James Pethokoukis
オバマ政権は過去30年間から40年間アメリカの中間層が経済的に苦しめられてきたという主張を全面的に展開してきた。言い換えると、現在の不況はオバマノミクスのせいではないと言いたいのだろう。
データを簡単に振り返ってみよう。彼はCBOのデータを持ち出してきてアメリカの中央所得が1973年以降17%しか増加していないと主張した。その数字はCBOからの2014年のこの報告書の課税前の「市場所得」(政府からの移転を除いたもの)を指していると考えてほぼ間違いないだろう。だがその報告書には「インフレ調整後の課税後所得」は1979年から2011年に40%増加したとも書かれている。彼の挙げている数字の2倍以上だ。
どちらにしても、Furmanの最近の著作や見方は、2008年のリセッション前のものとは特に1970年代以降のアメリカ経済の発展に関する部分では完全に異なっているように思われる。ここに悲観論者Larry Mishelと楽観論者Stephen Roseとの間で行われた討論に対する過去の彼の発言の記録が残っている。
「だがその事実は完全に無関係というわけではない(中略)どちらかといえば所得格差の拡大をどうするかを話し合った方が有益だと思われる。だが(中略)Roseは正しい。アメリカ国民は30年前よりも遥かに豊かになっている。今日の労働者の所得は30年前の労働者のものを遥かに上回っている」
「平均寿命は現在では4年延びている。大学進学率は12%上昇した。住宅の所有も今ではより一般的になっている」
「Mishelが挙げている賃金統計には多くの欠陥があることが知られている。そのすべてが同じ方向にバイアスが掛かっている。その中でも大きなものは、賃金は(給付も寛容になって技術も進歩している)医療保険のコストを差し引いた後で申告されることだ。医療は賃金統計の唯一の問題というわけではない。他の給付も同様に増加している。それに加えて賃金の比較はインフレ率に大きく影響を受ける。そのインフレ率にはほとんどすべての経済学者から上方バイアス(統計上のインフレ率が本当のインフレ率よりも高くなるバイアス。それにより実質変数は本当の値よりも見掛け上低くなる)があると考えられていることが非常によく知られている。そして1970年代にはそれほど存在しなかった移民の大量流入が無視されている」。
よって生活水準は過去よりも現在の方が遥かに高いことが確認された。そして停滞論者へのFurmanの批判は2008年の不況やその後の(過去の景気回復局面と比較して)鈍い回復の後でも成立していると考える。政治的レトリックは無視するとして、現在のアメリカ人は1970年代よりも遥かに豊かだ。オバマ政権はこの事実を認めることを恐れるべきではない。
リベラル派が1980年代初期から始まった(そしてクリントン政権にも引き継がれた)自由化政策が所得格差の拡大と中間層の没落以外の何物ももたらしていないと主張したがるその動機はよく理解している。現在の民主党は1950年代の高い税率と労働組合の時代が懐かしいようだ。だがありもしない過去を捏造して政治的に都合のよい教訓を引き出すのでは、皆に恩恵が行き渡った1980年代や1990年代の高成長を再現することは出来ないだろう。
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