2016年3月19日土曜日

ハーバードの医療経済学部は馬鹿揃いなのか?

Schizophrenia about High Deductibles

Greg Scandlen

医療貯蓄口座(HSA)が導入された時にほとんどすべてのリベラル派が激怒したことを覚えている人もいるかもしれない。その時の彼らは「健康な富裕層」以外にとってそれは恐ろしい程の負担だと主張していた。HSAが承認されてから一週間もしない間にCenter for Budget and Policy Priorities (CBPP)はメディアに向かって声明を発表した。2003年のことだ。

「この法案によって多くの雇用主が低免責額の医療保険から遠ざかることになると、同センターのEdwin Parkは語った。高免責額の保険が標準となり雇用主が負担しなくなった部分を従業員が医療貯蓄口座から負担するようになるとも付け加えた」。

「低所得者や中間所得者は税制が優遇されているこの口座からほとんど恩恵を受けないだろうし労働者で高齢で病気の人は自己負担額の大幅な増加に直面し大きく影響を受けるだろう、と付け加えた」。

数年後、ブッシュ大統領がHSAの拡大を提案した時に、その当時はCBPPに在籍していて現在はオバマ大統領のCouncil of Economic Advisersの議長を務めているJason Furmanが高免責額の保険プラン(特に、貯蓄口座付きのものに)に同様の非難を浴びせている。

そういう訳で、それらとまったくの同一人物が現在ではオバマケアのエクスチェンジで販売されている保険がどれほど素晴らしいものであるのかと情熱的に熱弁を振るっているのを見てショックを受けるかもしれない。

そして、New England Journal of Medicineに2つの謎めいた記事がある。一つ目の記事はJ. Frank Wharamらによる「The ACA and High-Deductible Insurance — Strategies for Sharpening a Blunt Instrument」と題した記事だ。彼らはマサチューセッツ州の84%の加入者が免責額(これより医療費が掛かった場合にはその費用を保険会社が全額支払ってくれるという予め定められた金額)が40万円から100万円でそれに加えてかなりの費用負担があるブロンズプランかシルバープラン(エクスチェンジではブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナなど幾つかの種類がある)を選んでいると報告している。彼らは低所得者はエクスチェンジで保険料だけでなく免責額にも補助金を受けられると語っている。だが、「その補助金は貧困基準の200%以下でも十分ではないかもしれない」とも述べている。加えて、

「例えば、Cover Oregon(オレゴン州のエクスチェンジ)は所得が貧困基準の200%から399%のオレゴン州の4人家族の費用負担は免責額が50万円、その免責額に達した後でも多くのサービスに対して30%の共同負担、自己負担最高限度額が85万円から127万円と試算している」。

付属の図には貧困基準400%の4人家族の免責額が127万円と示されている。「質の高い保険を、安い価格で」とは一体何だったのか?

その記事の筆者らは(全員がハーバード大学の関係者であるが)HSAが発足した時のようなヒステリー反応を少しも見せない。HSAの免責額(10万円)はオバマケアの免責額と比べればあまりにも穏当だというのにだ。それでも彼らはHSAの免責額に懸念を表明する。

悲しいことに、彼らは致命的なほど無知で怠惰でもある。彼らは「新たに保険を購入するように求められるようになった中小企業の雇用主は最も費用の少ない保険としてHDHPs (High-Deductible Health Plans)を優先的に選ぶかもしれない」と言う。だが中小企業の雇用主はその種の保険を購入するように求められていないしそうしなかったからといって罰せられる訳でもない。

彼らは高免責額が「社会的弱者」に与える影響に関する研究がないということを嘆く。

「不幸なことに、過去30年間の費用負担の研究は少ない費用負担の事例(例えば、5000円以下の)に集中していた。1970年代や1980年代のRAND Health Insurance Experiment以降、高額の費用負担(例えば、免責額が10万円以上の)を調べたものはわずかしかないない。社会的弱者に関するものとなるとさらに限られる」。

