2016年12月25日日曜日

イスラム過激派は(反米ではなく)異教徒すべてを攻撃の対象にしている?Part2

IMPERVIOUS HUBRIS: HOW U.S. INTELLIGENCE FAILURES LED TO ISIS

Raymond Ibrahim

テロとの戦いが宣言されて10年経つが未だにテロはなくなってはいない。

どうしてか?

よく見逃されている大事な要因としてイスラム教徒をジハードに駆り立てるものは何か?を情報機関が正しく認識していないことが挙げられる。

2004年にベストセラーとなった「Imperial Hubris: Why the West Is Losing the War on Terror」の筆者、Michael Scheuerのことを考えてみよう。その本の中で、彼は自分のことを以下のように紹介している。「過去17年間、私はテロリズムなどを専門にしてきた。オサマ・ビン・ラディン、アルカイダに関して豊富な知識があり彼らの幾人かとも知己で、それらがアメリカに対して与える脅威や意味を知っている」と書かれている。実際、彼はOsama Bin Laden Departmentの上級アドバイザーやSunni Militant Unitの主任も務めている。

彼の本の根幹を形成するテーマは、アルカイダのテロはアメリカの外交政策に対する反応だというものだ。「ビン・ラディンは私たちに対して戦いを仕掛けてくる理由をはっきりと伝えている。その理由は私たちの自由や人権、民主主義とは関係がなく、イスラム世界に対するアメリカの外交政策がすべてだ」と彼は書いている(アラブに対して最も友好的な国だったと言うのに)。

その証拠として、彼はビン・ラディンの西側に宛てたメッセージを繰り返し引用している。彼はビン・ラディンやテロリストをロビン・フッドや引いては聖フランシスのような英雄と比較し、アルカイダの戦いは「愛」を巡るものだと結論する。

「それ故、ビン・ラディンとイスラム過激派はアラーに対する愛と数少ない特定のアメリカの外交政策に対する憎悪によって駆り立てられているものだと言うことが出来る。彼らの戦いは特定のターゲットに対するもので、そして特定の限られた目的のためのものだ。彼らは手にした武器はいかなるものでも使用するだろうが、彼らの最終目的は私たちの民主主義を破壊することではなく彼らが愛するものを軍事的手段によって守ることにある。ビン・ラディンとジハーディストたちは永遠に戦い続ける戦士たちではない」。

アメリカのリベラル、大学、ポリティカル・コレクトネスを悪用するメディア、そして政府(一言で言えば、エスタブリッシュメント)はこの政治的不満仮説を大いに持ち上げてきた。言い出したのはScheuerではないがこの本によって確実に支援を受けただろう。

このような考えが蔓延している状況だったので、私は議会の図書館で働いていた時に見つけたアルカイダのアラビア語の書物を翻訳してみようと思ったのだった。アルカイダが西側に宛てた注意深く文面が工夫されているコミニケ(これらは数多くの「専門家」と呼ばれる人たちによって文脈を無視した形で示され、人々によってうのみにされている)とは異なり、私が見たものはイスラム教徒に宛てて書かれたものだ。これらはアルカイダが西側を攻撃する理由をこれ以上ないぐらいの形で明確にしている。『ムスリムでない、すなわち「異教徒」を憎悪し攻撃することはムスリムにとっての責務である」と。

ここにビン・ラディンがイスラム教徒に宛てて書いたものを幾つか紹介する。西側のアナリストが彼は「政治的不満」しか口にしていないと広く紹介していたとしてもだ。

『イスラム教徒と異教徒との関係は、「至高の存在の言葉」によって端的に表されている。「我々はお前たちを断罪する。敵意と憎悪が我々とお前たちを永遠に分かつ。お前たちがアラーだけを信じるようになるまでは」。従って、心の底から湧き上がってくる強烈な憎悪によって裏付けられた敵意が存在する。そしてこの強烈な敵意、すなわち戦いは異教徒(無神論者)がイスラムだけを認めるようになるか、ズィンミーになるか、イスラム教徒が弱く充分な力がない場合以外には停止することはないだろうということを意味する(ビン・ラディンは、異教徒の前ではこの対立はアメリカの「外交政策」によって引き起こされたものだと主張することにより真の動機を偽装しなければならないと語っている)。だがもしこの憎悪が心から消えたとすれば、それこそが最大の背教行為だ!従って、この憎悪こそがイスラム教徒と異教徒との関係の根本であり根源でもある。戦い、敵意、そして憎悪こそが我々と異教徒、無神論者との関係の源なのだ(The Al Qaeda Reader, p. 43)』。

