Michael F. Cannon
アメリカ人は、医療保険を拡大することが保険に加入していない人の健康状態と金銭的保護を改善するという主張に根拠のしっかりした証拠がまったくないと聞くと驚くかもしれない。過去の研究は医療保険の拡大が健康を改善するのかに対して疑問を呈してきた。幾つかの研究は拡大は費用に見合わないかもしれないとさえ示唆していた。これまで工業国で保険に加入するかどうかをランダムに決めた国は存在しないので決定的といえる証拠に欠けていた。これまでは。
2008に、オレゴン州は新たにメディケイドに加入する1万人を誰にするかを決めるために抽選を行った。アメリカで最高のヘルスエコノミストたちがこの機会に飛びつき、「連邦貧困基準100%を下回る保険に加入していない健常者」の医療消費量、健康状態、金銭的負担などを比較した。その人たちの半分はランダムにメディケイドに割り当てられ、もう半分は保険に加入しないままに留まった。オレゴン州の医療保険実験(以下、OHIEと略)は特に政策とも深い関わりがある。何故なら、2014頃からオバマ大統領の新しい医療法案は1600万人から2000万人をメディケイドに加入させることになっているからだ。
今日、OHIEの研究者たちはその1年目の結果を公表した。
かなり昔から、左翼は皆保険を提唱してきた。それが利益を生むのかを知らないにも関わらず。予想されたことかもしれないが、メディケイドの加入は医療消費量を増やしていた。病院への入院率は約7%から9%へと上昇していた。外来訪問の平均的な回数は1.9から3へと増加していた。40歳以上の女性のマンモグラフィ検査は30%から49%へと上昇していた。糖尿病検査率は60%から69%へと上昇していた。医療費の支出額の平均は25%(または7万7800円)増加していた。
他の結果はより直感に反するものだった。例えば、医療消費量はその年の最初の半年間では増加していなかった。治療を「受けられないで鬱積に鬱積されていた需要」などというものがなかったことを示唆している。オバマ大統領は保険の拡大と予防的サービスの拡大が緊急救命室(ER)への訪問を減らすだろうと主張しているが、メディケイドの加入者とそうでない人たちにERへの訪問の違いはなかった。
健康の主観的な指標に関して、うつ病と診断される割合は33%から25%へと低下した。自分たちの健康が良いまたは非常に良いと答えた割合は55%から68%へと上昇した。だが、この改善の3分の2は医療消費量が少しでも増える前の加入したすぐ直後に起こっている。筆者たちはこの改善を「客観的な肉体の健康状態の改善の反映」ではなく「主観的な健康感の改善の反映」だと推測している。
第二に、OHIEは保険に加入していない人の中で最も所得が低い人たちに保険を拡大した。だというのに、健康状態と金銭的負担の改善はごくわずかなものだった。所得が高くなるに連れて、保険を拡大することの利益は小さくなっていき費用は(所得が高くなるに連れてクラウドアウト率が高くなる程度に応じて)大きくなっていくだろう。
2010に、オバマ大統領は50兆円を代償に納税者が何を得ているのか明らかにしてくれるはずだったこの研究の結果の公表を待たずにメディケイドを大幅に拡大した。この法律の支持者が医者にエビデンス・ベースドの医療を行うようにと指導教育を行っている矢先に、彼ら自身がエビデンス・フリーな政策を行っていることは決して小さくはない皮肉ではある。
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