2016年3月19日土曜日

メディアはどのようにしてアメリカの医療費が高いという話をねつ造したのか?パート2

Hospital Pricing And The Uninsured: Do The Uninsured Pay Higher Prices?

Glenn A. Melnick and Katya Fonkych

アメリカの医療システムは過去10年間に多くの構造変化を経験してきた。その中でも最も重要な変化の一つが病院の価格の決め方とその支払い方法の変化だ。1980年代の前半とは保険プランによる選択的契約とメディケアによるprospective payment system (PPS)の導入だ。この両者の下で、病院は治療に掛かった費用または病院が請求した請求価格(リストプライス)に基づいて再償還されるのではなく、その治療費はPPSのルールまたはマネジドケアプランとの交渉を通して決められる一定の定額に基づいて支払われるようになった。その期間に価格競争は加速し病院による価格のディスカウントが広範に行われるようになった。その一方で、病院は請求価格を引き上げ続けていった。アメリカの病院の請求額は1994年には治療の費用の174%だったものが2004年には治療費の254%になった。

病院の請求額のこの増加トレンドはアメリカの医療システムにとってほとんど無害だと考えられてきた。何故なら、「病院が請求する請求価格(リストプライス)を実際に支払う人は誰もいない」と考えられてきたからだ。だが、Wall Street Journalと最近になって他の新聞社も保険の非加入者がリストプライスに基づいて支払いを求められるかもしれないみたいな記事を書いた。仮にそうだとすると、保険の非加入者は請求価格が継続的に上昇しているので保険の加入者が支払うよりも同じ医療サービスに対して高い価格を支払っているかもしれない。

病院側の代表者はこの主張に対して幾通りもの方法で何度も反論している。第一に、多くの病院は保険の非加入者や低所得の患者に対して補助金やディスカウントを行う援助プログラムを行っていると指摘した。だが幾人かの非加入者はそれらのプログラムの存在を知らずに応募しないかもしれない。従って、保険の非加入者は保険の加入者よりも高い金額を払うかもしれない。それに対して、病院の代表者は毎年多額の債務の帳消しを行っていると語っている。そして自己負担のある患者が不利な状況に追い込まれているのではないと語っている。最後に、メディアの注目と弁護士による集団訴訟が起こったことで多くの病院は援助プログラムの存在を報告するようになっている。

注3 AHAの代表Dick DavidsonのStatement on the House Subcommittee on Oversight and Investigation’s Look at Hospital Billing and Collection Practicesでの演説。

(省略)

Study Data And Methods

データ: California Office of Statewide Health Planning and Development (OSHPD)は2001年から2005年の期間の病院レベルでの請求額と実際の収支とを保険非加入者と加入者とに分けたデータを提供している。この研究にはカリフォルニア州のほぼすべての病院がサンプルに含まれる。例外は、1年に50人以下しか保険非加入者が入院しなかった病院と子供向け病院と特別病院だ。最終的には、サンプルには300の病院が含まれカリフォルニア州で保険の非加入者が受ける治療の全体の80%をこれらの病院が提供している。

「保険に加入していない」の定義: OSHPDは患者を5つに分類している。メディケア、メディケイド、民間の医療保険、所得の低い患者、そして「その他」だ。OSHPDはそれぞれのカテゴリーを重複がないように設定しているので、「その他」のカテゴリーには自己負担患者とチャリティケアを受ける患者だけが入っていることになる。郡が費用を負担する(州よりも小さい行政単位)所得の低い保険の非加入者はOSPHDでは郡が支払うというカテゴリーに分類されている。従って、自己負担の保険非加入者に含まれていない。自己負担の保険非加入者の中には高度な治療を求めてやってくるアメリカ国外からの患者が含まれている。だがそれが全体に占める割合は低いので分析には影響を与えないと思われる。保険非加入者のグループには自動車などの事故による患者が含まれているかもしれない。それらの支払いは実際には自動車保険によってカバーされている。だが自動車事故に関連したすべての入院の12%を保険非加入者が占めるだけなので、この誤分類による影響は限られるかもしれないことが示唆される。最後に、登録時に患者が間違って分類されて後に再分類される可能性が考えられる。請求は最初の登録時の分類に基づいて行われるかもしれないので(支払いは最終的には正されるものの)、これは測定誤差を生み出す。

(省略)

注7 専門家へのインタビューを試みたところ、保険非加入者からの高い回収率はありえずそのように記載してあればそれはデータエラーの結果か保険非加入者からの支払いは一纏めにして記載されるからだとしている。

Study Results

図表1は保険非加入者が病院をどのように利用したかがまとめられている。2005年には、保険非加入者の入院回数は14万9000で入院日数は84万2000以上、外来回数は396万だった。2001年では、保険非加入者は請求額の39%を支払っていた。民間の保険の支払い率もこれと大体同じだった(41%)。メディケアとメディケイドは35%、30%だった。この比率はすべての支払者に対してその後低下した。これはリストプライスが上昇したことを反映している(請求額/支払額比率はこの期間に3.1から3.8に上昇した)。2005年には、保険非加入者はメディケア、メディケイドよりはまだわずかに支払い率が高いものの民間の保険よりは支払いが少ない。2000年から2001年では、保険非加入者の57%がメディケアよりも支払い率が高い病院に行っていた。民間の保険よりも支払い率が高いのは41%だった。この期間の最後では、民間の保険よりも支払い率が高いのは大体25%ぐらいでメディケアよりも高いのは50%ぐらいとなっている。


Discussion

保険非加入者の人数が問題だとされている。だが保険に加入していないにも関わらず、彼らは病院での治療を相当量受けていることを私たちは発見した。2005年には、保険非加入者はカリフォルニア州の病院治療の5.5%を利用している。その支払い率はメディケア、メディケイドよりはわずかに高いが民間の保険よりは低いように思われる。この期間に、メディケアよりも支払い率が高い保険非加入者の割合は57%から49%へと低下した。民間の保険に対する変化はこれよりもさらに大きかった(41%から27%だった)。これらの変化は病院が保険非加入者に対してネットの価格を低下させたか保険非加入者がこの期間により安い価格を提示している病院へと向かうようになったかあるいはこれらの組み合わせの反映かもしれない。

(それほど重要ではないので、以下省略)

0 件のコメント:

コメントを投稿