No, Really, It's Possible That Health Insurance May Not Make Us Healthier
MEGAN MCARDLE
先週のオレゴン州の研究の記事をもう一つ書くタイミングが訪れたようだ。
今日は暖かい小春日和で、貴重な休暇を有意義に使いたいと思っているのは分かっている。だが今回も付き合って欲しい。何故ならば、この議論は医療政策において文字通り最も重要なものだからだ。オレゴンの研究が正しいならば、それは医療政策における私たちの考えを大きく変えるだろう。
すでに左派があなたに嘘を吹き込んだとは思われるが、この研究は奇妙で何事も意味しないような無価値な単発の研究などではない。医療保険が健康状態に与える影響は驚くほど小さいことを示した研究は他にもある。Levy and Meltzerのこの分野の文献の2008以降のレビューを紹介しよう。彼らは、結果がどれ位入り乱れているかを指摘している。
「医療保険は健康に影響を与えるのか?この分野の文献をレビューして、私たちは3つの結論に辿り着いた。第一に、保険と健康との間に正の因果関係を見つけたと主張している研究のすべてが少しも説得的ではない。観察された相関関係は他の、未観察の要因によるものかもしれないからだ。第二に、保険が一部の人々に影響を与えると主張しているものは先程のものよりは少し説得力がある。第三に、政策の目的としてはそれらの研究の結果が一般化出来るものなのかどうかを知る必要がある。社会実験に多くの資源が投入されればこれらの疑問への答えが明らかになるだろう」。
ここに、彼らがレビューした研究の一覧表がある。
これは、その1年後の2009にKronickによって書かれたものだ。保険と死亡率の関係を調べたものの中で、これまでで最大規模のものだ。彼の結論は、
「人口統計学上の違い、健康状態、健康に関わる生活習慣などを調整すると、保険に加入していない人と民間の保険に加入している人との死亡リスクに有意な違いはなかった(保険に加入していない人のハザード率は1.03で、95%信頼区間は0.95から1.12だった)。制御変数から健康状態を表す変数を取り除くと、ハザード率は1.10へと上昇した(95%信頼区間は1.03から1.19)。喫煙の変数とBMIを制御変数から取り除くと、ハザード率は1.20へと上昇した(95%信頼区間は1.15から1.24)。防ぐことが可能な死亡原因に分析を限定した時には(自殺などを除くという意味)保険の有無と死亡率に有意な違いはなかった。調査のフォローアップ期間を短くした時にも(長期間保険に加入している人と長期間保険に加入していない人とが比べられる確率が上昇する)、人々が65歳以上になってメディケアに加入した後でも死亡率に違いと変化はなかった」。
保険が人々を健康にしているという証拠が一つもないというのではない。幾つかの研究はそれを示している。例えば、メディケイドを拡大させた3つの州を調べた研究は死亡率との関わりを示唆している(それにも大きく疑問が付けられている)。だが証拠は入り乱れている、とても入り乱れている。保険が健康(ここでは死亡率の意味)に大きな影響を与えるとの極端に強い考えは「Reality Based Community」によって支えられていると私は言うだろう。事実、研究が大規模になればなるほど調整が適切になされればなされるほど保険の影響は消滅していくとさえ言えるだろう。
保険が健康に与える影響がまったくのゼロとは直感的には信じ難い。だがこれまでの証拠はその影響は極めて小さいと示唆しているように思われる。保険と健康との関連がリベラル派が言うようにそれほど強くて明白なのであれば、質の高い研究であればあるほどしかも数多くあるそれらすべてがほんのわずかな影響またはまったく何の影響も示さないのは何故だろうか?
