2015年8月12日水曜日

「大きな政府(増税)が経済成長にとって有害ではないというのは経済学者の間でコンセンサスになっている」というのは一体何だったのか?Part6

The Impact of Government Spending on Economic Growth

Daniel J. Mitchell

政策当局者は政府の拡大が経済成長を助けるのか阻害するのかで別れている。大きな政府の提唱者は政府のプログラムは教育やインフラなどの「公共財」を提供していると主張している。彼らは政府支出の拡大は人々の手にお金を渡すことにより経済成長を刺激することが出来るとも主張している。

小さな政府の提唱者は反対の意見を持つ。彼らは現在の政府は大きすぎるし経済の生産的な部門から非生産的な政府へと資源が移されることにより経済成長を阻害していると説明している。彼らは公的部門の拡大が(抜本的な税制改革や個人退職口座などの)経済成長を促進させる政策が実施されるのを困難にしているとも警告している。何故なら批判者は財政赤字の存在を経済を強化する政策に反対する理由として用いるからだ(*政府の拡大で生じた赤字なのにそれを理由にして政策に反対するいわゆるマッチポンプという意味)。

どちらの側が正しいのか?

この論文では政府支出が経済成長に与える影響に関して議論する。ここではその基となる理論、国際的な証拠、最近の研究結果、経済に占める政府支出の規模を大幅に縮小させた国の事例などに関して議論しそしてそれら改革の経済的結果を分析する。この論文のオンライン版ではこれまでの研究とその主要な発見の方格的なリストを掲載している。

この論文の結論は大きな政府は経済成長を阻害するということだ。実際、政府の規模の縮小により所得は増加しアメリカの競争力は高まるだろう。さらに小さな政府を支持する哲学的な理由もある。だがここではその方面の議論に触れることはない。その代わりに経済学的な理論、実証研究の結果に基いて議論する。

The Theory: Economics of Government Spending

経済理論は政府の支出が与える影響に関して自動的にはっきりとした結論を与えてくれるのではない。実際、ほとんどの経済学者は政府支出を削減したほうが経済成長を高める場合や政府支出を拡大したほうが望ましい場合があることに賛成するだろう。

政府支出がゼロであれば契約の履行、財産権の保護、インフラの建設が難しくなるので経済成長は低下するだろう。言い換えれば幾らかの政府支出は法の支配の実施のためには必要になる。図1はこの点を示している。経済活動は政府支出がゼロであれば活発ではないが政府のコアとなる機能に資金が供給されれば劇的に活発になる。これは費用がゼロであることを意味しない。便益が費用を上回っていることを意味している。

費用 vs. 便益: 経済学者は政府支出がある水準を上回った時に負担になる(政府が大きくなりすぎるまたは資源が誤って配分されるなどの理由で)ことに同意するだろう。そのような場合では政府の費用が便益を上回っている。図1の曲線の下向きの部分は幾つもの理由により存在する。例えば、

抽出費用: 政府支出は財源を必要とする。連邦政府はまず初めに誰かから没収しないことにはお金を用いることが出来ない。政府支出をファイナンスする選択肢にはすべて重大な副作用がある。税は生産的な活動を阻害する。特に現在のアメリカの税制ではその影響が顕著だ。借入も民間投資に用いられるはずだった資本を浪費する。インフレも貨幣を減価させることにより膨大な経済的歪みを引き起こす。

置換費用: 政府支出は民間部門の活動と入れ替わる。政府が1ドル支出する毎に民間部門から1ドル減少する。これが経済成長を低下させる。何故なら民間部門では経済的な理由により資源が配分されるが、公的部門では政治的な理由で資源が配分されるからだ。法の秩序を維持するためなどに用いられる特定の政府支出は高いリターンを持つだろう。だが政府が資源を効率的に用いることは稀なので結果として経済成長は低下する。

負の乗数効果: 政府支出は有害な介入に用いられる。連邦予算のかなりの部分が経済に負の影響を与える活動に資金を提供するために用いられている。例えば多くの規制当局の予算は比較的少ない。だが彼らが経済の生産的な部門に膨大な費用を課している。国際的な機関への支出も良い例だ。IMFやOECDなどの組織に対する直接的な納税者の費用はこれらの国際的な官僚組織によって提唱される反経済成長的な制作によって生じる経済的なダメージに比べれば無視できるものだ。

