2015年8月12日水曜日

バートルズ「格差が拡大したとずっと言っていたが間違いだった」

Income Growth and Income Inequality: The Facts May Surprise You

Gary Burtless

新しい研究による幾つかの極めて重大な発見は低所得層と中間所得層の所得が長期間に渡って停滞していて一方で所得上位の所得は急増していると思い込んでいる人には特に驚きかもしれない。CBOの数字はその反対が事実であることを示しているからだ。2000以降、所得下位90%の税引き前と税引き後の所得は増加している。所得上位1%では実質の所得は大きく減少している(図1)。

所得上位1%の税引き前と税引き後の所得は2009と比べて2010で増加している。一方で所得下位90%の所得はほぼ横這いのままだ。よって、2010の所得の増加は所得上位が得たことになる。2010は現在の景気の回復が始まった最初の年だった。そして回復の初期時の所得の増加は所得上位に集まっている(だからそれ間違っていると言ってるのに)。IRSが公開している所得の報告書によるとこのトレンドは2011と2012にも続くことが示唆される。見逃されていることはアメリカの所得上位は(2008の)不況の時に極めて大きな所得の損失を経験したことだ。CBOの新しい数字は所得上位の税引き前と税引き後の所得が2007から2009の期間に33%以上減少したことを示している。中間層の所得の損失は税引き前では4.5%、税引き後ではわずか1.4%だった。低所得層では不況の時に税引き後の所得がむしろ増加している。

アメリカの所得上位の所得は単に上に行ったり下に行ったりを繰り返している。多くの家計は不況の時に経験した市場所得の損失から回復しようとしている最中にある。所得上位の家計もこの状況にあるが他の家計とは異なり以前の水準からは程遠い。2010から2012の期間の所得の増加を考慮に入れたとしてさえもIRSのデータは所得上位1%の税引き前の所得が2012では2007…どころか2000をも下回っていることを示している。

もっと長い期間で見るとCBOは所得上位1%の所得が中間所得層の所得の増加よりも速かったということを確認している(それは間違いだと何度指摘されればこの人は理解できるんだろうか…)。例えば、CBOによると1979から2010に所得上位1%の税引き後の所得は3倍になったとされている。中間所得層の税引き後の所得は40%増えただけということにされている(図2)。だがCBOの統計が示唆していることは中間所得層と低所得層が国家の繁栄から取り残されたということではない。過去10年、20年、30年の間に中間所得層と低所得層の生活水準は非常に大きな改善を示した。所得の増加率は第二次世界大戦終結直後に比べれば低かった。だが所得の増加率はゼロを遥かに上回っている。

あまりに多くの人がこれらの所得の増加を理解できないでいるのはアメリカで最もよく引用される所得統計にそれらが反映されていないからだ。中間所得層の所得としてよく用いられる指標が統計局の世帯中央貨幣所得の推計だ。インフレ調整したドルに換算すると世帯中央所得は1999に最も高くなりその後9%減少したということにされている。この指標の抱える問題点はこれには家計の税引き前の現金所得だけしか反映されないということだ。税負担の変化や現金の形態を取らない所得はこの統計には反映されない。このことは例えば2001から2003と2008から2012の減税は統計局の統計には反映されないことを意味する。さらに悪いことに統計局の統計は現物給付の形で受け取られた所得と民間と政府の医療保険などを無視している。現物給付と不況時に行われた減税を無視してしまったことにより統計局の貨幣所得は中間所得層の不況時の所得の損失を深刻なまでに過大評価してしまった。CBOのより包括的な所得の定義では世帯中央所得は2007から2010の期間に1%以下低下しただけだった。これが統計局の定義だと世帯中央所得は7%以上低下したことになる(図3)。

CBOの最新の統計はこれらの要素の重要性が増していることを示している。1980には現物給付と医療保険は中間所得層の税引き後の所得の6%を占めるだけだった。2010には現物所得が17%を占めるまでになっている(図4)。統計局が把握できていない所得要素の増加速度はますます加速しているほどだ。

より包括的でより正確な所得の統計はCBOから公開されている。CBOの推計は長期的な所得格差の拡大傾向を確認している(だから間違いだと)。だが所得上位1%の市場所得は極めてシクリカルだ。好況期には上昇し不況期には下落している。2007以降の変化はこのパターンをなぞっている。だが多くの人が見逃しているのは低所得層と中間所得層の所得が不況時にそれ程減少していないということだ。その結果として低所得層と中間所得層の可処分所得は所得上位1%と比較してほとんど損失を受けることはなかった。CBOの統計が示しているように中間所得層と低所得層の所得は2000以降所得上位を上回っている。

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