2016年3月19日土曜日

アメリカで徹底的に嫌われているかつ経済学の恥と呼ばれるポール・クルーグマンの主張が完全に否定された?パート7

Paul Krugman: Stop Being an Embarrassment to the Profession

John Goodman

メディケイドの加入者の3分の2が民間の運営しているマネジドケア・プランに加入している。伝統的なメディケイドに残っている人たちであっても民間の保険会社によって管理されているプランに加入していることが多い。メディケアがブルークロスやシグナ、その他の保険会社によって管理・運営されているのと同じようにだ。

他にも説明しなければならないことはあるので下の方で述べる。取り敢えずここではクルーグマンの主張を見てみよう。彼はコラムで以下のように主張している。

・メディケイドの民営化は保守派によって私たちに押し付けられた考えだ。

・保守派が権力の座についてやることといえば、富裕層を豊かにし貧しい者を貧しくすることに他ならない(彼らは貧しい者が苦しむのを見るのを楽しんでいる!)。

・だが、人々を民営の保険に加入させることは納税者に負担を掛ける。「何故なら、メディケイドは民間の保険よりも遥かに安いということを示した圧倒的な証拠があるからだ」。

・それは主に、「政府が病院や製薬会社やその他の医療産業複合体に対して価格交渉力を発揮していることによる」。

・では何故、保守派は民営化を主張するのか?「答えは明白だ。納税者の負担の反対側とは医療産業複合体の利益に他ならないからだ(保守派は医者が豊かになるのを願っている!)。

問題は、これらの主張がすべて間違っているということではない。クルーグマンは頻繁に間違えている(「Krugman is wrong」という単語で検索してみよう。そして大量の検索結果が返ってくるのを確認してみよう)。彼がヘルスケアに関して書く時は、クルーグマンはほとんどすべての時において間違えている(ここと、ここと、ここを参照)。問題は、情報に乏しい読者がそれらを「経済学」だと信じこんでしまう恐れがあるということだ。

すでに述べたように、メディケイドの加入者の3分の2は民間のマネジドケア・プランに加入している(この資料の13ページ目を参照)。参加率は州によって異なるが、参加率は保守的であるとかリベラル的であるとかその州がデモクラット寄りであるとか共和党寄りであるとかに関係していないように思われる。サウスカロライナ州とテネシー州(最も保守的な州?)の加入率は100%で、アラスカ州、ニューハンプシャー州、ワイオミング州(最もリベラル的な州?)の加入率はゼロ%ではあるが。

ではそれぞれの州は何故、民間のプランに加入しているのだろうか?それは質の高い医療を安い価格で得られると考えているからに他ならない。カリフォルニア、フロリダ、ネバダ、サウスカロライナなどの州を対象とした研究は民間の医療保険が優れた結果を生み出していることが確認されている。州を対象とした研究全体が(幾つかのものは州自身によって行われた)民間の医療保険がメディケイドの費用を削減させていることを発見している。

メディケイドの方が医療サービスのプロバイダーとうまく交渉できるという主張の方はどうだろうか?前の記事ですでに答えているように、

(もう何度も書いたので省略)

もちろん、真の経済学者であれば社会的費用とは財に支払われた価格ではないということをよく理解している。社会的費用とはその財を生み出すのに要した資源の機会費用のことだ。医療の場合では、同じ数の医者、看護士、病院職員などが同じサービスを提供している限り価格コントロールによって費用を低下させることは出来ない。費用は、患者からサービスのプロバイダーへと移される。実際の所では、価格コントロールは資源の供給を制限して待ち時間を増加させることにより社会的費用を増加させている。

メディケイドに関してより重要な点は(メディケアと同様に)支払いの方法が悪いということだ。良い医者であろうと悪い医者であろうとすべての医者を受け入れてしまう。病院に関しても同じだ。メディケイドはその価格が合理的なものかどうか判断するのに必要とされる労力を費やしていない。そして不正に対してあまりにも脆弱でもある。メディケイド、メディケアともに不正や入力の誤りによって10%が失われていると実際に試算されている。

それがマネジドケアが必要とされている理由だ。私は過去にもマネジドケアのファンではなかったし今でも懐疑的に見ている。それは置いておいて、オバマ政権が掲げる医療法案の目標を思い出してみよう。それは、個別に医者が行っているそれぞれの判断を(チームとして組織された医者の集団によってもたらされる、メディカルホームという概念に集約された)コーディネイトされた医療に置き換えることだったはずだ。コーディネイトされた医療ではバイヤーに量ではなく、質に基づいて購入することが求められる。判断はエビデンス・ベースドであることが求められる。医療を標準化したり誤りを減らすために電子カルテが必要とされる。

ではそれらすべてのアイデアが試されている唯一の場所はどこか考えてみよう。メディケア、メディケイドの民間のマネジドケア・プランの中だ。多くのメディケア・アドバンテージプランの中では、オバマ政権がメディケア全体を対象にしてやりたいと言っていることがすでに行われている。連邦政府からの支援も強制もなしにだ。それらはコーディネイトされた/統合された/マネジドされた医療システムを構築している。それにより伝統的なメディケアよりも低い入院率、低い再入院率、少ない入院日数を達成している(Jeff Lemieuxによる最近の証拠の要約を参照)。