(有害)行動助長費用: 政府支出は破壊的な選択を奨励する。多くの政府プログラムは経済的に望ましくない判断を助長している。福祉プログラムは人々に労働ではなく余暇を選択することを奨励する。失業保険プログラムは失業状態のままでいることを奨励する。洪水保険プログラムは一階建ての建物の建築を奨励する。これらはすべて政府のプログラムが(誤った資源の配分を奨励したり資源が有効に利用されるのを阻害するなどして)経済成長を低下させ産出を減少させる例だ。

(有益)行動罰則費用: 政府支出は生産的な選択が選ばれることを阻害する。政府プログラムは経済的に望ましい判断を阻害する。貯蓄は新しい投資のための資本として重要だ。だが、貯蓄のインセンティブは(退職、住宅、教育などを助成する)政府プログラムによって阻害される。政府がこれらの費用へ資金を提供するのであれば貯蓄をする人が誰かいるだろうか?その他の政府支出プログラム(メディケイドが良い例だ)も負の影響を生み出す。何故なら受給条件を満たすように人工的に所得を低下させそして資産を誤って配分するように人々を奨励するからだ。

市場歪曲費用: 政府支出は資源配分を歪める。競争的な市場での買い手と売り手は資源が最も有効に配分されるように価格を決定する。だが、政府のプログラムは競争的な市場と干渉する。医療と教育の分野で政府の助成金は「第三者の支払人」問題を生み出す。人々が他人のお金を用いる時にはあまり価格を気にしないようになる。これは市場の重要な機能を阻害する。そして医療や教育などの分野で大きな非効率を生む。政府プログラムは資源の誤配分をも引き起こす。何故なら個人、組織、企業などが時間、労力、お金などを用いて優遇措置を受けようとしたり自分達の負担を少なくするような活動などにも従事するようになるからだ。

非効率費用: 政府支出はサービスを提供するのに非効率だ。政府支出はサービスを提供するのに非効率だ。政府は教育、航空、郵便など多くのサービスと活動を直接提供している。だが民間部門の方がそれら重要なサービスを高い質と低い価格で提供できるという証拠がある。航空や郵便など幾つかの事例では改善は民営化によってもたらされるだろう。教育など他の事例では経済的便益は競争と選択を基とするモデルへとシフトすることによってもたらされるだろう。

停滞費用: 政府支出はイノベーションを阻害する。競争や所得と資産を増やしたいという願望に基いて民間部門の個人と組織は新しい選択肢と機会を常に探し続けている。経済成長はこの「創造的破壊」という探索過程によって大きく高められる。だが政府のプログラムは中央集権制と官僚制が原因で本質的に柔軟でない。政府を縮小することや州や地方のレベルで連邦プログラムが実施されるのを妨げることによりこの影響を取り除いたり緩和することが出来る。

政府のプログラム、部門、団体に支出すればこれらの費用が発生する。例えばすべての政府支出は抽出費用と置換費用を持つ。これは必然的に支出が反生産的であることを意味するのではないがその計算には費用/便益分析が必要になる。

Do deficits Matter?

ケインズ派の論争: 政府支出の分析は費用/便益分析に限られるのではない。ケインズ派の論争もある。1930年代にJohn Maynard Keynesは政府支出は購買力を経済にもたらすので成長を刺激すると議論した。彼によると政府は民間部門からお金を借りてそれからお金を民間部門に返すことにより不況から脱出することが出来るという。

ここでいう「景気刺激策」は必ずしも政府が大きくなければならないことを意味するのではない。ケインズ派の理論は政府支出(特に借入で資金を賄った政府支出)は経済を短期的に刺激することが出来ると主張する。ケインズ派は政策当局者はインフレを回避するために政府支出を削減する準備をすべきだとも議論している。インフレは経済が成長しすぎるから発生すると彼らは信じているためだ。さらに彼らはインフレと失業率の間にはトレードオフがあるとさえ信じている。そして政府当局者はインフレが高くなりすぎたり低くなりすぎたりするのを防ぐために政府支出を増加させたり減少させたりすべきだと議論している(*このように教科書などでは教えられるが実際にケインズ派が政府支出を削減するように提言することはほとんどない。ケインズ派が嫌われるのはこういう所にも理由がある)。

