づいている。その例は教育、健康、老後の生活の保障などだ。(税と政府によって賄われる)統治の機能が国民所得の僅か10%から20%にまで削減されるような時代への回帰を真剣に模索するような大きな動きもなければ重要な政治的動きも存在しない」。

ここで言及されている豊かな国々というのが「ヨーロッパ」のことを意味しているのか単に文字通りの意味なのかははっきりとしない。もしヨーロッパのことを指しているのであれば、彼の言うことはその意味では正しいだろう。だがここでは彼はすべての豊かな国々を指しているのは明らかだ。彼の持論に一貫して顕著に見られる特徴として、彼は所謂「4つの虎」と呼ばれる国々のことを完全に無視しているということが挙げられる。この4か国は近年で最も成功した経済の一つだ。ここにその4か国の税と政府支出のGDP比を示したデータがある。

フランス 44.2% 56.1%

香港 14.2% 18.5%

シンガポール 13.8% 17.1%

台湾 8.8% 22.6%

韓国 25.9% 30.2%

*左の数字が税収がGDPに占める割合で右の数字が政府支出がGDPに占める割合

これら4か国のうち3か国は統治の機能を「君主制」の水準にまで削減しているように思われる(4か国とも皆保険を持っているのではあるが)。そしてこの3か国はフランスよりも顕著に豊かだ(不思議なことにこの3か国だけという点でも一致している)。

4か国のうち2か国はフランスよりも平均寿命が長い。他の2か国も僅かに下回っているだけだ。これら4か国すべてが国際的なテストでフランスよりも得点が高い(これはミスリーディングだと私は考えているが)。

これら4か国の生活の質がフランスよりも高いと主張しようとしているのではない。実際、私はその逆だと思っている。これらの国々は大きな不利を抱えている。これらは最近豊かになったばかりで人口密度が高い。これらの要素は住宅の質を低め渋滞を発生させる。これらの国々は本質的にフランスと同じ問題に苦しめられている。

そしてフランスの一人当たりGDPはもう数十年間もアメリカから急速に引き離されていっているということも指摘する必要がある。2013年ではアメリカの一人当たりGDPの67.4%の水準に過ぎない。さらに重要なことに、今後もさらに引き離されていくだろうということがほぼ確定している。Pikettyは一人あたりGDPはすべての先進国でほぼ等しいと(ほとんどすべての経済学者が否定するようなことを)繰り返し主張している。それはアフリカ系アメリカ人の所得が平均で見てすべてのアメリカ人と等しいと考える人がいるのであればその人の中では正しいのだろうと考える。

フランスがアメリカから遅れを取っていっている一方で、この4か国はアメリカよりも高い成長率を見せてもいる。これはサプライサイドの要因ではありえないのだろう。何故ならば彼はサプライサイドの政策は機能しないと(証拠もないのに)断言しているからだ。我々はサッチャー首相の改革はイギリスの成長率を高めてはいないと(洗脳かのように)何度も繰り返し聞かされてきた。1980年以前のイギリスはフランスやドイツよりも成長率が低くその後の25年間ではそれらの国々よりも成長率が高かったというのにだ。

もちろんGDPよりも大事なものはある。フランスがそれなりに豊かな暮らしをしているというのも事実だろう。この記事は実際にはフランスに関するものではない。むしろPikettyの無知を糾弾するためのものだ。彼の本を読んだ人が得る感想とは、彼が台湾、韓国、シンガポールの経済のことを考慮してそれを論理でもって否定したというものではなく、そもそも彼はそれらの国の経済のことをまったく考慮したことがなかったというものだろう。その本はリベラルが好むようにいつもの大きな政府(フランス、スウェーデン)=良い、小さな政府(アメリカ)=悪いという単純な二元論を展開しているに過ぎない。

以下、寄せられたコメント

mbka writes:

この記事を読んでフランスの政治家Raymond Barreの発言が思い出された。「フランスの社会モデルは社会的なものではない。高い失業率を生み出し社会から隔離しているからだ。そしてモデルではない。誰も真似したいと思わないからだ」。

Roger McKinney writes:

Pikettyは経済学のほとんどの分野において、特に彼が専攻したはずの経済史において無知であるように見える。彼のトリックは単純で彼の本に書かれていること以外には事実は何一つ存在しないと人々に思わせるところにある(そういうところは馬鹿を騙すことにしか興味がないかのようなスティグリッツの卑劣なやり方とよく似ている)。

0 件のコメント:

コメントを投稿