ビン・ラディンは重要な質問を尋ね、また答えてもいる。

「イスラムは剣の力で持って、精神的にではなく肉体的にその唯一性を認めさせるべきか?答えはイエスだ。イスラムには3つの選択肢しかない。改宗させる。精神は従わずとも肉体が従った証としてジズヤを支払わせる。剣で刺し殺す(異教徒を生かしておくことは正しくないので)」。

これほど明確な主張と、「アルカイダが戦う理由は私たちの自由、人権、民主主義とは少しも関係がない」というScheuerの主張とをどう折り合わせればよいというのか?私はScheuerを批判した2008年の記事でこの疑問を投げ掛けたことがある。

それに反応してか、彼は私の記事のコメント欄に性急に書き込みを行った。アルカイダ自身が彼の言っていることを否定しているという事実を認めずに、イスラム教徒のテロリズムは「帝国主義的な傲慢さ」が生み出したものだと主張している人間がまさにその傲慢さを示している、事実と現実に対する傲慢さ、ということは皮肉なことだ。彼は、皮肉をたっぷりと込めて以下のように書いている。

『イブラヒムの「Al Qaeda Reader」は正確な分析と知的誠実さの基準をパスするものとしては素晴らしい例だ。ネオコンサバティブの間ではという意味で。この極めて選択的なコレクションの中で、ビン・ラディンとザワヒリの大量の著作、声明、インタビューからわずかなページ数の本を生み出すためにイブラヒムは選び、拾い上げている。その内容はと言うと、アルカイダとその同盟相手はネオコンサバティブが喜んで呼ぶところのイスラモファシズムが支配するカリフ制を世界中に敷こうとしていることがすべて証明されたというものだ。この本は故意にアメリカ人を欺こうとしている」。

参考までに、「わずかなページ数と云われた」私の本は320ページの長さだ。「極めて選択的」と云われたが、実際にはこの本は西側に対するメッセージだけではなイスラム教徒に宛てたものまで網羅しているという意味で最もバランスの取れたものだ。例えば、Bruce Lawrenceの「Messages to the World: The Statements of Osama Bin Laden (2005)」はアルカイダの西側に対するプロパガンダしか取り上げておらず公平と呼べるものではない。私の本はアルカイダがイスラム教徒に宛てたものと西側に宛てたメッセージ双方を取り上げることによって、読者により完全な姿を示している。

いずれにしても今となっては、「どうして彼らは私たちを憎むのか」という疑問はそれを解決するのに最も適したグループによってすでに答えられている。イスラム国、ようするにアルカイダ2.0だ。「Why We Hate You & Why We Fight You」という宣言の中で、イスラム国は6つの理由を挙げている。その中でも理由1がすべてだ。

『我々はお前たちを憎悪する。唯一にしてその最大の理由は、お前たちがイスラムを信仰していないからだ。自覚していようともなかろうとも、お前たちはアラーの唯一神性を否定している。お前たちは彼を冒涜している。お前たちは彼の予言とその預言者に対して嘘を言っている。そしてお前たちはイスラムの戒律に背くすべての悪魔的行いを自由気ままに行っている。これらの理由により、我々は我々の憎悪と敵意をお前たちにぶつけるようにと神より命を受けた。これにはすでに良い前例がある。「我々はお前たちとの係わりを断つ。お前たちがアラー以外に捧げるものすべてから関わりを断つ。我々はお前たちを拒絶する。そして我々とお前たちの間には、お前たちがアラーだけを信じるようになるまでは敵意と憎しみが永遠に生じるだろう」(Al-Mumtahanah 4 [i.e., Koran 60:4])。お前たちの不信心がお前たちを憎悪する最大の理由であるとともに、お前たちと戦う最大の理由でもある。お前たちがイスラム教徒になることによりイスラム教を認めるようになるか、ジズヤを払い(ただし払えるだけの裕福さがあればの話だが)イスラムの支配の下、屈辱に生きるかを選ぶまでは不信心者と戦うようにと我々は命令されたからだ[per Koran 9:29]』。