だが彼らがそのように思い込んでいるのはRobert Wood Johnson Foundationの2つのレポートしか見ていないからだ。彼らは「How Do Consumer-Directed Health Plans Affect Vulnerable Populations?」と題した2年前に出されたRANDのレポートを完全に見落としている。このレポートを見落とすというのは故意としか言いようがないだろう。

彼らは雇用主に「特に社会的弱者に対して、HSAへの雇用主負担部分を増やすように」と要請している。だがこれらの強制されたプランがHSAの対象となるかどうかははっきりとしていない。それらにスクリーニング検査などの予防的医療以外への基本保障部分が求められればそれはHSAの対象ではない。

ハーバードの関係者からのレポートを読めば読むほど、彼らに対する敬意は失われていく。では、「Full Disclosure — Out-of-Pocket Costs as Side Effects」と題したデューク大学からのレポートに移ろう。

彼らは医者に患者とコストに関して話すことを勧めている。彼らは患者が負担する費用が幾らになるのかを医者が前もって知るのは難しいということを認めている。

彼らは金銭的負担に関する情報をCenter for American Progress (CAP)に頼りすぎている。CAPは費用の討議や支払いの調整などを(実際に患者が支払う額は1万円なのに、病院側が最初に100万円を請求していた場合は患者の負担は100万円だったと捏造するという意味)すべて「負担」として含めることで悪名が高い。CAPはサービスの提供時に全額が支払われなかったものはすべて患者の負担と考えているようだ(例外は、もちろんオバマケアだ)。

医者がファイナンシャル・アドバイザーのように振る舞えるとは思わない。だが費用をもっと意識すべきだという考えには同意する。私の医者は血圧を下げる薬を処方している。処方箋を見た時にその値段が高いことに気が付いた。私は医者の所に戻りもっと安いものはないのかと尋ねてみた。保険が全額支払うので、今までは誰もそのようなことを尋ねなかったのだろう。だが彼が探してみるとどれも有効で値段が10倍は異なる25の異なる薬があった。

それが消費者の力だ。サービスに対して現金で支払う割合が増えれば医者は患者の要望に反応するようになるだろう。消費者は他の第三者の誰よりも(政府、保険会社含む)費用に対する影響力を発揮できる。

オバマケアのやり方はこの方向からは程遠い。HSAの最も優れている点は患者に支払いの手段を与えながらも同時に費用に関して再考を促す点にある。それは患者を教育するために注意深く設計されたバランスの取れたアプローチだ。オバマケアは人々を何の手助けもなしに単に投げ入れているだけに過ぎない。そのやり方は残酷で冷酷非道な精神の成せる技だ。いかにも政府がやりそうなことだとも思うだろう。

以下、寄せられたコメント。

Ron says:

2年前のRandの研究の主な発見をまとめる。

高免責額プランの過去最大級の調査が行われ、そのようなプランは支出を大幅に削減していることが分かった。それと同時に患者に予防的な医療に対する支出を切り詰めさせていることも分かった。

全米の80万以上の世帯を調べ、高免責額プランに乗り換えた世帯の医療支出は平均で14%削減されていることが分かった。

雇用主が負担する医療貯蓄口座残高の少なめな高免責額プランに加入した世帯の方が医療支出が少なかった。

加えて、最近の他の研究は以下のことを示している。

口座ベースの保険プランに乗り換えた雇用主は従業員1万人あたり21億円を過去5年間毎年節約したと2011年にエトナは報告している。

雇用主は口座ベースの保険プランに乗り換えることで従業員1人あたり97万円を5年間で節約できると2012年にシグナは報告している。

従業員を口座ベースの保険プランに移し替えた企業は大幅な医療費の削減を達成した。例えば、少なくとも労働者の半分を口座ベースの保険プランに移した企業は従業員1人あたり費用がそうでない企業と比較して10万円以上削減できていると報告している。

