2016年12月25日日曜日

オバマ政権はメディアに対して公然と情報操作を行っていた?

Former New York Times Reporter Declares Thou Shalt Not Criticize Obama’s Iran Deal

Fred Fleitz

前ニューヨーク・タイムズのレポーターElaine Sciolinoはウォール・ストリート・ジャーナルのJay Solomonの新刊「The Iran Wars」を、彼が2015年7月のイランとの核合意(以下、JCPOAと略する)を批判したとの理由で痛烈に批判している。その時の彼女の態度はすべての良きレポーターはこの合意を称賛しなければならないとでも言わんばかりだった。彼はこの合意に関してSolomonが「悲観的な見方」をしているとし「オバマ政権の下で取り交わされたこの合意を白紙に戻したいと考えている人々にとってはこの本はとても役に立つだろう」と主張している。

彼の批判はとても奇妙だ。何故ならばこの本はイランとの核合意以外のもっと大きな論点を扱っていて、そしてブッシュ大統領のイランとイラクに対するアプローチを強く(ほとんどは不公平に)批判する内容が含まれているからだ。イランとの合意に関しては、確かに強く批判してはいる一方で、ところによっては攻撃を手控え、最も批判をされなければならない部分は無視している。

なぜかは分からないがSciolinoは、ブッシュ政権はイランを弱体化させるためにイラクを攻撃しアメリカとイランとの協力関係を築く機会を逃したとの馬鹿馬鹿しいSolomonの主張を無視している。

その他の論点もすべて無視して、彼女は全記事をSolomonと彼の本に対する攻撃に充てている。彼女が最も強く非難しているのは、彼が十分な人々、特にイラン人にインタビューを行っていないということだ。

彼女は、彼がどうやら一度しかイランを訪れていないということをあざ笑い、この本には「イラン人たちの声」が欠如していると主張する。これは、イランを訪れることがどれほど危険かを考えれば馬鹿げた議論だ。2015年にはワシントン・ポストのレポーターJason Rezaianが無実の罪で捕まっている。

彼女は、イランとの話し合いは長く複雑な国際間の交渉であるために、「他の利害関係国も彼の話を利用しようとするかもしれない」と主張している。このような考えから、ケリーの交渉チームがフランスを「話し合いの間、協力的ではなかった」と非難していたと彼がばらしているのを、2003年のフランス、ドイツ、イギリスによるEU-3イニシアティブで果たしたフランスの役割が今回の合意の基礎となったという彼女の主張と相容れないために彼を非難しているようにも思える。

彼女がフランスとEU-3に関してそのように考えている事自体が笑えることでもある。イランの現在の大統領で2003年当時のこの話し合いの交渉を務めていたHassan Rouhaniがイランはこの失敗した話し合いを核兵器プログラムを進展させるための時間稼ぎとして、そしてこのプログラムに関する情報をIAEAから隠すための手段として利用したと認めていることを考えればなおさらだ。

彼女が彼の本にインタビューが足りないとしてけちをつけているのは、彼も説明しているようにJCPOAがほとんどアメリカ側とイラン側の交渉団だけによって話し合われたアメリカとイランとの合意であるというのに、多国間の合意であるとのフィクションを国民に信じさせたいがためだろうとほとんど確信に近い程に疑っている。

彼女はJCPOAに関して事実を語る人々からではなく、それを擁護する人間の本からの引用を好んでいるようにも思える。彼女は、もし彼がアメリカや他の国の外交官ともっと接触を持てば、この合意とも呼べないものを結ぶためにどのようにオバマが繰り返しイランの要求を飲んでいたかといったような内容の本ではなく、この合意に関するホワイトハウスの出鱈目な説明に従った本を書いただろうにと無邪気にも信じているのかもしれない。

