2016年3月19日土曜日

黒人の平均寿命が短いのはやはりアメリカの医療と関係がなかった?パート2

Erasing the Gap for Racial Life Expectancies

アメリカの80歳以上の黒人の高齢者が80歳以上の白人よりも遥かに死亡率が低いということに気が付いた後に、私の頭の中には80歳以下ではどうしてこうも話が変わってしまうのだろうかという疑問が浮かんだ。もう一度黒人と白人の生命表を確認してみよう。

80歳以下では、黒人の死亡率は同年齢の白人よりも高い。逆に、80歳を超えた黒人の死亡率は低くなる。黒人と白人の平均余命の差は年齢が上がるに連れて縮小し75歳から80歳の間にほとんど消えてなくなる。80歳を過ぎると、黒人の方が平均余命が長くなる。

The Percentages of Survivors

ここからは、2つのグループの生命表を直接比較することにしようと思う。それぞれのグループの生存率(またはそれぞれのグループで任意の年齢に達した10万人あたりの人数)を示した表Bに移ろう。その数字を%表記にしそれぞれのグループの差を図に表示した。

それぞれのグループの20歳までの生存人数または生存率の差はとても小さいことが確認できる。それが75歳から80歳の間に差が拡大し、100歳までの間に差が劇的に縮小する。

これをもっと分かりやすく見るために、白人の生存率から黒人の生存率を引く。その結果を下に示す。

予想通りだったもの、予想していなかったものが浮かび上がってきた。第一に、死産でなかった黒人のおよそ1%は初年度を生き残ることが出来ない。これは黒人の乳幼児死亡率の高さに対応している。

では予想していなかったものの方に移る。1歳から20歳までの間に、白人と比較して黒人の死亡率に上昇はほとんど見られない。これはそのあいだの年齢での曲線が水平であることからも分かる。もし黒人の乳幼児死亡率が高くなければ、10万人あたりの生存人数は白人と黒人で20歳までほとんど違いがないということも記しておくべきだろう。

予想していたものの方に戻ろう。20歳から70歳の半ばまでは、黒人の死亡率の方が白人よりも高い。死亡率の差が最も大きいのは78歳辺りのように見える。そこから急速に縮小していき、黒人の方が白人よりも死亡率が低くなる。

それが100歳まで続くので、世紀を生きる黒人の数は白人の人数よりも多くなる。

もし人種差別が黒人と白人の平均寿命の差の原因だというのであれば、黒人の子どもとティーンエイジャー、同様に黒人の高齢者もその影響をまったく受けていないというのは極めて奇妙なことのように思われる。特定の年齢の集団だけを差別するなどという話を聞いたことがあるだろうか?

取り敢えずの結論としては、ここには何か他の要因が働いているに違いないというのが私たちの考えだ。何か別のものが20歳から80歳までの黒人の死亡率の高さ、そして白人と比較した1歳から20歳までの死亡率の等しさ、80歳以上の死亡率の低さを説明するのだろう。

More Pieces of the Puzzle

実は白人と黒人の間だけに死亡率の違いがあるのではなく、黒人の集団自体の間にも死亡率の違いがある!(ここで言っているのは、男性と女性の間にある平均寿命の違いのことではない)。

例えば、アメリカに移民してきた外国生まれの黒人(現在でもアメリカには黒人が大量に移民してきていてしかもその人数は急速に増えている)はアメリカで生まれた黒人よりも平均寿命が遥かに長い傾向にある。そのことを示したのは2004のNational Institute of HealthのGopal K. Singh and Barry A. MillerによるHealth, Life Expectancy, and Mortality Patterns Among Immigrant Populations in the United Statesという研究だ。

「アメリカ生まれの黒人と比較して、移民してきた黒人男性と黒人女性の平均寿命は9.4歳、7.8歳長い傾向にある」。

移民の寿命の増加は、ネイティブの黒人の方が所得が高いという事実にも関わらず起こっている。

「その研究は1986から1994の間の数百万の死亡と健康の記録を調査した。その数字は少し古いものだが、より最近のデータを調べた多くの研究も同じパターンが成立していることを示している。そして平均寿命は全般的に上昇傾向にある」

「アフリカ生まれの黒人の移民がアフリカに留まっていたとすれば、その人は50歳の誕生日を迎えるかなり前に高い確率で亡くなっていただろう」。

最も驚くことは、アメリカ生まれの黒人と比較して所得が相当低く医者に掛かる頻度も低いにも関わらず黒人移民の方が平均寿命が長いことだろう。

一方で、黒人が住んでいる地域が平均寿命に大きな影響を与えているように見える。都市部近郊に住んでいる黒人の死亡率は郊外や田舎に住んでいる黒人よりも遥かに高い。Arline T. Geronimusによって率いられたミシガン大学の2004の研究、Urban/Rural Differences in Excess Mortality Among High Poverty Populations: Evidence from the Harlem Health Survey and Pitt County Hypertension Studyは予想していなかった違いを明らかにしている。

「表1に示されているように、貧困率が非常に高いにも関わらず田舎の地域に住む黒人の死亡率は都市部近郊の黒人と比較して高くない。実際、田舎に住む黒人の死亡率は黒人全体の死亡率と変わりがない。例えば、1990の15歳から65歳までの白人と比較して黒人全体の10万人あたりの超過死亡数は374だった。貧困率が47%のルイジアナ州のデルタの田舎ではそれは391だが、一方で貧困率が43%のハーレムでは1296だった。黒人女性の場合は、黒人全体は217、ルイジアナ州のデルタでは249、ハーレムでは534だった(同様の結果を示したGeronimus et al. 1996, 1999を参照)。さらに、同じ地域の1980と1990の死亡率を比較した分析ではその10年間に都市部近郊と郊外の差が拡大したことを私たちは発見した。それは都市部近郊で超過の死亡が増加したことによる。この影響は男性に特に顕著で、その原因は慢性病による死亡によって説明されるものがほとんどだった。例えば1980年代に、循環器系の病気またはがんによる超過の死亡は若年層と中年齢層のハーレムの黒人男性でそれぞれ2倍になった」。

ここで、次に何処に向かえばよいのかの初めての手がかりが得られた。

Where We're Going Next

上記の証拠は、黒人と白人の死亡率の違いは差別ではなく慢性病によって遥かによく説明できることを示唆している。次に、その原因は何なのかを私たちは調べる予定でいる。

その後に、私たちがアフリカの呪いと祝福と呼ぶものが黒人にどのような影響を与えているのかを議論し、アフリカで多くの人の命を奪っているがアメリカではそうではない病気が黒人と白人の死亡率の差をなくす鍵となることを議論する。

比較的シンプルな要因によって、この記事で紹介した集団間の死亡率の違いをほとんどすべて説明できるという仮説を私たちは提示する。さらに、黒人と白人の死亡率の違いを解消する一見した所では簡単で高くない解決策も指摘しようと思う。

「簡単そうに見える」と言ったのは、その解決策がアメリカ政府がすでに提供していたものでだが大部分の黒人にはほとんど効果がなかったようだからだ。その理由を説明し、それから市場ですでに後半に利用可能でより効果的な解決策を指摘する。

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