ケインズ派の経済政策は過去何十年間かに渡って影響力が強かった。そして1930年代から1970年代の公共政策に影響を与えていた。ケインズ派の理論はその後廃れていった。だが未だに政策議論、特に政府支出の変化が経済に短期的な影響を与えるのかどうかに関して影響を持っている。例えばある法律作成者はケインズ派の分析を用いて政府支出の変化が経済成長を刺激するのか損なうのかを議論している。

債務タカ派の議論: その他に政策に関連する議題には債務の問題がある。財政赤字が経済を刺激すると議論するケインズ派とは違ってある経済学者は財政赤字は金利を上昇させるので悪いと議論している。金利の上昇は投資を減少させると信じられているのでそして投資は長期の経済成長に必要なのでこの考えの提唱者(しばしば「財政タカ派」と呼ばれる)は財政赤字を避ける事を主な目標にすべきだと主張する。

財政タカ派とケインズ派は財政赤字に関してまったく異なる見方をしているがどちらも政府の規模を無視している点では共通している。ケインズ派は大きな政府と結び付けられることがよくあるが上で議論したように不況期に政府支出を一時的に増加させるのであれば小さな政府に反対する理論的な根拠を持っていない。対照的に財政タカ派は小さな政府と結び付けられることがよくあるが政府支出が債務ではなく税で賄われるのであれば大きな政府に反対する理論的な根拠を持っていない。

財政タカ派のアプローチは経済政策に対してある程度の影響を与えてきた。だが政治もこれに関与している。戦後のほとんどの期間で共和党は財政赤字に不満を漏らしてきた。彼らは民主党の政府支出政策に反対していたからだ。最近では民主党が財政赤字に不満を漏らしている。彼らは共和党の租税政策に反対しているからだ。前提として多くの人々は財政赤字の影響を懸念している。だが政治家はこの議題をワシントンで租税と政府支出を巡って争う時の代理闘争としている。

The Evidence: Government Spending and Economic Performance

経済理論は世界がどう動くのかの枠組みを提供するという意味で重要だ。だが証拠はどの経済理論が最も正確なのかを判断する助けとなる。この章では国際的な比較と経済学の研究を批評する。

世界の経験: 国際間の比較は政策の影響を知る上で参考になる。最も良い指標の一つはアメリカとヨーロッパの比較だ。「大陸ヨーロッパ」の国々はアメリカよりもはるかに大きな政府を持つ傾向がある。アイルランドなどの例外もあるがほとんどのヨーロッパの国々は極めて大きな政府を持つ。

図1が示すように政府支出がヨーロッパのGDPのほぼ半分を占める。負担がアメリカの3分の1以上大きい。驚くべきことではないが政府部門の大きさは税負担の大きさと債務の多さに関連している。大きな政府は低い成長率と関連している。より衝撃的なのは、

2003のアメリカの一人あたり産出は(1ドル=100円として計算)376万円でEU-15ヶ国の平均の266万円よりも40%以上高い。

過去10年間のアメリカの実質経済成長率(平均で3.2%)はEU-15ヶ国(2.1%)よりも50%以上高い。

アメリカの失業率はEU-15ヶ国よりもはるかに低い。そして12ヶ月以上職がない失業者が全体に占める割合には驚くほどの差がある。アメリカが11.8%なのに対してEU-15ヶ国は41.9%だ。

EUの生活水準はアメリカの最も貧しい州の生活水準と同じだ。アーカンサス州やモンタナ州と同じで最も貧しい州の二つであるウェストバージニア州やミシシッピ州よりもわずかに高いという程度だ。

多すぎる政府支出をヨーロッパの問題のすべての原因だとして非難するのは間違いかもしれない。他の多くの政策も経済成長に影響を与える。例えば規制されすぎた労働市場が恐らくヨーロッパの高い失業率に影響しているだろう。低い成長率は政府支出よりも高い税率の結果かもしれない。だがこれらの点を差し引いても大きな政府と低い経済成長率には相関がある。

経済学の研究: アメリカに対しても政府が大きすぎると考える良い根拠がある。経済学の研究はアメリカが(他の工業国同様に)Rahn Curveの曲線の下向き部分にいると示している。言い換えれば政策当局者は政府の規模と範囲を縮小させることにより経済成長率を高めることが出来る。この論文の補足部分には経済学の研究の包括的な批評が含まれている。この章ではその批評の抜粋を載せ主要な研究の幾つかの発見を要約する。