このように私は考えているので、オレゴンの研究に対して寄せられた左派からの反応の幾つかを正そうと思う。まず始めは、Brian Beutlerからのものだ。
「保険に加入していない人が2000人、そのうちの1000人がメディケイドに加入を許され残りの1000人がそのままであることを求められた1年掛かりの研究のことを想像してみよう。1年後に、メディケイドは最初の1000人に金銭的負担の低下とうつ病の減少という恩恵を与えたことをデータは示唆した。だが心臓病には無視できるほどの影響しか示さなかった」
「総体的なデータからは明らかではないものの、各グループから選んだ一人の男性が胸の痛みを感じ始めたと仮定する。数日後に、メディケイドに加入していたその男性は病院に行き治療を受けた。彼は助かった。対照的に、メディケイドに加入していなかった男性は大きな胸の痛みに苦しむまでは何もせず病院へ向かう救急車の中で亡くなったと仮定する」
「言い換えると、私の設定では保険に加入していないことによって一人の男性の命が失われたということは起こり得る。その研究では集団全体的な心臓病の改善が見られなかったにも関わらずだ。同様に現実の世界では、オレゴンの研究は超過に死亡しているかどうかの問題に答えられるように設計されていない。保険と死亡率の関係を調べた研究が集団全体の健康状態の指標への影響を調べるように設計されていないように」
「だがもちろん、多くの現実世界での研究は保険に加入していないことを毎年何万人もの死亡と結びつけている。それはアメリカで保険に加入していない人のほんのわずかの割合でしかない。だが私は、メディケイドを最も声高に批判する人であっても毎年1万人または2万人の防ぐことが出来る死亡を取るに足りない人数といって切って捨てるかと云われれば疑っている」
「だから、彼らは頭を砂の中に押し入れた。オレゴンの研究が結論の分かれた他の研究全体を決定的に打ち砕いたと扱った」。
すでに見ているように、「多くの現実世界の研究」はそのようなもの(彼が主張しているようなこと)を示していない。オレゴンの研究がその手の「超過の死亡」を取り扱うように設計されていないというのもまったくもって事実ではない。
例えば、胸の痛みを感じた時にERに行かないという彼の例えを取り上げてみよう。緊急救命室の使用率はこの研究で実際には調べられている。彼らはERへの訪問または病院への入院にメディケイド加入者と保険に加入していない人との間に統計的に有意な差がないことを発見した。
他の点でも間違えている。彼らは、実際に死亡率を調べている。それらの結果は2011に公開された第一ラウンドの結果発表時に示された。彼らは2つのグループの間に統計的に有意な死亡率の差がないことを発見した。
サンプルサイズが小さくて死亡率の違いを拾えなかったのだと主張することは可能だ。Kevin Drumは実際、そのように主張している。
「彼らがまず第一にしておかなければならなかったことは、そもそもその研究を始める以前に、臨床的に有意な結果とはどれ位かを調べておくことだ。例えば、過去の経験からすると、メディケイドの加入によって糖化ヘモグロビンが正常値を超えている人の割合が20%削減されたとすれば彼らはそれを成功だと判断するだろう」
「それから、彼らはステップ2に移るだろう。彼らは臨床的に有意な削減を目にするだろうか?臨床的に有意な結果が統計的にも有意なように彼らの研究は設計されているだろうか?明らかなことに、そうなっていなければならない」
「ここで算数をしよう。オレゴンの研究では、コントロール群の5.1%が糖化ヘモグロビン値が正常値を上回っていた。治験群の方を見てみよう。メディケイドを提供された人は6000人いた。そのうちの1500人が実際にサインした。そのうちの5.1%が正常値を上回っていたとしたら、それは80人ぐらいの人になる。20%の削減であれば16人だ」
「ではここに質問がある。彼らが予想していた結果を見つけることとなった暁には(16人の削減)、この結果が統計的に有意である可能性はあるのか?もっとデータにアクセスしてみなければ確かなことは言えない。だがその答えはほぼ確実にノーだ。その数字は単に小さすぎる。他の指標に関しても同様だ。言い換えると、例え彼らが望んでいた結果を得たとしてもそれらが統計的に有意になることは確実にない。それらが統計的に有意でなければ、見出しの結果は「影響がなかった」を意味する」
「問題は、この結果が生み出される前にゲームはすでに始まっていることにある。それは、彼らのせいではない。彼らはオレゴン州の抽選を調べた。彼らには抽選の規模を変えることは出来なかった。その結果、残ったのが1500人の人たちだ。糖化ヘモグロビン値が正常値を上回っていたのはそのうちの5.1%だ。それを変えることは出来ない」
「ここまでのことを踏まえると、彼らは結果を公表すべきでさえなかった。検出力が低すぎてどのような妥当な条件下においても統計的に有意な結果を示すことは出来なかったと単に報告すべきだった。だが彼らはそのような行動を取らなかった。彼らは結果を公表して解釈はプレスに任せた」。
私は、幾つもの理由からこのような批判をオバマケアのサポーターがするべきではないと思う。
