誰がイラク人を殺害しているのか？Part1

Who murders Iraqi civilians? (A reality check)

Jeff Weintraub

Juan Cole氏が彼のサイトに掲載した短いコメントは2つの理由から奇妙だ。

「Iraq Body Countという団体は、一日に38人のイラク人が亡くなっていると推計している。これが35年続けば50万人近くが亡くなる計算になる。イラクのバース党は30万人のイラク人を虐殺したと推計されている。従って、現在の死亡率はバース党のものよりも大きいように思われる(バース党によって殺害された市民の人数は恐らく誇張されている。墓地からはこれまでのところ数千人しか回収されていない)」。

第一に、「現在の死亡率はバース党のものよりも大きいように思われる」という誤ったコメントに衝撃を受けた。彼も知っているように、過去数年に殺害されたイラク人の市民のほとんどは「反乱軍」などと呼ばれる組織によって殺害されている。そして彼自身も繰り返し議論しているように、バース党の残党やイラク軍、秘密警察が「反乱軍」の形成(そして恐らく資金面においても)決定的な役割を果たしている(2つの記事へのリンク)。(彼によると)「スンニ派の原理主義者と手を組んだバース党がゲリラ戦の背後にいる」というのに、これを「バース党による殺害」と記してはならないとか他の勢力によるものではないと記してはならないというのは一体どういう訳なのか？

それ以上に、誰がイラク人を意図的に殺害しているのかということから目を逸らさないことが重要だ。以前とまったく同じ犯罪者たちだ。繰り返しになるが、彼はこのことを知っている(自分で言っている)。だが彼の記事の読者の多くはこのことを都合よく忘れようとするだろう。

だが、本当に私を驚かせたのは最後の段落でのあのコメントだ。

「バース党によって殺害された市民の人数は恐らく誇張されている。集団墓地からはこれまでのところ数千人しか回収されていない」。

彼は冗談を言っているのか？このコメントは1970年代や1980年代のソビエト連邦に関する「歴史修正主義者たち」の大量発生を思い出させる。彼らはスターリン主義による大量虐殺の規模は恐ろしいほど誇張されていて数万人から数十万人に達することさえあり得ない、ましてや百万人などあり得る訳がないと主張していた(*実際には4000万人)。ソビエト連邦の崩壊後に公文書が公開されるようになると、そのような主張をしていた人々でさえも(といっても、未だにそのような主張をしている人たちもいるが)口を噤むようになった。Coleが「わずか数千人」と言及している時、確かに彼はそれらがバース党によって殺害された市民の全員だと述べている訳ではない。だが(彼も非常によく知っているように)これまでに掘り出された遺体の人数とは、大量虐殺の規模は完全に桁違いだ(実際、彼はサダム・フセイン体制が大量虐殺を行ったと何度も指摘している)。ではどうして彼はこのようなコメントをしたのか？全体的に見て、彼はあのような残虐行為を矮小化したり肯定しようとする人間ではない。

もちろん、彼のコメントに対する批判はイラクの現状から注意を背けることを意図してのものではない。私の印象では、いつもはイラク人のことを真剣に気に掛けている彼は、イラクの将来に関して段々と悲観的になってきているのかもしれないというものだ(この記事はイラクが最も混乱していた2005年のもの)。

更新:私は、Juan Cole氏によって言及された「事実」と呼ばれるものの正確性などは特に議論する必要がないと思っていた。彼の言っていることがミスリーディングであるかまたは完全に誤っていることは明白だったからだ。だがはっきりと述べたほうが良かったかもしれない。Brendan O'Leary氏が私宛にそれを行ってくれたので、それをそのままここに掲載しようと思う。

「Cole教授のコメントの第二段落が誤った論理の元となっている:「集団墓地からはこれまでのところ数千人しか回収されていない」という部分だ。その原因は、虐殺された人たちがいないからではなく、単に技術的な問題だ。墓地の掘り出しのための十分な資金が用意されていない。誰が殺害されたかを確認するための正規のDNAテストを行うためなどの費用などもそうだ。訓練を受けた技師の人数もイラクでは不足している。適切な手段を持たずに墓地を掘り出しても、失った家族を探し求める人々の助けにはならないだろう」

それから、(a)虐殺により30万人が亡くなったというのはCPAのSandy Hodgkinsonによる推計で(そのような推計がそうでなければならないように)保守的なものだ(b)30万人という推計には彼が開始したサダムの戦争(クウェート、イランに対して)による死亡者が含まれていない。最後に、反乱活動が35年続くというのは極めてありそうもない(実際、すぐに終息した)」。