経済学の研究はすべての答えを提供してくれるわけではない。政府支出のようなある一つの政府の政策の正確な影響を識別することは恐らく困難だろう。さらに政府支出と経済成長の関係は時間によって変化する要素に依存しているかもしれない。

その他の重要な問題としてモデルが閉鎖経済を仮定しているか国際間の資本と労働の移動を許しているかがある。他には政府全体の負担を扱っているのかそれとも一部は除外しているのか?これらはどれも重要な問題だ。

さらに問題を複雑にする要因として政府支出の正確な影響を識別することがある。

政府支出が経済成長を阻害するのはそれをファイナンスするのに税が用いられるからなのか?

経済的ダメージは政府が何か魔法のような無料の財源を持っていれば軽減されるのか?

政府消費と政府投資の負の影響をどのように測るのか?

軍事支出と国内支出または購入と移転の間に違いはあるのか?

これらの問題に対する「正しい」答えというものはないかもしれない。だが経済学の分野で形成されつつあるコンセンサスは説得的だ。方法論やモデルに関係なく政府支出は低い経済成長率と関連しているように見える。例えば、

European Commissionが認めているように、「財政再建は増税ではなく政府支出の削減の形で行われれば中期において産出に正の影響を与える」。

IMFが同意しているように、「この租税によってもたらされた経済への歪みは経済全体の効率への純損失として表れる。これは一般的には「課税の超過負担」と呼ばれる。これは政府が同じ活動に同じ効率性で従事していたとしても起こる」。

Journal of Monetary Economicsに掲載された論文が発見しているように、「政府支出によって民間投資は大幅にクラウドアウトされる。(中略)政府支出の恒久的な変化は負の資産効果を発生させる」。

Federal Reserve Bank of Dallasからの研究が記しているように、「政府の拡大は経済成長を低下させる。政府支出または税の増加は雇用の成長率を低下させる」。

European Journal of Political Economyに掲載された論文が発見しているように、「政府支出の大きさが成長率に頑健な負の影響を与えていることを発見した」。

Public Finance Reviewに掲載された研究が報告しているように、「政府支出の大きさはどのようにファイナンスされたかに関わらず低い一人あたり実質成長率と関連している」。

Quarterly Journal of Economicsに掲載された論文が報告しているように、「実質政府消費が実質GDPに占める割合は成長率と投資に対して負の関連を持っている」、そして、「成長率はGDPに占める政府消費の割合と負に関連しているが公共投資の割合とは有意に関連していない」。

European Economic Reviewに掲載された研究が報告しているように、「GEXP(政府支出変数)の効果もまた大きい。政府支出がGDPに占める割合の10%の増加は成長率の0.7から0.8%ポイントの低下と関連している」。

Public Choiceに掲載された研究が報告しているように、「GTOT(総政府支出)の10%ポイントの増加はTFP成長率を0.92%ポイント低下させる。GC((政府消費支出)の同じく10%ポイントの増加はTFP成長率を1.4%ポイント低下させる」。

Journal of Development Economicsに掲載された国際的資本移動の利益に関する論文は政府消費が(0.0602から0.0945の係数の範囲で)低い成長率と関連していることを発見した。

Journal of Macroeconomicsに掲載された研究が発見しているように、「政府規模変数の係数が示すように政府の規模の1%の増加は経済成長率を0.143%低下させる」。

Public Choiceに掲載された研究が報告しているように、「政府支出がGDPに占める割合の1%の増加(例えば30%から31%へと)は失業率を0.36%上昇(例えば8%から8.36%へと)させる」。

Journal of Monetary Economicsに掲載された研究が述べているように、「我々はGDPに占める政府消費の割合の上昇が大きな負の影響を与えることを発見した。その係数-0.32は極めて有意で政府消費の割合の1標準偏差の上昇はGDP成長率を0.39%ポイント低下させる」。

OECDが認めているように、「租税と政府支出は投資を通して直接的に間接的に経済成長に影響を与える。課税圧力の1%ポイントの増加は一人あたり産出を直接的に0.3%低下させるだろう。投資効果を考慮すれば全体の低下は0.6から0.7%になるだろう」。

