2016年3月19日土曜日

反対側が人間以下だと思っている時に人を殺したり中傷したりするのは容易なことだ。

第一次世界大戦時に、ウィルソン政権はドイツ人を「匈奴」と呼び彼らを非人間化しドイツからの移民の本国への忠誠心を傷付けた。第二次世界大戦時に敵を「ジャップ」と呼ぶことによりルーズベルト政権は日本からの移民を捕虜収容所に収容しやすくなった。どちらの場合も極めて「進歩主義的な」政権の下であったことは特筆すべきことだ。

従って、現在の「進歩主義的な」政権が反対派を「人種差別主義者」とか「tea baggers(極めて悪質なスラング)」などと中傷しているのは驚くべきことではないのかもしれない。人種差別主義者でtea baggersの権利を誰が気にするだろう?彼らには権利などない。彼らは注意を払うに値しない。彼らは友達でもないし近所に住む人でもない。彼らは集団から追放されるべき人々だ。彼らを監視しろ。集団を組織させるな。または税の控除を与えるな(実際にあった事件の揶揄)。彼らの考えを抑圧しろ。人種差別主義者でティー・バガーの考えに賛同することはヘイトクライムだ。このように最近では政治的全面戦争に突入する。

同様のやり口が本来論争の種となるはずのない保険の費用の議論にまで侵入してくる時にはさらに不愉快なものとなる。

カリフォルニア州のエクスチェンジ(政府が今回新たに創設する保険を購入する市場)は来年1月の保険料の見通しを最近になって発表した。カリフォルニア州は保険に加入していない人の数が他の州を圧倒的に引き離しているのでそれは大きなニュースだった。もしオバマケアがその州で機能するのであれば他の州でも機能するかもしれない。幾人かの人々は保険料が彼らが予想していたよりは低いように見えたので興奮していた。他の人々は懐疑的だった。何故なら個人保険市場で現在支払われている保険料よりも高かったからだ。

戦争が起こるような話ではまったくない。

興奮しきった人々の一人が懐疑的な人の一人を攻撃し始めるまでは。New Republic誌のJonathan Cohnはフォーブス誌のアビック・ロイに怒り狂った。彼が熱狂的な人々に同意しなかったからだ。Cohnはロイを「議論を捻じ曲げ」「出鱈目な議論」を行う「無責任な書き手」だと糾弾した。驚きだ!

Cohnはこのように書いている。

「若く健康的な人であっても高い保険料を支払い高齢で病気の人は低い保険料に収まるだろうということをロイは決して認めようとしない。彼は連邦貧困基準400%を下回る人々が補助金を受け取ることが出来るということに関して何も(一言でさえも!)語らない。補助金があれば来年エクスチェンジに加入する大多数の人の保険料が今よりも低下するということは完全に起こり得ることだ」。

それに対応する前に、Steve Benenと名乗る人物がRachel Maddow’s blogでこの論争の掛金を押し上げたことを確認しておこう。彼は自分のことを「政策通」だと見做していることが明白に見て取れる。何故なら本当の政策通からはロイは「きちんとした議論を行う人間」と見做されている現実の世界に対して、異を唱えているからだ(私が見た所ではBenenはブログに書き込むかMSNBCに何度か出演している以上の活動はしていないように思われる。進歩主義者の世界ではその程度の活動でも政策通と見做されるには十分なのだろう)。彼は以下のようなことを書いている。

「我々のほとんどはカリフォルニア州からのニュースを素晴らしいもので「オバマケア」が順調であることの証拠として理解している。ロイは驚くべき程の不誠実さでその反対であると説き、意図的に重要な細部を伝えないでいる」。

よって、ロイは「我々のほとんど」に賛成しないから「不誠実」なのだそうだ。それでも彼は以下のように続ける。

「これは政策通の中でもギャップが生じていることをまたも示したものと言える。共和党員が政策を無視する政党になってからというもの、政策通でさえも(彼らの中で最も鋭く最も知識がある者たちでさえも)ちょっとした調べにさえも耐えることが出来ないような出来の悪い意見を言うことしか出来なくなっている」。

さらに彼は続ける。

「私は事あるごとにアメリカの政界の非対称性と過激化した政党がもたらす結果に関して書いてきた。だがこの政策通間のギャップは(関連してはいるが)また別の問題を浮き彫りにする。より過激にそして事実に無関心になったのは共和党員だけではない。彼らが知的基盤を破壊することを許容した保守派も同罪だということだ」。

「真剣な政策議論はほとんど不可能となっている。両者の間に意見の相違があるためではない。そうではなく、一方の側だけが事実と証拠と論理に重きを置いているためだ」。

では、ここでは何が起こっているのだろうか?