「オバマボム:国際防衛に対する危険な背信行為」という本を執筆した筆者として、私も彼の本には異なる問題があると考えている。

第一に、彼はオバマ政権がこの交渉や合意に関して議会と国民を繰り返し欺き嘘をついていたと非難されているのに対する、政権側の反論を真に受けすぎていると考えている。

彼女は、彼がニューヨーク・タイムズのレポーターDavid Samuelsの国家安全保障局のアドバイザーBen Rhodesに関する2016年5月5日の紹介記事に言及しなかったことを喜ぶべきだ。サミュエルズはローズがイランとの合意に関する嘘の情報を無知なレポーターたちに流してメディアを操作するための「反響室(情報操作室)」を監督していたと記事に書いている。このことには触れずに、ソロモンはこの反響室のことをホワイトハウスの「反戦部屋」と無邪気にも呼んでいた。ここでオバマ政権はJCPOAを擁護するためのキャンペーンを展開していたと彼は語っている。

ソロモンはJCPOAに強力に反対する議員の発言を誰一人として引用していない。彼は、実際には超党派による反対、それも上院のForeign Relations Committeeと下院のForeign Affairs Committeeの民主党代表を含む反対だと言うのに、議会の反対を共和党によるものであるかのように説明している。「もしイランが核兵器を製造すれば、そこに書かれているのは私の名前ではないだろう(オバマと書かれているだろう)」と語っているようにこの合意を最も強烈に非難しているのは民主党の上院議員Robert Menendezだ。不幸なことに、この発言は彼の本のどこにも見られない。

だが、ホワイトハウスがJCPOAに対する反対者全員を戦争屋だと印象操作しようとし、イスラエルの指導者がホワイトハウスのJCPOA擁護キャンペーンに危惧を表明したのに対して「ロビイストと彼らのネタニヤフ首相とのつながりのせいだとしたのは政権のあからさまな反ユダヤ主義に基づいてのことだった」とソロモンが説明していることは評価している。

Sciolinoは「秘密の裏取引」という単語がソロモンの本のどこにも表れていないことを喜ぶべきだった。彼は、Tom Cotton (R., Ark.)議員やMike Pompeo (R., Kan.)議員が偶然にIAEAの高官から聞いた内容のことに少しも言及していない。この秘密の裏取引はイランに過去の核兵器開発に関する証拠を自身で査察することを許してしまった。彼は、議会によるレビューのために秘密の裏取引に関する文書の引き渡しが法で定められているにも関わらずオバマ政権が拒否したことがJCPOAへの反対を激烈なものにしたということにも言及していない。

ソロモンは、Associated PressのレポーターGeorge Jahnがイランの「自己査察」に関するリークされたIAEAの文書に関する記事を書いていること、オバマ政権の支持者たちがJahnをイスラエルのエージェントでこの文書は偽造だと非難することでこの話を中傷しようとしたことなどに軽くしか言及していない。

彼は、この話し合いに批判的な記事を書いたジャーナリストをオバマ政権がどのように罰していたかには言及している。彼は「沈黙のルール」を破ったためにケリー長官の飛行機から追い出されたと語っている。このルールは、この話し合いに関するアメリカとフランスの立場の違いについて不都合な質問をケリーの搭乗する飛行機内ですることをジャーナリストたちに禁じている。ソロモンはニューヨーク・タイムズのレポーターDavid Sangarがホワイトハウスと国務省から共同してツイッター上で攻撃を受けたと記している。サンガーが、イランはJCPOAで求められている核兵器の在庫の処分を行う能力を持っていないかもしれないという記事を書いた後のことだ。

ソロモンは、自分の本が書かれたのは少し前のことだったため2016年7月以降のデータはカットしていると私にメールしてきた。それが議会から隠されていたその他の秘密の裏取引(幾つかは、ソロモン自身がウォール・ストリート・ジャーナルで初めにレポートしたものだった)が彼の本で言及されていない理由だと語った。それには、恐らくはアメリカ人の人質を開放するための身代金として1700億円が2016年の1月にイランに送金されていたこと、合意で求められた要件をイランが満たさなかったことに対する控除が与えられたこと、それにより1兆5000億円をイランが受け取ったということ、そして弾道ミサイル計画をファイナンスしている2つのイランの銀行に対する国連の制裁を解除することなどが含まれる。