NBERに掲載された論文が述べているように、「政府支出と租税の10%の増加は産出成長率を1.4%ポイント低下させる。この数字はKing and Robelloの一部門理論モデルからの結果と同じぐらいだ」。

NBERに掲載された論文が述べているように、「政府支出がGDPに占める割合の1%ポイントの削減は投資がGDPに占める割合を初年度で0.16%ポイント上昇させる。そして2年後には0.50%ポイント、5年後には0.80%ポイント上昇させる。この効果は削減が政府賃金であった場合に特に大きい。政府職員の賃金がGDPの1%削減された場合には上記の数字は0.51%ポイント、1.83%ポイント、2.77%ポイントになる」。

IMFの論文が確認しているように、「5年間の平均成長率は(中略)どちらの期間でも小さな政府の国の方が高い。失業率、地下経済、特許の数は小さな政府がより効率的で労働市場の機能と民間部門のイノベーションを阻害する影響がより小さいことを示唆している」。

アメリカの1929から1986のデータを調べたPublic Choiceに掲載された論文が推計しているように、「この分析は古典的な供給側の有効性を確認している。そして政府支出がGDPの20%ぐらいの場合に成長率が最大化されることを示している」。

Economic Inquiryに掲載された論文が報告しているように、「平均的な国では最適な政府の規模はGDPの23%(+/-2%)だ。だがこの数字は地域ごとの重要な違いを覆い隠している。推計された最適な規模は平均的なOECDの国の14%(+/-4%)から(中略)北アメリカの16%(+/-6)と地域ごとに異なっている」。

Federal Reserve Bank of Clevelandの研究が報告しているように、「政府支出をGNPの13.7%から22.1%へと上昇(過去40年間でそうであったように)させたシミュレーションでは長期の産出を2.1%低下させた。この数字は恒久的な政府消費の上昇が産出に与える影響の基準となる推計だ」。

Spending Control Success Stories

経済理論も実証研究も政府を小さくすべきだと示している。だがこれらの結果を公共政策に反映させることは可能なのだろうか?多くの政策当局者が政府支出は経済成長を阻害すると理解したとしても特別利益団体が政治的に強力なので政府の規模を小さくすることは無理なのではないか?と考える人もいるだろう。戦後、政府の規模は一貫して拡大してきたのでこう考えるのも無理は無いように思われる。

さらに小さな政府への移行は経済的に有害だと考える者もいるだろう。言い換えると政府の規模が縮小されれば経済は強化される。だが政府支出の削減の短期の影響が小さな政府への移行を妨げるという考えだ。このケインズ派流の考えは30年前に比べれば影響は小さい。だが現在でも議論の一部を占めるだろう。

だが戦後には成功裡に政府の規模を縮小させた事例が数多くある。それらの事例は政府支出を削減すること(幾つかの事例では劇的な程に)は可能だということを示している。それらすべての事例で政策当局者は政治的、経済的成功を獲得することが出来た。例えば、

レーガン大統領はアメリカの公共政策の方向を劇的に変更することが出来た。彼が大統領に就任した頃には政府の規模は急速に拡大していた。GDPに占める割合で言えば彼は裁量的支出をほぼ33%、1981の4.5%から1989の3.1%に縮小させた。

彼の義務的経費に対する政策も印象的だ。彼が就任した頃には義務的経費は急激な上昇経路にあって1983にはGDPの11.6%を占めるまでになっていた。彼が任期を全うした頃には義務的経費はGDPの9.8%にまで削減されていた。

これらの劇的な改善の結果として彼は国家の軍事力を強化しながらも政府の負担を削減することが出来た。表1は連邦政府支出の実質伸び率で見たレーガン大統領の目覚ましい成功を示している。

クリントン大統領も(特に、任期の一期目で)政府の負担を制御することに関して素晴らしい成功を収めた。彼の記録はレーガン大統領に比べれば大きく劣る。そしてこの成功のかなりの部分は議会共和党のおかげだろう。だが彼は戦後の大統領の中で2番めに節約的だった。裁量的支出はGDPの3.4%から3.1%に義務的経費はGDPの10.8%から10.5%に削減された。

