2015年8月12日水曜日

格差研究の専門家の集まりにリベラル派のブロガー(自称専門家)が乗り込んで討論を挑んだその結果 Part4

Sometimes You Do Need to Be a Weatherman to Know Which Way the Wind Is Blowing

Richard Burkhauser

エッセイストのレトリックの巧みさ?と彼らが自分達の意見を支持するものだとして並べる科学的証拠の深さとにはよく反比例の関係が見られることに私は驚かされる。私はMark Thomaがこの討論の中でレトリックの水準だけを一人高めたことには高い点数を与えようと思う。

レトリックの水準を高めることよりも私が図6で示した新たな証拠を認めることは彼にとってはもっと有益なことかもしれないと思われる。図6は一般公開向けCPSとCPSの内部データ両方でトップコーディングの変更と内部検閲の変更が格差のトレンドを大幅に誇張していることを示している。すなわちそれらは一貫してトップコードされていたと仮定した場合のトレンドと比較して遥かに高い。

労働所得と所得格差の研究の分野で標準的なこの方法はこれまた標準的なジニ係数で見ると所得分布の99%で1989以降所得格差は少ししか拡大していないということが示されている。そしてその拡大のほとんどは1993の内部CPSデータや1996の一般公開向けのCPSデータに現れているようにセンサスのデータ収集過程における変更が原因だろう。

しかもさらに良いニュースがある。多数という訳ではないがそれでも所得分布のかなりの割合で所得が減少した1980年代の景気循環期とは異なり(図2)1990年代の景気循環期(1989から2000)では所得分布のすべての部分で所得が増加している。2000の所得分布はすべての箇所が1989の所得分布を実質で見て上回っている。

このようなことはドイツや日本では起こっていない。累進度を増加させようとする試みにも関わらず1990年代の景気循環期に於いてこれら2つの国で所得格差はアメリカよりも拡大した。この事実はThomaや他の再分配政策の支持者たちに対する警鐘として受け止められるべきだ。

ReynoldsとBurtlessに対しては所得分布の99%に関して私の意見と彼らの意見との間に基本的にはほとんど違いがないというこれまでの見解を維持し続けるだろう。そして過去25年間に格差がどれぐらい変化したのかに関する私達の意見の相違はデータに関して私達が話していることが示唆するよりも小さいとこれからも考えるだろう。だがそれを確実にはっきりさせるには細かい所まで詳細に検討する必要がある。だがそれも驚くべきことではない。この手の詳細な検討は不完全なデータを取り扱っている注意深い研究には求められるものだ。

Burtlessは彼の持論の中で1979から1994(好況期の開始時点)と1994から2004とのデータの構造変化を強く強調している。だが図6の私の解釈(特に最も考慮に値すると私が考えるトップコーディングに変更がなかったと仮定した場合の内部ジニ係数の値)は格差が1979から1983の期間に劇的に拡大しその後はほとんど変化していないことを示している。これは些細な観察事実ではない。1979から1983はアメリカにとって困難な時だった。その時期は二桁のインフレ率が何年か続くことから始まって大恐慌以来最も深刻な不況で終わった時だった。

私の意見としてはこれはケインズ政策を採用した失敗とスタグフレーションのために我々が支払う羽目になった代償だと思う。だがこのマクロ経済の暗黒期はケインズ経済学の考えに基づく連邦政府のマクロ政策に終わりをもたらしたという意味では幸いでもあった。レーガン政権はその後のすべての大統領に継承されている一連のマクロ経済政策を実行に移した。それは民主党であっても共和党であっても変わらない。彼らが指名したFRBの議長はインフレターゲットに主に注力している。そして連邦政府は徐々にではあるが自由市場にその力を発揮させることを許すようになった。

それ以降の所得格差はどうなっているのか?図6の私の解釈では1983から1992の期間に所得格差にほとんど変化は見られない。その後に1992から1993に急上昇があった。これはセンサスのデータ収集方法に変更が加えられたためだ。1993から2004の期間にトップコーディングに変更が加えられなかったと仮定した場合の内部のCPSデータには所得格差に何の変化も見られない。従って所得分布の99%ではほんの僅かの所得格差の拡大しか見られない。

所得格差の縮小もないではないかと文句をいう人もいるかもしれない。1983以降(ケインズ政策のせいで)それ以前と比べてアメリカはほとんど変化はなかったものの大幅に高くなった所得格差の水準を経験することになった。だが過去20年間に関しては(少なくとも所得分布の99%では)すべての人の所得が増加しその上で所得格差もほとんど拡大しなかった。

では一体あの人達は何を騒いでいるのか?私には良く分からない。所得上位1%に関してはどうか?ここではReynoldsとBurtlessの意見が強く別れる。Reynoldsは所得上位1%を含んでも1988以降所得格差に大きな拡大はないと考えている。Burtlessはその逆のことを主張している。私には今の所はどちらが正しいのか確信が持てない。だがThomaが間違えているということははっきりと確信している。どちらの議論にもまだ懐疑的でいるのが今の所は妥当かもしれない(*このように語っていたRichard Burkhauserだがこれ以降所得格差が拡大した派を批判する論文をトップジャーナルに載せまくるのだった…)。

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