ソロモンは、私ほどにはJCPOAの巨大な欠陥やそれが国際防衛に与える損害に関して言及しているわけではないが、彼は多くの重要な問題を指摘している。彼は、この合意が守られているかどうかを確認することは難しいと指摘している。イランに過去の核兵器開発に関する研究について答えるようにとのIAEAやヨーロッパからの長年の要求を取り下げさせることにオバマ政権は合意しているためだ。彼は、イランが不正を行った時に再び制裁を課すことができる所謂スナップ・バック条項が一度でも用いられることはないだろうと指摘している。彼は、核合意からイランの弾道ミサイル計画を別扱いにする判断を下したことは恐ろしく危険な譲歩だと正しく指摘する。彼は、オバマ政権によって為されたその他の巨大な譲歩も恐ろしいほどに危険で、この合意にアラブ諸国がどれほど「ショックを受けた」かも指摘している。

JCPOAのその後の経過を考えれば、ソロモンは半分程度しか正しくなかったと云わざるをえない。Sciolinoは、イランが合意に従っているようにみえると、そしてイランが核兵器を製造するのには1年は掛かるとオバマ政権が主張していることは正しいように思われるとソロモンが彼女に同意していることには嬉しく思っているだろう。

だがそれを否定する強力な証拠がある。すべてが2016年の7月には明らかになっていたというわけではないが。私はこれらの証拠について2016年の7月14日のNROの記事で多くを説明している。それにはIAEAの査察の対象から軍事施設を外すようにとイランが画策していること、イランにウランの濃縮を続けることと高度な遠心分離機の開発を続けることが許可されたかなどが含まれる。さらにドイツの諜報機関が、イランが不正を働いていると報告していることも紹介している。それ故、JCPOAはイランの核兵器製造プログラムに対する国際社会の強い懸念を払拭するというその目標を果たすことにすでに失敗したと強く考えている。この合意はイランにあまりにも多くの不正を働く機会を与えているし、合意が守られているか確認する手段がほとんどない上、イランが不正を働いているとの多方面からの信頼できる報告がすでに寄せられているためだ。

それに加えて私は、イランの行動がJCPOAが合意されて以降ますます横暴にそして地域の不安定化に向けてますます大胆に振る舞いだしたというソロモンの指摘に同意する。それらの行動とはアメリカ人の逮捕、弾道ミサイル実験の段階の引き上げ、シリアのアサド政権とイエメンの反乱軍へのこれまで以上の支援などを指す。これらの行動は彼の本が出版されて以降、ますます過激になった。例えば、ペルシャ湾ではアメリカの船に対するイラン側からの敵対行動が増加し、イエメンの反乱軍はアメリカとUAEの船に向かって対艦用のミサイルを発射している。「遥かに大きく広範囲に及ぶ戦争がこの地域全体を包み込むという真のリスクも存在する。そしてアメリカもそれに否応なしに巻き込まれることになるだろう」とソロモンが指摘していることは正しい。

イランとの合意のその後の展開に対するこれらの批判に対して、Sciolinoは「否定的な面ばかりを強調している」として彼を糾弾している。この合意がアメリカとイランとの関係を改善して核兵器で武装したイランによってこの地域と世界全体がより安全になるなどという馬鹿げたことを言って現実を無視しているのは彼女の方だ。

彼女は、彼がJCPOAは機能していてオバマ政権のイラン政策を欠陥だらけではあるが全体的には肯定的に評価していると結論していることには一切言及しないのは興味深くさえある。彼女にとっては、これは誰一人として疑問を挟んではいけない素晴らしい合意なのだろう。これは彼女が望んでいることは、彼に主流派メディアの操りレポーターのように都合の良いことだけを喋ってもらいたいということ、彼にこれまで通りの路線で記事を書いてほしくないということ、この合意がどのようにして締結され本当に合意されたことはどのような内容でこの合意の実際の見通しはどうなっているのかなどに関してアメリカ国民を真実で惑わさないでほしいということだと雄弁に物語っている。

彼の本は完璧ではないが、それでもメディアによって流されるJCPOAのほとんど嘘といってもいいような一方的な内容の説明よりかは遥かにマシだ。この合意の問題が、イランの不正の拡大や(特にペルシャ湾における)大胆不敵な行動の増加によってさらに拡大していくと予想されるので、彼女のような外交政策に信仰を求める人たちによる記事、オバマやその支持者たちが国民に知られたくないような不都合な事実を伝えようとするソロモンの本のようなものに対する攻撃をこれからますます目にすることになるだろうと容易に予想できる。

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