それらの削減はレーガン大統領に比べればわずかなものだ。そしてその大部分は財政黒字が実現し財政規律が緩められた彼の任期の二期目には消滅した。それでも穏当な経済成長とレーガン大統領が冷戦に勝利したことで実現した「平和の配当」のおかげで連邦政府の規模は2000に18.4%へと低下した。1966以来最も低い水準だ。

アイルランドは過去20年間で財政政策を大きく変更した。1980年代には政府支出はGDPの50%以上を占めていて高い税率は生産的な活動を阻害していた。これによりアイルランドは経済的に停滞しアイルランドは「ヨーロッパの病人」として知られるようになった。だがアイルランドは行動を起こすことを決意した。ある経済学者が説明しているように、「2%以下の成長率が13年間続いた後にアイルランドは劇的に政府支出を削減し政府組織を解体し税率を引き下げ規制を緩和した」。

政府支出の削減は特に印象的だった。Joint Economic Committeeの報告書が説明しているように、「この状況は1987から1996の間に変化した。GDPに占める割合として政府支出は1986の52.3%から1996の37.7%へと14.6%ポイント削減された」。図2が示すようにアイルランドは政府が間違った方向へと進んでいたのを正すことが出来た。Financial Postの記者が、「新しい貿易、税制、教育政策を採用するまではアイルランドの最大の輸出は人だった。今やアイルランドはケルトの虎と呼ばれるようになっている」と書き記しているのも不思議ではない。

ニュージーランドの政府支出削減も同様に印象的だ。政府支出がGDPに占める割合は50%から40%以下に削減された。ニュージーランドの前大臣が回顧しているように、

「我々がこの作業を開始した時にはDepartment of Trans-portationの従業員は5600人だった。この作業を終える頃には53人になっていた。そしてForest Serviceに取り掛かった時には17000人の従業員がいた。それが最終的には17人になった。Ministry of Worksには28000人の従業員がいた。私はかつてそこで働いていたことがあった。そして作業を終える頃には従業員はわずか1人になっていた。(中略)我々は従業員の数で見た政府の規模を66%削減することを達成した」。

ニュージーランドがそれをほんの短期間で達成したことは特筆に値する。1990年代の前半に、「一人あたり実質政府支出は12%削減された」。この財政改革は(その他の自由主義政策と伴って)ニュージーランドが経済的停滞から回復するのを助けた。

スロベキアはより最近の成功事例だが最も劇的なものとなるかもしれない。共産主義的抑圧と社会主義的失政に長く苦しんだ後にスロベキアはヨーロッパの香港になろうとしている。19%のフラット税と社会保障の民営化と併せてスロベキアの指導者たちは政府支出の大幅削減などを実行した。図3が示すように政府支出は7年間でGDPの65%から43%に削減された。

アメリカの政策当局者はこれらの成功を真似すべきだ。小さな政府は経済成長を高める。そして政治的に敏感な問題である財政赤字の問題を取り扱う唯一の親成長的な方法だ。

少しの財政規律の引き締めであってもアメリカでは短期間で予算を均衡させることが可能だ。図4が示すように政府支出を凍結させれば(その時点から金額を増やさなければ)予算は2年から3年で均衡する。他には政府支出の伸びをインフレと同率に制限しても予算は4年から5年で均衡する。政府支出の伸びを例え4%に許したとしても(ブッシュ減税を恒久化してさえも)財政赤字は急速に減少する。

Other Economic Policy Choices Matter

政府の規模は経済成長に非常に大きな影響を与える。だがそれがすべてではない。ヘリテージ財団とWSJによって毎年発表されている経済自由度の指標は経済成長と関連する要因を調べていて政府支出の水準以外にも以下の要因が重要な影響を持つことを発見している。

租税政策: 税制は経済成長に重要な影響を与える。例えばアメリカの連邦租税負担はGDPの17%で香港の租税負担よりも小さい。だが香港の税率は低率のフラット税で貯蓄と投資に与えるダメージは小さいので経済成長により損失を与えることなく税収を集めることが出来る。同様に現在のアメリカの税制は25年前と同じ水準の税収を集めているがそれに伴う経済損失は少なくなっている。何故なら労働、貯蓄、投資、起業に掛かる限界税率が引き下げられているためだ。