ヒューストンのIntegraNetは3万人のメディケイド患者と1万2千人のメディケア・アドバンテージプランの患者を扱うIndependent Practice Associationだ(私たちが以前に説明した記事を参照)。手数料、質を基準としたボーナス、利益の共有化を通して、そこでメディケイドの患者を診た医者はテキサス州のメディケイドが他の医者に払うよりも25%から30%多く支払われている。IntegraNetは伝統的なメディケイドに存在する大量の無駄を取り除くことによりこれを実現している。そこでは必要もないのに入院させられる患者は少ないし緊急救命室の利用もほとんどなく不正はほとんど存在しない。

これらの努力によって全体としてみた納税者の税金は節約されたのか?それははっきりしない。Austin Fraktは、メディケイドが手数料を高く払っていた所では民間との契約によって費用が削減されていることを示したこの研究のことを指摘している。それらの研究の問題点は、それらが手数料を低下させる以上のことは行っていないプランと医療が行われるそのやり方を改革したプランとを一纏めにしてしまっている所にある。

ここに私が説得された資料がある。そこに参加している多くの人は医療費を削減する方法を探し出すことによってお金を節約している。だが費用が削減されたということは納税者の負担が軽くなったということを必ずしも意味するのではない。政府の支払いの方法はほとんどすべての物に対して悪いということを覚えておく必要がある。

クルーグマンはフロリダ州のメディケイドの民営化のことを特に叩いているようなので、私はMichael Bondからの発言を引用しようと思う。

「その改革は税金を節約したのか?慎重を期しながらも答えるとするならば、その答えはイエスであるように思われる。改革の2年間に、Broward郡とDuval郡の支出は一人あたり一月あたりで見て低下した」

「一方で、治療の結果を判断する28の異なる基準のデータでは、改革した方のプランが14の指標で全米平均を上回り、改革をしていないメディケイドの方は9つの指標だった」

「加えて、改革したプランの方では20の指標で改善が見られたが改革をしていない方では8つだった。さらに、改革したプランの医療の質は年が経過する毎に改善していっているように思われる。少なくとも2年間データが利用可能な17の指標では、改革したプランの方は16の指標で改善が見られていた。これは10の指標でしか改善が見られなかった改革をしなかったプランとは対照的だ」。

これらの改革が実施されてからあまり日にちが経っていないが、初期の証拠は費用を削減し結果を改善させていることを示唆している。

以下、寄せられたコメント。

Nancy says:

素晴らしい記事だ。クルーグマンはジャーナリズム界のヒューゴ・チャベスだ。

Christian Boozer says:

自分たちの支持基盤に迎合を重ねている間に…彼らの世界観を根底から否定する実証的証拠が次々と積み重なっていったので、進歩主義者の掲げるアジェンダはますます滑稽な物として見られるようになっていった。

Wanda J. Jones says:

親愛なるジョンとその同僚たちへ。

クルーグマンは意図的に無知を装っているのかもしれない。だが彼に掲載を許可している人たちやそれらの出版物を支持している人たちが鶏並みの頭しか持っていなければ彼の労力は徒労に終わるだろう。彼らもまた無知なのだ。それとは対照的に、ヘルスケアのシステムを知ろうとしている者はお互い同士でしか会話しない。ジョン、あなたがチームを組織して消費者宛に本を書いてみてはどうか?

上の方でコメントしていたライアンという方へ。医療システムが「特別利益団体」によって支配されているという風に単に蔑視的な見方をするのは、怠惰で無関心な精神の表れではないかと思う。それは検証可能な言明ではない。ここに大衆が理解していない医療システムに関する別の真実がある。アメリカの病院の大部分は非営利団体だということで、これは持ち主や株主がいないことを意味する。営業利益は如何なるものであっても病院内でのプログラムに再投資される。取締役はボランティアでマネジメントを管理する人たちは従業員で株式の形でのボーナスなどは受け取ることが出来ない。そして従業員たちはいつでも好きな時に解雇されうる。公務員のような雇用の保護は望むべくもない。このことに、大衆はもっと感謝すべきではと思う。これらの病院は医療システムの支柱で自発的に行われてきた(行われている)システムの形態変化の源ともなってきたからだ。郊外に衛星施設を建て、多重の専門医による集団的医療を組織し、産科医の少ない地域で看護士を助産婦として訓練し、厚生プログラムを始めたりしてきた。慢性疾患病患者用の特別マネジメントプログラムを採用したりと他にも数多くある。

それらは医療システムの古い部分の「改革」も行ってきた。これは運営のうまくいっていない病院をリニューアルさせて医療のレベルを高い水準にまで引き上げる、病院の施設を(税金や株式ではなく)税が控除された債券でリニューアルさせる、医療スタッフに高いパフォーマンスを発揮させるために新規に医者を派遣する。不正の方を見ると、それは猛烈ですべての医療サービスのプロバイダーが行っているように思われるだろう。それも毎時のようにだ。実際、この業界には標準偏差からは3段階から4段階は離れていると思われるような病院もあって質の低い医者を使って不正を働いている所もある。私たちはそれらを「取り残された病院」と呼んでいる。これらの医者や病院を取り除くことにより医療の質を大きく改善できるだろう。