第一に、ヒステリーの凄まじさから判断するに進歩主義者たちは彼らの願望が実現するかどうかにまったく自信を持てていないということが窺われる。そうであるから、あなたたちは裸の王様ですよと指摘する者たちに対してこうも激高するのだろう。私がこの場所で繰り返し書いてきたようにオバマケアがやろうとしていることはすでに過去に試みられて今日までに既にすべてが失敗している(保険会社に強要したわずかの例外は除いて)。政府自体に責任があるすべてのことが(連邦政府のリスクプール、退職者の医療給付への補助金、中小企業への税額控除、長期療養保険に対する集団訴訟、CO-OPなどなど)早くも失敗している。従って、エクスチェンジは「まだ」失敗はしていないものの(まだ実行されていないというだけで)見通しは非常に暗い。

このように滑稽な状況の下では、左翼は、彼らが正しく保守派が間違っていると単に訴えるだけでは誰も信じてくれない。彼らは一度も勝利を収めたことがないので反対派を非人間扱いし正統性を失わせるという過去の進歩主義者の戦略に頼らざるを得なくなった。保守派は単に間違えているだけでなく彼らは無責任で愚かで嘘つきで捏造主義者だといつものように騒ぐしか出来なくなったというわけだ。彼らにとっては保守派は話す価値さえない。保守派が言うことを気に留める必要もない。

より重要なことに、現在保険に加入している人の保険料が高くなるのか低くなるのかという質問は本質的な問題から外れている。如何なる保険料や査定基準の見直しであっても誰かが得をし誰かが損をするだろう。だがオバマケアの対象は現在保険に加入している人ではなく保険に加入していない人だったはずだ。

真に議論すべきはカリフォルニア州が提供している保険が現在保険を購入していない人たちに魅力的に映るかどうかだろう。ここでも問題がある。Philip Kleinが報告してくれたように、「保険を購入しないことを選択している若いアメリカ人が現在支払っている保険料は当然ながらゼロだ」ということだ。従って、例え補助金があったとしても圧倒的大多数が今よりも多額を、時には遥かに多くの金額を支払わなくてはならなくなる。Kleinはこうも指摘している。

「オバマケアが成功するかどうかは若くて健康な人々に完全にかかっている。病気の人が安い保険料で保険を手に入れることが出来るかどうかは政府が若くて健康な人々を数多く集めてこれるかどうかにかかっているからだ。保険者が実質的に医療費ゼロの人々から保険料を徴収している限りは治療費の掛かる患者でも集めることが出来る」。

現在保険に加入している人の保険料を補助金で低下させてもカリフォルニア州の中で高齢で病気の人とはほとんど関係がない。

政策にあまり詳しくない人に細々としたことを言ってSteve Benenを狼狽させてしまったことを今では気の毒に思う。だがEBRIの最新の報告書から幾つかのデータが参考になる。

第一に、既に述べたようにカリフォルニア州の保険に加入していない人の数は他の州を圧倒している(710万人)。テキサス州がそれに続いて610万人、フロリダ州が360万人だ。

保険に加入していない人は圧倒的に若い男性だ。21歳から24歳の男性の31%、25歳から34歳の男性の32.1%が保険に加入していない。女性は26.4%(21歳から24歳)、24.5%(25歳から34歳)だ。

彼らの健康状態も非常に良い(自己申告はかなり正確であることが知られている)。彼らの59.3%が健康状態を「最高に良い」(27%)、または「非常に良い」(32.3%)と答えている。他の29.9%が「良い」と答えている。わずか2.5%だけが「良くない」、8.4%が「普通」と答えている。

彼らは非常に健康なので今でも簡単に保険を購入することが出来る。それもカリフォルニア州のエクスチェンジが課すよりも遥かに安い金額でだ(ロイはこのことをリンク先で詳細に議論している)。彼らはほとんど病気になることがないので包括的な保険も必要と感じていない。

