2016年5月5日木曜日

アメリカがサダム・フセインを支援していたという嘘を信じている人達がどうしていまだに存在するのか?

"Reality checks" on Iraq, genocide, etc.

Jeff Weintraub

私の以前の記事に対する反応と、それに対する私の再反論。

Jeffへ。

あなたの記事には以下のことが触れられていません。

・レーガン大統領とブッシュ(父)大統領の湾岸戦争勃発までのサダム・フセインに対するサポートとフセインのクルド人に対する殺害を見逃したこと。

・イラクを非難する国連決議に反対したこととフセインに武器を提供したこと。クルド人に対する攻撃がアメリカのメディアでほとんど触れられなかったこと。

・クルド人を虐殺しているトルコをアメリカがよき同盟相手としてサポートしていること。

・そしてどうしてサダムが湾岸戦争終了時に権力の座から退けられなかったのか?

それらは私が常日頃からしている議論です(このことはKanan MakiyaやJeffrey Goldbergにとっても何一つ目新しいところはありません)。サダム・フセインのイラクが「穏健な」アラブ国家の一つと見做されていた1980年代の中頃から、フセインは恐ろしいまでに暴力的な独裁政権で「イラン人やイラク市民に対する毒ガス兵器の明らかな使用に国際社会」の誰一人として真剣な抗議の声を挙げないことをスキャンダルだと指摘したことによって私は特定のグループの不評を買ってしまいました。

サダム・フセインはこれらのことをほとんど批判されることもなく実行しました。それは部分的には、他のほとんどすべての国がイランではなくイラクの側についたからです。イランの勝利の見通しに恐怖していたからです。そして部分的にはイラクの膨大な石油資源を目当てにしていたからです。これはイラクがどんなことをしようとも多くの国にイラクの側につかせる強いインセンティブを与えました。1980年代を通して、イラクはアメリカだけではなくソビエト(実際、イラクはソビエトの主な顧客でした)、中国、ヨーロッパ、アラブ、そして世界全体によって無批判に支持されていました(シリアはこの例外です)。ドイツ、フランス、イギリスの企業(フランスの政府も)はサダムが大量破壊兵器を製造するのを手助けしました。アメリカとヨーロッパの外交政策の専門家はサダムをこの地域の「安定」の要だと見做していました。フランスのミッテラン政権はイラクのバース党を「世俗的(非宗教的)で、進歩的な」中東のモデルだと見做していました。このような状況だったので、サダムは自身が好き放題できることに気が付きそして彼は正しかったのです。

そしてあなたが引き出したいと願っている結論とは、私たちはこの過ちを繰り返すべきで彼に好き放題させろということですか?外部世界は大虐殺ともいえる1980年代のイラクのクルド人虐殺(たった一つの軍事作戦、アンファルの軍事作戦だけで10万人以上のイラク人が組織的に殺害された)を阻止できなかったという理由で、それが再び起こるのを防ごうとすべきではないというのですか?そして虐殺が起こった環境を積極的に再現しろというのですか?すみませんが、あなたのロジックには従えません。

一つの小さな例外を除いて、上記のリストを積極的に否定するつもりはありません(その例外とはトルコのことです。私はトルコのクルド人抑圧をまったく擁護するつもりはありません。ですがもしあなたがこれをイラクのバース党がクルド人に対して行った大虐殺と同次元であると考えているのであれば、あなたは私とは他の星に住んでいるという他ありません)。実際、私はこれらのことを1980年代から指摘していて(Agelikiに尋ねてみてください)バース党の恐ろしい真の実態が明らかになればなるほどそれに対してさらなる怒りを感じているのです。過去のアメリカ、ヨーロッパ、アラブ、ソビエト、そしてその他すべての国々の非倫理的政治を糾弾することは正しいことでしょう。そして今すべきことは何かという問題とはまったくと言っていい程無関係です。重要なのは、再び起こることを防ぐことです。

サダムは極悪です、アメリカは全能なのですか?

もちろん違います。それが何か?驚くほど多くの人たちがこれが真剣な議論だと信じているように思われます。これは議論ではない。本当の問題から目を逸らさせようとしているだけです。

実際のところ、私はサダム・フセインに対する戦いの見通しに非常に神経を尖らせています。法律的に倫理的に間違っているからではありません(そのような主張は馬鹿げています)。またサダムが核兵器を入手する心配をする必要がないと考えているからでも(それは幻想です)、「イラクの人々に対する戦い」だからでもありません(そのような主張は愚かで軽蔑に値する卑劣な振る舞いです)。そうではなく私がイラクの体制が崩壊した後に何が起こるのか、どのようにしてイラクを元に戻すか、そしてアメリカ(または他の誰であっても)が資源、軍事的保護、イラクの再建を助けるための長期的コミットメントを行う意思があるかを心配しているからです。政治的には成功でも実態は大失敗だった1991の湾岸戦争は不安な先例です。

その一方で、問題は他の代替的な選択肢は何かということになります。単に現在の状況を継続させるというのは倫理的にも政治的にも許容できることではありません。そしてサダムとその体制を制裁から逃れさせ核兵器を保持させることはそれ以上の災厄を招くことになるでしょう。

Jeffrey Goldbergの記事が有益なのはこれらの問題を解決しているからではなく(それに答えようとしているものでもありません)何が掛かっているのかを明確にしているからです。はっきりさせましょう。イラクのクルド人を虐殺から守っているものは、フセイン政権に対して課せられた制裁とイラク北部の飛行禁止区域を侵犯した場合の軍事的報復への恐れです。もしサダム・フセインが政権に残ったままで制裁が崩壊してしまうと(そしてこれが、イラク市民の苦しみという吐き気を催させるような嘘の涙で塗り固められた偽善によって正当化されようとしている、実際には経済的利益にしか興味のないヨーロッパとロシアによって急速に進められているシナリオです)その時には彼はすべての制約から解き放たれるでしょう。ボーナスとして、もし彼が核兵器を手に入れればその時には彼を止めることは事実上不可能となるでしょう。この時には、あまりにも容易に予想できる結果は、この体制はイラク北部のクルド人問題への最終的な解を実行に移すでしょう。

このことが1991年以降ずっと私を不安にさせています(この問題を真剣に考えている人にとっては、ずっと昔から予想されていた結果でした)。この結果への障害を取り去る政策を提唱している人たちは(はっきりといえば)ジェノサイドの手助けをしています。最適な解決策というのは分かりません。ですが少なくともジェノサイドをより起こりやすくするような手段は避けるべきです。

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