Ronald Bailey
所得格差は政治家や評論家、メディアの注目を集めてきた。2013年にオバマ大統領は「危険で拡大している格差が我々の時代の重大な問題だ」と宣言した。先月の60ミニッツでは、上院院内総務のJohn Boehner議長が「オバマ大統領の政策は所得格差を拡大させている」として非難した。ユタ州のMike Lee上院議員は「アメリカは所得格差の危機に直面している」と語り「大きな政府はその問題への解決策ではなくむしろ原因だ」と主張した。
もう少し大きな全体像を見てみよう。リベラル派はアメリカの所得格差が1950年代と1960年代に低下したことを示すデータを好んで引用したがる。そのトレンドはサイモン・クズネッツが提唱した仮説に従っているように見える。経済成長が開始されると、初期には所得格差は拡大すると彼は議論した。労働者が生産性の低い部門から生産性の高い部門へと移動するためだ。生産性の高い部門の労働者の人数がある程度大きくなると、所得格差は低下し始める。それにより所得格差と経済成長との間には逆U字型の関係が生まれることになると彼は説いた。
過去にアメリカで最も所得格差が大きかった時期は大恐慌の直前の1929年だと云われている。世帯所得のジニ係数は0.450だった。所得格差は大恐慌の時期に低下し、クズネッツの説明の通りにアメリカ経済が第二次世界大戦後拡大していくにつれてさらに低下していった。そして1968年に0.386と最も低くなった。セントルイス連銀のデータによると、ジニ係数はその後上昇していった。1980年のジニ係数は0.408で、1990年は0.428、2000年は0.462、2010年は0.470、2013年は0.476とされている(ただし、このデータには大きな欠陥があることが知られている)。
カナダのシンクタンクFraser Instituteは北米の経済的自由に関するレポートを毎年発行している。税や政府の支出、労働市場の自由度などで見てアメリカとカナダの州の自由度がどれぐらいのものか分析している。Dincerの論文は1981年から2004年の期間の経済的自由度と所得格差のトレンドを州の間で比較している。そして「経済的自由は所得格差を短期においても長期においても低下させている」ことを発見した。
これを分かりやすくするために、経済的自由度が最も高い8つの州と最も低い8つの州とを比較してみよう。経済的自由度が最も高かったのは(スコアは7.8から7.1の間に分布している)テキサス、サウスダコタ、ノースダコタ、バージニア、ニューハンプシャー、ルイジアナ、ネブラスカ、デラウェアだった。最も低かったのは(5.2から5.8の間に分布している)メイン、バーモント、ミシシッピ、ニューヨーク、ロードアイスランド、ウェストバージニア、ニュージャージー、カリフォルニアだった。経済的に自由度が高かった州のジニ係数の平均は0.452だった一方で自由度が低かった州の平均は0.469だった。所得格差は経済的自由の低い州で高くなっている。
オハイオ州立大学とフロリダ州立大学の経済学者らによるJournal of Regional Analysis and Policyに掲載された2013年の研究はDincerの発見を支持している。Fraser state economic freedom index dataを用いたこの研究は経済的自由と所得格差のトレンドにクズネッツ曲線が見られることを発見した。彼らは「経済的自由の低い状態からスタートすると、自由度の高まりとともに初めには所得格差が拡大する。これは比較的所得の高い層の方が低い層よりもより恩恵を受けるためだ。だが経済的自由度が上昇し続けるとこのトレンドは反転し所得の低い層の方がより恩恵を受けるようになる」と分析している。
(*これまた見事な相関…)
Dincerと彼の同僚はその結果を彼ら自身の研究の中で「経済的自由と一人あたり所得との間に正の関係があることを発見した以前の研究を支持している」と報告している。去年の11月に、ミシシッピ州立大学の経済学者Travis WisemanはFraser Economic Freedom of North America indexの1ポイントの増加が97万円の実質市場所得の増加と関連していることを発見した(他の条件が同じとして)。
Dincerの研究で最も警鐘的なのは「高い所得格差が経済的自由度を低下させる再分配政策を州に実施させるかもしれないことを示唆している。経済的自由度が低下すると所得格差はさらに拡大する。言い換えると、再分配と所得格差の拡大という悪循環に州が入り込むことは極めて起こりうるということだ」。悲しいことにFraserの経済的自由度は2000年以降多くの州で低下している。
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