Greg Scandlen says:

君は私が挙げたものとは違う研究を見ているのではないか?以前に、そのことに関して私は記事を書いている。

http://healthblog.ncpa.org/new-rand-study-of-consumer-directed-health-plans/

結論をまとめると、

「医療費の総額は社会的弱者の世帯とそうでない世帯とに関わらず高免責額プランで削減された。貯蓄口座付きの高免責額プランは他のプランに比べて支出を大幅に削減した。削減率は30%だった」

「社会的弱者の世帯とそうでない世帯とで削減額に有意差はなかった。支出の個別の項目にもほとんど違いはなかった。だが病気のリスクが高い世帯の支出は高い傾向にあるので比率で見ればリスクの高い世帯の方が削減率は低い傾向にあった」

「支出と同様に、社会的弱者の世帯とそうでない世帯とでがん検診の受診率に少ししか違いがなかった。だがリスクの高い世帯には大きな違いがあった。彼らの場合には、高免責額プランと推奨された3つのうち2つの治療との間に削減の関係は見られなかった。3つ目の治療に関しても削減額は非社会的弱者の世帯と比較して相対的に大幅に少なかった。後者の関係は幾つかの要因を調整すると有意ではなくなったが」。

Don McCanne says:

2013年の12月のHealth Affairsから、

「2013年の11の国(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカ)を対象とした私たちの調査からアメリカの成人に治療を先延ばしにする、保険に加入していても支払いに困難を抱える傾向があることが分かった」。

これは隠さずに言うならコモンウェルス・ファンド(極左のプロパガンダ機関)のレポートだ。HSA/HDHpの推進者は事実を無視している。隠しても事実は残る。高免責額の保険プランは必要な治療へのアクセスを妨げる。患者が必要とする薬を手に入れるのが困難になる。治療を必要とする人に金銭的な負担を生じさせる。医療費を個人破産の原因と言っている人の中で、4分の3は保険に加入している。だがそれでも彼らの債務は自己負担の額によって過剰となった。

先程挙げられていたリストの国が示すように高免責額の保険プランは医療費を抑制するものではない。多くの研究が示すようにそれらは逆の効果を持っている。他の国は私たちの数分の1の費用で保険を提供している。

Greg Scandlen says:

君は馬鹿か?OECDのレポートではアメリカの自己負担率は最も少ない部類だ。アメリカの医療費全体に占める自己負担率は13%だ。これを下回るのはフランス、ルクセンブルグ、オランダ、チェコの4ヶ国しかない。

Greg Scandlen says:

「HSA/HDHpの推進者は事実を無視している」。

私が貼ったリンク先を見るんだ。

http://healthblog.ncpa.org/new-rand-study-of-consumer-directed-health-plans/

このブログをきちんと読んでいるのならば私が事実を無視していないということは知っているだろう。私はこのNEJMの記事を参考にして事実を語っている。

では、教えてくれ。どうして民間保険の10万円の免責額が凄まじいほどの邪悪!でオバマの120万円の免責額は素晴らしい!となるのか。冗談は顔だけにしてくれ。

Sean Parnell says:

私も過去にHSAや高免責額プランをホラーストーリーかのようにギャーギャー騒いでいた人たちのことを白い目で見ていたことを覚えている。今ではその時とまったく同じ人たちがオバマケアは素晴らしい!と熱狂的に説いているのを見て心の底から軽蔑しているが。

Beverly Gossage says:

いい記事だ!過去11年間HDHPプランの代理販売を行ってきた身としてはオバマケアの推進者たちが「保険でカバーされた!」と宣伝しているのを見ると失笑を禁じ得ない。だがその「カバーされた!」というのは免責額が63万円のプランだ。免責額が63万円でしかも今までとは保険料が2倍のプランに我々の顧客が追いやられている(オバマケアの基準に適合しないと見做された保険はキャンセルされるため)ということも指摘しなければならない。

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