そして西側の外交政策に対する「不満」は第五と第六の理由としてそれも付け足しとしてようやく挙げられているに過ぎない。

「ここで最も重要なことは、お前たちの外交政策が我々を憎悪に駆り立てていると主張している者がいるが、そのような理由は我々にとってどうでもいいということだ。だから我々はこのリストでも最後の方でしか言及していない。事実として、お前たちがイスラムに対する外交政策を変更したとしても我々はお前たちを憎悪し続けるだろう。お前たちがイスラムに改宗するまではお前たちを憎悪する唯一にして最大の理由が存在し続けるからだ。お前たちがジズヤを支払い屈辱に震えながらイスラムの下で生きることを選んだとしても、我々はお前たちを憎悪し続けるだろう」。

この憎悪は西側の人々には理解が出来ないものだ。この憎悪こそが非イスラムの妻をイスラムの夫が憎悪する原因で、アメリカの「最大の友人で同盟相手」であるサウジとカタールがいたるところで西側に対する憎悪を煽り立てている原因だ。イスラムではないというだけの理由で。

そしてアルカイダをジハードへと駆り立てているものも常にこの憎悪だ。

ちなみに、カリフ制が再来するだろうという考え(私が予想していたものだ)をScheuerは「左頬を叩かれたら右頬を差し出せ、汝の隣人を愛せよと説いて回っても世界をキリスト教に改宗させるのに良くても数光年掛かるのをキリスト教徒が知っているのと同じぐらいに、イスラム教徒は自分の子供や孫の時代になってもそれがありえないことを知っている」と執拗にからかっている。同様に、「歴史のこの時点においては、ジハードによってイスラムが新たな土地を獲得したりイスラムに改宗させられることを心配する理由はどこにもない」と彼は記している。

本当か?それを、奴隷にされ、レイプされ、虐殺され、火をつけられ、生きたまま埋められた多くの人々の前で言ってみるといい。カリフ制は彼らの住む地域にほんの数年で拡大していったのだから。

これらの出来事は西側が「政治的不満」仮説を称賛していたがために可能になった。30年来の同盟相手であるエジプトの世俗主義のムバラクを見捨ててムスリム同胞団の側についたオバマやメディアが「アラブの春」を全面的にサポートしたように。「政治的不満」理論はイスラム国の誕生にも部分的に責任がある。

だというのに、彼らの傲慢さは留まるところを知らない。イスラムの敵意はイスラムの教えが生み出したものであるという事実を受け入れずに、CIAを含むオバマ政権は「政治的不満」理論を唱え続けイスラム国は少しも脅威ではないとして、懸念を訴える人を弾劾し続けている。ヒラリー・クリントンは「敵に対してであっても敬意を見せ、理解を示し、彼らの見方や考え方に共感を示すことが重要だ」と語っている。存在しもしない政治的不満に共感を示せというのだろうか?

クリントンはこれをジョージタウン大学で語った。Michael Scheuerは一体どこに行ったんだ?と不思議に思っている人もいるかもしれない。自分がどれほどの間違いを犯したのかということを理解するために、イスラム教徒の「孫の時代」まで待たなくてもよくなったこの男は一体今何処にいるのか?彼は今、イスラムと暴力とのわずかなつながりをも否定したがる人たちが集まっているところにいる。そして将来の「テロの専門家」を育成するためにジョージタウン大学で教えている。

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