2016年3月19日土曜日

黒人の平均寿命が短いのはやはりアメリカの医療と関係がなかった?パート3

The Disproportionate Killers

慢性疾患が黒人と白人の平均寿命の違いのほとんどを説明することをここまで見てきた。昨日議論したように、その影響を最も受けているのは20歳から80歳で、さらに都市部近郊に住む黒人は郊外や田舎に住む黒人に比べて慢性病の影響を遥かに強く受けていることも研究は示している。ここでは、他の集団には見られない黒人の死因の中で顕著となっているものを取り上げたいと思う。

以下に示すグラフのほとんどは2007の1月のKaiser Family FoundationのKey Facts: Race, Ethnicity & Medical Careというレポートによるものだ。特に、そのレポートの2章は人種と民族間の健康状態の違いを扱っている。血管系の病気、感染症などの死亡率はU.S. Centers for Disease Controlを参考にした。

Infant Mortality

以前に示したように、10万人あたりの生存者の人数の違いの0.8%は初年度に表れている。下の図は、2003の黒人の乳幼児死亡率がアジア系、ヒスパニック系、白人の2倍以上でアメリカ・インディアン、アラスカ系のネイティブよりも3分の1以上高いことを示している。

黒人と白人の乳幼児死亡の原因の詳細は2008の4月のJournal of PerinatologyのEthnic differences in infant mortality by cause of deathという記事で見ることが出来る。特に、未熟児の死亡/低体重による死亡が黒人の乳幼児死亡のほとんどを占めている。完全に意外だったのが20代の黒人の母親と30代前半の黒人の母親の方が10代で出産した黒人の母親よりもこの症状に遭遇する確率が遥かに高いということだ(10代で出産した方が未熟児が生まれる確率が高いと云われている)。

Heart Disease

心臓の病気はアメリカ人の死因で最も多いものだ。従って、黒人でも最も多い死因だったとしても驚くことではない。

下の図に見られるように、非ヒスパニック系の黒人のこの病気による死亡率はアジア系の2倍以上、アメリカ・インディアン/アラスカ・エスキモーのちょうど2倍、そしてヒスパニック系の2倍よりちょっと少ないというものになる。黒人は白人よりも4分の1以上この病気による死亡が多いということになる。これらの比率は男性、女性問わず当てはまる。女性の方がこの病気による死亡は遥かに少ないということは別にして。

Cancer

Kaiser Family Foundationは「黒人の乳がん、肺がん、大腸がんによる死亡は他のどの人種、民族集団よりも多い」としている。

下の図で、黒人は他のどの人種/民族集団よりも乳がんか大腸がんに罹患していることが示されている。一方で、肺がんに関しては白人と黒人とで差は遥かに小さい。これは黒人のたばこ消費量が白人よりも少し多いこと、他の人種/民族間ではたばこ消費量が黒人や白人と比較して遥かに少ないことが原因だと思われる。

Cerebrovascular Disease

血管系の病気(CVD)には血管に関連するすべての病気や症状が含まれる。

下の図からは、黒人が血管系の病気による死亡に特に脆弱であることが見て取れる。74歳まで死亡率が他のすべての人種、民族集団の2倍以上高い。

Infectious Diseases

ここでは、感染症の代理指標としてHIVだけを取り扱う。とは言え、人種間の感染率の大きな違いは他の感染症にも当てはまる。

HIVによる死亡率の違いは相当に大きい。黒人の死亡率は他の人種、民族集団と比較して3倍から30倍高い。

肺炎、敗血症、腎感染症、尿路感染症などの他の感染症に対しても、黒人の死亡率は他の人種、民族集団に比べて高いということを記しておく必要がある。2001のJan H. Richardus and Anton E. KunstのBlack-White Differences in Infectious Disease Mortality in the United Statesというこの研究によると感染症は黒人と白人の死亡率の違いの10%を説明するとある。この乖離は社会-経済的な要因を制御した後でも存在したという。

Contributing Conditions

すべての症例や病気が直接的に死亡に関連するという訳ではない。幾つかの症例や病気は間接的な死亡の原因となる場合がある。黒人の方が白人よりも罹患率が高い(とは言え、ヒスパニック系とは同じぐらいではあるが)、糖尿病はそのような症例の一つだ。

一方で、肥満も糖尿病や循環器系の病気など他の病気の原因となりうる。

他の人種、民族集団に比べて、過体重または肥満の割合は黒人で特に高いということはないというのが取り敢えずの結論だ。

ここまで見てきたことから、何を調査の対象にすればいいのかが比較的明確になって来た。次の記事では、アフリカ系アメリカ人とアフリカ人の平均寿命を比較して、アフリカの呪いと祝福とここでは呼んでいるものが黒人の死因にどれほどの影響を及ぼしているのかということを調べていく。

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