そもそもの話として、補論を読めば、彼らが細心の注意を払って検定力のことを考えているのが明らかだ。彼らは、65歳間近のように測ろうとしている問題に関して大きな変化が予想できるサブグループを予め幾つも指定していた。それらのサブグループにも有意な影響は見られなかった。
第二に、高血圧などの割合は低くない。彼は糖化ヘモグロビン値(血糖値の代理)だけを選んで、正常値を上回ったのが5%だけであれば大きな改善を見つけることは出来ないと主張した。
そう言う割りには、医療費の支払いは有意に減少している。偶然にも、これも支払いがあったのはコントロール群の5%だ。だというのに、オレゴンの糖尿病のサンプルが小さすぎると言う人は医療費の支払いのサンプルは小さすぎるとは考えないようだ。彼の発言から引用する。
「メディケイドは医療費の自己負担をほとんど削減した。これはメディケイドに加入していない人たちは治療を主に緊急救命室で受けたことを示唆する。健康状態を改善させなかったとしてもメディケイドはこの部分において改善を確実に示した」。
どうして医療費の支払いを見ている時には5%が大きな数字で、糖尿病を見ている時には5%は小さすぎる数字だというのか?医療費の支払いの減少はそこそこに大きくて、糖尿病の減少はまったくと言っていいほどなかったからに他ならない。
もし肉体上の健康の指標に同様の影響を検出することを期待することが彼らにとってそれほどまでに不合理であると言うのならば、文字通り専門家の誰一人がこれがこの研究の結果だと予想していなかったのか?私は、多くの面においてオバマケアの設計者である、Jonathan Gruberのようなアカデミックの人間のことについて話している。彼もこの研究に参加しているし結果を「大変失望した」と言っている。Austin Frakt and Aaron Carrollは言うに及ばない。金銭的負担が改善した以外は見るべきものは何もないとはっきり言っていた二人だ。2011には、この研究は保険と健康状態との関係を証明するだろうと彼らは自信満々に断言していた。
今では、彼らがこの研究を検出力が弱いと宣言することに用いているそれらの情報(この研究の規模、18歳から65歳の間の人の高血圧の頻度など)はもちろんその時にもきちんと公開されていた。その時にはどうして彼らは、保険が健康を改善するという考えをこの研究が証明してくれるだろうと考えていたのか?それは高血圧、コレステロール値、血糖値の改善が大きなものだろうと彼らが考えていたからに他ならない。そして、結果は彼らの予想したものではなかった。それが大きなニュースだ。
ここには見るべきものが何もないと主張している人たちは、以下の3つに分類できる。
1. 「保険に加入していない人たちの中に病気の人がほとんどいなかった」
2. 「慢性疾患病は保険に加入している人たちに対してでさえも一般的にあまり良くコントロール出来ない」
3. 「メディケイドに加入した人の多くはそれでも病院に行くのを嫌がっている」
これらがどうしてオレゴンの研究に対する反論になるのか私には分からない。
もちろん、あまりにも性急に結論を出すべきではない。オレゴンの研究は高血圧、コレステロール値、血糖値などしか調べていない。だがそれを小さく見積もるのは誤りだ。ここに、アメリカ人の主な死亡原因をまとめている。
これらは主に3つに分類できる。
慢性疾患病関連としては、心臓関連、脳血管関連、糖尿病関連のもの。
すでに政府の保険に加入している高齢者や児童が罹りやすい病気。腎臓病(透析を政府が保証している)や非感染性の肺の病気、アルツハイマー。
保険によって改善するかもしれないが、測っていないもの。事故やがん。
直接には測られていないものの、事故死は死亡率の即時の改善として表れるべきだと強く主張したい。そのようなことがあれば、外傷治療と病院への入院を通して改善が表れるはずだろう。それらの指標が有意であれば、1年目の結果に死亡率(死亡者数)の大幅な改善として私たちは目にするはずだろう。ところが、そうではない。
保険ががんに与える影響は分かりにくい。一見すると、大きな改善が期待できるように思える。早期の発見が効果的で治療が高額な場合があるからだ。
一方で、高血圧症や心臓病などの治療を私たちは得意にしているもののがんの治療はまだそこまでではない。がんと診断された人の30%から40%の人は治療をしても5年以内に亡くなっている。そして診断の平均年齢は60歳代なので、ほとんどの人がすでにメディケアによってカバーされている。
しかも来年から良いテストが始まる。もし大勢の人を保険に加入させることによってがんで死亡するリスクが大幅に低下するのであれば、それは死亡者数統計に目に見える不連続となって表れるはずだ。私が間違っていることを願おう。そしてオバマケアががんとの戦いや死亡者数統計において記念碑となることを願っている。そして、Frakt and Carroll, Beutler and Drumらが改善がどれ位と期待しているのかを非常に興味を持って見守っている。
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