金融政策: 金融政策も国家の経済の命運を左右するだろう。インフレは経済的信頼と投資を劇的に破壊する。対照的に安定した物価は経済活動に良好な環境を提供する。

貿易政策: 貿易への開放度は経済成長に重要な影響を与える。保護主義的な政策により貿易を制限している政府は国家に高い費用と経済的非効率を課している。逆に自由貿易は経済効率を改善し生活水準を高める。

規制政策: 官僚主義と規制は経済に深刻なダメージを与える。規制が緩和された市場は資源の効率的な配分を可能にする。何故なら配分が経済的要因によって行われるからだ。対照的に過剰な規制は不必要に高い費用と非効率な行動を生む結果となる。

財産権の保護: 財産権も経済成長に重要な役割を果たす。政府が資源を所有または制御すれば資源がどのように配分されるかを政治が決定するようになるだろう。同様に財産権が慣習や法によって保護されていないのであれば資源は効率的に利用されないだろう。言い換えれば財産権の保護は経済成長に大きな影響を与える。

これら5つの要因ですべてでは決してない。その他の要因として汚職の水準、資本市場の開放度、金融制度の競争度、価格の柔軟性などが挙げられる。2005の経済的自由度の指標にはこれらすべての要因が経済成長に果たす役割が分析されている。

Conclusion

政府支出は大幅に削減すべきだ。政府支出は近年急速に拡大しすぎた。そして新規の支出の大部分は国家の安全と防衛以外の目的に用いられた。義務的経費が上昇していることとも併せてアメリカは政府の規模に関して間違った方向へ進んでいる。フランスやドイツのような競争力のないヨーロッパ型の福祉国家になりたくないならアメリカは小さな政府に基づく財政政策を採用しなければならない。

予算の抑制は経済的美徳と見做されるべきだ。ほとんどの政府支出は経済的に負の影響を持つ。政府がお金を高い利潤を生む何か生産的なものに用いれば経済はそこから利益を得ることが出来るだろう。だがそれは極めて例外的だ。利潤率が民間部門のそれを下回れば(ほとんどの場合でそうであるように)、政府が支出しない場合と比べて成長率は低下するだろう。政府の規模は大きすぎるし政府の規模を縮小させればアメリカの経済ははるかに速く成長することが出来るという証拠が圧倒的にある。

財政赤字は(アメリカでは)それほど重要な変数ではない。鍵は政府の規模でどのようにファイナンスされるかでもない。租税と財政赤字はどちらも有害だ。だが真の問題は政府が民間部門からお金を奪い反生産的なものに支出していることにある。政府支出を削減する必要性は財政が黒字であったとしてもまったく変わらないだろう。財政政策は(特に最も便益を生み出さないものまたは最も高い費用が掛かるものを強調して)政府支出の規模を縮小させることに焦点を絞るべきだ。

政府支出を制限することは経済のグローバル化によって特に重要になっている。今日では雇用と資本がある国からある国へと移動することはますます容易になってきている。これは良い政策への報酬は今までよりも大きく逆に悪い政策への懲罰も今までより大きくなっていることを意味する。

これは希望を持てることかもしれない。自由主義的な機関とはいえないIMFの研究が述べているように、

「国際間がより競争的になり資本と労働がより移動性を増したので規模が大きくて非効率な政府を持つ国は成長と厚生の面で取り残される危険がある。投票者と産業界がそのような環境下での改革の必要性を悟ることが出来れば彼らと彼らの代表者は政府に改革を迫るかもしれない。そのような状況下では政策当局者は抵抗勢力の抵抗を抑えこむことが容易になったと感じるかもしれない」。

アメリカの歴史上のほとんどの期間で政府の規模はGDPの10%を下回っていた。この水準はアメリカの建国者たちの信念とも整合的だ。IMFが説明しているように、「古典派の経済学者と政治哲学者は最小国家を提唱していた。彼らは政府の役割を国家の防衛、警察、行政に限定していた」。アメリカの制限された政府という理念は経済の拡大に確実に貢献した。所得税が導入され政府が大きくなりすぎる前の時代にアメリカは貧しい農業国から豊かな国へと浮上した。

政府の規模をGDPの10%にまで縮小させることは困難な目標のように感じられるかもしれない。だが政府の規模を縮小させることを政策当局者は第一の目標とすべきだ。経済の機能は改善し、繁栄を生み、アメリカの競争力をより高めるだろう。

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