2015年8月12日水曜日

ヨーロッパはアメリカと比較すると最貧困に位置する?Part3

参考までに、2015のノルウェーの一人当たりGDP(購買力平価換算)は6万5000ドル、アメリカの一人当たりGDP(同じく)は5万4600ドルと云われている。

We're Rich, You're Not. End of Story.

Bruce Bawer

北欧での生活と一般的に云われているものとは簡単にいえばこうだ。北欧の人々は比類の無いほど豊かで彼らの望むものは効率的な福祉国家によってすべて満たされる。北欧の人たちもそれを信じている。だが現実は(オスロに住むアメリカ人として感じることとして、そして最近の研究で確認されたこととして)それとはまったく異なっている。

北欧の知識人たちさえもがアメリカは富裕層と低所得者に分断されていて失業者とホームレスで溢れかえっているとプロパガンダをばら撒いている。そういう事情があるので北欧の人々は彼らの福祉システムが優れた経済的保護と快適性を提供していると信じさせられている。経済的保護はともかくあるノルウェー人は快適性の部分に疑問を投げ掛けるかもしれない。

オスロでは図書館の蔵書はひどく時代遅れで公共のプールは今すぐにでも修理を必要としている。ニュースは連日のように警官と学校の備品が不足していることを報道している。私の母が緊急治療室に駆け込んだ時には咳止めの薬が切れていた。ロサンゼルス・タイムズが最近報道したようにオスロの通りには薬物中毒者が溢れかえっている。だがメサドン療法の希望者は何ヶ月も待たされている状態だ。

そのようなことは「世界で最も豊かな国」では起こってはならないことになっている。何故ノルウェー人達は自分達が豊かだというような自己イメージを持っているのか?部分的には北海油田の発見前の世代に比べると自分達が豊かだからという理由で説明できるかもしれない。だが本当に世界で最も豊かな国かどうかに関しては誰も疑問に思わない。

ここに引っ越してきて6年が経ったがノルウェー人がアメリカ人よりも遥かに貧しい暮らしをしていることはすぐに分かった。彼らは私であったらすぐに投げ捨てるような古い電気製品や家具を大事にしていた。そして彼らは故障車のような車に乗る。2003に私のパートナーと私が彼の弟をニューヨークに連れて行った時には(彼にとってヨーロッパ以外への初めての旅行だった)彼はニューアーク空港の駐車場に止められていた車を目と口が開いた状態でじっと見つめて催眠術に掛けられているみたいに魅了されていた。

一つ鮮明に焼き付いていることがある。ノルウェーの国語のクラスで私の教師がmatpakke(packed lunch)という単語の意味を示したことがあった。彼女は背負い袋を持ってきて紙で包まれたサンドイッチを取り出した。それが彼女の昼食だった。彼女は皆が見えるようにそれを持ち上げた。

確かに教師はどこでも給料が低い。だがノルウェーではmatpakkeは教室から会議室までありふれたものだ。ニューヨークではオフィスワーカーは昼食時にはデリに出掛けるだろう。パリでは小さなレストランでワインやキッシュを楽しむだろう。ノルウェーではデスクに座って家から持ってきたサンドイッチを食べるのが日常的な光景だ。

それは単に伝統とか彼らが非文明的な生活を好むとかそういうことではない。(例えば、教師の給料が課税前で500万円という国では)外食が単に高すぎるだけだ。少しの食べ物であっても(オスロで最も人気のあるピザ店の大きめのピザなど)3400円から4800円する。

食料雑貨品店が安いというのでもない。週末になると大勢のノルウェー人がスウェーデンのスーパーマーケットまで買い物に押し寄せる。ノルウェー人しかバーゲンとは思わないスウェーデンのスーパーマーケットまでだ。ガソリン代(原油を輸出している国なのに)が1ガロンあたり600円以上するためにこれも良い解決手段というわけではない。

これらの要因が昨年スウェーデンの研究機関Timbroによる研究によって重点的に調べられた。彼らは15のEU加盟国の国内総生産と50のアメリカの州とを比較した。

ドルとユーロとの購買力の違いを調整した後でアメリカの州の平均を上回ったのはルクセンブルグだけだった。

その次はアイルランドで66のうちの41番目だった。スウェーデンは下から14番目(アラバマ州の後)でその後にはオクラホマ州、イギリス、フランス、フィンランド、ドイツ、イタリアが続いた。リストの最後はスペイン、ポルトガル、ギリシャだった。

他には仮にEUが単一のアメリカの州だとすれば下から5番目に位置する(アーカンサス州、モンタナ州、西ウェストバージニア州、ミシシッピ州より上なだけ)だろうことをこの研究は示している。要するに北欧人はアメリカ人よりも多くの物を持っていると頻繁に聞かされているがTimbroの研究はその真逆を示している。スウェーデンの経済記者Johan Norbergによって書かれたペーパーも同様の結論を示している。

「アメリカン・ドリーム」と「ヨーロッパの白昼夢」というタイトルで彼は違いをこのように記している。「アメリカの過去25年間の経済成長率は3%でEUは2.2%だった。それはアメリカの経済がほぼ2倍になった一方でEUの経済は半分も成長しなかったことを示している。アメリカの一人あたり購買力は361万円でEUは260万円だった。そしてその差は拡大し続けている」。

Timbroの研究で私から見て正しくないと思われた部分は北欧諸国の位置が(ヨーロッパの中で)リストのトップでスペインが最後の方にあったことだ。私自身が感じた所によるとスペイン人のほうが北欧人よりも遥かに良い暮らしをしている。例えばノルウェーの酒場では小さなスプーンぐらいの安物のジンが1500円はする。スペインではお酒が非常に安くバーテンダーは客が「ストップ」と言うまでジンをコップに注いでくれる。

3月の後半に今度はKPMGからの研究がこのパラドックスに光を当ててくれた。可処分所得を生活に掛かる費用で調整した時には北欧諸国は西ヨーロッパで最も貧しいことをその研究は示した。デンマーク人は最下位で、ノルウェー人は下から2番め、スウェーデン人は下から3番目で、スペインとポルトガル(ヨーロッパで最も規制の少ない2つの国)はリストの最上位だった。

より最近ではデンマークの財務省が30の国に関して消費に利用可能な所得を比較した研究を発表している。ここではノルウェーはKPMGの研究よりは幾分上位になっているがそれでもほとんどの西ヨーロッパよりも下だ。

その主意もTimbroとNorbergの主張を確認している。アメリカの民間消費は一人あたり329万円の一方で西ヨーロッパの国々(ルクセンブルグは例外的に294万5000円)は138万5000円から235万円の範囲にある。ノルウェーは183万5000円だ。

一方でノルウェーが「世界で最も豊かな国」という表現はまだ使われている。オスロの主要な日刊紙であるDagsavisenの4月2日の記事では「どうして「世界で最も豊かな国」でノルウェーが今より遥かに貧しかった時に作られた社会保障が崩壊しているのか?」と問い掛けている。

その錯覚は一つや二つの研究では消えないのだろう。

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