これに対して補助金はどちらにしても大した助けとはならない。Megan McArdleはわざわざ補助金のことを自分で調べて以下のように書いている。

「Kaiser Family Foundationの補助金計算機で遊んでいたらショックを受けてしまった。カリフォルニア、ワシントン、ニューヨークに住んでいる若くて単身で年収320万円のフリーランスの記者という想定で計算してみた。驚いたことに、この人が受け取る補助金は年に2万1300円で想定したのは費用が30万円または月額2万3500円の「シルバープラン」(エクスチェンジで中間ぐらいのパッケージ)だった」。

30万円の保険に対して年に2万円!?明らかなことだが、所得が低ければ補助金の額は増え所得が高ければ補助金の額は減る。だが、オバマケアの熱狂的支持者たちの主張はこうだったはずだ。「心配いらない。補助金が受けられるから!」。現在ゼロ円しか払ってなくて明日には28万円を払わなければならない人たちにとっては何の助けにもならないだろう。

言うまでもなく、その補助金を受け取るためには罰金または刑事罰の対象となる恐れがある中で大量の書類にすべての所得を正確に記載しなければならない。年に2万1300円がその対価となるだろうか?

保守派をも含む全員が罰金が存在することを認めている。進歩主義者は人々が罰金を払うのを避けるために保険料を支払うと考えているのかもしれないが、保守派は人々が保険料を支払うのを避けるために当然のように罰金を払うと考えている。実はどちらも間違っている。あなたがあなたの雇用主にあなたが支払うことになるだろうよりも多くのお金を引き出すよう頼まないかぎりは罰金を払う必要はない。払い戻しを受ける事例ではないのであれば罰金は払わなくて良い。

まとめ:進歩主義者たちがどれだけ大きな駄々をこねても、彼らが反対派をどのように罵倒しようとも、彼らがどこまでもひどく事実を捻じ曲げようとも、若くて健康な人たちがカリフォルニア州または他の州でも大量にサインしに現れるという確率はほとんどゼロだ。

もちろん、プログラムが実際に実行されてみるまでは確実には分からない。だが、ラスベガスで賭ければどんなオッズになるのかは大体想像が付く。

この問題に関して進歩主義者が書いた記事が山のようにある。

Ezra Klein in the Washington Post.

Trudy Lieberman in the Columbia Journalism Review.

Anna Gorman in the Los Angeles Times.

Josh Barro in Business Insider.

W.W. Houston in The Economist.

Wall Street Journal Review and Outlook.

Tami Luhby in CNNMoney.

以下、寄せられたコメント。

JD says:

多くの人が似たようなレトリックを用いている。強欲などが政府の拡大に反対する動機なのだそうだ。彼らは自分たちに反対する人たちを単に説得できないだけに過ぎない。

Dewaine says:

「まとめ:進歩主義者たちがどれだけ大きな駄々をこねても、彼らが反対者をどのように罵倒しようとも、彼らがどこまでもひどく事実を捻じ曲げようとも、若くて健康な人たちがカリフォルニア州または他の州でも大量にサインしに現れるという確率はほとんどゼロだ」。

狂人でなければ、間違えた側が非難されると普通は考えるだろう。だがそういったことは過去には起こらなかった。極めて奇妙な論理で持って、この国の半分はオバマケアの失敗を共和党のせいと非難しなすだろう。

JD says:

Rachel Maddow’s Blogのコメント欄を見て見るんだ。彼らは事実なんてまったく気にしていない。

John Fembup says:

「彼らは事実なんてまったく気にしていない」。

まったくその通りだ。彼らは現実さえも気にしないのではないかと思う、オバマケアの悪夢が始まるという現実さえも。

その時こそが人々が初めてオバマケアの現実のカバレッジ、現実の価格を見て、現実のエクスチェンジを通して提供される現実の保険に加入する時だ。少なくともこの年の終わりまでには現実になっているエクスチェンジに対してだ。

Mike Bond says:

私は長いこと教授を務めてきた。この手の恥ずかしい振る舞いは大学中の至る所で見られる。低所得者、または保険に加入していない人、または最新の、被害者と思われる人ならば何にでも、この手の振る舞いはそれらの人たちに対する思いやりの表れとして正当化されてきた。この手の教授を個人的に多く知っているから分かるが、彼らは彼らが助けたいと語っている人々にわずかでも時間を費やすことはないと保証する。このことは彼らが本当に怒っていることは何か?ということを良く表している。要するに、彼らの給料はほとんどのビジネスマンよりも低いのだ。かなりの数のジャーナリストも同様にこのカテゴリーに当てはまる。

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