Avik Roy
左派は、証拠をすべて無視してメディケイドの拡大は何万人もの命を救う、それ故それに反対する人は大量殺人の罪にあると長年主張してきた。従って、年間45兆円のプログラムが「肉体的な健康状態に有意な改善を生み出していなかった」ことを示したオレゴンの研究に対する彼らの反応を見るのは愉快でもある。彼らは、少しでも改善されたと思った所があればそれを大きく誇張するのに必死だ。だが現実には、オレゴンの結果は彼らにとってその見た目よりもさらに悪い。以下はその理由だ。
1.抽選に選ばれた40%には署名さえしてもらえなかった。
筆者らによると、「抽選に選ばれた60%だけが応募用紙をきちんと送り返した」とある。抽選に選ばれた3万5169人のうちで、実際にメディケイドに加入したのは10405人だった。大部分が、保険に対する興味の無さとメディケイドの受給資格を結局は満たすことが出来なかったとの理由で。
実際の無作為化試験では、それらの人々も研究のコーホートに含めなければならない。保険に加入していない人と、応募用紙を送り返さなかった人たちも含んだメディケイドを提示された人たち全体とを比較しなければならない。
2.メディケイドの効果と宣伝されているものはほとんどプラセボだ。
オレゴンの研究で問題なのは、それが二重盲検化されていないことだ。メディケイドに加入している人は、当然それを知っている。保険に加入していない人も、当然それを知っている。製薬会社には、ほとんどどんな状況においても二重盲検試験が求められる。偽薬ではなく本物の薬を投与されていると知ってしまえば、症状が良くなったと自分で自分を説得してしまうためだ。これはプラセボ効果と呼ばれている。
メディケイドの肉体の健康状態に関する結果を否定するものは軽度うつ病が改善したことだけを宣伝する。対照群と比較して、メディケイドは軽度のうつの陽性と診断される割合を9%低下させた(p値は0.02)と筆者らは語っている。「これは驚異的な発見だ」とオバマケアの事実上の設計者であり、オレゴンの研究の共著者の一人でもあるジョナサン・グルーバーは説明する。「これは精神の健康状態の凄まじい改善だ」。
さらに、プラセボ効果はオレゴンの結果が(対照群と比較して)有意な改善を示さなかった血圧値、コレステロール値、糖尿病などの客観的な健康状態にも働く。メディケイドの加入者が自分たちがメディケイドに加入していると知らなかったらそれらの指標はどれだけ悪かったというのだろうか?
3.オレゴン州のメディケイドは他の州のメディケイドよりも条件が良い。
先週に説明したように、オレゴン州のメディケイドの再償還率は全米平均よりも高い。従って、かかりつけ医へのアクセスはオレゴン州のメディケイドの方が他の州よりも良いはずだ。オレゴン州では、メディケイドはかかりつけ医に民間の医療保険が支払う62%を支払う。リベラル派の強いカリフォルニア州では、メディケイドは38%を支払う。同じくリベラル派の強いニューヨーク州とニュージャージー州では、メディケイドは29%を支払う。
否定論者はオバマケアの下では、メディケイドのプライマリーケアへの再償還率は2年間だけ一時的に上昇すると指摘する。だが2年後には、再償還率は元の水準へと戻る。そして、その一時的な上昇も専門医には適用されない。
否定論者のキャプテン、Paul Krugmanはオレゴンの結果を必死に誤魔化そうとしている。「保険が良いものであるならば(そうでないと考えるのはどうかしている)メディケイドは民間の保険よりも安いということを覚えておく必要がある。どこに問題があるというのか?」。
メディケイドの費用に関して他にも問題がある。CBOはオバマケアによるメディケイドの拡大は一人あたり年間で60万円掛かるだろうと試算している。2010には、オレゴン州は1成人あたり47万円を支出している。だがオレゴンの研究によると、メディケイドは患者の支出を11万7200円増加させているだけだ。では残りのお金は何処に行ったのか?
保守派が責任を負う立場になったら何をするのかというのは、最近になってよく聞かれるようになった。「自分たちの政党がオバマケアの代替案に向かって団結できないのであれば、メディケイドの拡大に反対している共和党の知事や政策当局者がやっていることは妨害以外の他のものではない」とRoss Douthatは記している。
メディケイドが患者の12万5000円の支出のために一人あたり年間60万円を費やして健康に何の改善も見られないことを思えば、保守派がオバマケアのメディケイドの拡大に反対するのは至極当然のようにさえ思えてくる。左派が医療貯蓄口座と重大な事故や病気に対する保険に対して過去40年間のように敵意をむき出しにし続けるのであれば、対案を出さなければいけないのはどう公平に見ても彼らのほうだ。
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