費用の増加に関しては3つの要因が挙げられる。公的保険に加入している患者への政府からの支払いの削減、これによりその差額の費用が民間の保険に移される。様々な要因による労働費用の増加。平均寿命の増加や慢性疾患病の治療などによる集中的医療の増加。例として、私は外来の心臓外科センターで電気的除細動を最近受けた。請求額は73万円だった。病院には私のメディケア・アドバンテージプランから4万3500円が支払われた。私に請求されたのは7600円だった。政府はその権力を用いて費用を隠すことが出来る。3時間掛かったこの治療全体には4人の専門医が関わっていた。実際の治療に掛かった時間はほんの数秒ではあったが。この治療の間に、私は麻酔科医、心臓外科医、心臓外科の看護士、超音波検査士などに会った。病院が受け取った支払いでこれらの費用が賄われたとは考え難い。

私が腹立たしいと思うのは、医療費の増加の原因として政府が病院を非難するのを聞く時だ。政府の要求する価格には従わせておいて、どうやって病院は生き残ればいいのかは何も教えてくれないというのにだ。私たちはこの慣習から抜け出す必要がある。問題は、政府がこの慣習を続ける限りは、一つや二つの保険を改良するぐらいでは大した助けにはならないということにある。クルーグマンは、強欲以外に何の力も働いていないという誤った考えに縋って安心していたいのだろう。

それと、医療部門に競争は存在していないと考えている人へ。医療保険は保険料、評判、プロバイダーの獲得を巡って競争している。病院はそれぞれの治療毎に競争している。都市部で開胸心臓手術が急激に増加した。最初にそれを行った病院は研修医に研修を行った。彼らは自分たちの心臓外科治療を始めるようになったが教育費が節約されたので安くなった。それらの研修プログラムが存在しなければ価格は高くなっていただろう。OB programは競争している。より良いプログラムでより良い価格のものを選択するだけの時間が患者にはあるからだ。Medical programは自身の医療スタッフを通して競争している。その中には1つ以上の病院にまたがって勤務する病院スタッフが含まれることがよくある。だから自分たちの患者が最も良い治療を最速で受けられる場所、または寄付金のおかげで安い価格で受けられる場所を選ぶ。

競争に関して他にも知っておいてもらいたいことがある。それは供給に不足がある時、競争は存在しないということだ。競争が存在するためには、供給能力に余裕があり価格を引き下げるパフォーマンスを改善するなどして患者を惹きつける意欲がある必要がある。子供に対して精神科のプログラムが一つしかないような場合には地域間のものを除いては競争は存在しない。幾つかの事例では全米規模の、他の事例では世界規模の市場が存在する。

価格を通しての競争というのはインプットがほぼ同質であるということを想定している。だがそれは時に大きく異なる。研修プログラムのある、出来たばかりの建物で看護学校付き、550以上ベッドがあり1ベッドあたり従業員が7人いるような病院はそれらのものがなく築年数が30年でベッドが150しかない病院よりも費用が掛かるだろう。どちらの病院が適しているかは価格ではなく適切さで判断しなければならない。それがかかりつけ医が行っているとされていることだ。

Brian Williams. says:

債務に関するPaul KrugmanとJoe Scarboroughとの議論は見る価値がある。特にScarboroughの締めの議論は見ておいたほうがいい。Krugmanはこの議論の間中、1990年代に彼が言っていたことの責任から逃れるのに必死になっている。

http://www.charlierose.com/view/interview/12802

Wanda J. Jones says:

ブライアンという方へ。

あなたは、メディケアが民間の保険の価格を上昇させているというのはおかしなことだと言った。民間の保険は同じ治療に対してメディケアよりも20%多く支払っている、民間の保険が優先的な扱いを受けるためには民間の保険はメディケアよりも1%多く支払うだけでいい、真実はその逆だ、民間の費用の上昇がメディケアの費用を押し上げているのだ、とも言った。

あなたが混乱しているとしても無理はない。あなたは病院や他の医療サービスのプロバイダーが医療保険とどのように関わっているかや彼らがどのように医療を提供しているかを本当に知らないようだから。民間の医療保険は支払いを多くして優先的な扱いを受けようなどしていない。そもそも優先的な扱いなど存在しないからだ。病院と外科医には支払元に関わらず同じ質の医療を、同じ価格で、同じスタッフで提供することが課せられている。

コスト・シフトに関して知りたいならば、Health Affairsや他のヘルスエコノミクス系のジャーナルで記事を探してみることを勧める。あなたがイデオロギー的な観点から民間部門を非難している限りは、メディケアを正しく評価することは出来ないだろう。メディケアは本来の費用を支払っていない。それでこの話は終わりだ。病院は同じ質の医療を提供しなければならないので、補助金を受け取らない限りは(オバマケアのせいでそれも縮小されつつあるが)、病院は政府の患者の受け取りを少なくするだろう。

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